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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠


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10 調査と様子見──火眼金睛

 さて、この世界が乙女ゲーに類する世界か否か。

 原作など知りようがないので、地道な調査をしていく。

 私を襲撃させた何者かが現実的に存在することも念頭に入れておこう。


 学園生活を平和に過ごしつつ、教会で祈りつつ。

 調べた結果だ。

 ギフトを授かったとされる五人の要注意人物たち。


 セラフィナ・アスティエール子爵令嬢。

 金髪の美少女。ギフトは『聖女』。

 庶子ということはなく、普通にアスティエール家の令嬢らしい。

 ただし、幼い頃から長い間、彼女は領地で暮らしていたそうだ。

 そのせいか、教育が甘かったのか、天真爛漫な様子。

 領地でも十三歳で洗礼は受けたそうだけど、その時にギフトは授からなかった。

 王都に来て、記念ということで改めて洗礼を受けたのがきっかけで『聖女』のギフトを授かったらしい。


 順当に考えると、彼女がヒロイン、物語の主人公だと思われる。

 まぁ、そんな物語が実際に地球にあったのかはさておき。

 一番気になることとしては彼女が私と同じ転生者なのかどうか。

 注意深く観察するにも正直、私が彼女を意識していると思われたくないので何もできていない。


 まだ入学して間もないこともあるかもしれないが、とくに女子生徒から嫌われているような様子などないし、あからさまに私の悪評を流そうなんてこともしていない様子。


 よくある〝ヒドイン〟転生タイプではなく、純粋なヒロインの可能性が高そう。

 ある意味で、そっちの方が厄介な気もするけど……。

 そもそも敵対する立場なのかさえ不明なので、性格がよさそうなら、それでいいのかも。


 続いて、攻略対象らしき四人。ギフテッド4、G4たち。

 ヴィンセント・フォン・グラムザルト。第一王子。ギフト『太陽の覇道』。

 ジークヴァルト・アイゼンハルト。侯爵家、次男。騎士。ギフト『不落の守護者』。

 ジュリアン・ヴァレンシュタイン。侯爵家、三男。頭脳派。ギフトは『真理の探究』。

 ベネディクト・サンプリエール。教会関係の一般男子生徒。ギフトは『深淵の福音』。


 ……と、まぁ、一般的に知られているらしきことまで掴んだ。

 こんな人たちがいるなら、もっと早くに当たりをつけられた気がする。

 ちょっと孫悟空に気を取られすぎていたみたい。


 一通り調べたんだけど、彼らの名前から思い出す物語などはなかった。

 まぁ、テンプレート的なメンバーだとは思う。

 ここは変に『なんらかの物語の世界』という疑いは忘れた方がいいかしら?


 だって仮に強制力的なものがあったとしても、私はそれがわからない。

 でも、これだけは言える。


 ……流石に乙女ゲームに『斉天大聖孫悟空』は出さないでしょ。


 仮に原作があったとしても私のギフトは、絶対に別物だったと思う……。


 彼らを探るにあたって、私のギフトを使えばきっと楽なのだろう。

 どうやらギフトによって聴力をかなり研ぎ澄ますことができるみたいだし。

 それに孫悟空の代表的な能力の一つ、『火眼金睛(かがんきんせい)』という眼の力がある。

 ……いえ、実際に私が使えるかは確かめていないけど。


 火眼金睛の能力は『真実を見抜く』『暗視』『千里眼』がある。

 遠くにある物事を見て旅の助けになったり、化けた妖怪の正体を見破ったり、暗闇にいる敵をはっきりと視認したり、といったエピソードがある。

 如意棒に筋斗雲、芭蕉扇まで使えるんだから、たぶん火眼金睛も使えるんだろうな……。


 でも、私はそれを使わない。

 だって便利だもの。

 便利ということは、楽ということだ。

 人間は楽にはすぐに慣れてしまう。

 そうして慣れた先に私に待つのが何かと考えたら……。

 とても恐ろしくて使えない。


 いえ、本当は使ってみたくはあるのよ。

 私だってチート能力を駆使してウハウハなライフを送りたい。

 でもねぇ、やっぱり仏罰が怖すぎるのよ。

 その行動、五百年の幽閉と引き換えだと考えて実行できますか?

 ……って聞かれたらねぇ?


「何も持たないより、精神的にキツいわ……」


 それでも魔が差して、ギフトを自由に使いたくなるかもしれない。

 そんな時は考えるの。


 ギフト『玄奘(げんじょう)三蔵法師』やギフト『お釈迦様』持ちが現れない保証はない、って。

 実際、私が孫悟空なんだもん。

 そもそもギフトが神からの授かりものって考えると、私のカウンターとして、そういうギフト持ちが現れる可能性は決してゼロじゃない。

 リスクが高すぎる。


「……悪行には決して使わない」


 暴れ回ったり、人から大切な物を奪ったり、そういうことには使わない。

 常に精神修行状態。

 これで代償とか別に何もなかったらバカみたいかもしれないけど。


 いえ、そもそも私は公爵令嬢だ。

 ギフトなんてなくても、充分に恵まれているのである。

 なので、これは贅沢、贅沢よ。


「…………」


 でも、使えるかどうかは確かめておいた方がいいかな……?

