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第参編
第参編
おまえが跳んだ日
子猫用の餌は、シーチキンのにおいがした。
そして、おまえは餌皿に、
からだをつっこむようにして、一生懸命ごはんを食べた。
だから、おまえもシーチキンのにおいがした。
食べて、寝て、うんちをして、おしっこをして、
目薬をさされるときには、かぼそい手足で抵抗して、
食べて、寝て、うんちをして、おしっこをして、
目薬をさされるときには、かぼそい手足で抵抗して、
そうして、おまえは元気になった。
まばらだった毛が揃い、背丈が伸び、手足も伸びて太くなり――
寝床にしていた段ボール箱から、
自力で跳びだした日の、おまえの健やかさよ!
窓からは、夏の陽差す廊下で、
おまえはわたしに『にゃあ』と鳴いた。