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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠


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12 合同授業、実技の時間

 殿下が言っていた合同授業の日。

 授業内容は、実技だ。


 この世界、生活魔法とそんな魔法の込められた魔道具があるファンタジー世界なんだけど。

 剣や槍を使って戦う騎士も健在だ。

 ということは、それだけ戦いの場もあるということ。

 王立学園に未成年が集まって平和な雰囲気もあるのに、戦いがある場所ではあるのだ。


 思えば、こういう、なんとも言えない世界観もまた乙女ゲーム世界っぽさを匂わせる。

 ダンジョンの類は流石に聞いたことはないんだけど……ないわよね?

 RPG寄りの乙女ゲームだったら普通にヒロインチームがバトルこなしたりしそう。


 もし、そうであったら私は?

 当然、ラスボス枠なのだろう。彼らとバトルになったら……。

 余裕で勝てそう。孫悟空だし。


 まぁ、そんなわけで実技とは木剣などを使った、戦闘系だ。

 今後の進路としては騎士科や淑女科といったふうに別れているんだけど。

 一年生の今の時期だとみんなが合同ってことね。


 貴族女性が剣を振るうことなんてないのか、というと、わりとあり得る。

 女騎士も普通にいるからだ。

 どうしても無理な子は、授業を棄権することも許されているので臨機応変な対応をするのだろう。


 さて、私はというと、参加することにした。

 わいわい、ガヤガヤといった具合で生徒たちは話し合っている。

 木剣を手にしてテンションが上がるとか、流石は学生ね。

 もちろん、私もちょっとテンションは上がる。

 公爵家の教育内容にこの手の習い事があったかというと、ない。

 せいぜい、ちょっとした護身術の嗜みくらいだ。

 たぶん実戦では役に立たないだろう。

 でも、ギフトを授かった以上はもう少し踏み込んで修めておいた方がいい。

 となると私の獲物は。


「これよね」


 学園の授業のために用意された木剣や、先端を布でくるんだ槍もどき。

 斧っぽいのまで用意されていて、生徒たちが自主的に自分に合った獲物を選ぶ。

 その中で私が選んだのは当然、〝棒〟だった。


 形だけ整えられた木の棒。槍もどきと違うのは先端に何もないこと。

 別に私の背丈にあった長さでもなんでもない棒。


「うーん……」


 周囲に気を配りながら軽く振ってみる。

 ギフトの恩恵で何かあるかもと警戒したけど、とくになさそうかな?

 棒術で戦う術を知っておかないと、如意棒が宝の持ち腐れになりそう。

 持ち腐れたままでよさそうなシロモノばかりな気はするけど。


「さて、それでは皆さん、授業を始めたいと思います」


 教員がそう声をかけて、各々の武器を手にしたままで私たちは並ぶ。

 参加しない生徒は近くで大人しく座って見学だ。

 やっぱり参加者は男子生徒が多いけど、女子にもきちんと参加者はいるわね。


「そうだな、まずは実技ですることは最終的にどういったことなのか、見本を見てもらおうか。ジークヴァルト・アイゼンハルトくん、前へ」

「はい」


 おっと。さっそく出たわね、G4。

 この流れ、もしかしたら私の知らない物語にある場面かもしれない。

 わざわざ教員が名指しで指定するとか、目立つこと。

 今日の合同授業には、例のヒロインちゃんことセラフィナ・アスティエール嬢もいる。

 クジ引きか、教員の指名で彼女がアイゼンハルト卿と戦うことになるとか……?

 あれ? でも、ヒロインちゃん、見学組よ?

 行儀よくお座りしているんだけど?

 この流れって。


「先生、相手は俺が指名してもいいですか?」

「……ん? ああ、構わないよ。君に見合った実力の者がいないからね」


 教員からの評価がすでに決まっているレベルなのね。


「──カーマイン・マロット公爵令嬢を指名します」


 ……はい、来ました。

 正直、来ると思いました。

 前回絡まれた時から思っていたけど、なんかすでに嫌われているのよね、この人に。


「カーマインくん、どうかな? 指名されたが。もちろん断っていい」


 教員は困った様子だが止める素振りがない。

 アイゼンハルト卿と結託して私を貶めようとしている……わけでもなさそう?

