第5話『家にラスボスがいたんだが』
ぽかぽかと溢れる日差しの中、まぶたがゆっくりと開く。
まだ赤ん坊の体だが、頭の中は意外としっかりしている。
「うー」「あー……」
(ふぁ……異世界3日目の朝か)
昨日は『G』になる事もなく快眠だった。
あの創造神、メチャクチャだけど約束は守ってくれるらしい。
さて、この世界で生き抜くための指針が欲しい。
強さとは何か? レベルか? スキルか?
「あー!」
(スキル『インターネット』──起動)
頭痛の副作用は嫌だが、背に腹は代えられない。
検索ワードは『エルディアでの強さの定義』。
――ピピピ……検索完了。インストール開始。
あびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!!!
相変わらずの激痛。
だが、その後に流れ込んでくる知識は本物だ。
脳内に整理された情報は、この世界の残酷なまでの実力主義を示していた。
この世界の強さは、3つの柱で決まる。
1:【スキル】(すべての基盤)
この世界の主力。魔法、剣術、生産まで多種多様。
特に《EXスキル》は別格で、これを持つ者は国家戦力級。
「スキル最強説」は割とガチらしい。
2:【レベル】(地力と伸び代)
一般人の限界はLv.99。各国の英雄クラスがこの領域。
それを超えるLv.100以上は《超越者》と呼ばれる。
ただし、戦闘経験のない高レベルが、歴戦の低レベルに負けることもあるため、過信は禁物。
3:【素質】(理不尽な才能)
生まれつきのスペック。
オレのような「生後3ヶ月で魔力操作ができる」ご都合主義や、《使徒》《ディヴァナーク》と呼ばれる存在がこれに当たる。
結論:「スキル × レベル × 素質」の掛け算。
どれか一つでも欠ければ二流、全て揃えば最強。
なるほどな……
女神ナルシア様に造られた最強ボデーがあるから、素質は間違いない。あとはスキルの練度と戦闘訓練をサボらなければ、強くなれるだろう。
早速、昨日の復習がてら【魔力操作】で遊んでいると、廊下から重々しい足音が近づいてきた。
扉が開くと、そこには――
黒の戦闘装束に身を包んだ、銀髪蒼眼の美丈夫。
返り血と土埃に塗れたその姿は、まさに戦場帰り。
イケメンが来た!!!
無表情のまま近づいてくる。怖い。
これは必殺「ギャン泣き」のカードを切るべきか?
「あら、アレス起きてたの?」
殺伐とした空気を中和するように、背後から優雅な声が響いた。深紫のドレス、銀白の髪。雪の精霊のような美女。
彼女こそが、オレの母――セレスティーナだ。
「ふふ、早起きなんてアレスは今日もお利口さんですね」
母親が微笑み、血塗れのイケメン父が、無表情のままオレの頭を撫でる。
ゴツゴツした手。でも、撫で方は不器用なほどに優しい。
……なるほど、この無愛想なイケメンが父親か。
「……まだ戦闘訓練は無理か」
前言撤回。
コイツ、生後3ヶ月の息子に何を求めてるんだ?
「もぅ、何を言ってるんですか?」
母さんがクスクスと笑う。
「あと1年は待たないと。それまでに魔法と礼儀を叩き込んで、“知性と魔力を備えた貴族戦士”に育てるんですから」
どっちも脳筋かよ!!
児童相談所案件だろこれ。
オレが内心でツッコミを入れていると、背後に控えていた筆頭侍女・リュミナが進言した。
「――僭越ながら。戦闘訓練は最低でもあと2、3年は必要かと」
ナイス、筆頭侍女さん!
その進言でオレの寿命が数年延びた。
いい機会だし、二人のステータスを覗いてみるか。
まずは母親から。
《スキル起動──【鑑定】》
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【名前】セレスティーナ・フォン・ヴァレンタイン
【年齢】24歳
【職業】ヴァレンタイン家当主代理
【クラス】精霊魔導士
【レベル】71
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【称号】
・精霊に愛されし者
【加護】
・大精霊の加護
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【スキル】
■魔法系
[全属性魔法:上級][精霊魔法][精霊詠唱術]etc...
■家事系
[破滅のレシピ][食材選別不能]
■ユニーク / EX
[大精霊召喚(EX)]
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……マジかよ。
レベル71で、属性魔法が全て上級。しかも【大精霊召喚】なんてEXだぞ?
家事が壊滅的なとこ以外は相当な実力者だ。
ちょっと待て。母親がこれほどの実力者だとすると、脳筋一族である父親はどうなんだ?
《スキル起動──【鑑定】》
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】ガロス・フォン・ヴァレンタイン
【年齢】26歳
【職業】西方辺境伯 / 魔の森の番人
【クラス】無冠の覇者
【レベル】160
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【称号】
・無慈悲なる征服者
・武神
・剣神
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【スキル】
■魔法系
[火属性:下級]etc…
■身体系
[体術:神域][剣術:神域][覇気:極][神速]
[状態異常無効][即死無効][不可触]etc…
■ユニーク / EX
[鬼神][屍喰の覇道][破軍剣界]
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……は?
無冠の覇者??
これ……検索した知識の“危険度ランクSS”のやつじゃん
なんでそんな奴が家の中にいんの……?
確か……
【用語解説:無冠の覇者】
国家戦力である《ディヴァナーク》に匹敵するほどの強大な戦闘力を持つ異端の存在。非常に稀少で、その正体や力の源は謎に包まれている。各国は彼らを秘密裏に監視・囲い込み、必要なら排除を試みることもある。戦争の切り札として利用されることもあれば、王族さえも恐れ、制御不能な危険因子として警戒している。
……化け物じゃん。
スキルの並びもおかしい。
「神域」とか「極」とか、おまけにEXスキルが3つもある……ラスボスのステータスだろこれ。家に国家のエース級がいると思ったら、ラスボスも住んでた件について。
「……ふむ」
戦慄するオレを見て、父親が目を細めた。
「……楽しみだな」
何が!? 怖いよ!
父親はそれだけ言うと、どこから現れたのか武装メイドのセラを連れて風呂へ行ってしまった。
嵐のような両親が去り、部屋に静寂が戻る。
……思った以上にとんでもない家に転生したな。
この家でぬくぬくしてたら、確実に置いていかれる。
“凡人”として憐れまれる未来しか見えない。
が、やるしかない。
赤ん坊の体では筋トレは無理だ。
なら、この数年を魔法の成長とスキルの解析に全振りする。
最強の両親を超えるには、今から動くしかないんだ。
その時。
「アレス様、遊びましょう~♪」
ふわりと扉が開き、オレの癒やし担当・巨乳メイドが入ってきた。
小柄な身体に、不釣り合いなほどの巨乳。
彼女はニコニコと笑いながらオレを抱き上げる。
「うー」(抱っこ!)
甘える素振りで胸に飛び込む。
柔らかい感触と、甘い香り。
……うん、一流の戦士には休息も必要だ。
今日はフィオナと遊んで英気を養おう。
オレの「最強への道」は、まだ始まったばかりなのだから。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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