睦月の過去
「私の弟はね。昔から体が弱くて、周りの子ども達に、いじめられていたの。でもね。時雨と出会う一ヶ月くらい前に病気で死んだの。弟が死んだ後私は生きている自分が許せなかった。私はいじめられている、弟を救えなかった。私みたいな、価値のない人間が生きるくらいなら、私の弟を生かしてくれって。どうしようもない事を毎日毎日願ってた。
だから、あの日時雨を見た日、驚いた。弟とすごくそっくりだったから。だから、いじめられているのを見ていられなかったの。」彼女は泣きながらそう言った。
それで、僕を助けてくれたのか。
そして、僕と遊んでくれたのか。
そして、約束してくれた。
「また、遊ぼう。」
僕は…
睦月の過去に比べたらどうってことない。
僕は普通に、家族と幸せに暮らせていた。
睦月はずっと一人で苦しんでいた。
僕は涙が止まらなかった。
そんな僕を見てか、笑いながら睦月は話を続けた。
「結局、私も交通事故で死んでしまったけど。ずっと死んでからも睦月のことが気になってた。弟によく似た時雨のことが。いじめられてないかな?怪我してないかな?泣いてないかな?って、ずっと気になってたんだ。」
「僕は睦月の子どもかっての。」
僕は笑いながら睦月にツッコミをいれた。
睦月のおかけで、さっきまでの死という重みはもう無かった。
睦月は、僕を何度も助けてくれた。
ありがとう、睦月。