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親指サイズの王子様

最近、昔に流行ったダメ発明家が子供たちを小さくしてしまうと言う映画を何十年ぶりにみまして、こんな話が書いてみたくなりました。

私は部屋を這いつくばって、床を凝視している。


「アンドリュー殿下!聞こえますかー、ここにお皿を置くので乗ってください!!」


動いてはいけない、動いたら潰してしまうかもしれない。


目の端で何かが動いた。


私の親指と同じぐらいの人間がお皿の上によじ登った。髪の毛がボサボサに乱れている。


「リン!大声を出すな、鼓膜が破れるだろう。窓を開ける時は一言声をかけろ。特に今日みたいな風の強い日はだ!!」


私はそっとアンドリュー殿下が乗ったお皿を机の上に置く。


「仕事の続きをしたいが、まず櫛をくれ」


私はドールハウス用の櫛を渡し、小さな姿見を目の前に置く。


「紅茶も持ってきてくれ」


こちらもドールハウス用の食器を持ってくるが、この小さい食器に紅茶を1滴入れるのは本当に苦労する。


小さな薬味用のスプーンを紅茶に浸して、なんとか小指の爪サイズのティーカップに紅茶を入れ。小さいミルクボトルと砂糖を入れたカップを小さなテーブルセットの上に置く。


「この淹れ方だと本当に紅茶はまずいな」


「濃すぎますか?お湯だけならこちらに用意してます」


「ああ、ここに置いてくれ」

私はお湯を入れたミニチュアポットと一緒に、小さく砕いたクッキーも置いてみた。


アンドリュー殿下はちらっと私を見たが、無言で紅茶を飲みながら、クッキーも食べてくれた。


「お前も残りの紅茶とクッキーを食べていいぞ」


「うわーーありがとうございます殿下!」


「だから大声を出すな!!飲み終わったら、北の離宮へ行く準備をするぞ」


その時、廊下が騒がしくなった。


「リン!!アナが来る。俺を隠せ!」


私はパニックになり、つい殿下を摘み上げ、胸ポケットに押し込んだ。


「何してるんだ、出せ!!」


隠せと言ったり。出せと言ったりどっちなのよ。


「シーーーー殿下静かに!」と言うと同時にドアが開いた。


「リン、お兄様は何処にいるの!!!今日こそリンを返して貰うわよ!」


「アン様、おはようございます。アンドリュー殿下は席を外しております」


アン様は机の上をちらっと見て、


「お兄様はまたドールハウスで遊んでいるの?忙しくて私に会えないって言うくせに。やっと視察から帰ってきたと思ったら、私のリンをお兄様付きの侍女にするし。帰ってきてからずっと会えてないから、文句も言えないじゃない」


一気に捲し立てて、アン様はソファにどかっと座った。


「アン様、いかなる時も淑女の佇まいでお願い致します」


「リンしか居ないからいいじゃない。どうしたの、いつもよりお堅いのね。いつも言ってるじゃない、うるさいお兄様がいない時は楽にして良いって」


胸の辺りから、

「何だと!」と言う声が聞こえたがスルーした。


「あら?今遠くからお兄様の声が聞こえたような?」


「アン様、殿下は庭園の方に行くと仰っていたような」


アン王女はガバッと立ち上がって、

「お兄様を捕まえてくるわ」と言って走り去っていった。


ポケットの中をのぞくと無表情のアンドリュー殿下が見える。手をそーっと突っ込んで手に乗って貰い、デスクに殿下を降ろす。


ポケットの中が苦しかったのか、顔も赤い。


「殿下、大丈夫ですか?」


「大丈夫だ、だが俺は元に戻る必要がある。アンが戻ってくる前に用意をするぞ。出発はもう明日だ」


私はバックに必要なドールハウスの家具などを詰めながら、何でこうなったのだろうと考えていた。


王太子である、アンドリュー殿下は王家の特徴である銀髪に青い目を持ち、眉目秀麗、頭脳明晰、品行方正と3拍子揃った完璧王子である。


しかし、私は私の母がアンドリュー殿下の乳母をしていたので、幼い頃からこの男を知っている。


あの貼り付けた笑顔の裏はかなり腹黒い男だと言うことを。


小さい頃は私の赤い髪を散々揶揄われ引っ張られたり、大嫌いなカエルを投げつけられたり、本当に酷い目にあった。


私とアンドリュー殿下が10歳になった時、アン王女が生まれ、私は侍女見習いとしてアン王女付きになることになった。私はアンドリュー殿下から離れられるのが嬉しくてニコニコしていたが、殿下は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


揶揄う相手がいなくなったからかな?


そしてその後から、子供っぽい殿下はなりをひそめ、勉学にますます精を出し、完璧なマナーとその美貌で年頃の令嬢をどんどん虜にしていった。しかし、婚約者を作るのは20歳になってからと、婚約の打診は頑なに拒否してきた。


そして半年前に20の誕生日を迎えたのだが。誕生パーティーのすぐ後、アンドリュー殿下は突然視察の旅に出て、もう半年ほど王宮に戻ってきていない。


私とアン王女はそう聞かされてきた。()()()()()()と。


おかしな点は色々あった。


この半年間、国王陛下ご夫妻は不自然なほどにアンドリュー殿下の話題を避けていて、アン王女は視察先から手紙すら届かないとかなり怒っていた。


3日前の事、アンドリュー殿下宛の手紙がアン王女に間違って届けられてしまった。アン王女はダンスの練習中で私は手が開いていたので、アンドリュー殿下の執務室へ手紙を持って行く事にした。


ノックをしたが当然誰もいるわけもなく、視察にはついて行かなかったアンドリュー殿下付き従者のマリウスさんもいない。


大事な手紙をドアと床の隙間から部屋に投げ込むわけにもいかないし。。


しょうがない。


私はアン王女が小さい時に自分で内側から鍵をかけて部屋から出られなくなった事から、アン王女の私室と執務室の鍵を持っている。そして今回のようにアンドリュー殿下の書類や手紙がアン王女の執務室に届けられる事が多いので、アンドリュー殿下からも直々に彼の執務室の鍵を預かっている。

視察に行かれてからは、手紙が来ることも少なかったので、そういう間違いもなかったのに、今回は何処かに古い手紙が紛れ込んでいたのだろうか?


「アンドリュー殿下、お邪魔しますね。手紙を届けにきました」


いないのはわかっているが、つい言ってしまう。


机の上の書簡箱に入れようとすると、机の上のドールハウスの家具が置いてあった。


はて?何でこんな所に?


しかもさっきまで遊んでいたように、食器とか本物の食べ物までお皿に載っている。


そして。。ベットもあり、洋服が周りに散らばってる。


最近の人形の服はきちんとできているのねとつい摘み上げてしまった。


アンドリュー殿下ってお人形遊びの趣味あったんだっけ?


昔は苦手だったアンドリュー殿下も最近ではあまり怖くない。


これは揶揄う材料ができたとちょっとニヤついてしまった。


お人形遊びね。。アン王女とよく遊んだなと思って、ジャケットとズボンを小さなクローゼットにかけて、ベットの上のシャツを取ろうとすると、ベットがなんか膨らんでいる。


ブランケットの下にも洋服があるのかなとブランケットをめくろうとすると。


上半身裸の小さな殿下がブランケットの下から出てきて

「この変態、服を返せ!!!」って叫んでる。


私はそのまま後ろに倒れ気を失った。

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