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第2話 2 修行、ハンティング

 車を飛ばすこと2時間半、目的地の入口に到着していた。

 ちなみに愛車はパーキングに停めたままだ。

 ちなみに2人とも黒スーツ。怪しいことこの上ない。

「で、師匠。入口らしい入口が見えないんだけど」

「目的地は森だって言っただろ?お前の眼下には何が広がってるよ?」

「森。いや、そういうことじゃなくてもしかしてここから……」

「そう、降りる。間違えれば落ちる。流石に超越者でも死ぬかもしれないから慎重にな」 森に入る正規のルートもあるのだがそんな時間のかかるものは使わない。

 この山地の管理人でもある姉さんにはここから入るとあらかじめ言ってある。

 ちなみに1日10万の手当が付くようにもお願いした。

 こういった森、霊地と呼ばれるところは際限なく怪異が増えるので定期的に駆除しなければならないのだ。それをやるという名目で手当がつく。

「心の準備は終わったか?んじゃさっさと行くぞ」

 崖を滑り落ちていく。背中にはアホじゃないかという量の荷物。バランスを取るのは難しいがやってやれないことはない。

 ただひたすらにバランスを取ることに集中して20分少々で下まで着いた。

 言ってみればこんなものは慣れである。

「師匠ー!どいてどいてー!」

 珍しく慌てた声の真知だが俺の真上に落ちてくるようだ。

 下肢に力を入れ受け止める準備をする。

「あーそのまま落ちてこい」

 あそこから降りようとしただけ肝が座っている。

 怪我されてもなんなので受け止める。

「ひゃあ!」

 車がぶつかってきたかのような衝撃。

 下半身をクッションにして完璧に力を逃がす。

「ふぅ。大丈夫か」

 俺は真知の胸に顔をうずめながら聞いた。

「平気、でも死ぬかと思った。ついでにどこに顔うずめてんのよ」

「このぐらいの約得があっても許されると俺の神は囁いた」

 ジト目で俺を見ながら身体のチェックをする真知。

 この程度なら特に問題はない。

「さて、あそこに山が見えるだろう?」

「あー小さい山が見えるね」

「目的地はあそこの手前。そんなに距離ないから歩いていこうか」

「距離あったら走っていくつもりだったのね……」

 人の手が入っていない森は走るのに適さない。当たり前だが。それでも走れる身体能力があるということを忘れているんじゃないだろうか。

 バッグから飲料水を取り出し飲みながら真知に話しかける。

「この修行の目的は2つ、1つは戦闘経験を積む。ここにいる怪異を一定数駆除するんだ」

「その前に質問」

「ん?」

「怪異ってそもそも何なの?」

 説明してなかったっけ?

 初歩中の初歩から教え忘れるとか素晴らしい師匠だな。

「ゴーストやグールといったアンデッド系、妖鳥、幻獣といった魔獣系、妖鬼、邪鬼といった鬼系、妖魔などの悪魔系に分類される科学的に説明できない生物のことを言う。神話なんかに出てくるようなやつもいるからもしかしたら神系なんてのもいるかもしれないな。」