 まぁ、私が嫌なら断って、それで終わりか。でも。


「……わかりました。見本試合、務めさせていただきます」


 私が堂々と受けて立つと、生徒たちがざわめいた。

 身の程知らずだと嘲笑する生徒も一部いる。

 ヒロインちゃんの反応としては純粋な驚き、みたいね。

 やっぱり視線や態度からして、彼女に悪意は見えない。

 本物ヒロインちゃんの可能性が濃厚だ。


 私は形の整えられた木の棒を持って前に出る。

 そしてアイゼンハルト卿と相対した。


「……本当にやる気かよ」

「貴方が私を指名したと思いましたが?」


 そう返すと、苛立ったように睨んでくる。

 なーんで嫌われているのかしらねぇ、これ。

 本当に絡んだことなんてないはずなんだけど?


「わかった。お前に本当のギフト持ちってのが、どういうものかを教育してやる」

「……何それ」

「ハッ! わからないのか? これだから偽ギフトは」


 偽ギフト!?


「なんでしょうか、その名前は」

「教会で洗礼を受けた時、洗礼水晶にまともな文字が浮かばなかったんだろう?」

「それはそうですが」

「挙句の果てに、お前は『聖女』や『大聖女』を偽ろうとしたらしいな?」

「……はい?」


 聖女や大聖女を偽ろうとした?


「え、それ、私が、ですか? いったいなんの話です?」

「とぼけるなよ! お前が洗礼を受けた時、水晶は確かに光った。だが、そこに書かれた文字はまともな文字じゃなかった! そして『聖女』や『大聖女』を騙ろうとして、やめた!」


 なんのこっちゃ。

 いや、待って。

 私は洗礼の時は思い出す。確かに私はあの時、ギフトの名を口にしようとした。

 だが、思い止まったのだ。そして誤魔化した。

 けれど、誤魔化す前に口にした私の言葉は。

『せい……』

『大聖……』

 ……だ。


「あー……」


 『せい』天『大聖』孫悟空。そう、口にした部分が。


「聖女と、大聖女?」


 全然違う! いや、確かに大司教様がそんなことを聞き返していたけど!


「とてつもない誤解ですね。しかし、その場で大司教様に否定したはずですが」

「だが、お前がギフトを偽ったのは本当のことだろう!」


 うーん。これは攻略対象あるある、暴走しがちな正義感を発動しているのかしら。

 私が悪役と決めつけているからこんな態度になるのよね。

 別に彼の好感度など稼ぐ気はないので、いいと言えばいいんだけど。


「…………筋斗雲(きんとうん)

