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元悪役令嬢で現戦闘狂

元悪役令嬢は現戦闘狂(魔王)

作者: 黒月

私、エリザード・フライフェンは侯爵家の令嬢だった。

過去形なのは、皇子に浮気をされて家から勘当されたのだ。

正確には、成人になる前の婚約者だったわけども、王族に継ぐ権力をもつフライフェン家の長女との婚約は確定したものと噂されていたらしい。

私自体に皇子への期待とかなかったけど。

一人称が"僕"じゃあ王としても崇められなそうだったし、ちょうど良かったのかな?

初の一人称"俺"が、場を弁えない婚約破棄だったのには結構残念だったけど、あんな皇子を国王に据える雰囲気の上流貴族を見て思った。

これ、あの女の手が回ってるなと。

その女は、兵士養成学校の平民枠で編入してきた。

成績は平民にしては高過ぎる上の下。

民の内の学力が低いことは他の国も同じような状況なので外交の度にその話題が上るほど深刻な問題な上に、養成学校の勉学は簡単とはとても言えない。

にもかかわらず、あの女は上の下の成績を獲得した。

これだけでも十分に異常なのだが、加えて魔法の熟練度も並みの魔獣なら近づかせずに倒せるし、中型魔獣も武器さえあれば余力を残して倒してくる。

そんなのが平民な訳がない。

大方、どこかの貴族の隠し子なのだろう。

そんなゴリラみたいな(は流石に失礼だろうが)女なのに皇子の前の態度はまさしく乙女(笑)!

普段気を張っている彼女の気弱な一面に皇子は陥落!

あっという間に懐柔された上に、宰相や上流貴族のお歴々も娘・息子を通して彼女に取り込まれている。

お歴々の心の内は分からないけれど、どちらにせよ皇子の婚約者の座が私から彼女、マリヤ・スウィールに移ったことが重要なのだ。

どうやらスウィールさんは、私の知らぬ間に私の両親と会合していたらしく、平民で親はいないが皇子の婚約者有力候補の彼女がマリヤ・スウィール・フライフェンになるのに時間はかからなかった。

というか、私を勘当して彼女がフライフェン家の長女になった。




なので、今の私はエリザード・フライフェンではなくアリサと名乗っている。

幸いにして、兵士養成学校にいた頃から影で"魔力バカ"と罵られる位には強かったため、蝶よ花よと愛でられた私みたいな令嬢でも、強姦魔を撃退し、山賊を懲らしめ、魔獣を退け、なんとか森のなかでも生きていけたのだ。

そんな生活を続けていたら、私の自慢である輝く金の髪も水を弾く繊細な絹のような肌もボロボロになるかと思ってた。

なのになぜか金の髪はより煌めき、絹のような肌は繊細さを保ったままより強靭になっていった。

それに気付けたのは、山の中の生活でようやく人間っぽく生活出来るようになった捨てられてから大体3ヶ月ごろのことだった。

確か、ようやく木材で山頂に家を完成させて他の魔獣やらに縄張りだと主張出来るようになってからだったはず。

やけに体の調子が良いわね?と不思議がってたら、半透明の妖魔の美女が現れたのだ。

半透明なのに存在感を放ち妖しく艶やく新月の夜の黒髪。

黒の双眼はいつまでも変わらぬ意思を宿すのだろう。

その髪と目を際立たせるのは大理石のような白さをもちながらも血の気を通わす肌の色。

腰から生える双翼は空中に影を落としたよう。

その妖魔は、まさしく夜の体現だった。


「こんな所に同胞がくるとは思わなかったわね。」

「?、どうみても貴女は妖魔だけど、私は人間よ?」


この山で命のやり取りを続けていたせいで、大抵のことには驚かなくなってしまったと改めて実感した日でもある。

少し自嘲しながら妖魔の話に耳を傾ける。


「隔世遺伝というやつよ。」

「かくせい?何が覚醒するの?」

「…………ここまで進んでないの?

