過去
「なぁ、睦月。僕達は何処で出会ったんだ?僕、覚えてないんだ。」僕は彼女に聞いた。
「覚えてないの?」彼女は僕に言った。
「うん。」僕は素直に答えた。
彼女は「そっか…」というなり、黙り込んでしまった。
そこからしばらく僕は眠った。
夢を見ている…?
あれ…これはたしか僕が幼稚園の頃の事だ。
「遊ぼうーよ。ねぇ。ねぇってば!」
「うるせーどっかいけ!このチビ。」
小さい少年は同じ年頃の少年に突き飛ばされた。
あれは…昔の僕だ。
昔、背の小さかった僕は周りの子ども達にいじめられていた。
あぁ…確か少し足を擦りむいたんだっけ?
あぁ。もう。
このくらいの怪我で泣くなよ僕。
幼い自分に向かって僕は呟いた。
すると、どうやら近くでその少年の様子を見ていたらく、一人の少女が幼い僕近寄って行った。
「ねぇ…大丈夫?」彼女は幼い僕に言った。
僕は必死にその出会ったはずの少女の顔を思い出そうとした。
しかし、思い出せなかった。
仕方なく僕はまた様子を見る事にした。
「君、名前はなんて言うの?」彼女は幼い僕にそう言った。
「時雨」僕は呟くように言った。
「綺麗な名前だね。私は睦月。時雨、一緒に遊ぼっか!」
「うん…。遊んでくれるの?」
「もちろん!」
…あぁ。そういう事か。
睦月は、昔いじめられて怪我をしていた僕を助けてくれた人だったんだ。
僕はその事をようやく思い出した。
でも、どうして…忘れていたのだろう?