「あ?」


 私はボソリとその名を口にし、天に向かって片手を上げる。

 すると、あっという間にモクモクと雲が発生し始め、ほんのりと辺りを暗くした。


「これが私のギフトです。空を曇らせることのできるギフト。何も偽っていませんが?」


 丸ごと全部、嘘だけど。


「……!」


 しかし、他の生徒たちや教員の前でギフトを示した効果は大きかったようだ。

 そういえば、人前でギフトを使ったのって身内の前だけだった。

 そこで、何やら噂がねじれて私が偽ギフトなんて話になっていたのか。


「そ、それがどうしたって言うんだよ!」

「はぃい!?」


 何が? あんたが偽ギフトとか因縁つけてくるから証拠を示したんでしょうが。


「私は嘘などついていないと証明しましたが、謝らないのですか?」

「ぐっ……」


 すぐに謝らないと。プライドかしら。私は肩を竦めて、溜息をつく。


「ギフトは! もっと凄い力なんだよ! なんだよ、空を曇らせるだけって! そんなのはギフトじゃねぇ! お前がギフト持ちって名乗るのが、俺たちへの侮辱なんだ!」


 そうかぁ。彼の誇りを、そうして私が傷付けていたということか。

 まぁ、もっと凄い力があるのは同意である。

 ヴィンセント殿下は少なくとも疑っていたみたいだ。

 でも、目の前のアイゼンハルト卿は『空を曇らせることができるだけ』という情報自体は信じているらしい。

 ある意味で純粋、単純。そういうキャラなのだろう。

 ただひたすらに私にとってだけ面倒くさい。


「……もういいですか? 先生、私は彼の一方的な主張に付き合う義理がありません」

「っ!」

「あ、ああ……。ジークヴァルトくん。何やら思うところがあるのはわかったが、これはただの授業の一環だ。決闘ではない。そのことは理解しているね?」

「……はい、先生」


 苛立ちつつも、そこは了承してくれた。まぁ、流石にね。


「それでは双方、怪我をしないように。くれぐれも気を付けて。互いに降参した相手を攻撃することは許さない。いいね?」

「わかりました、先生」

「わかってますよ」

「それでは、互いに武器を構えて……始め!」


 こうして、なぜか実技の授業でアイゼンハルト卿と試合をすることになったのだ。


「……本当にやめない気か?」


 意外。すぐに突っ込んでくるかと思ったけど、まだ対話を続けるらしい。


「私も思うところがあって前に出てきたので」


 というのも、さっきからこう、ウズウズするというか。

 全身の毛が逆立つような感覚というか。これ、たぶんだけど……。


「怪我をしても知らないぞ?」

「まぁ、大丈夫じゃないかしら」


 私が余裕の態度を見せると、親の仇のような迫力で睨みつけてくるアイゼンハルト卿。


「……俺をバカにしているのか?」

「あのぉ、もう試合始まっていますよ?」


 私は挑発するように彼にそう告げる。

 ぐだぐだ喋ってないで、掛かって来いと。

 あれ、おかしいな。まるで私の方が喧嘩を売ったみたいになっている。

 喧嘩を売られたのは私の方である。


「そうか! なら覚悟しろよ! ギフト持ちを相手にするってことをな!」


 とうとう突撃してくるアイゼンハルト卿。

 その口振りからして、彼のギフトは表に出回っているだけの効果じゃないようだ。

 騎士としての実力をブーストする力?

 身体強化とかはされているかもしれない。ただ、それならば私も同じだ。


「おらぁッ!」


 彼が思いきり振り被って剣を振るう。

 手加減とかする気なさそう。骨が折れるわよ、それは。


「はい!」

「!?」


 カァン! という木製武器同士の小気味いい音が鳴る。

 私が棒で彼の木剣を弾いたのだ。


「……まだだ!」


 すぐに体勢を立て直す彼。そして、木剣を振るう。


「ぐっ!」

「次、行きますよー」

「なっ」

「はい! はい! はい!」


 棒術などド素人の私が騎士の彼を圧倒するように立ち回る。

 当然、これはギフトの恩恵に違いない。

 令嬢がしていい動きか、あやしいレベルでパワフルに立ち回る私。


 カン! カン! カン!


「はい! はい! はい!」

「うわ、ぐっ、うぐっ!」


 たぶん、棒術なんて相手にしたことがほぼないのだろう。

 アイゼンハルト卿はあっという間に押しやられていく。


「はい!」

「ぎゃっ!」


 思いきり、彼の鳩尾に向かって棒を突き出して、吹っ飛ばした。

 そうして私はブンブンと棒を大回転させ、振り回す。ウッキィー!


「はい!」


 勝利のポーズ、決め!


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― 新着の感想 ―
マチャアキ(?)版で良かった。 慎⚪版とか他の版ではぼろ負けしてたかも知れない(笑)
めっちゃ好きです! ウッキィー!
勝利のポーズってのはアレですか 堺正章版のアレですか(商品脳再び)
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