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第2話 1 買い物、仕事はスーツ

「真知、ゴールデンウィークの予定はどうなってる?」

 真知に聞いてみる。

 部活もやってないし予定はないだろう。

「何も、旅行でもいくの?」

「ちょっと時期早いけどキャンプだな」

 北海道のこの時期はまだ雪が残っているところもある。

 冗談と取られかねない。

「って言っても中身は修行だけどな。超越者の力、まだ何もわからないだろ?」

 納得したように真知が頷く。

 超越者になったと言っても使いこなせなければ一般人と変わらない。

「キャンプって言ったよね?山篭りでもするの?」

「勘がいいな。予定としては石狩山地に1週間程入る」

 キャンプの経験すら怪しいが避けては通れない道だ。

「出発は?」

「ゴールデンウィーク入り次第すぐに」

 真知が学生じゃなきゃ今すぐ行くんだが。

 とりあえず最低限の装備さえあればなんとかなる。

「食料とかは自分で用意しろよ。予備は持って行くけどあまり当てにされても困る」

 それなりにシビアなものだ。

 大きなバッグも必要になる。

「修行で山篭りって珍しいことじゃないからここらで一式揃えておくのもいいんじゃないか」

「後で必要なものリストにしてもらえる?」

「わかった、明日はバイト休みにするから買い物行ってこい」

 食料は自由に買わせよう。

 修行か、まさか弟子を連れて行く日がくることになるとは。

「家で騒がれても困るからバイトの研修旅行ってことでいい?」

 相変わらず頭が回る。

「それで頼む。面倒は少ないほうがいい」

 また親父さん来てもなんだし。

「ゴールデンウィークは明後日からだから明日の夜出発?」

「いや、森の中を少し歩かなきゃならないから明後日の早朝出発」

 夜通し歩くのは面倒だ。できないことはないが。

「んじゃ今日は普通に仕事でいいのね?」

「いや、今日は真知のスーツ作りにいく」

 俺が毎度着ているのと同じ性能のやつだ。耐刃防弾服。

 仕事なのだからスーツでいいだろう。

「すぐできるものなの?」

「身長と性別だけ伝えてあるから早くできると思うけどな」

 実際のところは予想のスリーサイズも言ってある。

「ふーん、じゃあいきましょ」


「このビル入ったことないかも」

「あー駆除士しか入らないような気もするなぁ。一応ミリタリーショップとかもあるんだけど。」

 中身は武器屋だが。後でびっくりしてもらおう。

 目指すは4階の紳士服売り場。

「すいません蓮見と申しますがオーダーメイドの件で電話してあるんですけど」

 話はすぐに通じた。

 真知は連れていかれサイズ測られたりしていることだろう。

 グローブも必要だな。

 耐火炎の破れないやつをチョイス。

「師匠、サイズ直すのに30分かかるって」

 試着室から出てきた真知が言う。

「んじゃ武器屋でも見に行くか」

「武器屋!」

 半端じゃなく目が輝いている。


 エレベーターで5階へ。

「ここ普通のミリタリーショップじゃない?」

「中身はRPGに出てくるような武器屋なんだよ」

 言って中に入る。

 相変わらず客がいない。

「蓮見さんいらっしゃい。例のアレならまだあがってないよ」

 おっちゃんは元気そうだ。

「アレはまだいいんだ。真知、希望の武器あったらおっちゃんに言えよ」

「蓮見さんの弟子かー。だったら長物かな」

 話が早くて助かるが俺まで猟奇的な人みたいじゃないか。

 おっちゃんは奥に引っ込むと刀やら剣やらと色々出してきた。

「真知、それぞれ振ってみて合ったのあったら言えよ」

「了解、ちょっと試してみる」

 晴れやかな笑顔で答える真知。今は至福の時なのだろう。

 全12振りの刀剣だが一目で俺の刀より優れたものはないと断言できる。

 まぁあれは異質だからなぁ。

「蓮見さん、例の剣順調らしいよ」

 ああ、あれか。

 あれが完成したら真知に持たせてもいいな。

「完成予定は変わらず?」

