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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠


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07 学園生活のスタート

 今日は王立学園に入学する日だ。

 私は王都にある公爵邸から馬車で通学する予定。

 でも、遠くから来る生徒たちのために学生寮も用意されている。


 広大な敷地に馬車を停車する場所が用意されている。

 よく正門前に馬車で乗りつけて、降りた途端に生徒たちの注目が! とかいう話ってあるけど、どう考えても邪魔よね、あれ。

 王家の馬車だけ許されるとかなら別にいいけどね。


 駐車場、もとい馬車止めからは歩いて校舎に向かう。

 生徒を送り届けた馬車は基本的に速やかに帰っていくのよ。

 行きと帰りが混雑すること請け合い。


 王都にはタウンハウスがある。

 地方に領地や本宅を持つ貴族たちが王都で用を成すための邸宅群だ。

 マロット公爵家の邸宅はそれらとは別の場所にあり、王都の一区画を占めている。

 もちろん、領地にも屋敷があって先日まで私はそこにいた。


 学園に生徒を連れてくる馬車は、主にそのタウンハウスから来ている。

 なので、私が来る道はちょっとだけ他より空いているのよ。


 通学路に来ると、私への注目度が増していく。

 公爵令嬢というだけなら他にもいるはずなんだけど……。

 どうやら例の噂が広まっている影響らしい。


「マロット公女よ」

「ヴィンセント殿下との婚約が内定しているって」

「それは噂だけで、実際はまだ候補にすぎないって話よ」

「そうね、まだ王家から正式な通達はないもの」


 こんなふうに。まぁ、この程度の噂はつきものね。

 気にしないようにするんだけど。

 ……なんか噂話がよく聞こえるんだけど?


 遠くの方までよく聞こえるような気がする。

 それも私に関する噂を分別して聞こえるような……?

 え、これも、もしかしてギフトのせい?


 孫悟空、耳、聴力。具体的な超常の力の名称はなかったと思う。でもたしか、そう。

 風の音の変化だとかを数里先まで聞き取って妖怪の存在を感じたとか。

 そんなエピソードがあったような……。

 あと聴診ができるレベルとか、そういう話があったような……?

 もしかして、これもその一つなのだろうか。


「ねぇ、綺麗な顔しているじゃない?」

「そうね。大火傷をしたって噂だったけど、嘘みたい」

「なぁんだ」


 うわ。やっぱりすごい悪意のあること言っている子がいる!

 火傷がどうたらって私のことを話しているのよね?

 しかも、その噂が流れていた?

 絶対、その噂を流したのってあの襲撃者関係じゃない?


 私はどうにか表情を崩さず、校舎に向かって歩いていく。淑女の微笑み。

 今こそ公爵令嬢スキルの出番よ。ドレスを着た孫悟空ここにあり。

 いや、なんでよ。

 私の主体は貴族令嬢であって、決してお猿の妖怪は主体じゃないわよ。

 やっぱり世界観がおかしくない?

 私が転生者な影響もあるのかなぁ、祝福って。


 このよすぎる耳ってオフれないのかしら? 常時これだと病みそうなんだけど。

 私は意識して、耳のよさをキャンセルできないか試みる。

 すると、あっという間に遠くの声は聞こえなくなった。

 よかった。ちゃんとオフにできるんだ。これは希望が持てる。

 怖ぁ……。こういうことが他にもありそうで、怖すぎる。

 強い心を持っていないといけないわね。


 しばらくすると、ざわめきが大きくなった。

 さっきまで聞こえすぎるほど聞こえていた私の耳は一般的なレベルに戻っている。

 何かあったのかしら。


 騒ぎの原因は私から少し離れたところで起きていた。


「……ヴィンセント殿下? それと、あれは」


 それは久しぶりに見たヴィンセント殿下だった。

 例の如く、殿下は馬車で正門に乗り付けていたのだ。

 うーん、王族。本当にやるとは。邪魔、邪魔。あっちに駐車場あるわよ。


 そんなヴィンセント殿下が、転んでいた一人の女子生徒を立たせている。

 金髪の、とても可愛らしい美少女だ。

 貴族令嬢というには少し髪が短いかもしれない。

 でも、きちんと女の子らしさはあって、むしろキュートな感じ。


「…………」


 ヴィンセント殿下が転んでいた美少女と少しだけ会話をし、そして別れる。

 一連の流れを私は呆然と眺めていた。


 ……なんていうか、あの光景。あまりにもありがちな空気を感じたのは気のせい?

 やっぱり嫌な予感がヒシヒシとするんだけど。


「……行こっ」


 このままヴィンセント殿下と鉢合わせになるのはまずい気がして、私は足早にその場を去った。


 ◇◆◇


 そのあとも私は慎重に立ち回ることを心掛けた。

 可能な限り、クラスメイトたちに穏やかに接し、嫌われないようにする。

 それでいて節度を守り、一定の距離を保つ。

 女子グループに溶け込めるように彼女たちとも積極的に交流した。


 王立学園で、生徒たちの大半は貴族子女。でも、平民もいなくはない、そんな環境。

 子爵家や男爵家の人間は、けっこう多い。

 平民が王立学園に入学するのはハードルが高いので、学園生徒で一番数が多いのは下位貴族出身者になる。

 そんな彼らを敵に回すような特権意識は振りかざさない。

 うん。学園生活の出だしは順調じゃないかしら?

 そう思っていた矢先。


「マロット公爵令嬢」


 呼びかけられた際にピリリと妙な、いえ、嫌な予感を感じた。

 それは声色か、匂いか、何かが私の感覚を刺激するのだ。


「はい、なんでしょうか」

「挨拶に来ましたの。私、マレーネ・シトラスですわ」

「まぁ、シトラス侯爵令嬢でしたの。はじめまして」


 マレーネ様は友人、いえ、取り巻きっぽい二人を連れてきていた。

 

「マロット公女についての噂はいろいろと聞いております」

「そうなのですね」

「それで聞いたんですけど。マロット公女は祝福を授かったとか」

「ええ、そうですわね。ほんのちょっとした、他愛もない祝福ですわ」


 嘘です。孫悟空です。斉天大聖です。とんでもないです。


「そちらの祝福、ぜひ見せてくださらない?」


 なんて、とんでもない提案を受ける。え? 猿の大妖怪を見たいの? 正気?

 ここで暴れ回ったら死人が出るわよ。


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 暴れるの前提の思考、やめなされw
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