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AビルからB神社へ

 AビルからB神社までは、徒歩で10分くらいとのことだった。


「確か、狛犬が背中合わせになるとか」


 圭から聞かされた情報を確認して言うと、ノコノコさんが「そうなんですよ」と言って笑う。


「特定の時間ではあるのですけれど。その時間というのが、11時11分なんです」


 ノコノコさんの言葉に、時計を確認する。

 現在、10時50分。

 徒歩10分とのことなので、11時くらいには着く予定になる。


「また中途半端な時間だね」

「というか、並び時間なんです。1時11分、2時22分、みたいな。結構、該当する時間がありますよね」


 便利というか、細かいというか、多いというか。


「そんなにたくさんあったら、目撃証言も多そうだけれど」

「それが、全然なんですよねー」

「見たって人はいるんですけど、実際に動画や写真を挙げてる人はいないんです。あと、少なくとも前回のオフ会で実際に見たって人はいませんでした」


 少し残念そうなレインさんに、詳細に思い出したらしいノコノコさんが口々に言う。


「チャットでは、写そうとしたけど写らなかったとか言っていた人も、いましたねぇ」


 レインさんが言うと、ノコノコさんが「言ってましたねぇ」と言って頷く。


「その時、タケさんは『いいなぁ、俺も見てみたい』ってしきりに言ってましたっけ」

「ああ、そういえば、同じように向かっている時も言ってましたよね。『なんとかして見れねぇかな』って」


 ノコノコさんとレインさんの会話から想像するに、タケさんは余程都市伝説をその目で確かめたかったようだ。


「タケさんは、都市伝説が好きなんですね」


 私が言うと、レインさんが「そうですね」と言って笑う。


「もしかしたら、一番本気だったかもしれません」

「本気?」

「なんというか、あくまでも僕は、なんですけど。都市伝説を聞いたり確かめたりするのは好きなんですけど、心のどこかで『まさか』と思ってしまっているんです。そうして確認して、がっかりはするんですけれど、心のどこかで『やっぱり』と思ってしまって」


 レインさんがしみじみと言う。ノコノコさんはそれを聞いて「分かります」と言って頷く。


「遭遇したい気持ちはいっぱいあるんですけれど、それはあくまでも遭遇しないと分かっているから、と思っちゃって。もちろん、遭遇出来たらいいなぁとは思ってますけど」


 なるほど、二人とも好きではあるけれど、本当に都市伝説というものがあるかどうかと真に詰められると、そうではないと思ってしまっている、という事か。

 私はどちらかというと、二人と同じ感覚だ。いや、感覚だった、の方が近いだろうか。


 本当に不可思議な現象が存在する、という事を、私は既に知ってしまった。

 だからこそ、都市伝説も存在するだろう、と思ってしまう。


「心のどこかで」


 私達の話を黙って聴いていた圭が、ぽつりと漏らす。

 そうしてしばらく考え込んだのち、がしがしと頭をかいた。


「まさかな」


 その様子は、心に浮かんだ何らかを、掻き消すかのようだった。

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