表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/31

11 G4との接触

 千里眼を使おうとすると視界が高速で飛んでいくような感覚だった。

 今回は標的を指定していたからか、そこに向かって、とてつもない勢いで視界が飛ぶ。

 そして私が視たのは。


『…………』


 学生寮のお風呂場でシャワーを浴びているヒロインちゃん (仮)だった!


「普通に覗き!」


 さっそく悪用になっている! いえ、同性だけど!

 私は別にそっちじゃないけど!


 他人に見られて気分のいいもんじゃないわよね。

 私はすぐに視るのをやめて、視界からヒロインちゃんの姿が消えた。

 思いがけないサービスシーンを引いてしまったわ。


「はぁ」


 とりあえず火眼金睛も使えることがわかった。

 遠く離れた場所を視ることができる。

 視界だけが吹っ飛んでいく感じで、慣れないと気分が悪くなりそう。


 気を取り直して。

 ヒロインちゃんは今、プライベートすぎる時間だからナシ。

 身近なところを視てみよう。


 そうやって、いくつか試していってわかった。

 これは確かに遠くの物事を視ることができる千里眼だ。

 ただ、火眼金睛では視界に映るだけで、現地の音は拾えないみたい。

 これは孫悟空の聴力と併用して偵察に使ったりするんだろうな。


「…………」


 一つ、力を意識的に使ったことで、ソワソワとした気持ちになる。

 孫悟空の能力で最も有名なものは間違いなく如意棒と筋斗雲だろう。

 剛力もまぁ有名か。

 火眼金睛も大きなエピソードでもあるが、もう一つ。

 いや、あと二つ。欠かせない能力がある。


 それは『七十二変化』と『分身』の術だ。

 前者は孫悟空が虫や他人の姿に化けるエピソードからくる、なんにでも変身できる力。

 分身はいわずもがな、孫悟空の〝毛〟から作られる小さな分身の作成だ。


 分身は、孫悟空本体ほど強くはない。

 強力な攻撃を受けると、あっさりと元の毛に戻ってしまう。

 それでも、たった一人が軍勢になってしまうのは、とんでもないだろう。

 魔法とギフト文化の発展で、まだまだ騎士が現役なこの世界ではとんでもない力だ。

 代償としては孫悟空が禿げるとか。

 あ、それに関しては仙術ですぐに毛が生えてくるとかあったわよね?

 つまり『増毛』もこのギフトの付加価値なのでは?


