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【第三章、開始】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第2章 乙女ゲームは八十一難

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58 深淵の福音

 窓に反射する自分の姿を確かめる。ばっちり姿も服装も変身できているわね。

 細かい感想はカット。重要な点としては火眼金睛でなくなっているところ?

 本家・孫悟空は当然、火眼金睛がデフォルトだ。

 でも、私の場合はオン・オフを切り替えられる。

 その影響なのか、フル変身すると火眼金睛が解除される?


「火眼金睛」


 改めてオンにすると、姿は変身した状態で白目が赤く染まり、瞳が金へと変わった。

 ということは。


「火眼金睛のオン状態は変身では誤魔化せないみたいね」


 孫悟空の変身を見破るといえば、猿の尻尾を変身し損ねて出し、それを猪八戒が見破って笑うとか、そういうエピソードがあるのだけど。

 私のギフトの場合は、別口で弱点設定があるんだろうか。

 とにかくフル変身状態で見た目を維持したままでは千里眼など使用不可と。

 使ってみなければわからないことってあるわね。


 火眼金睛をオフ状態に戻してから私は部屋を出る。

 私が変身した相手の男子生徒の名前はわからない。

 ここからは立ち回り勝負だ。

 耳を澄ませて犯罪者男子二名と合流を目指す。しかし。


「君たち、そこで何をしているんだい?」


 この声は聖職者系ヒーロー、黒髪で影のあるベネディクト・サンプリエール氏。


「い、いや……別に」

「ああ、別に」


 どうやら祈りを終えて部屋を出てきたベネディクト氏に犯罪者男子二人が鉢合わせたらしい。

 このシチュエーション、やっぱりイベント、または裏ストーリーの範疇っぽいわね。

 エミリア嬢を助けるのは、本来はベネディクト氏だった?


「パーティー会場を抜けてこんなところになぜいる?」

「そ、それは……」

「そっちこそなんでこんなところにいるんだよ!?」


 逆ギレは悪手でしょう、犯罪者男子一号くん。

 疑っていない人でも疑うわよ。


「……僕は日課の祈りを捧げていただけです。騒がしい場所は好きじゃありませんから、静かな場所で。こちら側の部屋を使うなとは言いませんが……それは何を運んでいるのですか?」

「な、なんでもねぇよ」

「いや、ただの毛布とか、布団とかだよ。部屋の掃除を担当の奴に代わってくれって頼まれてさ」

「……その服装のままで?」

「そうだよ! それがなんか関係あるのかよ、お前に!?」


 雑っ魚いわねぇ。これはG4の餌食っぽい?

 これがシナリオの流れなら、エミリア嬢の介抱役はベネディクト氏になるように手配した方がいいかしら?


「……そうか。じゃあ行くといい」

「あ、ああ。言われなくても行くよ!」


 あれ!? ベネディクト氏、スルーしちゃったわよ!?

 毛布類に囲われた袋の中には偽エミリア嬢がいるのに!

 偽者だったせいで彼の勘が働かなかったとか?

 まぁ、本人は私が救出済みだから問題ないかもしれないけど。


「おい、あいつは……」

「外で待ってりゃ来るだろ!」


 待つ、ということは私が変身している男子のことでしょうね。


 慌ただしく向こうへ向かう二人の足音。

 その場でまだ動いていない様子のベネディクト氏。

 どうしようかしら? 隠身法でやり過ごす?


「……『深淵の福音』、影よ(・・)追え(・・)


 ん? ベネディクト氏が小声で囁くのを、私の超聴覚が拾う。

 深淵の福音は彼のギフトの名だ。今、ベネディクト氏はギフトを使用した?

 影に命じて『追え』と。つまり、影を操作して彼らを追跡する能力?

 またジュリアンさんと若干被っているような……。そこは使い方次第っぽいかしら。

 影操作系のギフトなら、G4の中でも汎用性が一番高そう。


 ……ある意味、一番警戒した方がいい相手かも?

