第1話『人違いで神に殺されました』
初投稿です。
よろしくお願いします。
「……来たか。運命に導かれし者よ――」
目の前には、偉そうな爺さんが立っていた。
……? なんだこの爺さん。
「おお、アーサーよ。死んでしまうとは情けない……。そなたに、もう一度チャンスを与えよう」
……アーサー? オレの名前は“山田太郎”なんだけど……どこかの国の王様かな?
「あの、すみません。オレ……いや、私は“山田太郎”と申します」
「ふむ……ようこそアーサーよ。ここは、すべての始まりと終わりが交差する場所。そなたの魂が、新たな世界へと旅立つ前の最後のひとときじゃ」
「いや、だから“山田太郎”と申しますが……」
「ええい、うるさいのう! さっきから太郎だ山田だと! 細かいことは気にするな、もうお主がアーサーでいいじゃろうが!」
え?なにこの爺さん……話が通じない上に自分勝手なんだけど。……これがいわゆる“老害”ってやつか。
「誰が老害じゃ! このワシを誰だと思っとる!? 創造神たるワシが、関係のない奴に天裁雷など放つはずなかろう?」
……え? 今口に出したっけ?
「神に隠し事はできぬ」
ひぇえええ……! 心の声まで駄々洩れ!? しかも創造神って位の高い神様だよね!?
「ふん、ただの雷ではないぞ。あれは——天裁雷と言って、所謂神の裁きじゃ」
いかずち……そう、思い出してきた。
あのとき、家路を急いでいた矢先、轟音と同時に視界が真っ白に染まったのだ。
……待て待て。
とりあえずオレは、この爺さんに殺されたってことだよな? なんでオレ裁かれてんの?
「要するに人違いで殺されたって事ですか?」
「ふん、アーサーに魔王を倒してもらうつもりだったのじゃ。だが、お主に天裁雷が当たった。つまり、お主こそアーサーということじゃろ?」
理論が暴論すぎるんだが!?
まるで“当たった奴が当選者”みたいなガバガバ抽選方式やめろよ創造神様!
「ワシがそんな適当に決めとるはずなかろう。我創造神ぞ?」
どう考えても適当にしか思えないんだが……。
「まぁええ、ちょうどアーサーの為に用意した魂の器があるんじゃが……まぁ……ナルシストな女神が気合入れて作ったから、多少のクセはあるかもしれんが、基本的には問題ないじゃろう」
なんか歯切れ悪いな? それにアーサーの為に用意したって……そもそもアーサーじゃないんですけど!?
「そこは安心して良い、天裁雷に選ばれたなら馴染むはずじゃ」
だから不安なんです!……と言いたいけど怖くて言えねぇ……。
それに、“ナルシストな女神が張り切って”って、その時点でフラグ立ちすぎだろ……!
「まぁ、女神は“美の化身”を自称しとるからのう。造形にはこだわりがあるようじゃ」
オレの頭の中で警報が鳴り響いた。
──ヤベェ、絶対まともな身体じゃない。
「安心せい。ちゃんと人型じゃ。たぶん、のう」
「“たぶん”って何だよ!!!」
「それに、お主の身体は消し炭になっとるから、今さら戻ることなど叶わんしの」
「……え? 消し炭?」
「なんじゃ、忘れたのか? 天裁雷を喰らって、無事なわけなかろう?」
そうだった――!!!
人違いでいかずち喰らった上に、消し炭エンドって、どんな理不尽RPGだよ……。
……許せない、とは思った。
だが、それ以上に――もう戻れないという現実が重かった。
「うむ、決心がついたようじゃな。基本的には好きに生きてよい。ただし、お主には神の使徒としての役割もある」
「え……使徒?」
「そうじゃの……ざっくり言うと、街を発展させたり、娯楽を増やしたり、食事の質を上げたり、そういう地道なやつじゃ。魔王については……まぁなんとかなるじゃろ」
……創造神様、それってもはや勇者より忙しくありませんか!? 使徒という名のパシリですよね?
「ほぅ?この創造神たる我の言う事が聞けぬと?」
こ、怖ぇええええ!!!
「いえ! 謹んで神の使徒としての責務を全うします。ですが、街の発展については知識が無いです。あと自分、魔王NGです!」
「因みに神託を失敗、又は無視すると神罰が降るから気をつけるんじゃぞ?」
「……神罰とは?」
「お主は何を喰らってここにおる?」
え? 死ぬって事?
「心配するでない! お主には【インターネット】のスキルを授ける! これがあれば異世界の知識も、地球の知識も調べる事が可能じゃ」
インターネット? それだったら知識が無くてもこなせるか……?
「後は、そうじゃな……お主には転生特典として『鑑定』などの必要最低限のスキルを授ける。あと鑑定には隠蔽機能も付けといたから都合の悪いスキルは隠せるぞ」
「……? ありがとうございます。ちなみに都合の悪いスキルって、何ですか?」
「まぁ……行けばわかる」
あやしい! でも得しかない機能なら貰えるものは貰っておく!
「では、アーサーよ。お主の為にそれなりに裕福な貴族の家に転生させよう。神託も随時与えるでな」
「はい、もうアーサーでいいです! 行ってきます!」
『うむ。言い忘れとったが、転生先の世界“エルディア大陸”は、命がちと軽いからのう。油断すれば、すぐあの世行きじゃ。死にたくなければ強くなるんじゃぞ?』
……え?……命が軽い? やっぱりちょっと考えさせ──
「では、達者での」
その言葉とともに、新たな世界への扉が開かれるのを感じた。
「……行ったか」
残された創造神は、静かに宙を見上げてつぶやいた。
「……確かに、ワシは“魔王を討ち果たせる者”に、天裁雷を放った。だが、導かれし者は……アーサーではなく、太郎。運命とは、かくも面白いものじゃのう……ふふ」
それは長いようで、一瞬の出来事だった。
――次にオレが目を覚ましたとき、そこには精緻な彫刻が施された天井が広がっていた。
「うー……」「あー……」
(知らない天井だ……)
どうやら、無事に転生したらしい。
「ふふっ、目を覚ましたのね?」
優雅な調子で呼ばれたその声に、自分がこの世界での新しい生命を持つ存在であることを実感する。その声の主は、オレを抱き上げると、優しく背中をトントンと叩きながら、穏やかな声で話しかけてくる。
「ふふ、アレスは天使みたいに可愛いわね」
「うー!」「あー!」
(アーサーじゃないんかーーい!!!)
――これは、選ばれた英雄の物語ではない。
神に選ばれ、神に縛られた、一人の人間の物語だ。
お読みいただきありがとうございます。
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