 絶対に使わない、とは言わない。

 だって芭蕉扇の時みたいに人を助けるためには使うべきだもの。

 だったら何ができるのか確かめるのも必要では?


 ……というのは、ずっと考えていた。

 考えていたんだけど、例の『不老不死』問題があった。

 だから極力、体が成長するまではギフトを使用したくなかったのだ。

 その年齢で不老になりたくなかったから。


 今の年齢だと……まだマシかな。

 大人とは見られない気がするけど、悪役令嬢ポジションなせいか、スタイルはいい。

 流石に私も不老不死まではないと思う。

 思うんだけど、怖い。もうずっと。


 死んでしまうより、死ねなくなることの方が絶対に恐ろしいのよね……。


「…………」


 悩んで、悩んで。決めた。


「一回だけ、一回だけならセーフではありませんか、お釈迦様」


 能力の把握。それはいつか、世のため、人のために役立てると誓います。

 また、この能力の行使によって得られる情報で、決して善人に悪意は向けない、攻撃的には使わないと誓います。


 と、いうわけで。


「火眼金睛、使ってみた件について。始まるわよー」


 私は内心、ワクワクしながら準備を整えた。

 場所は誰にも見られないように邸宅にある自室。

 そして鏡の前。


 火眼金睛について注意しなければならないことがある。

 それはズバリ『見た目』の問題だ。

 原典準拠ならば、白目部分は炎症を起こして血走って赤く染まり、瞳の色が金色になる。

 格好いいというより〝怖い〟見た目となるのだ。

 それも常時、その状態に陥ってしまい、弱点もある。

 貴族令嬢としては見た目がそうなる時点でアウトだ。

 火傷を負うのと大差がない。


 ただし、それはあくまで原典の話。

 ギフトとしては、発動時にそのような見た目になるかもしれないけれど。

 聴力がオンオフできたように、火眼金睛もオンオフが可能ならば見た目もそのままということはないだろう。


 希望的観測かも?

 でも、そこまで言うと、本当にいざという時にさえ使えないギフトとなる。


 あくまで、これはギフトなのだ。

 私自身が孫悟空の転生とかではない。

 まったく使えない、使うことが許されない力なんてことはないはずだ。

 要は加減の問題ね。


「すぅ……はぁ……」


 深呼吸してから、念のために〝片目〟だけで火眼金睛を使用する。

 最悪、見た目が変化したまま固定されても最小限に被害を抑えるために。

 手の平で右眼を閉じ、左眼だけで鏡を見る。


「──火眼金睛!」


 使用すると、やはり私の眼に変化が起きた。

 白目の部分がじわりと赤く染まっていく。

 でも、熱くもないし、痛くもない。

 瞳の色が金色に変化した。

 やはり原典準拠の変化だろうか。いや、白目部分は本当に赤く染まっただけかな?

 充血しているのとは違う感じ。

 それが左眼だけ、その状態になった。


「うわぁ……」


 でも、見た目、怖っ。

 こんなの絶対に他人に見られたらアウトだわ。

 そもそも孫悟空も、この見た目のせいで風評被害を食らうエピソードがある。

 それくらいリスキーな能力なのだ。


「次は『オフ』にできるか」


 千里眼を試す前に、ギフトをオフ状態にすることを意識する。

 そうすると、あっさりと見た目が元の状態に戻った。


「……よかったぁ」


 やっぱり固定じゃない。ギフトはあくまでオンオフ可能みたい。

 思ったよりも見た目が怖かったから、本当によかった!


「次は能力として使えるかどうか」


 もう一度、火眼金睛を発動する。

 再び私の左眼が赤く染まり、金の瞳となる。


「下手に王家の秘密とか知るとアレだから、ヴィンセント殿下はダメ。視るなら彼女ね」


 完全に今、覗きとして使用するわけだけど、同性だから許してほしい。

 私はセラフィナ・アスティエール子爵令嬢を意識した。

 私の左眼は現在の彼女を俯瞰して視る。


「うわ……!」


 そうして、彼女の姿を視て、私は思わず声を上げた。


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― 新着の感想 ―
沙悟浄がいる可能性だってあるはず……
なんか西遊記の原典を読みたくなってきた…
孫悟空のファン、というより、ゲームの西遊記のファンなので……そこら孫悟空の能力ワードが出て来るたびにわくわくしてます^^ 語り口も軽やかで楽しいので、続きを楽しみに読ませていただきます。
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