表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

B神社ー2

 午前11時11分。


 しん、と静まり返ったまま迎えたその時間だったが、特に何かが変化することもなく、午前11時12分を迎えた。


「……何も、起こりませんでしたね」


 少し残念そうに、レインさんが言った。スマホで何度も時間を確認している。

 そうこうしている間に、13分に変わってしまった。


「今度こそ、と思ったんですけど。狛犬ちゃんたちも、全然動く気配無かったですね」


 ノコノコさんが狛犬を見つめながら言う。

 私も「そうですね」と言って頷き、今一度狛犬を見る。先程までと一切変わっているところはなく、ただただそこに向かい合って座っている。


「結局、見てはならぬものって何なんですかね?」


 私が尋ねると、レインさんとノコノコさんが口々に「異世界」「霊界」「地獄とか?」と言い合っている。ちょっと楽しそうだ。


「そういうのは、フワッと設定されているもんなんだよ。そうしたら、うっかり何かが見えた時、何とでも言えるだろ?」


 圭が肩をすくめながら言う。


「そんなもんなのかな?」

「そんなもんだ。断定してしまっていると、万が一何か見えた時、違うじゃないかって言われてしまうし、フワッとしていた方がそれっぽい気がするじゃん」


 それっぽい。


 言われてみれば、そうかもしれない。

 地獄だとしたら絶対に見たくないし、異世界だったらちょっと見てみたい。だけど、何か分からなかったら、もしかしたらという好奇心でじっと見つめてしまうかもしれない。


「圭君も、何も感じなかったのかい?」

「何も感じない。感じはしないんだけど、なんというか」


 歯切れが悪い。

 何も感じないと言いつつ、何かしらは感じ取っているのかもしれない。


「何か気になることがあるとか?」

「そもそも、何でこの神社なんだ? と思って」


 圭がそう言った瞬間、ノコノコさんとレインさんが揃って「え?」と聞き返した。


「何かこの神社に、曰く付きみたいなことでもあんの?」


 圭の問いに、レインさんが「曰くというか」と言葉を続ける。


「この神社で、人を恨んで呪いを行ったっていう話を聞いたことが」

「私も、それに似た感じの……神社に千回参って、親の敵を討ったとか」


 ノコノコさんも続ける。

 それらを聞いて圭が「だけどさ」と言葉を返す。


「そこら辺の話って、根拠がないだろ? 何処にでも転がってそうだし、後で取ってつけたような話にも聞こえる。いきなり俺が『この神社で、殺人事件が行われた』とか言い出しても、真実かどうかなんてわかりっこないんだ」

「殺人事件だったら、調べたら出てきそうだけど」


 私が反論すると、圭は鼻で笑う。


「表に出てないだけとか、事件の記録が残らないほど昔の話とか、どうでも言えるじゃん」


 なるほど。

 確かに、やれ異世界だとか、怨念だとか、そういうものよりも説得力がある。


「それでもさ、この神社が手順の中に組み込まれている。事前に調べた資料の中には、この神社に似ている神社が、近所に2,3件ある。どこも徒歩圏内だし、狛犬だっている。同じような都市伝説が流れていてもおかしくない。それなのに、手順に組み込まれているのは、このB神社だ」


 圭はそう言うと、頭をがしがしと掻く。

 何かしらのとっかかりがあるのに、上手く線で繋がらない。そんな風に見えた。


「ともかく今日は余計な事をせず、当時と同じ手順を辿る。だけど、何かしら気付いたら教えてほしい」


 ノコノコさんとレインさんが「分かりました」と頷く。

 圭が「じゃあ、行くか」と声をかけた瞬間、ノコノコさんが「あ」と声を出し、小走りで神社のお賽銭箱に小銭を入れ、パンパンと柏手を打った。


「ありがとうございました」


 ぼそ、と呟く声が聞こえた。

 見つかったキーホルダーの礼を言っているのだろう。


 その時、ぶわ、と風が吹いた。

 穏やかな天気の中に吹いた風が、今いる神社という場所も相まって、なんとなく神秘的なような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