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【第三章、完結】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第3章 天蓬元帥

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95 法天象地

 巨大な猿へと変じる術、法天象地(ほうてんしょうち)

 なお、原典の孫悟空は、巨大な猿に変身するのに別に満月とか見る必要はない。

 ブルー〇波とかいう不思議光線を浴びる必要もなし。

 ただ、その身一つで巨大猿へと変身するのである。


 けれど、どうにもこれまでの術と、それは勝手が違った。


 私の乗っていた筋斗雲が破裂したように膨れ上がり、広がる。

 続いて、ごっそりと私の〝中〟から何かが引き摺り出されるような感覚。


「くっ……!?」


 ただの法術ではない。

 この行使によって確実に私から何かが削ぎ落されていく。

 それは体力なのか、精神力なのか、或いは〝気〟のような不明瞭なエネルギーなのか。


 膨らんだ筋斗雲、〝雲〟が大地に触れただろう瞬間。

 そこから吹き上がるように凄まじいものが流れ込んでくる。

 縮地の術を行使する際に掴んだ〝地脈〟から、見えない何かを引っ張り込むような……。

 きっとこの術には莫大なエネルギーが必要なのだ。


 そう簡単に使える術ではない。

 また、地脈からすらエネルギーを引っ張ってくるのであれば、使える場所も限られる。


 それは『自然の力を借りる』感覚だった。

 カーマイン・マロットという個人では(おぎな)い切れない消費。

 それを大地から吸い上げ、強引に形作ろうとする。


 術の成り立ちをこれでもかと伝えてくるギフト。

 血管か、神経が、体の表面に浮かび上がるように。

 あるいは新しい〝体内器官〟が木の根のように私の体表に根付く感覚。


「う、ぐっ……ぐぅ」


 吐きそうなくらいの強烈な感覚。

 そして。


〝雲〟が、まず巨大な体の輪郭を作り上げた。

 その雲の端から、だんだんと固くなり、物質へと変化していく感覚。


 雲の巨人たる体が、さらに変じたのは〝石〟の体。


 私が想像していたような、私自身の体が膨れ上がり、肉が巨大化し、大猿へと変わるような変身ではない。

 地脈から大地のエネルギーを吸い上げ、雲で形を作り、石の体を生み出す。

 そうして巨大な〝石猿(いしざる)〟を作り上げる術こそが法天象地、らしい。


 巨大化というよりも、巨大なロボットに乗り込まされた気分。

 意外にも私自身の体は元のサイズのままなのだ。

 ただ、巨大な石猿の中にあって、その体を操縦する。


 どちらかというと孫悟空が主役のアニメというより、進撃する方の巨大化。

 等身大の本体は、巨人の体内にあるまま。


「……!」


 感覚に引き摺られつつも私は開眼する。

 火眼金睛が眼前ではなく、法天象地で作られた巨体目線の視界を飛ばしてくる。

 なるほど、こういう視界……。

 むしろ、この眼は、このためにあったのかと思えるほど。


 そうして見えるのは巨大なブラック猪八戒。

 九歯のまぐわを大きく振りかぶり、巨大石猿へ目掛けて、強烈に振り下ろしてくる!


『ォオオオオオオオオオオッ!!』

「ぁああああああああああッ!!」


 それに対して、巨大石猿の手が伸ばされ、猪八戒の腕を押さえる。


 ドゴォオオオッ!


 と、巨体同士のぶつかり合いが、それだけで衝撃波を生み、轟音を鳴らす。

 体の内側から〝名〟が浮かび上がるまま、それに委ねて私は叫んだ。

 きっと、それはラグナ卿が聴いたと語っていたギフトからの答え。


天河定底神珍鉄てんがていていしんちんてつ如意金箍棒(にょいきんこぼう)ッ!」


 巨大石猿の手元に現れるのは、これまでの如意棒サイズとは比べものにならないほどの質量。

 もとより武器として作られたのではなく、それは〝柱〟として作られたもの。

 天の川、または〝海〟の底の深さを測り、東海竜王の宮殿で海を鎮める柱として置かれたもの。


 一万三千五百斤いちまんさんぜんごひゃくきんという文字が刻まれた金のたが(・・)

 その字の示すように、およそ8トンを超える、恐ろしい重量。

 如意が示すように伸び縮みし、大きさも長さも巨大石猿に合わせたものとなっている。


 今までの如意棒が、あのピンク髪の男が言うように、私に合わせて抑えられた軽量版(・・・)だとしたら、これは本家・孫悟空が振るうのに近しい代物だとわかる。


 同じく太上老君によって鍛造された、猪八戒が持つ九歯のまぐわと、如意金箍棒が激突する!


 ドゴォオオオオオオオオオオオオッ!!


 大気を震わせる轟音。

 大災害が今や二つ、アイゼンハルトの地を騒がせている。

 足元、背後にはヴィルヘルムを始めとした騎士たちがまだいる。

 それにこの災害と化した猪八戒が街へと侵攻すれば、その時点で民は一溜りもあるまい。


 まぐわから猛烈な炎が逆巻き、巨大石猿の体を穿つために剛力が振るわれる。

 もはや、このサイズで人間の技量など発揮する隙はなく、真正面からそれに応じるのみ。


『ォオオオオオオオオオオッ!!!』


 大迫力の怪獣バトルの片方を担っているのが私なんて、本当にとんでもない。

 力を制御し、体をコントロールするのに精一杯。

 あと今の見た目が気になって仕方ない!

 石猿の見た目なのだと思うが、実際どう見えているのか!


 衝突し、巨体を押しとどめながら、できそこないと称された猪八戒の〝肉〟を剥がす!

 同格の大きさと質量を伴ったことで理解する。

 眼前のブラック猪八戒は不完全だ。

 また私が砕いた骨の手足は確かに意味がある!

 脆い、弱い、崩せる、剥ぐことができる!


「止まりなさい、この……バカ(おとうと)弟子(でし)ッ!」


 この世界に存在する可能性が高まったお師匠様にあとで言いつけてやるわよ! ウキーッ!


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― 新着の感想 ―
ナルホド。元より石猿なんだから巨大化したらしたで巨大な猿のゴーレムと見做す事も出来るのはイイね!意匠は流石に気になるのはしゃーないとして、まさか曇りの聖女が中身だと良くこちらを知らんだろう敵さんには…
あれだ、初代バーチャ◯ァイターみたいな巨大令嬢に違いない 原典は知らないしそもそも西遊記自体よく分からない、少し弄ったレトロゲームの遊遊記くらい大幅に偏った知識しかない なのに更新される度にワクワク…
きっとデフォルト衣装のドレス姿でマインのまま巨大化したに違いない。 まぁ、淑女がスカートで暴れるだなんて恥ずかしくてよ。
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