やはり学問の分野にも手を加えるべきだった?」


ー妖魔説明中ー


この妖魔、実は女神様だったらしい。

羽の形とか妖魔なのに神様らしい。

なんでも、今いる人間の創成者で、夜の女神らしい。

人間を作ったのは太陽神と一緒に作って、いつかの勇者に惚れて子供残したらしい。で、その子孫が今の王族だと。


「でも王族には月の象徴である銀髪が多いわよ?

貴方の子供だというのなら黒髪じゃないのかしら。」

「妖魔は基本的に女子でなければ遺伝しない。

男子は妖魔百人の中で一人か二人、しかも妖魔同士の子でなければ生まれてこない。だから、王族の中には妖魔の遺伝は僅かしかないのだけれど、その遺伝が妖魔に強く出たのが貴女なのよ。」

「それだったら私の髪が黒くない理由にならないわ。」

「私達妖魔は基本的に夢の存在。

貴方の夢の方は黒髪なの。」


そういえば夢に出てくる私は黒髪のような?


「ならどうして私は半透明じゃないの?」

「妖魔は夢だから現実に影響を及ぼそうとするのなら魔力を使う必要があるの。

だから、折角の現実の体を捨てるわけ無いじゃない。

適応進化というか適応選択ね。

基本的にハーフの妖魔は現実に肉体を持って魔術に秀でることが多いの。

当然よね。不必要な魔力を使わなくてすむのだから。」

「ならどうして私の髪は金髪なの?

その遺伝説が正しいのなら王族の銀髪になるのでは?」

「貴女の妖魔の部分が現実の肉体の遺伝子から優良なのを全部覚醒させちゃったのよ。」

「?、妖魔はそんなこともできるんですか?」

「魔力が出来るのよ。」


魔力って一体なんなんでしょうね?

普段さりげなく使ってるから気にもしなかったわ。


「貴女がここ最近で強くなったのは私の近くにいたからよ。」

「神様の近くにいればそうなりますか。」


有りがたいですね。実はこの森、熟練の冒険者でも死者がでる所でして、今は山頂すら庭のように歩いている私ですが、魔法が使えなければせいぜい中腹程度が限界ですもの。

この神様がいたお陰で種族恩恵を受けられたのですね。


「それで?貴女はこれから何をするのかしら?」

「どうしましょうか?」

「どうしましょうかって、恨んでないの?」

「恨む?スウィールさんのことですか?

いえ、むしろ感謝してますよ、彼女には。

あの皇子、外では気弱でも家では横柄で乱暴な外面皇子(ひ弱)でしたから。更に言えば、頼れる女性には依存する最低系男子でしたので、いくら皇子とはいえ婚約するのも嫌でしたよ。」


自分が皇子である自負があるから強く出られる相手には結構ひどかったですよ?

まぁ、私ごときにも強く出られないのでそんな場面は私の侍女と共謀して発覚したんですけどね。

立場が低くて学がなく、自分が言っていることを深く考えもせずに聞いて反応を返す人間がお好きなようでしたよ?

しかも、皇子である自負があるといっても所詮心の拠り所程度の吹けば飛び、触れば砕けるもので、その影でなんらかの努力を積んでいるかと思いきや、母国語しか話せず、魔法も辛いからと諦め、剣術は半人前の実力をひけらかす。

