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第4話 4 病室、平穏

 当たり前のように入院した。

 縫合箇所なんて数えられても気分が悪くなるだけなのでやめてもらった。

 ここは協会の運営する病院でライセンスさえあれば銃創だろうが刀槍だろうが無条件で診てくれる。

 前回入院したのもここだ。

 ある意味専門のスタッフが揃っているので安心である。

 全治2ヶ月と診断された俺だが魔人の治癒力はすさまじく2週間経った今全ての傷は塞がりどんな行動にも問題なく対応できる。

 戦闘ができるかどうかはやってみないとわからないが。

 面会謝絶の札が貼られていたが今朝の診断で剥がされることとなった。

 看護師の話によると、

「毎日可愛い女の子が心配して来てたんですよ」

 だそうだ。

 心当たりは真知以外にない。真知じゃなければ止めを刺しに来たルルイエの刺客だろう。生きてるから真知で間違いないと思うが。

 病室にいても何も楽しいことがないので病院をうろつき回っているのが現在の状況だ。 ここで藤堂が入院してたら笑えるんだがそんなことも無さそうだ。

 自販機でココアを買う。

 休憩室には雑多な種類の雑誌やら漫画やらが置いてあるので退屈しない。

 面会謝絶の間も抜け出してここに来ていたのでもう大分読むものがなくなってきているが。

 その度に看護師に怒られ連れ戻されていたが。

 今日も適当に2時間程時間を潰したところで看護師がやってきた。

 面会謝絶じゃないんだからうろついてもいいだろ、と思ったが違うらしい。

「面会の方が来られてますよ」

 何故か嬉しそうに言う。

 まぁ真知だろうと思って病室に帰ると白崎がいた。

「やあ、元気そうだね」

 なんかがっかりした。

「普通にしてる分には問題ないよ。医者が大げさなだけだ」

 タバコを吸いたいが全面禁煙である。

 余談だが禁煙外来のある病院は全面禁煙にしなきゃならないとか。

 駆除士でも禁煙に悩んだりするのだろうか。

 一般の病人もいる病院だから的外れなことを考えているとは思うが。

「キミ、せっかく面会に来たのに思いっきり明後日なことを考えているだろう」

 変人に変人扱いされた。

「真知ちゃんから聞いたよ。藤堂とやりあったんだってね」

 真知も言わんでいい奴に言うから困る。

「ああ、殺せなかったし殺されなかった。痛み分けだな」

 むしろあいつの方が余裕があったような気がしないでもない。

 魔人化をもっと強力にしなければまた逃げられるのがオチだ。

 今回はあいつのサーベルが折れたお陰で痛み分けになったがもっと強力な装備で来られたら負けるかもしれない。

 そもそも真知がいなければサーベルを折るところまでいかなかった。

「あれを相手に痛み分けで済むなんて魔人の力は素晴らしいな」

 変な目つきで見られる。

 子供がおもちゃを欲しがっているような目だ。

「藤堂が言っていたが魔人を斬っても魔人になれるらしい。今なら藤堂もボロボロだ。探してみたらどうだ」

 止めを刺してくれると余計な仕事が減って助かる。

 去り際に約束は果たすと言っていたが悪魔の言葉にいちいち耳を傾けていられるか。

「それは本当か?」

「試したわけじゃないからなんとも言えんが魔人歴の長い藤堂の言うことだ信憑性は高いだろう」

 俺が藤堂を殺せれば魔人の力は俺に来る。魔人の力が強化されるってことだろう。

 そのつもりで俺を殺そうとしていたのだから間違いない。

「こんにちわ」

 気づけば真知が病室に入ってきていた。

 ノックぐらいしろよ、と思ったが俺が全開にしたままだった。

「よう、変わりないか?」

「事務所の話?お客はこない、変な勧誘はチャッピーが追い払う。いつも通りよ」

 それはなによりだ。

 協会の方への連絡は奥野さんがしてくれたらしく当たり前だが依頼の電話もない。

「コーヒー買ってきたけど飲む?」

 いつもの嫌がらせが始まった。

「俺はココアあるから白崎にやってくれ」

 白崎に渡されるブラックコーヒー。

「ありがとう。僕はバウムクーヘンの次にこれが好きなんだ」

 どのあたりなのかさっぱりわからない。

 缶コーヒーを力の限り振る白崎。

 もうこいつはほっとこう。

「怪我のほうはどうなの?昨日まで面会謝絶だったけど」

 やっぱり毎日来ていたのは真知か。

「ほぼ回復している、というか日常生活には支障がない」

 現状をありのまま伝える。

「戦闘は?魔人化はできるの?」

 何を心配しているのかわからないが答える。

「戦闘はやってみないとなんともな。通常の依頼なら問題なさそうだが。魔人化はしばらくしてなかったな。やってみるか」

 意識を集中し瘴気を全身から吹き出すイメージで魔人化を行う。

 身体が黒い霧のようなものに包まれる。

 視界が広がり見えないはずのものまで見える。

 全身に力が滾り身体が軽くなる。

「問題ないみたいだな」

「問題ないって血涙出てるけど……」

 言われるまで気づかなかった。

 今は負荷に耐えられないということだろう。

 魔人化を解く。

「まだ80%ってところか」

「藤堂に襲われたらどうするのよ……」

 考えてもいなかった。

「今のが魔人化か、改めて見るとやはり凄まじいな」

 白崎が妙に感動して言う。

「藤堂もボロボロにしてやったんだから五分五分だろ」

 余裕あったようだが俺の異能で傷つけられた箇所はぐしゃぐしゃになる。そう簡単に治らないはずだ。

「さて、元気そうな姿も見れたし僕は帰るとするよ。お大事に」

 なんとなく物憂げな表情で去っていく白崎。

 あいつのことを気にしていても仕方がないのはわかっているが勘にひっかかる。

「師匠、白崎さん……」

「変人なのは今に始まったことじゃない。あんまり気にするな」

「うん……」

 物分りのいい弟子だ。

「ところで約束の……」

「病室で何する気よ。変態」

 約束は守れよ。

「怪我が完全に治ってから事務所で!」

 顔が真っ赤だ。指摘したら殴られそうだから言わない。

 それにしても白崎か、妙なことにならなきゃいいが。

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