「……役に立つかもしれないから覚えておきましょう」


 変身能力はあらゆる物に変身できる。

 虫や動物、他人の姿に変身したり、三蔵法師を別の姿に変えたりもした。

 正直言って、これだけでも今の世界観では破格すぎる。

 悪いことをしようと思ったら、どれだけでもできてしまう。


「絶対にダメだけどね!」


 悪いことを好き放題にした結果は仏罰なのだ。ノー、仏罰。


 総じて孫悟空の力とは、どれか一つだけでもチート級。

 でも、それらは三蔵法師というお目付け役と、その旅が善良であるからこそ許されているに過ぎないものだ。

 悪党としてこの力を振るい、暴れ回る場合の末路は先述の通り。


 しかも、ワンチャン、この世界だと何もしなくても悪役にされてしまう可能性がある。

 まぁ、それはヒロインちゃんや攻略対象らしき彼ら、G4次第だ。


「……今日はこのくらいにしておきましょう」


 七十二変化と分身を試すのは、またの機会に。

 あまり一度にやり過ぎると感覚が麻痺してしまいそうだもの。

 実際、火眼金睛だけでもちょっとテンションが上がっている。

 これ、見た目が変化しなかったらヤバかったわ。

 絶対、普段からたくさん使ってしまうやつ。


 でも、見た目がナイナイ。

 貴族令嬢としては人様に見せられた姿じゃなくなるので、やっぱり使用禁止ね。


「……サングラスってこの世界にあるかしら?」


 いざという時のために公爵家で作ってもらっておこう。


 ◇◆◇


 さて、調査と様子見の日々を送りつつ、学園では大人しくしていた私だが。

 とうとう噂のG4と接触する日がやってきてしまった。


「…………」

「やぁ、カーマイン嬢」

「……どうも、お久しぶりです、第一王子殿下」


 話しかけられた。

 極力、私からは接触しないようにしていたのに。

 しかも、しかもだ。

 私のもとにやってきたのはヴィンセント殿下だけではない。


「「「…………」」」


 はい、ギフテッド4さんたち、勢揃いです。

 呼んでない、呼んでない。なぜ私に絡みにくるのか。

 というか、この人たち仲良しなんだ。


「もっと早くに君と再会できると思っていたのだが、今日までまったく会わなかったな、カーマイン嬢。もしかして避けられていたのかな」

「……いえ、そのようなことはございませんわ、殿下」


 めっちゃ避けてました。


「……フ」


 そして、たぶん殿下にはそのことがバレている。当たり前か。


「相変わらず教会に通っているのかい、カーマイン嬢」

「はい、殿下」

「なんだったか。ブツバチを怖れているのだったか」

「ええ、その通りです、殿下」

「ブツバチ……? 殿下、それは?」


 眼鏡をかけた頭脳派っぽい男子、おそらくジュリアン・ヴァレンシュタインが私たちの会話を拾って、疑問を投げかけてくる。

 自然と会話に入ってくるなぁ。

 一応、第一王子と公爵令嬢の会話よ、侯爵令息。


「神の怒りだそうだ」

「なんだそりゃ」


 うわぁ。ツッコミとはいえ殿下にその口に聞き方をするのか、騎士よ。

 どうも主従というより、友人同士な雰囲気ね。

 あの強面で冷酷そうな殿下が、そういう態度を許すとは。


「……神の怒りを買うようなことをしたのですか?」


 と、言うのは黒髪の男子生徒。

 影のあるイケメンといったところだ。

 こちらがおそらくベネディクト・サンプリエール氏ね。

 教会から来ていることしかわからない。

 なんだか裏事情とかありそうだけど、そういうのは知らない。


「いいえ。神の怒りを買わないように、普段から謙虚を心掛けている。そのようにヴィンセント殿下には話しましたわ。私の信心深さを示すための会話でした」

「……そうですか」


 しっかりと言い返すと、フイッと視線を逸らすベネディクト氏。

 攻略難易度がそれなりに高いタイプかなぁ。


「カーマイン嬢、そろそろ合同授業が始まる時期だが」

「……はい」


 合同授業というのは、初めに割り振られたクラスだけの授業ではなく、別クラスと合同での授業のことだ。そのままね。


「実技の授業で一緒になることも多くなるだろう。その時はよろしく頼む」

「……わかりました。お声掛けいただき、ありがとうございます、殿下」


 どうやら用件はそれだけだったらしく、ヴィンセント殿下はあっさりと去ろうとする。

 私は少しホッとした。しかし。


「……教会になんか通っても、ギフトの内容が変わることはないぜ?」


 短髪の騎士、ジークヴァルトがそんなことを私に向かって口にする。


「……どういう意味でしょうか、アイゼンハルト卿」


 ピリリッとした空気をまた感じる。


「どうやら、お前も『聖女』のギフトが欲しかったらしいが、ギフトは神に授かるものだ。変更はできないってことだ。未練がましく教会に通っても意味なんてないからやめておけよ」

「…………」


 何言ってんの、このバカ。私は感情が冷えていくのを感じる。

 よりにもよって私に因縁ふっかけて挑発してくるとか。

 あんたの家で暴れ回るわよ、ウッキー!


「……ヴィンセント殿下。側近の選定に時間がかかっているようですね。大変でしょう」


 お前、こんなのをそばに置いてんの? である。


「すまない、カーマイン嬢。ジーク、でたらめな噂を元にして彼女を愚弄するのはやめろ」

「……すみません、殿下、つい」


 何が『つい』なんだか。


「私が寛容でよかったですわね、アイゼンハルト卿。私にとっては意味のわからない、的外れなお言葉でしたが、これで貴方の浅慮さは知ることができました。とてもわかりやすくて、よろしくてよ」

「……!」


 睨み返されるけれど、こちらも絶対零度の瞳で返し、肩を竦める。


「殿下、それではまた」

「……ああ、すまなかったな、カーマイン嬢」


 殿下は一応諫めたが、ジークヴァルトの言葉を途中で止めなかった。

 私の反応を窺っていた様子だ。もっとブチギレてもよかったかしら。

 でもね、私は寛容なの。だって心に孫悟空を飼っているから。

 大抵のことは『でも、こいつシバき回してやれば、すぐに泣き入れそうよねぇ』と受け流せるのだ。

 ……完全にチンピラの思考ね。お師匠様、私まだ修行が足りないみたいです。


※ジークヴァルトの髪色を変更。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱりゴキブ◯4だったな
私も明日から心に孫悟空飼おう 西遊記原典をはるか昔に読んだけど三蔵法師がへなちょこな男だったことしか覚えてない
心に孫悟空がいるから寛容な主人公とか面白すぎる キレッキレですね うろ覚え西遊記知識で最後までついていきます!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