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【第三章、開始】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第3章 天蓬元帥

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79 追跡と書類

 賊たちは最初、大人しくしていた。

 あっさりと領都を離れていく。今のところグループのままの行動だ。

 ちなみに態度は悪く、俗にいう不良歩きみたいな歩き方をしていた。迷惑である。

 如意棒ぶつかりお姉さんしちゃうぞ。なお、時速はうん十キロで突撃する。


 領都を出ると、私が彼らを捕まえた付近を目指して移動しているように思えた。

 もしかして何か近くにあったのかしら? 隠し財産?


 街道をある程度進んだあと森に入り込み、空からは逆に追いづらくなる。

 とはいえ、こちらは火眼金睛。その程度であれば問題ない。

 聴覚もギフトオンしているので、これくらいの距離なら彼らの会話も拾える。


「くそ、残ってるだろうな」


 賊が零した一言。どうやらやはり何かを隠しているらしい。

 先回りしてみたいところだけど、何を探しているのかわからないわね。

 しばらく森の中を進むと、木々の合間に隠れるように小屋があった。

 またこんなところに小屋を建てて……。秘密基地が大好きな年頃かしら?

 私もどこかにひっそり家を建ててアウトドア生活しようかな。


 私は筋斗雲をスイーッと下降させ、小屋の近くへ。

 ちょうど窓があったので中を覗いてみる。

 耳を澄ませて聞くに、とくに誘拐された誰かはいなさそうだ。

 連中も別に誰かを閉じ込めていた様子ではない。


「あったぜ、マーチス」

「おう! へへ、バカが。これさえ見つからなければ問題ねぇっての」


 ふぅん? マーチスと呼ばれた男が手にしたのは、なんらかの書類かしら。

 紙を丸めて紐で括られている。

 紙面の内容まで再確認する様子はないので、すり替えは疑っていないみたい。


「それはまた」


 孫悟空を前にして甘いんじゃなぁい?

 筋斗雲を動かし、その場にある木の枝を手折る。


「七十二変化、点石成金(てんせきせいきん)!」


 たちまち折られた木の枝は賊が手にしている丸まった書類とそっくりに変化した。

 あとは、これをどうにかしてすり替えてみせるだけだ。


「どうしてやろうかな、っと」


 ちなみに変化させた書類の中身は白紙だ。

 丸めてあるから内側がパッと見ではわからない仕様。

 透明なファイルとか作ったら需要あるかしらねぇ?


 この小屋に来た目的は書類だけだったらしく、賊たちはさっさと小屋を去る。

 森の中で仕掛けた方がいいわね。


 身外身法で新たにミニ・カーマインを複数体、現わす。


「命令、バレないように、蛇に変身して彼らの頭上から降って驚かせ、一体はその隙に気づかれないように、あの賊が手にしている書類と偽の書類をすりかえてきて。隠身法も変化も使用してよし」

「「「「ウキッ!」」」」


 ミニたちの追加召喚。だいたい私より優秀なので使い勝手がいい術だ。

 少し待つと。


 バサバサッ!


