いっぱいちまみれ
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「ふぅぅぅぅ…、ここまで来れば一安心だろう。
兵を休ませてやれ」
「皆の者、一時休息とする。
周囲の警戒、馬への水と飼葉も忘れるな!」
『ハハッ!』
「…私がここまで命を繋いでこれたのはそなたの助けがあったればこそ。礼を言う」
「何を仰います!私も皆も、あなたの志に感銘を受け、世を正すべしと立ち上がったのでございます。礼など勿体のうございます」
「…そうか、私は良い臣を持った。しかし悔しいものよ。一敗地に塗れるとはこのことか」
「そうですな、早く水辺に辿り着きたいものです。私もあなたも血塗れですから」
「ん?」
「ん?」
「ちまみれ?」
「でしょう?」
「そうだけどそうじゃなくて。地に塗れる。血塗れじゃなくて」
「ん?」
「小首を傾げるな気色悪い」
「血塗れはお肌の大敵ですよ?」
「お肌の心配しながら戦してねぇよ」
「はぁ、そうですか」
「もういい!いや、まさかあぁも見事に罠に嵌められるとはな。まんまと一杯食わされたわ」
「ええっ!?」
「ええっ!?何?何!?」
「まさか将軍裏切り者だったの!?」
「はぁ!?違ぇよ何でだよ」
「まんまをいっぱい食わされたんでしょう?ご馳走に目が眩んで裏切ったって今!」
「言ってねぇよ!」
「俺たち一日一食もギリだってのに!」
「だから違ぇよなんだよその高度な勘違い!」
「…違うの?」
「…違うよ」
「あぁ良かった、危うく血祭りに…」
「なんて?え、なんて?」
「いえ何でも」
「まぁ…うーん…いいや。私だって爪に火を灯す思いで軍費を賄ったんだ、裏切るなんてことg」
「爪に火!?拷問?なんで?怖っ!?」
「しねぇよするかボケ」
「ボケはひどい」
「ゴメン」
「もうしないように」
「はい」
「それで?」
「どの口…いや、ここまで着いて来てくれた皆を労ってやりたいが、今の私の懐では一杯のかけそばが精一杯だな…」
「え、マジ?」
「え?」
「みんな、街に帰ったら将軍の奢りでかけそば食べ放題だってよー!」
『マジで?』
『やった!将軍太っ腹!』
『いやかけそば食べ放題ってショボくね?』
『なー』
「いやいっぱいってそうじゃねえし上に取り違えて下に見られるの辛すぎるんだけど止めて!?」
「ん?」
「ん?じゃねえよ可愛くないんだよやめろそれ」
「将軍もやってるじゃん」
「やってるけど自分で気持ち悪いって分かってんだよ言うなよ辛くなるから」
「将軍、ご苦労なさって…」
「誰のせいだよ。さっきから取り違えばっか繰り返しやがって、ほんとに俺の志分かってんのかお前ら」
「ん?」
「ん?じゃなくて」
「大丈夫、皆心は一つです!」
「何も大丈夫じゃねぇよ絶対分かってねぇじゃねぇか」
「なにを仰る。みな、掛け声行くぞ!」
『ヒャッハー、汚物は消毒だぜぇ!』
「やっべ絶対関わっちゃいけない奴らじゃん逃げな」
「待て!」
「ななななんでしょう?」
「お前はもうs」
「待て待て待てそれは言っちゃダメなやつ!」
「特別な単語は使ってませんが」
「単語じゃなくて文脈!そもそもお前のセリフじゃねぇし!」
「あぁ、なるほど」
「分かってくれたか…」
「月に代わってぇ」
「もっとダメなやつ!」
「もうええわ、ありがとうございましたー」
明日はみんな大好き焼肉のお話です。




