おにぎり屋ふくふく|おにぎりがない日
その日は、いつもとちがっていました。
ふくふくの台所。
「……あら?」
ふくさんが、棚を見て首をかしげます。
「どうしたの?」
ミケが聞きました。
「お米がね……ないんだよ」
「ええっ!?」
まぐろがびっくり。
トラは目をまんまるにします。
「おにぎり作れないの!?」
ふくさんは、少し困った顔で笑いました。
「注文してたんだけどねぇ、まだ届いてないみたいで」
そのとき、お客さんの声。
「すみませーん、今日はやってますか?」
みんな、ぴたっと止まります。
ミケが小さく言いました。
「……どうするの」
ふくさんは、少しだけ考えて――
にっこり笑いました。
「大丈夫。なんとかしよう」
クロが、すっと立ち上がります。
「にゃ」
その目は、まっすぐでした。
「……行くのかい?」
クロはうなずくように、しっぽを揺らします。
トラが言いました。
「ぼくも行く!」
まぐろも。
「運ぶの手伝うよ」
ミケは腕組み。
「場所、分かるの?」
シロは静かに言いました。
「お米屋さんなら、川の向こうよ」
ふくさんは、みんなを見て――
やさしく笑いました。
「じゃあ、お願いしようかねぇ」
クロたちは、外へ飛び出しました。
トコトコトコ――じゃなくて、今日は少しだけ急ぎ足。
橋を渡って、風の中を進みます。
「こっちだよ!」
トラが先を走り、
「急ぎすぎないで」
シロが落ち着かせて、
「重いのは任せて」
まぐろが言い、
「ちゃんと選ぶのよ」
ミケがチェックします。
そして――
クロは、前を見ていました。
やがて、小さなお米屋さんにたどり着きます。
「すみません!」
店のおじさんが顔を出しました。
「おや、猫たちかい?」
クロは、ぺこりと頭を下げるようにして、お店の方を見ます。
「ふくふくのおにぎり用なんだね」
おじさんは、にこっと笑いました。
「待ってたよ。さっき届いたばかりだ」
みんなの目が、ぱっと明るくなります。
袋を分けてもらって、それぞれで運びます。
「よいしょ……!」
「重いけどいける!」
「落とさないでよ!」
帰り道は、ちょっとだけ大変でした。
でも――
ふくふくが見えたとき、みんなの顔がほころびます。
「ただいまー!」
ふくさんは、ほっとした顔で笑いました。
「おかえり」
「助かったよ」
その日も、ふくふくにはあったかいおにぎりの香りが戻りました。
お客さんが言います。
「やっぱり、ここに来ると元気が出るねぇ」
ふくさんは、やさしくうなずきました。
その横で、クロたちは――
ちょっとだけ誇らしそうに、しっぽを、ゆらりと揺らしていました。