 孫悟空、定番のエピソードの一つとして六耳獼猴(ろくじびこう)という、悟空と対をなす猿と戦うものがある。

 六つの耳を持つ猿は、姿形は孫悟空と同じなり、さらに千里の外も見通して、孫悟空の術やら記憶やらを完全にコピーしてしまうのだ。そうして孫悟空と同じ術を使ってくる強敵となる。

 孫悟空の『偽者』との対決エピソードだ。

 これは西遊記でも中盤のボスというか、オチとして中編の巻末くらいにくる強敵具合だ。


 創作物における『影』の能力は多岐に渡るが、相手をコピーする可能性が最も高いのはベネディクト氏の影操作能力になるだろう。

 彼が悪党とは言わないが、例によって孫悟空の力は他人に渡せない。

 ここは孫悟空的に警戒するに越したことはないわね。


 耳を澄ませて彼らの動向を探るに、犯罪者男子二人は外へ。

 ベネディクト氏は再び部屋に入ったと見る。

 ギフトによる追跡が可能なら、それに集中するためか。はたまた自動追跡であるなら成果が出るのを待つつもりか。

 しかし、まぁG4の皆さん。

 そのギフトが、やっぱり孫悟空との対決が視野に入っていそうな気がしてならないこと。

 やっぱり悪役令嬢が友人ルートは推定原作にはないのかしらねぇ。


隠身法(おんしんほう)


 私はここで彼に捕まってもつまらないからと姿を消し、扉から外へ出るぞとなったところで、透明化のみを解除する。

 耳を澄ませてだいたいの方向に当たりをつけ、犯罪者男子を追いかけた。


「もう行こうぜ、あいつに捕まったのかもよ」

「待てよ、もう少しだけ……あ、来たぞ!」


 まだ離れたところから二人のやり取りを聴きつつ、犯罪者男子二人に追いついた。


「てめぇ、遅ぇぞ、トビアス!」


 そう話しかけてくる。なるほど、変身相手の名前はトビアスか。


「悪い」


 私はボロを出さないように一言だけで返す。


「ったく……」

「見つかりそうだったから隠れていたんだろ? トビアス」

「……ああ」

「てめぇ、一人だけ隠れてやがって。どの道、俺らが捕まっていたらお前の名前も出したからな!」


 あらまぁ、仲間意識の薄いこと。

 一蓮托生、というより自分より隣人が恵まれた状況になるのは許せないタイプね。


「わかったから。早く行こうぜ」


 口調がこれでいいのかはわからないけど、今は彼らにとって緊急事態だろう。

 急かす分には口調が乱れても構うまい。


「そうだな。とっと行こうぜ、今回のが、うまくいったら借金も帳消しだ」

「ああ、そうだな……」


 借金? 借金の返済に追われて、貴族令嬢の誘拐になんて手をかけているのか。

 家門そのものの犯行というより、彼ら個人の事情で動いた?

 まぁ、黒幕がいるっていうなら彼らは末端も末端だろう。

 彼らに如何なる事情があろうと、その口振りからしてエミリア嬢には関係あるまい。

 この犯行はエミリア嬢個人を狙った恨みによるものなどではないのだ。

 であれば情状酌量の余地もない。


 唯一の救いが、この事態をベネディクト氏が気づき、ギフトを使って追跡を始めたことか。

 今のところヒロインが関わってくる余地がない。

 ということは本編エピソードというよりヒーローサイドの裏エピソード。

 『この一件で被害者を救えなかったことを後悔して……』のパターンでない限り、エミリア嬢が途中で救出されるルートはある。すでに救出済みだけど。


「…………」


 彼らの周りの様子を窺うが、ベネディクト氏が放ったはずの〝影〟は見当たらない。

 火眼金睛をオンにすれば、すぐにわかりそうだけど今は難しい。

 果たして、飛ばした影には盗撮・盗聴機能などあるのか。


 だんだん、私と、犯罪者グループ、ベネディクト氏の三つ巴になってきていない?

 いっそ彼に任せて手を引くのもアリ?

 でもなぁ。誘拐事件がまた起きてしまったのだ。

 被害者がエミリア嬢だけとも限らない。

 もしかしたら、こいつらが行く先に他の被害者がいるかもしれない。


 そうなると、どう考えたって孫悟空の力が使える私が潜入していた方がいいだろう。

 私なら被害者たちを丸ごと救える可能性が高い。

 ここまで来たのだから引けないわよね。ここで見逃す方が問題だ。


 おお、釈迦如来様、それがしは、ただ善果を得ようと望んでおります。

 どうぞ、この金の輪を外して、わたくしを俗人にかえしていただきとうぞんじます。

 え? たわけたことを申すな?

 そんなぁ……ウキーィ……。


今日も17時に更新。

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― 新着の感想 ―
六つの耳を持つ猿…しかもコピー能力持ち。何となくキメラっぽい気もしなくもないですね。んでもって前回のキメラがプロトタイプなら今度出てくるのは主人公側陣営のコピーの可能性もあったりする訳で・・・(何と…
推定ヒーロー?の能力がチラチラと明らかになって楽しいです! 脳内コントも面白いですwまだまだキンコジは外れませんね。 犯罪組織…どんな奴らなのか?ドキドキです!
ライバルのブラック悟空は中国で人気と聞いたことがある
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