千駿乃音という娘
登場人物→前話参照
第三章 千駿乃音という娘
文芸部もどき見学に行った日の帰り道のこと。
「あれ?千駿こっちだっけ?」
「私、来栖君の家の斜向かいなんだけど…」
「えっ!?そうなのか!昔からか?」
「いや、最近引越しして挨拶に行ったんだけどお母さん来なかった?」
そんなイベントがあった気がしたが俺は好物の唐揚げの調理中で話を聞いてなかった模様である。
「じゃあこれからは一緒に登校するか?」
「え、いいの?」
「何をそんなに気兼ねすることがあるんだ?」
「いや、卯月先輩と登校するんじゃないのかなって」
「六は生徒会で早かったり色々と用事があって登校は別々だな」
「私は一緒に行きたいんだけどね~、てか悠君!浮気はめっだよ!乃音ちゃんは確かに可愛いけど悠君は私だけの悠君なんだから~」
「いつ俺はお前のものになったんだよ…とりあえず、明日から一緒に行くか」
「うん行く行く、集合の三十分前から待ってるね!」
「いや、待ちすぎると思うぞ…」
そんなこんな会話をしながら六がこんな事を言ってきた。
「悠君おんぶ~」
「高二にもなったんだから自分で歩けよ…」
しかしこんな事を言いながらも気遣ってやることにした。
実際こいつ生まれてきてからは歩けるとかそういうレベルの話ではなく鍛えるまでは凄いことになってたから仕方がないのかもしれない。
「ほら、乗れ」
「えっいいの?私重いよ?胸あるし」
「ゴフッ…そ、そっそうか。だが安心しろ、これでも身体は鍛えてる方だ」
「じゃあ…失礼するね~」
「なんだ軽いじゃないか」
「いや、足くじいちゃって」
「そうなのか?」
「ごめんね?」
「ならいいけど…」
「ププッ…う、うん、ありがと…ブフッ」
「おい、六…さっきの嘘だって言ったら投げるからな?」
「悠君にベター!」
うおっ!背中に大きなお山が!温かい!女子の包容力はこんなにあるのか…
「来栖君、顔がにやけてるよ…」
「はっ!いや、待て千駿違うんだ、これは…」
「悠君のスケベ~。でも、いつでも…いいよ?」
「何気に変態扱いしつつそっち方面で誘ってるんじゃねぇよ。お前に言われても何も思わねぇよ」
と言ったものの非常に危なかった。正直、今のセリフを千駿や城石先輩に言われてたら俺は確実にオチていただろう。
南條先輩では有り得んが。
俺は入学前に神を恨んだ以来、人生二回目の恨みをここでぶつける事にした。
何故、千駿がしてくれなかったのかと。
そんなこんなで他愛もない話をしてるうちに家に着き六を届けた後に別れを告げようと思ってた矢先に六のおんぶおんぶ事件以来思いつめてた顔で考え事をしていた千駿から声をかけられた。
「く、来栖君っ」
「ん?何だ千駿?」
「来栖君ってもう文芸部兼生徒会に入ったんだよね?」
「まぁ、あそこが文芸部なのかは置いといてそういう事になったな」
「じゃあさ、アドレス交換しない?」
「あぁ、いいよ」
「へへっ、これでいつでも来栖君と連絡が出来るね」
「そうだな、いつでもメールしてこいよ」
「うん、本当にいつでもメールするからね?」
「あぁ、起きてたら必ず反応するよ」
「うん!じゃあまた明日ね~」
「じゃあな。あ、そうだ明日はどこに集合にする?」
「来栖君の家に行くよ」
「分かった。それじゃあな」
「うん、今度こそバイバイ」
家に入って玄関で靴を脱ぎ俺は自分の布団へと急行していった。そして布団へと顔を埋めて叫んだ。
「うぉっしゃぁぁぁぁぁ!千駿のメアドゲット出来た!クラス一の美人とか囁かれてる千駿だぞ!?もうこれで勝ったも同然だ!」
と、間もなくすると千駿からメールが届いた。
『千駿です。届いてるかな?今日は楽しかったです。明日は遅れないようにね? 乃音より』
『来栖だす。メールきちんと届いたよ。こっちも楽しかったよ。明日からもよろしく。YUKI』
どうだ!クラスの野郎共!俺は一足先にランクアップさせてもらおう!
そんな感じに俺は千駿とメール出来た嬉しさと優越感に浸りながら暇を持て余していると間もなく返信が来た。
『来栖君、あわてんぼさんなんだね笑 乃音』
ん?あわてんぼ?
どういうことか分からない俺は自分のメールを見返した。
あ…
………
……………
や・ら・か・し・た!
何だよ!来栖だすって何なんだよ!
もうダメだ…お終いだぁ…
恥ずかしすぎる…
ここで俺はこう返すことにした。
『いや、「来栖だよ」と「来栖です」混じっちゃったんだよ!! YUKI』
苦し紛れだが筋は通ってるはず。
しかし混じっちゃったって打ち間違いにしては見苦しいな…
送信するとすぐに返信が来た。
『来栖君にも可愛いところがあるんだね笑 乃音』
か、可愛い!?