「うわ! なんだ!?」

「蛇だ!」

「追い払え!」

「くそ! 最悪だ! 毒蛇じゃないだろうな!?」


 複数の蛇によるダイブアタックで見事に賊たちは混乱する。

 その隙を見て、一体のミニが男の手から書類をひったくり、わざと偽物を落とした。

 隠身法により透明になったミニが嬉々として書類を私のもとへ運んでくる。


「よくやったわ」

「ウキッ!」


 嬉しそうなのよねぇ。自我あったらどうしよう。

 ミニ・カーマインは機械みたいなもの、ただの分身。

 使い捨て……。と、心を落ち着かせておく。

 蛇は男たちをひとしきり混乱させたあとで茂みの中へと退散し、そのまま元の姿に戻ったかと思うと私へ帰ってくる途中、元の毛に戻ってうなじに収まった。

 最初から追跡任務を与えているミニたちは、まだ男たちについたままよ。


 私は男たちから距離を取り、空中に浮かび上がると、丸まった書類をまとめる紐を解き、中身を確認する。


「これは……」


 それは、ものの見事に〝証拠〟だった。

 嘘でしょう? ってくらいに。

 レギデーシュ商会のサインまでご丁寧に記された契約書である。

 連中は雇われの身であり、商会の指示を受けていたらしい。

 しかもアイゼンハルト領に物資が搬入される日まで記されている。

 あの時は、如何にも商団を待ち構えていた様子だったものねぇ……。


 なんだってこんな純然たる証拠を残しているのかは賊たちの処世術なのだろう。

 これがある限り、簡単には切り捨てられないぞ、と。

 場合によっては牢から出してもらうのにお金を払ってもらうとかも。

 裏家業も大変だこと。


「証拠ゲーット。ヴィル様の読みは正しかったわね」


 流石、完成形お兄ちゃん。悪巧みには勘が働くというわけだ。

 間違いなく弟の方ではこうはならないだろう。

 でも、私が協力しなければ、こう簡単に証拠は手に入らなかったはず。

 ヴィルヘルムが率いる者たちが徐々に証拠集めに勤しんでいた。


「でも、これだけでは弱いわね」


 商会とのつながりは見えた。

 でも、これだけでは捏造書類だと(しら)を切られるかもしれない。

 賊たちはまだ泳がせておくのがいいだろう。

 もちろん、市民が犠牲になりかねない時はその限りではない。

 たちまち一棒食らわせてやるつもりだ。


 そのあとも私は姿を隠しつつ、賊たちのあとを追いかけた。

 どこぞのアジトにでも向かうかと思いきや、賊らは堂々と領都へ舞い戻る。

 領主子息の尋問を逃れて無罪放免とされたのだから余裕とでも思っているのか。

 なんとも図々しいというか、面の皮が厚いというか。


 ……それともアジト的な場所は領都内にある?

 彼らが向かったのは酒場だった。

 解放された祝いにと酒盛りがしたかった様子。

 アウトローらしく刹那的な生き方ね。手持ちのお金が本来どこから来たものやら。


「にしても、あの女! 絶対に許さねぇぞ!」


 ダンッ! と木製ジョッキをテーブルに打ちつけながら吠える賊。

 その女って、この女かしら?

 耳を傾けるに、まぁ私のことらしいとわかる。

 おうおう、口汚いこと。純情な貴族令嬢には、とても聞かせられない話をしている。

 何をう、はした(・・・)賊どもめ! 俺を弼馬温(ひつばおん)とのたまうとは許せん!

 という具合である。率直に言って三十棒はくれてやる必要があるだろう。


 やがて飲み明かした賊たちは、健康的にも潰れる前に切り上げ、移動を開始した。

 やはり領都内にアジトがあるらしい。


 もしかしたら噂のルドロフ氏がいるかと警戒したが、そこにはいなかった。

 商会長の護衛をしているのだから当然か。


 契約書で抱え込んでいるとはいえ、わざわざ直接商会には行かないわよね。

 でも追跡した甲斐はあったかしら。


「ここで追跡終了してもいいけど……」


 領都内にあるアジトの中も気になる。

 ここはアジトの窓側からでも侵入してみるか。


 私はスイーッと筋斗雲で下降して、三階にある窓の前に立つ。


解鎖法(かいさほう)


 中に人がいる様子もないので、すり抜けではなく、窓を開いて侵入する。


 解鎖法は、弟子たちが人参果(にんじんか)という貴重な実を盗み食らったうえ、疑われたことに腹を立てた孫悟空が、人参果の成る仙樹を如意棒で打ち倒してしまったあとに出てくる。

 管理者である鎮元大仙(ちんげんたいせん)が不在だったことから残った弟子だけでは孫悟空らは手に余ると判断して、表向きはにこやかにしつつも大仙が戻るまで、大仙の弟子たちは三蔵一行を閉じ込めてしまった。


 完全に孫悟空と八戒、悟浄が悪い。とくに孫悟空が超悪い。

 疑われているのは正当な疑いなのに腹を立てるし、木を倒すし。

 なのだが、罰を受けてはかなわんと閉じ込められた部屋の扉の鍵を『解鎖法』を用いて開き、逃げ出すというエピソード。

 三蔵の弟子になったからって大人しくしていないのが孫悟空なのである。


 アジトに侵入すると、出会う賊たちに眠り虫をしかけて眠らせ、じっくりと家探しさせてもらう。

 入念に調べ終えて、証拠の類を一抱え。

 金庫の金も要らないし、武器など(もっ)ての(ほか)とばかりに取り上げる。

 これだけでは酒の席で罵倒された恨みが晴らせないと、孫悟空の代名詞を取り出した。


「七十二変化、変われ!」


 私は髪の毛の一本を〝筆〟へと変える。

 お釈迦様の手の平の上ムーブである。


「世直しクウゴ、ここに参上! と」


 眠る彼らの顔面に書きつけてやり、変化で大きな布袋を用意して証拠類を根こそぎ入れた。

 なに、正当に得たお金というのなら明日には被害届を出すだろう。

 そうしたら返してやればいい。

 黙っているとしたら、悪いことをして手に入れた自覚ありだ。


「悪いことはするもんじゃないわねぇ!」


 私は、さっさと賊のアジトをあとにすることにする。

 完全に泥棒の泥棒だ。勇者とはそういうものだよ、キミィ。ウッキッキ!


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― 新着の感想 ―
いいのか、公爵令嬢www にしてもミニ・カーマインがめちゃくちゃカワイーですね。
ミニマインちゃん活躍回! 喜んでるミニマインちゃん、連れて帰りたい~♡ ここに参上!って大見得を切ってウッキウキなマイン様も可愛いですね
 弼馬温時代の事を気にする悟空さですが、天界の馬屋の司ではあるのでそれだけ見れば決して低い役どころでは無い筈なんですけどもね。後にお釈迦様に天界の役所の自分に対する仕打ちについて愚痴る位なんで扱いの悪…
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