2話『ステータスオープン』
2話目も読んで頂けてありがとうございます。
「うー!」「あー!」(アーサーじゃないんかーーい!!!)
必死に抗議するも、口から出るのは情けない赤ん坊の声ばかり。
てっきりアーサーという名前で生まれると思っていたが……まさかの“赤ん坊スタート”らしい。
創造神……許すまじ。
「ふふ、どうしたの? そんなに難しい顔をして……アレスの大好きなお母様ですよ?」
見上げた先にいたのは、銀白の髪をたなびかせて微笑む一人の女性だった。
柔らかな光に包まれたその姿は、まるで絵画のように完璧で──
……おかん、美人すぎるんだが。
なにこの人、女神?
「あら? どうしたの、アレス? もしかしてお腹が空いたのかしら? 少し待っててね」
その瞬間、オレの脳内にとんでもない未来予想図が浮かんだ。
……え、ちょ、マジで? 今からおっぱい飲む流れ!?
紳士的にアリなのか? いや、ナシだろ……たぶん。
だがその葛藤も束の間、母親が差し出したのは──哺乳瓶だった。
「ほら、アレス。たくさん飲んで、またお昼寝しましょうね」
「うー!」「あー!」(チチ出さんかーい!)
納得できないまま哺乳瓶を吸う。
飲み干して背中をトントンされると、心地よいゲップと共に強烈な睡魔が襲ってきた。
「よく飲みましたね、アレス。お母様はあなたが元気でいてくれることが、一番の幸せです」
その優しい声に、さっきまでの邪念が霧のように消え、そのまま深い眠りの世界へと落ちた。
「ふふふ、可愛い寝顔ねアレス……。貴方はきっとこの世界の希望へとなるはずよ……。」
そう言って母親であるセレスティーナはアレスのおでこにそっと口付けをした。
こうして、第二の人生が本格的に始まったのだった。
◇ ◇ ◇
次に目を覚ますと、部屋には陽の光が差し込んでいた。
……ふぁぁ、よく寝た。
満腹になってすぐに眠れるこの快適さ。これぞ赤ん坊特権だなと感心しながら、ふと違和感を覚えた。
……なにか、こう、尻が不快だ。じんわりと、あたたかくて……。
……まさか。
マジか……四十年も生きてきて初めてだぞ、こんなの……!
そう……ワシ、うんこ漏らしとる!!
羞恥で顔が熱くなるが、今のオレにできることはただひとつ。
「オギャー!!」「オギャー!!」
本気のギャン泣きである。
「アレス様〜? どうかなさいましたか〜?」
すぐに部屋の扉が開き、小柄なメイドが小走りで駆け寄ってきた。
金髪碧眼、身長百五十センチほどの小柄な体格。だが、やたらと目を引く。何がとは言わんがとにかく破壊力がすごい。
「あー!」「うー!」(メイドが美人で巨乳な件について)
「……ああ、オムツが濡れてしまったのですね。すぐに替えて差し上げますからね〜」
うわあああ……言わんでくれ……。
美少女に処理されるとか、どんな羞恥プレイだよ!
メイドさんは手際よく交換を済ませると、ニコッと笑った。
「はい、綺麗になりましたよ〜。うふふっ、アレス様はやっぱり天使みたいに可愛いですね」
……すっきりしたのはオムツの中身であって、オレの心は死にそうだ。
「もうすぐアレス様の大好きなお母様がいらっしゃいますからね〜」
お、ミルクの時間か。
今度こそ直母じかぼの可能性に期待したいところだが……。
パタン。
「アレス、良い子にしてましたか?」
「あー!」「あー!」(マンママンマーーー!!)
体が勝手に反応してしまう。赤ん坊の本能、恐るべし。
「あら……お母様が来て、そんなに嬉しいの?……ふふ、アレスは本当に愛らしい子ね」
まぁ結論から言うとおっぱい飲めた。
「あー!」「うー!」(飲めるんかーーーい!!!!!!)