正直嬉しいのだが一体それはどういう感情で言ってくれたのかわならないので勘違いだけはしてはいけない。
この後は千駿が俺のことを可愛いなどと言ってくれたことにニヤニヤしながら俺は部屋で千駿と文通を交わして一夜を過ごした。
学校に一緒に行く約束をした後、私は考え事をしていた。
正直なことを言うと私は来栖君のことは小学校の時から知っていた。
来栖君がそのことを覚えてないのは少し残念だけれど今一緒にいられると思うととても嬉しい。
嬉しいけど…
「悠君にベター!」
卯月先輩という強敵が出現した。
出現したというよりかは元からいたのかもしれないけど私は知らなかった。
何せ小学校の後半部分のほんの少しを来栖君と過ごしただけで、三年間クラスが一緒だったけど喋り始めたのは、私がイジめられてたのを来栖君が助けてくれた時ぐらいからだから、実質一年も話していないので覚えてもらえてないのも当然だ。
でも、私にとっては憧れで好きな人だった。
というか今も好きだ。
なんだかんだ言って中学校の時もカッコイイ男の子とかいたのだけれどそんなの比にならないくらい私の中では来栖悠貴という少年はかっこよかった。
それでも卯月先輩は雰囲気は違っても城石先輩に並ぶぐらいの美少女でそれは女の子の私から見ても卯月先輩はとても可愛らしい。
正直な話、そんな卯月先輩に勝てる気がしない。
これからどうしようかなぁ…
私もあんな事してみようかな…
考えるだけで頭がとろけちゃう…
そんなことを考えていると卯月先輩の家の前についてしまったのでメールアドレスを交換してもらうように話しかけよう。
「く、来栖君っ」
噛んじゃった!
なんか意識してるようで嫌だな~
平常心、平常心、平常心…
そんなこんなで私は来栖君とメールアドレスが交換出来たのですがませてる子だと思われたかな?
とりあえず普通のメールでも送っておこう。
どうしよう、今思ったらあの文面は初めての人に送るのはおかしいんじゃないかな?
心配だなぁ…
あ、返信が来た。
来栖君からの返信には『来栖だす』から始まる文面が!
私は今まで変に緊張してた自分がばからしくなった。
その夜は私はニヤニヤしながら画面の向こうの来栖君と話をしていた。
明日はきちんと起きてサプライズでもしてみよう。と言っても、何をすればいいのかな?
おはようのモーニングコール?
朝食作りに行ったり、目覚めのキスをするとか…わぁあぁぁぁわぁぁ!
考えるだけで頭が沸騰しそだよ~!
とりあえず私はモーニングコールをする事にした。
そして次の日のきちんと朝早く起きれた私は来栖家のインターホンを勢いよくでもちょっぴり恥じらってみて鳴らした。
ん?なんかインターホンが鳴ってるな…
こんな朝から誰だろう…
俺は布団から出るとそのままドアを開けに向かった。
「どなた様でしょうか?」
「千駿です~」
「ち、ち、ち、ちちちち千駿!?」
「そんなに驚かなくても…迷惑だった?」
上目遣いでそんな事を言わないでいただけると嬉しいです。すっごいドキドキするから!
「いや、全然!むしろ歓迎するぜ!」
「ふふ、なら良かった、モーニングコールしに来たんだよ」
「そういうことか。てっきり時間を過ぎたのかと焦ったぜ」
「フフッ、そんなことはないから大丈夫」
「来栖君って一人暮らしなの?」
「母親はもうこの世にはいなくて、親父は海外、今年から大学生の女は東京に行ったよ」
「なんかゴメンね… それでも大学生の女という言い方はちょっとどうかと… それでその女の人はお姉さんなんだよね?」
「まぁ、そうだな。俺はあれを姉と思いたくないがな」
そんな話をしながら千駿を家に上げた俺だが…
千駿が家に来て二人きりだなんて…
これ夢じゃないの?
そんな現実逃避もいいとこに千駿が朝食作りを進言してくれたのでありがたく頂戴することにしたのだが…
「ホテルの朝食か?」
「大袈裟だよ~私なんてまだまだだよ」
「いや、これは凄いぞ」
もの凄い朝食が出てきた。
サラダには新鮮な野菜が乗ってたしエッグベネディクトも出てきた。
家にそんな材料あったか?
そんな事はともかく千駿のエプロン姿も拝めたし有り難く頂こう。
「千駿は将来調理師とか栄養士になりたいのか?」
「私の夢は今好きな人のお嫁さんになって幸せな家庭を気づくことなんだよ!」
なんと!?千駿に好きな人がいるのか!
そんなショック受けている俺となぜかスッキリした顔のテンションが俺とは正反対の千駿が机に座っているという凄くシュールな朝方の光景の後、登校したのだがもちろん教室に一緒に着いたわけで教室にて少数の女子から噂をされるわ、野郎共に拷問されるわで、朝から疲れた少年の姿がそこにはあった。
3話です!!
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