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おにぎり屋ふくふく

おにぎり屋ふくふく|おにぎりがない日

作者: 絵宮 芳緒
掲載日:2026/04/06

その日は、いつもとちがっていました。

ふくふくの台所。


「……あら?」


ふくさんが、棚を見て首をかしげます。


「どうしたの?」


ミケが聞きました。


「お米がね……ないんだよ」


「ええっ!?」


まぐろがびっくり。

トラは目をまんまるにします。


「おにぎり作れないの!?」


ふくさんは、少し困った顔で笑いました。


「注文してたんだけどねぇ、まだ届いてないみたいで」


そのとき、お客さんの声。


「すみませーん、今日はやってますか?」


みんな、ぴたっと止まります。

ミケが小さく言いました。


「……どうするの」


ふくさんは、少しだけ考えて――

にっこり笑いました。


「大丈夫。なんとかしよう」


クロが、すっと立ち上がります。


「にゃ」


その目は、まっすぐでした。


「……行くのかい?」


クロはうなずくように、しっぽを揺らします。

トラが言いました。


「ぼくも行く!」


まぐろも。


「運ぶの手伝うよ」


ミケは腕組み。


「場所、分かるの?」


シロは静かに言いました。


「お米屋さんなら、川の向こうよ」


ふくさんは、みんなを見て――

やさしく笑いました。


「じゃあ、お願いしようかねぇ」


クロたちは、外へ飛び出しました。


トコトコトコ――じゃなくて、今日は少しだけ急ぎ足。

橋を渡って、風の中を進みます。


「こっちだよ!」


トラが先を走り、


「急ぎすぎないで」


シロが落ち着かせて、


「重いのは任せて」


まぐろが言い、


「ちゃんと選ぶのよ」


ミケがチェックします。

そして――

クロは、前を見ていました。

やがて、小さなお米屋さんにたどり着きます。


「すみません!」


店のおじさんが顔を出しました。


「おや、猫たちかい?」


クロは、ぺこりと頭を下げるようにして、お店の方を見ます。


「ふくふくのおにぎり用なんだね」


おじさんは、にこっと笑いました。


「待ってたよ。さっき届いたばかりだ」


みんなの目が、ぱっと明るくなります。

袋を分けてもらって、それぞれで運びます。


「よいしょ……!」


「重いけどいける!」


「落とさないでよ!」


帰り道は、ちょっとだけ大変でした。

でも――

ふくふくが見えたとき、みんなの顔がほころびます。


「ただいまー!」


ふくさんは、ほっとした顔で笑いました。


「おかえり」


「助かったよ」


その日も、ふくふくにはあったかいおにぎりの香りが戻りました。

お客さんが言います。


「やっぱり、ここに来ると元気が出るねぇ」


ふくさんは、やさしくうなずきました。

その横で、クロたちは――

ちょっとだけ誇らしそうに、しっぽを、ゆらりと揺らしていました。

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