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【第三章、開始】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第3章 天蓬元帥

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86 湖の怪

 『白骨夫人』とは西遊記に出てくる妖怪、妖精の類だ。

 しかし、孫悟空が三蔵法師に破門されるというエピソードとして有名だが、強敵ではない。

 むしろ如意棒の一打ちで屠れるほどの雑魚と言っていい。

 白骨夫人を仮にギフトとするのなら『人間に化ける』『解死法』だけだろう。


 解死法は、偽の死体を作り出す法術だ。

 そのせいで三蔵法師に『悟空が人を三度も殺した!』と思われた。

 ちなみに夫人と名がついているが、旦那となる登場人物は出てこない。

 まぁ、後世の解釈によっては出てくるものもあるみたいだけど。


 解死法を使えば偽物の死体を生み出して、この場を逃げることができるはず。

 少なくとも二度は孫悟空から逃れることができたのが白骨夫人だ。

 変化の方は火眼金睛を前に意味を成さなかったけどね。


 何? 先生はゴロッソ会長を逃がすつもりだったの?

 意外と良心的なの?

 それと気になるのは。


「その黒水晶、その使い方で合っているの?」


 私は、冷ややかな目でゴロッソ会長を見下ろした。

 だってそうだろう。複製ギフトを使えるという触れ込みだったはず。

 それが今、ゴロッソ会長の使い方は、どちらかというと召喚系だった。

 そもそも昨夜のやりとりで、水晶の中身をゴロッソ会長は知っていたの?

 事前にそういうものだと説明を受けていた可能性はあるわね。


「くそっ! なぜ!? なぜ出てこない!」


 出てこない。やはり出てくるものなのか。

 それは本当に複製ギフトなの? 何か重大な勘違いが発生している?

 いや、でも。


 孫悟空と、紅孩児らしきギフトは間違いなく今世に現れている。

 ならギフトとして西遊記系がこの世界に干渉しているのは間違いないのだろう。

 敵は、ギフトから要素を抽出して召喚魔獣として使役できる?


 もしかして、これから聖女の敵になる相手って『ギフト持ち』じゃなくて、ギフトから再現された妖怪そのもの?

 それは、けっこうエグくない?

 牛魔王とか孫悟空抜きに倒せます? あっちは最終的に巨大な牛になるんだけど。

 ……がんばれ、ヒロインちゃん! 負けるな、G4たち!

 この世界の命運は貴方たちにかかっているわよ!


「無駄よ、ゴロッソ会長。──収」


 私はゴロッソ会長がふりかざす黒水晶に向かって剣指を向ける。

 すると、偽物だったそれは私の毛に戻ってしまった。


「は……?」

「それ、偽物だから」


 私がすり替えておいたのさ! へへん!


「な……な……あの野郎!」


 ふふふ。先生に裏切られていると思っているわね!

 風評被害よ!


「あら、誰かに裏切られたみたいねぇ? どうする? そんなに大事な黒幕がいるなら、いっそ、その情報と引き換えに許してくれって交渉してみたら? わりと悪くないかもしれないわよ」

「……!」


 混乱と怒りを滲ませながら、私の助言に目を見開くゴロッソ会長。怖っ。

 追い詰められた人間って普通に怖いわよねぇ。


「お前は誰だ!」

「私? 世直しクウゴだけど」


 さっき名乗ったの、忘れちゃった?


「ふざけるな!」


 はい、すみません! ふざけてます!


 ゴロッソ会長は、尻もちをついていたのを根性で立ち上がると襲いかかってくる。


「アチャアアア!」


 ドゴッ!

 すかさず如意棒で返り討ち一棒! 殺さないように手加減してね!


「ほぐぁ!?」


 とりあえず切り札は先に抑えておいたので、この場はあっさりと解決したのだった。

 貴重な情報源、ゲーット。ウキキッ!



