綾―桜の下で―
この作品は、「小説&まんが投稿屋」の、作家、菫が書いた小説、「cherry blossoms」と多少の修正等以外は同じ作品です。
―さあっ
少し強い風が吹く。
私の隣にある桜の木は、風で枝を揺らし、桜吹雪を創る。
私は、風で少し乱れた背中まである髪を手櫛で直す。
―さあっ
また風が吹いて、桜の花びらが舞う。
その花びらは、とても綺麗で切なくなる。
(いつかは全部散ってしまうんだよね…。どんなに綺麗でも、どんなに丈夫でも。)
私はふとそう思った。
「恋なんて、脆いんだからすぐ消えてしまうよ。」
小さな声で呟いた。
私は1ヶ月に、失恋した。理由なんて簡単。
「好きな子が出来たから、別れてくれないか…。」
仁が私に向けて言い放った、最後の言葉。
私は何も言わずに肯いた。
「あ!佐伯さん。手紙を出した…町野です!よかったら付き合って下さい!!」
それを言ったのは仁だった。
私はその時もコクリと肯いた。別に好きじゃなかったけれど、断わらなくても別に何も支障は無いから、私は肯いた。
結局、1ヶ月で散った…私と仁の恋。
「何か暖かいものを『私は』1ヶ月間感じていたのに」
私たちは別れた。
その別れを切り出されたのが、この桜の木の下だった。その時はまだ桜の花は咲いていなくて、小さな小さなつぼみだったけれど、ほのかにピンク色づいていてとても綺麗だった。
ジャリ…
足音がした…。私じゃない人間の。
私はそれに驚いた。ここに通うようになってから、まだ一度も人がここに来たことが無いからだった。
(誰か来たの?)
さああっ
風が吹いて、また桜吹雪になる。
次の瞬間、桜吹雪が治まるとそこには一人の男子生徒が立っていた。
私はとっさに、疑問を言う。
「あなた…誰?」
「君こそ…誰?」
私たちは顔を見合わせる。
(まあ、此処は私だけの場所じゃないしね…人が来て当たり前だよね。)
「俺は、2年3組の春巳 朔良…だけど。………あれ、君どこかで…?」
「……思い出した。私と同じクラスじゃない?」
「あ!そうだ!確か君は佐伯 綾ちゃん…だったよな?」
「うん。よく覚えてたね。クラスに30人も居るのに。」
「俺、名前覚えるのは早いから。」
私たちは3秒ほど沈黙する。
「どうして…ここに?」
春巳君は言った。
「なんとなく。じゃ駄目?」
「いや…。」
私は、いつもこんな口調だ。皆からはクールと思われているようで「氷河佐伯」とか裏で呼ばれている。実際そうなのだろうけれど、私は全く気に入らない。
「じゃあ、あなたは?どうして此処に?」
「俺は…彼女に振られたから…。」
さあっ
ピンク色の桜の花びらが舞う。
春巳君は、悲しいような…苦しいような…そんな表情をした。
私は聞かないほうがよかったと、
―後悔した。
さて、第一部分が終わりました。
綾の辛い気持ちがうまく伝わっていればいいですが…。
感想の方、ぜひよろしくお願いいたします。