表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cherry blossoms  作者: 無月藍
3/6

綾―後悔の後で―

「あ…。春巳君…ごめんなさい…。私悪いこと言っちゃった…よね…。」

 そう言おうとした。

「へえ。ふられちゃったんだ。馬鹿みたい。」

 実際に出た言葉は、これだった。

 私がその言葉を発した後、春巳君は凄く傷ついた顔をした。

 

―私は…、下を向く。

(やっぱり私は馬鹿だ…、何でこんな事言うんだろ…。)

 こんなことを言えば…、氷河佐伯と呼ばれても仕方が無い。と思った。

「何だよ…。」

「え…?」

「何でお前にそんなこと言われなきゃいけねえの!?」

 

―ほら、傷ついた。…傷つけた。

「聞こえたの?独り言のつもりだったんだけど。」

 とまらない

「ふざけんな!謝れよ!」

 いつもの態度が

「謝ればいいの?…ごめんなさい。これでいいでしょう?」

 癖になってる

「本当に謝ってんのかよ!」

 本当に

「何であなたに本気で謝らなきゃいけないの?」

 

―とまらない…。

「もうお前ふざけるなよ!人の気持ち…考えろよ!」

(考えてるよ。言葉が出ないだけ。)

「おい!無視かよ!!佐伯っ!」

 春巳君は私の服の胸倉を、手の筋が浮き出るほど強く、掴んだ。

(別に怖くないし。)

「………何?」

 私は、とまらなくなっていた…。

 春巳君を狐のように睨み返し、胸の手を叩いた。

 春巳君の表情が、凍りつく。私がまさかこんなことをするとは、思っていなかったのだろう。

「ふざけるな…!」

 春巳君は、本当に怒っている。

「ふざけて、無い。」

 春巳君は、私の顔を見ると胸倉を離した。

「佐伯…、お前見損なった!」

 また、いつものように突き放される。

(これでいいんだ。)

(突き放されるほうが、春巳君の為にも良い。)


―さあっ

 また、桜吹雪。



 私は、後二,三ヶ月で、この学校から離れるだろう。

 でもそれは当たり前のこと。いつものこと。

 私のお父さんは、治療法がまだ見つかっていない病気にかかっている。だが、治療法が7割分かっているという、病気なのだ。

 だから…、ある病院から突き放されては、見てあげましょうと病院からお声がかかる。

 病院は、自分たちの病院が金持ちになるため、注目される為にお父さんを利用する。

 お母さんは、お父さんのことしか考えていない。だから、一人っ子の私のことを何も考えずに、簡単に転校するわよ。と言う。

 それも、転校する一週間前に…言う。

 だから、疲れてしまった。

 私は、小学校五年生の時初めて人を突き放した。

 それから二ヶ月して、すぐ転校したけど、ぜんぜん辛くなかったし、あっちも辛くなかっただろう。

 だから、私はその時から人を突き放すことを癖にして生きて来た。

 それが楽なのだ。

 

 

 それでいい。

 見捨てれば、楽になる。

 思い出なんか要らないから、

 代わりに楽にならせて。

 辛さなんてなくして欲しい。



 春巳君を見捨てれば、楽になる。

 仁を忘れれば、楽になる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