23 社会活動
「具体的には何をするのでしょう?」
「いえ、それはまだ考えていないけど」
そもそも、正義の味方をするには悪党が必要だ。
その悪党こそが私であり、神様にもそう求められている疑惑がある。
G4が、やたらと私を敵視するのってギフトの影響だったりしない?
本能的に、私を倒すべき敵だと感じているとか。
そうなるとヴィンセント殿下も私にとってはアウトな相手ね。
「まぁ、今回はただの決意表明ってだけ」
「そうですか……」
しょんぼりヒロインちゃん。悪いわね、無計画で。
「まぁ、手始めに王都でもブラリと一緒に歩いてみる? 見回りよ」
「……! はい!」
落ち込んだヒロインちゃんをちょっと慰めて、帰りにスイーツでも買って帰る。
それだけだと私は思っていた。
でも、失念していた。
彼女は推定、乙女ゲームのヒロイン。
ならば、私以上に……歩けば棒に当たるのだということを。
「お婆さん、荷物を運ぶの、お手伝いしますよ」
「あら、お嬢さん、優しいねぇ」
そんなことある? レベルの大荷物を運ぶお年寄りというベタベタシチュエーションに遭遇。
ヒロインちゃん、ノータイムでお手伝いを決断。
「……私も持つわ」
「え! でも、マロ……ええと、貴方、に持たせるには」
ここで公女の名を出したら、お婆さんを驚かせることを配慮したのね。
でもね。それをいうなら、貴方も子爵令嬢なのよ。
貴族令嬢であることには変わりない。
「気にすることないわ。貴方が手伝いたいんでしょう? なら、私は貴方の手伝いをするだけ」
「それは」
「あと、私のことはマインと呼べばいいわ。今だけね」
「マ、マイン、様」
「ええ、フィナさん、よろしくね。お婆さん、私も手伝わせていただきますね」
「は、はい……。あの、もしかしてお嬢さんたちは」
「ふふ、今は気にしないで」
流石に服装から私が貴族令嬢であるとはわかったらしい。
休日なので簡素な服のつもりだけど、市井基準だとそうは見えない。
ちなみにヒロインちゃんは可愛いけど、素朴な服装。
こちらは下町の看板娘くらいの雰囲気だ。
「よっと……!?」
重っ! このお婆ちゃん、本気かしら!?
一人でこの大荷物を運んでいたの? 意外にパワフル!
「くぅ! これはなかなか……!」
ヒロインちゃんも苦戦している。
これ、いったい何が入っていてこんなに重いのかしら!
でも、私は〝剛力〟でどうにでもできる。
オフにしていたギフトをオンにして、ヒョイッと持ち上げた。
「……そっちも私が持ちましょうか?」
「えっ、ええ? マイン様、重くないのですか?」
「重いわよ?」
「でも、そんなに軽々しく……」
「まぁ、いろいろあって」
パワー系に関しては、いい加減バレそうな気がしている。
いろいろとやっているし、ある意味で一番使いやすいもの。
「はい、貸してみてね」
「あっ」
ヒロインちゃんが手にしていた荷物を片手で掴み上げた。
「わぁあ」
「あれまぁ」
二人に感動された。私が鍛え上げた力じゃなくて、ただのギフトだけど。
「どこに運べばいいの?」
「ああ、そっちに、お願いしても……?」
「ええ。フィナさん、彼女をお連れしてあげてね」
「はい!」
そうして、あっさりと目的地に到着。
本当にすぐそこだったみたい。
「ありがとうございます。いえ、ありがとうねぇ、お嬢ちゃんたち」
お婆さんが空気を読んで敬語を崩す。
まぁ、貴族令嬢として善行したかったわけじゃないからね。
そのまま元気よく挨拶をするヒロインちゃん。
お婆さんとお別れして、私たちはまた街を歩き始めた。
「凄いです、マイン様!」
「あれくらいならなんてことないわ」
物凄くキラキラした目で見られる。
ここまで素直に称賛されると私も照れてしまい、目を逸らした。
「ん?」
「どうしました?」
ヒロインちゃんから目を逸らした先に見知った顔を見つけたのだ。
「あそこにアイゼンハルト卿がいるわね」
「アイゼンハルト……?」
悲報。ヒロインちゃん、騎士キャラのアイゼンハルト卿の名前、知らない。
まだまだ攻略序盤だからかなぁ?
と、向こうもこちらに気づく。
私を見ると、嫌そうな顔で睨みつけてきた。
あれは街の見回りをしているのかしら?
騎士団にはまだ入っていないはずだけど、見習いとして仕事中かな。
「……ああ、この前の合同授業で、マイン様に負けた?」
悲報。アイゼンハルト卿、ヒロインちゃんにひどい覚え方されている。
あれ、ちょっと待って?
これ、イベントだったんじゃない?
お婆さんの荷物を運んであげようとして奮闘するヒロインちゃん。
そこに通りがかったアイゼンハルト卿がヒョイッと荷物を持ち上げて、颯爽と手伝ってくれる……みたいな。
「あー……」
「マイン様?」
「ううん、なんでも」
悲報。アイゼンハルト卿、フラグを折られる。
完全に私のせいである。まぁいいか。ウッキッキ。