見かねて注意しても他で当たり散らすので意味がない。

そんなのの婚約者(=責任者)に任命されてしまった上に王妃確定の話が持ち上がった日にはマジメに洗脳魔法を使おうかと思いましたよ。

なので、無事に後釜……………………ゴホン、新しい婚約者が見つかったので安心しています。



「強いて言うなら、もう少し強い魔物と戦いたいですね。」



「え?」



◆◇◆◇◆◇◆



あれから数年たった。

いつの間にか私は国家犯罪者にされていた。

名前が変わっていても見た目は誤魔化せなかったわ。

でも今はそんなことはどうでもいいの。



私は今、戦場に立っている。

戦場と言っても私と彼女しか居ない荒野ではあるけれど。




あぁ、愉しい。

敵の血気が盛り、それに伴って辺りに広がる人知を越えたとしか察することしか出来ない殺気。

お互いに魔力は荒れ狂い、外界へ矢鱈滅多に異変をもたらす。


片や、辺りを滅する灰塵の炎。

片や、周囲に闇を与える冥界の光。


相対する者を焼き尽くそうとする灰塵に闇を与えて無に帰す光。

闇を与えようと迸る光を焼き払う炎。

それらを放っている二つの者は、異形であった。

周囲に焔を纏わせて闇を払う異形には白翼があった。

彼女は、度重なる試練の内に、身に秘める魂を解放していき、遂には"神炎"の足元に及ぶ力を手に入れていた。

その力を得た過程で身に付けた技で持って、今私の前に立っている。



対する私には、闇が宿っていた。

闇の体言と見間違えた女神には及ばないが、私にも影の双翼が生え、髪は太陽神の黄金と闇の女神の暗黒が混じった目に優しくない配色だが、どちらの色も私のお気に入りだ。



「あははっ!スウィールさん、私、愉しいわ!

貴方の婚約者は話にもならなかったけれど、貴女は本当に素晴らしいわ!」

「五月蝿いわよ!なんで貴女はそんなんになっちゃったのよ!!」

「ウフフ、そんな言い方は酷いですわ。

太陽神の血を引いているので戦場に立てば興奮しますわ。

闇の女神の血を引いているので興奮は情欲に変わりますの。

ですから、私のせいではないですわよ?」

「一人で魔獣を率いて、人間界と魔人界に喧嘩を売るのは関係無いでしょ!!」


あら、それまで私のせいですの?

私はただ、強い人間と戦うの飽きを感じたので、強い魔獣を求めて

世界を渡り歩いただけですのに。


「酷いですわ…………、私はただ満足がしたかっただけですのに」

「お前個人の満足の為に世界を巻き込むな!!!」


外野が煩いですわね。


「でしたら貴方の婚約者くださいませんか?

未だに第一皇子なそこの人。

貴方にこの人は勿体無さ過ぎですわ。」

「僕をぐ、愚弄するのか!?」


数年といっても、学生が青年になる位の月日は経っていますよ?

それなのに、まだ国を引き継ぐ経験が足りないと怯えて、彼女を連れ回して家出生活。

あの国に、他に皇子が居ないのをいいことにやりたい放題。

愚弄するな、という方が無理ですわ。



「貴女も大変ですわね、スウィールさん」

「労ってくれるのならもう少し反撃の余地を残しなさいよ!」

「あら素直なのは可愛くてよろしいですが、足元がお留守ですわ」


私に届きうる剣と私の前に立てる精神に、私と肩を並べそうな技巧があれど、お荷物を抱えていてはこうなるのも当然ですわ。

だから、私が師事して、試練に全魔獣と戦わせて、そうして熟練した彼女と生涯闘っていたいという私の願いは未だに叶いません。


けれど、こうして魔王として君臨するだけで彼女が私の家に遊びに来てくれるので毎日が愉しいですわ。




ですが、第一皇子が邪魔になってきましたね。

このまま彼女がアレに縛られるのは見ていられませんので、

そろそろ魔王として一つ国を潰しにいこうかしら。


どうも初めて黒月です。

何か書きたくなったので投稿しました。


取りあえず、逃げて!皇子超逃げて!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最後の方、悪役令嬢がヒロインを鍛えた(?)んですよね? “私が師事して”だと真逆の意味、ヒロインに悪役令嬢が教えを受けた事になってしまいます。
[良い点] 皇子さんあんたダメダメだー後釜さんあんたもダメだー [気になる点] 見つからんなあ [一言] 大魔王からは逃げられない!!いいぞもっとやれ
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