◇ ◇ ◇
おっぱいタイム、通称“バブバブタイム”を終え、若干眠気が差してきた……が。
ここで寝るわけにはいかん!
創造神かみさまが言っていた「この世界は命が軽い」という言葉。
あれがどうしても引っかかる。
まずは自分の現状を把握しなくては。
よし、いくぞ……!
「うー」「あー」(ステータスオープン)
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【名前】アレス・フォン・ヴァレンタイン
【種族】半神
【職業】赤ん坊/辺境伯嫡男
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【年齢】0歳(3ヶ月)
【レベル】1
【加護】創造神、地母神
【スキル】
・鑑定
・アイテムボックス
【EXスキル】
・インターネット
・言語理解
・神威降臨(※未解放)
【称号】
・転生者
・神の使徒
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おお……本当に見えた。完全にステータス画面だ。
職業「辺境伯嫡男」。高位貴族スタートか、悪く無い。
【鑑定】【アイテムボックス】【言語理解】……所謂初心者キットだな。
……ここまではいい。
【種族】:デミゴッド(半神)
これはアウトだろ……。人間じゃないじゃん。
おまけに【加護】も創造神に地母神……豪華すぎだろ! たぶん地母神様が例のナルシストな女神様だな。気合い入れ過ぎだって!
……これ、誰かに見られたら大変なことになるんじゃないか?
何この「爆弾抱えた赤ちゃん」状態。
……なるほど、ステータスはタップで隠蔽できるのか。
よし、【称号:転生者】【神の使徒】は即刻OFF。
怪しげな【加護】もOFF。
未解放の謎スキル【神威降臨】もOFF。
念には念を入れて、便利すぎるチートスキルも全部OFFだ。
隠蔽完了後のステータスがこちら。
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【名前】アレス・フォン・ヴァレンタイン
【種族】人間
【職業】赤ん坊/辺境伯嫡男
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【レベル】1
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完っ璧だ。
これならどう見てもただの貴族の赤ちゃん。中身四十代の元社畜だけど。
さて、ついでに先ほどのメイドも確認しておくか。
《スキル起動──【鑑定】。対象、メイド。》
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【名前】フィオナ・ブランシュ(17歳)
【種族】人間
【職業】メイド
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【レベル】36
【称号】小さな守護者
【スキル】
<魔法系>
・水魔法(中級)
・火土風魔法(下級)
・生活魔法
・治癒魔法 他
<家事系>
・完璧掃除術
・魔力漂白
・シワ取り一閃
・高速たたみ
・料理:上級
・毒見
・匂い判別
・裁縫自動化 他多数
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……へえ、名前はフィオナか。
って、情報多すぎない!?
特に家事スキル。「シワ取り一閃」って何だよ。
オレが知りたいのは戦力だ。集中して……戦闘スキルのみ表示!
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【名前】フィオナ・ブランシュ
【種族】人間
【職業】メイド
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【レベル】36
【属性】水
【称号】小さな守護者
【スキル】
<魔法系>
・魔力感知 ・魔力操作
・魔力循環 ・詠唱術
・水魔法(中級)
・火土風魔法(下級)
・生活魔法 ・治癒魔法
・結界魔法
<身体系>
・暗器術:中
・状態異常耐性:中
【EXスキル】
なし
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……ふむ、スッキリした。
メイドでこのステータスか。優秀な気がするけど比べる相手が居ないからわからないな。
「アレス様、今日も素敵な夢を見てくださいね〜」
フィオナは優しく囁き、オレのブランケットを整えて部屋を出ていった。
……フィオナ、本当に良い子すぎる。
可愛くて、気立ても良い、そして何より巨乳だ。
創造神ありがとう。
こんないい子に見捨てられないよう、こっちも頑張らないとな。
――まずは、この世界のことをもっと知らなきゃ。
そのためにも、スキル《インターネット》を起動だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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