 さて。

 レギデーシュ商会の追加調査や、ゴロッソ会長の尋問も行うべきなんだけど。


「ヴィル様、あとは任せて私たちは湖へ移動しましょう」

「ああ、カーマイン嬢、頼めるかい?」

「はい!」


 今回、ほぼ緊急事態扱いで湖近隣の避難誘導をしてもらっている。

 もちろん騒ぎにして混乱させないように、やんわりとした形で。

 商会と湖で人員を分け、またミニたちを湖の監視に回した。

 こちらをさっさと片付けて、湖の対処をしておかないと。

 もし、魔獣災害をまた引き起こすつもりなら大変なことになる。


「縮地!」


 地脈を掴める位置まで移動し、ヴィルヘルムを連れて湖の前に瞬間移動。

 偶々、問題の湖に地脈が繋がっているのか。

 それとも地脈を利用なりして、何かを仕込んでいるのか。


「……とりあえず騒ぎは、まだ起きていないようですわね」

「ああ」


 騎士団の動きに気づいた先生が何かを起動するかと警戒していた。

 そのため、表立って湖の周りは抑えられなかった。

 むしろ、その方がいい。

 騎士団という戦力が不意打ちを食らって削られるのはよくない。

 ヴィルヘルムが到着したことによって、新たに陣形を組む。


 湖の前に私とヴィルヘルム。

 騎士団は、遠巻きにその様子を窺う。

 力を見せつけることになるけど、背に腹は代えられない。

 ここで躊躇して被害を出す方が問題だ。


 まぁ、一応、変装はしているので! 今の私は世直しクウゴである。

 ちなみにチャイナドレス・チーパオスタイルではない。

 ただの騎士服・パンツスタイルだ。


「行きますよ、ヴィル様」

「頼む」


 ヴィルヘルムの了解を得て、湖の前に立つ。


 西遊記で水の底に潜む相手といえば、真っ先に沙悟浄が思い浮かぶ。

 あれは湖ではなく、川だが。

 玉龍も似たようなものだろう。三蔵一行の五分の二が水底から強襲スタイル。


「この辺りで、そろそろ沙悟浄が出てきてくれてもいいのよ?」


 なにせ白骨夫人の名が、この世界の人間の口から出てきたのだ。

 いよいよもってこの世界、西遊記系の何かしらが起きている。

 つまり私が孫悟空だったのは別に私のせいではなく既存設定なのだ。


 その割に主人公っぽいフィナさんが三蔵法師ではなく『聖女』なのは如何なものか。

 私が乙女ゲームと西遊記を掛け合わせるなら、ヒロインは三蔵法師に据えるけどな。

 弟子たちのギフトはヒーローたちにあてがうだろう。

 もしくは逆に……。


「カーマイン嬢、大丈夫か?」

「あ、いえ、大丈夫です。少し考え事をしていました」


 いけない。今は目の前に集中!

 私は如意棒を片手で持ち、湖の淵の地面をダンッ! と叩く。

 もう片方の手で剣指を結び、呪文を唱えた。


閉水法(へいすいほう)!」


 呪文と共に湖が割れる。

 前にヴィルヘルムとこの法術を試した湖より、広い湖だった。

 その湖がザァア! と二つに別れていく。


 はたして、湖の底には。


「……何か、いる」


 魚じゃない。泳ぐ魚は別れた湖の中だ。

 沙悟浄とか、玉龍とか。そういう仲間系では……なさそう。


「え、まさか、〝人〟……?」


 湖の底には、人らしきものが蹲っていた。

 それは白い衣を纏った長い髪の女性のように見える。

 あり得ない光景だ。だって湖の底が見られたのは法術によって。

 なら、あの人は今まで湖の底にいたはずだ。


「……!」


 ゾゾゾッと背筋に悪寒が走る。

 ちょっと。今まで妖怪系、またはモンスター系が来るとは予想していたんだけど。

 あれ、もしかしてホラー系の奴じゃない!?

 西遊記とか関係なく!

 夏休みだからってホラーで攻めてこないで!


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― 新着の感想 ―
 きっとくる? きっとくる?
やっぱ白骨婦人?キョンシーでしたっけ?
いっそただの死体であって欲しいけど(;´・ω・`) キョンシーだったら水底にいても問題ないね……。 ピンク先生のギフトが白骨夫人てことも?
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