「早くはならないねぇ。遅くなることはあっても」

 そんなものか。

 真知は全部試したようだが気に入ったのはないようだ。

 刀剣に触れていて表情が冴えないというのはそういうことだろう。

「ダメ。師匠の刀並のがあればよかったんだけど」

「高望みし過ぎだ。あんな物騒なモノごろごろあってたまるか」

 ここにある刀剣でも姉さんに改造してもらえれば使えるものもあるかもしれない。

 だが出発まで間もないし今回は縁がなかったということだろう。

「蓮見さんの刀クラスかぁ。今まで生きてきてそんな名刀は3本見たかどうかだなぁ」

 素直なおっちゃん。

「ま、マチェットが使えないわけじゃないし気長に探すわ」

「すまんねおっちゃん。例の完成した頃にまた来るわ」

 と、手を振って外に出る。

 時間潰しにはなっただろう。

「とりあえず長物じゃなくてよかったのか?」

「多分だけど折っちゃうと思う」

 俺の刀は折れないからな。直感でそこらへんわかってるんだろう。

 

 紳士服売り場へ戻る。

「お待ちしておりました。園田様のスーツが出来ております」

 とりあえず試着室に入る真知。

 当たり前のような顔で続けて入ったらラッキースケベできないだろうか。

 BADENDになりそうなのでやめておくが。

「どう?スーツなんて初めて着るんだけど」

 勿論スカートではなくパンツスーツだ。

「思ったより似合うな。動きやすさはどうだ?」

 店内をぐるぐる回って確認する。

「ジャージ並に動きやすいんだけどこれ。なんか特別な素材なの?」

 耐刃防弾は当たり前で動きやすさも重視しているこの店オリジナル商品だ。

「何の素材かまではわからんがスーツ姿の駆除士はだいたい似たようなスーツ着てると思うぞ」

 耐火炎だの趣味でつける人もいるようだが。

 耐火炎で思い出したがグローブも買うんだった。

「真知、これ着けてみて」

 たぶんこのぐらいのサイズだろうという物を真知に渡す。

「手袋?サイズは丁度いいみたい」

 サイズさえあっていれば問題ないだろう。

「これも一緒に会計で」

「かしこまりました」

 不思議そうな顔でこちらを見る真知。

「ん?

「なんでグローブ?」

「武器が滑らなくていいんだよ。特に長時間戦闘するときとかないと困るレベルだぞ。」 昔とある鬼と戦って隠れてを12時間ぐらいやったときは本当にあってよかったと思ったものだ。忘れられない過去の1つだな。

「師匠がそう言うならなるべく着けてる」

 授業中は外せよ。

「んじゃ会計しちゃうけど着て帰る?」

「うん、そうする。なるべく早く慣れたいし」

 らしいのでそのまま会計に向かう。

 定期的にスーツは作っているので大体値段の予想がつく。62万、カードでお願いします。


 とりあえず帰って荷物のリスト(最低限)を作成し真知に渡す。

「こんなに必要なの……?」

「山なめんなよ」

 実際には森だがどうでもいい。

 俺とはぐれたら最悪死ぬかもしれないので出来る限り長く生き延びるように荷物をセッティングする。

 初めて山に放り込まれたときは師匠が開始1時間でいなくなって途方に暮れたものだ。 超越者の筋力フルに使ってなんとか運べる量の荷物に助けられた。

 師匠の模倣をしてはいるがそこだけは模倣できない。

「荷物揃えるのに今日と明日あれば間に合うだろ」

「ギリギリなんとかなりそうね……」

 俺は新規に買うのは食料ぐらいなものなのでなんともない。

「ってわけで今日と明日は準備期間。忘れ物ないようにな」

「わかった。明後日はここに何時に来たらいい?」

「7時、早くても構わないけどこれより遅いのはちょっと困る」

 運転が苦手なので目的地まで大分かかる。

 真知が免許とったら運転は全部任せよう。

「んじゃ今日はもう帰る。師匠、スーツありがとね」

「おう。洗うときはクリーニングに出せよ」

 こうして後は出発するだけとなった。

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