 他にも分類あったような気がするがまぁこんなもんだろう。

「なんで科学的に説明できないの?」

「答えは単純、殺せば塵も残さず消えるから。捕縛しても自殺に近い形で勝手に消滅するから研究のしようがない。」

 刀に脂が残ったりしないのがいいところだ。

 そういう問題じゃないのはわかっているんだが。

「ふーん、一定数駆除しろって言ったよね?何匹?」

「とりあえず100体ぐらいやってみようか。ついでに言っておくけどこれ仕事だかんな」

 霊地の定期駆除、日当10万円なり。

「仕事ってことは師匠と一緒にやるの?」

「一緒にではないな。俺は俺でやることあるからそっちは任せることになる。近くにはいるから危なくなったら全力で逃げてこい」

 俺修行したいんだよね。

「もうすぐ着く場所にテント張るからそこをベースにしよう」

 まだ正午にもなっていない、十分に時間はある。

「私はどっちいけばいい?」

「北、というかこの方向に穴が空いてるからその付近でやればいい」

「穴?」

「害獣の世界とこっちを繋ぐ穴、まぁそんな単純なものじゃないんだが」

 霊地では自然に空いた穴が数多く存在する。定期的にこちらも潰されているらしいが。 術師が空ける穴よりも大規模なものが多いらしく富士には日本最大の穴があるとか。

「ここらへんにテント張るから昼食摂ったらいってこいよ」

「わかった。調理はしないだろうと思って長持ちするパン買ってきて正解だったかも」

 正解すぎる。

 ちなみに俺は某ツテで手に入れた戦闘糧食なるものを持ってきている。

「結界も張るから壊すなよ」

「師匠そんなことできるんだ」

 弟子が疑いの眼差しで俺を見ている。

 ここは普通尊敬の眼差しじゃないだろうか。

「道具さえあれば誰でもできるようなものだよ。魔除け程度な」

 たいしたものじゃないので威張れない。

 パンを食べ終えた真知がマチェットを抜刀する。

「それじゃ行ってくる。何か注意することってある?」

「魔獣は速度が速い、妖魔は魔法みたいなものを使ってくる。グールが群生してたら気をつけろ、大物がいる可能性がある」

 ここら辺はそれほど危険地帯でもないので簡単に説明する。

 ちょくちょく様子見に行くとするか。

「わかった、んじゃまたあとでね」

 森の中に消えていく真知。

 さっさとテントと結界張って俺も修行しよう。


 テントと結界張り終わって軽く準備運動を済まし刀を構える。

 想像するのは全てを斬り裂く一閃。

 上段から太い木の幹へと刀を振り下ろす。

 浅い。

 また想像を練り直し刀を構える。

 俺が修得したいのは斬鉄。

 単純に鉄が斬れるようになりたいのだ。

 筋力は足りているはずなので後は心構えと刀の振り方だ。

 100回ほど振り終わったところで一息つく。

 真知は上手くやっているだろうか、そろそろ様子を見にいこう。

 気配を殺し真知が向かった先へ歩を進める。

 300mも進んだところで何かがぶつかるような音が聞こえてきた。

 真知がみたところ鬼系の怪異と戦っているようだ。

 鬼は言うまでもなく力が強く速度も人間以上だ。

 真知もそれを心得ているのかヒットアンドアウェイを繰り返す。

 鬼が大振りで仕留めにきたところを身体を捻ってかわし首にマチェットを打ち込む。

 切断まではいかなかったが相当なダメージだったようで片膝をつく。

 そこにすかさず脳天へマチェットを振り下ろす。

 ざっくりと食い込むマチェット、程なくして鬼は消滅した。

「よう。調子よさそうじゃないか」

「色々と自分の短所長所がみてきたところよ」

 鬼を斬れてご機嫌なのか微笑みながら言う真知。

「まだ20匹ぐらいだから課題達成はまだまだだけどコツは掴んだ気がする」

 超越者と言っても長所短所は存在する。

 それを把握しておくのは今後のためにもなる。

 膨大な戦闘経験は武器にもなるだろう。

「その調子ならあんまり見に来なくても大丈夫そうだな」

「始めの頃は危なかったけどね」

 ジト目で睨みつけられる。

 可愛い子は崖から突き落とせって言うじゃん。

「まぁそこまで危険だとは思ってなかったからな」

「師匠のほうはどうなの?」

「いまいち、でもまぁ掴みみたいなものはあった」

 叩き切るのではなく純粋に斬る。

 このイメージが足りなかったのだろう。

「師匠、こっちにまた鬼がきてる」

「ちょっと試しに1体やらせて」

 溜めが発生するが実戦で使えるのかどうか。

 鬼がこちらを視認し突撃してくる。

 右手の鉤爪で斬り裂くつもりなのか右手を振り上げている。

 こちらは上段で構え機を窺う。

 鬼の右手が振り下ろされるが半歩身体をずらしかわす。

 その瞬間上段から引きながら斬る感じで刀を振り下ろす。

 イメージ通り鬼の上半身が袈裟懸けに真っ二つになっている。

「すご」

 真知が驚いているようだ。

 だがまだもっと硬いものでも斬れるようにしておきたい。

 あと溜め時間を減らさないと……

「課題は山積みって程じゃないけどまだまだだなぁ」

「今のでまだまだって贅沢」

 駆除士はいくら強くてもいいんだよ。

「駆除士は仕事がこなせてなんぼだからな。修行に終わりなんてないさ」

「何が出てくるかわからないからってこと?」

 さっき話した神系のことでも思い出しているのだろう。

「駆除士の仕事はシビアだがシンプルだ。狩れと言われたモノを狩る。そこには理屈も理念も必要ない。狩れない奴は無能だっていうだけの話だ。」

「なんでも狩れる必要があるってことね」

「さっきのは師匠の受け売りだけど真理だと思うんだよな。ま、せいぜい腕を磨くさ」

 来た道を引き返そうとする。

 さっきの大木がいい練習相手になりそうだ。

「あ、真知。何時までやっててもいいけど寝るなら結界内で寝たほうがいいぞ」

「わかってるっての」

 最近真知の口がますます悪くなってる気がする。

 タバコをくわえ火を点ける。

 真知は駆除士に向いている。

 初見で鬼相手にノーダメージで勝てるとか俺には無理だった。

 もしかしたら特殊能力、異能もあるんじゃないかと思わせるには十分な才能だった。 

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