第4話 1 姉再び、回答
「あ、もしもし姉さん?聞きたいことがあるんだけど」
『暫く会っていないしたまには会って話をしましょう。長くなるんでしょう、うふふ」
どこまで見透かされているのかわからない。
予知を頻繁に使うことはないと聞いているがそれも怪しい。
蓮見千波矢は変人(天才)なのだから――
「どこで会う?落ち着ける喫茶店ぐらいなら知ってるけど」
『今日はそうね、外出したくない気分だわ。私の部屋にいらっしゃい。大丈夫3人ぐらいなら問題なく入れるわ』
3人? と聞き返す必要もない。
真知を連れてこいと言っているのだ。
何の用があるのか予想もつかないが連れていかない訳にもいかない。
真知が行くというかどうかは置いといて。
「わかった。何時ぐらいに行ったらいい?」
いつ行っても変わりはしないのだろうが姉の気分の良い時間に行きたい。
機嫌が悪いと会話にならないと姉に関わった人は皆そう言う。
俺は弟だからそこまでシビアじゃないが今回は真知同伴だ。
『そうねぇ。日が完全に暮れてからいらっしゃい。私もお茶の準備とコーヒーの準備をしなければならないわ』
真知の好みまですでに知っているということはやはり予知したのだろう。
誰かの未来をみるには相手に触れなければならないが自分の未来は別だという。
「わかった。20時過ぎた頃にお邪魔するよ」
『気をつけてね、刑。いくら貴方でも事故起こしたら怪我ぐらいするわよ』
当たり前のことを言う。
いちいち含みのある言い方だがこれは姉の癖だ。
多分生まれ変わっても変わらない。
そして通話を切る。
今真知は学校に行っている。
俺は武器屋にアレを取りにいかなければならない。
今日は仕事にならないかもしれないな。
車で武器屋に行く。
偽装用の筒も一緒に頼んであるから持ち歩きには心配ないのかもしれないが念のためだ。
俺の刀も持ち歩くときは黒い筒に入れている。
今回は敢えて白い筒にしてみた。使うことがあるのかわからないがまぁ気分だ。
程なくして武器屋に到着する。
相変わらず客はいない。
こんな物騒な店に客がわんさかいても困るだけだが。
「おや、蓮見さんいらっしゃい」
愛想はいいんだが売り物が物騒すぎるのが残念な店主だ。
「例のアレ、できてる?」
「リリィかい?勿論できてるとも。かなりの自信作らしくてね。何を斬っても刃こぼれ1つしないそうだ」
デュランダルの特性は付加できたらしい。
呪いはないと言っていたがそこまで強力なモノに反作用がないものなのだろうか。
これも姉に聞いたほうがよさそうだな。
「はい、これだよ。鞘は白いものにしたんだ」
「えー目立つでしょ。なんで白なのよ」
隠さなきゃならないものを目立つ配色にしてどうする。
「抜いてみてごらん。見れば納得するから」
言われるがまま抜刀する。
刀身が――白い。神々しさすら感じる白さだ。なるほど。
「納得したみたいだね」
「これは白鞘にしたくなる」
カトラスを改造したものとは思えないほど言葉は間違っているかもしれないが流麗だ。「で、いくら?」
現実は大事だ。
「120万」
やっぱり安いのか高いのかわからん。カードで支払い俺は店を出た。
ブルーミング・リリィは名前の通りの美しい剣になった。
「おかえり」
「ただいま」
味も素っ気もないやり取りだがこういうのは大事だと思う。
「今日の仕事は?」
ソファー(俺の隣)に腰を落としながら訊いてくる。
「今日はちょっと人に会いにいく。まぁ相手は俺の姉なんだが」
「私は店番でもしてればいいの?」
首を傾げながら訊く。
「いや、同行してもらいたい。俺の希望じゃなくて姉の希望なんだが」
「いいよ。師匠のお姉さんって想像もつかないし」
俺には似てない、よな。
「あ、マチェット持っていけよ。改造してくれるかもしれない」
「そんなことできるんだ。天才術師だっけ?」
「そう。天才」
それ意外の形容はいらないだろう。
「どこかで食事して真っ直ぐ向かおう」
食事を終えた時点で20時そこから姉の部屋に向う。
駐車場もないアパートなので近所の公園に停める。
俺は村正とリリィを担ぎ、真知はマチェットを持って部屋に向う。
相変わらず暗い廊下のさらに暗い部分、姉の部屋に到着しチャイムを鳴らす。
少し待ってドアが開く、真知は反射で足を差し込もうとする。
「あらあら、楽しいコのようね、うふふ」
紹介が一部省けた。
「こんばんわ、姉さん」
「こんばんは、初めまして園田真知です」
満足そうに頷くと
「蓮見千波矢です。さぁあがりなさい」
部屋に招かれた。
リビングはやはり3人入ると少し手狭だ。
「弟子の真知ちゃんね。その年齢にしては飛びぬけた才能があるわねぇ」
「はぁ比較対象が師匠なのでよくわかりません」
姉は何がおかしいのやら笑い続けている。
「武器は何を使っているのかしら?」
「これです」
マチェットを差し出す。
「ふーん、悪くはないけどこの先役不足になるわねぇ」
マチェットを真知に戻し言う。
「刑、リリィはできたのかしら?」
「できたよ。持ってきてある。はいこれ」
まじまじとリリィを視る姉。
「ちゃんとできてるわね、真知ちゃん、貴方これを使いなさい」
あーやっぱりそうくるか。
「いいんですか!?」
思わぬ大物に飛びつく真知。
「この剣は貴方が使うのが最善よ、うふふ」
「その剣、呪いはないって言ってたけど本当?」
疑問を口に出す。
「間違いなく所有者に害する呪いはないわ、心配なのはわかるけどお姉ちゃんを信用なさい」
真知はリリィにハマってこちらの声など聞こえないようだ。
「ならいいんだ。姉さんに聞きたいことがある」
「ちょっと見ない間に人間辞めちゃったことについてかしら、うふふ」
バレてたか。
「貴方は『人間』を失って『魔人』を手に入れたわ。予知は外れなかったようね」
「そういうことね。じゃあ魔人ってなんなの?」
少し首を傾げ考える。
「人間では勝てないから超人を、では超人でも勝てなかったら?」
「魔人はあくまで錬成されるっていうこと?」
「大昔の人間の考えることはわからないわね。魔人化の条件は私も知らないの」
少し申し訳なさそうに言う姉。
「貴方が魔人になった経緯は神を斬ったことね。でもこれが条件なのかは怪しいわ。何故なら完全の神なら斬れるハズがないもの」
「あれは不完全だったってことか。確かに儀式も危なげな感じがした。」
完全な神など召喚できるものなのかは知らないが。
「でも魔人の特性は知っているわ、『無効』と『異能』の2つよ。例えば、刃物では斬れない、というのが無効。炎を操る、というのが異能よ」
無効と異能、衝撃波が異能だとして無効はなんなのか。
「斬ってみたり叩いてみたりしたらいいじゃない」
無責任に言う真知。痛いのは俺だ。
「あとはそうねえ身体能力がさらに強化されるわ。それこそ神話の英雄のようにね」
「神話の化物を倒すための魔人化、つまりそういうことか」
藤堂も多分魔人だ。今なら失敗作の意味がわかる。
「お茶とコーヒー淹れるわ。ゆっくりしていなさい」
「師匠、これ本当に使っていいの?」
「姉さんが最善と言ったらそれが最善なんだよ」
ないとむしろ困るということだろう。
魔人については大体わかった。あとは魔人化の条件……




