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Aビル地下二階ー4

 階段を上がり、再び地下一階の駐車場に戻ってきた。出入りした車もないようで、先程見た景色と何ら変わりはない。


「普通に帰ってこれたし、特に何もない」


 ぽつりと、圭が呟いた。


「いいことじゃないか」


 私がそう言うと「おっさんにとってはな」と言って、圭は悪戯っぽく笑った。


「ここで何らかの情報があれば、これ以降を回らずに済むじゃん」

「面倒くさくなったとか?」

「まあ、少しだけ」


 私は肩をすくめつつ、エレベータのボタンを押した。歩いてもあがれるようだけど、ここは当初の予定通りエレベータで戻るべきだろう。

 エレベータは、私達が地下二階に降りている間に二階に呼ばれていたらしく、ボタンを押すと同時に下へと降りてきた。


「使う人、いたんですねぇ」


 半ば感心したように、ノコノコさんが言った。


「そりゃあ、いるでしょう。二階には、リサイクルショップが入っているんだし」


 レインさんが答え、続けて圭が「リサイクルショップ」と呟く。


「そういえば、都市伝説はリサイクルショップも絡んでなかったか?」


 圭に言われ、思い出す。

 確か、このビルに入っているリサイクルショップで回収したもののうち、怨念が渦巻いている商品が地下二階に置いてある、とあったはずだ。


「ついでだから、聞いてみるか」

「それは事前に聞いてないのか?」

「聞いてるけど、万が一聞き漏らしたことがあった場合、後でここに戻ってくるのが面倒くさいから」


 私の問いに、圭はきっぱりと答えた。

 正直というか、なんというか。


「僕もついていっていいですか?」


 少し目を輝かせながら、レインさんが言う。それを聞いて、ノコノコさんも「私も!」と言いながら手を挙げる。


「せっかくなので、私もついていきたいです!」


 さすが都市伝説愛好家。

 感心していると、エレベータの扉が開いた。圭は「いいよ」と言いながら、率先してエレベータに乗る。

 二階のボタンを押す。行き先は、二階のリサイクルショップだ。

 一階を押さないあたり、全員で向かうという事だろう。


「事前に話を通してないけど、まあ、いっか」


 全員が乗り込み、扉が閉まる音と共に、圭が呟いた。

 私以外、聞こえていないような気がする。

 というか、聞いてはいけなかった言葉のような気がする。


 かくして、エレベータは四人を乗せたまま、二階へと上昇するのだった。



 □ □ □ □ □


 リサイクルショップは、意外と客でにぎわっていた。

 中古に見えない綺麗な商品や、明らかに使い込んだ感じのものまで、多種多様なもので溢れている。


 圭が近くにいた店員に店長に取り次いでほしいと頼むと、訝し気な様子の店長が現れた。


「ここでは、なんですので」


 店長はそう言い、店のバックヤードの方へ案内してくれた。

 そうして全員がスタッフルームに入った瞬間、店長から「浄華の方ですよね?」と切り出された。


「本日、駐車場の方を調査されるとは聞いていたのですけれど」

「……そうです。事前に、連絡があったみたいで」


 少し呆気にとられたように、圭が答えた。

 きっと、華嬢あたりが事前連絡をしてくれていたのだろう。さすがとしか言いようがない。


「以前にもお話ししましたが、本当に、地下二階については殆ど何も知らないんですよ。うちの商品を置いているという訳ではありませんし」

「置いてないんですか?」


 いち早く聞き返したのは、レインさんだった。店長は「ええ」と頷き、言葉を続ける。


「店の倉庫として使っているのは、三階でして。地下二階には行くこともできないんです」

「地下二階は、ビル契約の際に何も言われなかったと?」

「そうですね、契約したのは二階と三階、それに駐車場としての地下一階だけです。このビルは、うちの他にも、他社さんの事務所などが入っておりますし」


 店長はそう言い、肩をすくめる。「都市伝説ですよね、気になっておられるのは」


 あっけらかんと言う店長に、レインさんとノコノコさんが顔を見合わせる。


「私も、店のスタッフから聞いたことがあるんです。地下二階に、うちの商品が置かれているっていう都市伝説。だけど、実際には地下二階に行けませんし、商品が置かれているのは三階ですし」


 都市伝説が、事実とは違う。

 地下二階が存在するし、リサイクルショップの入っているし、倉庫として使っている階があるにはあるのだが、都市伝説として言われているものと異なっている。


「ちなみに、このリサイクルショップで、よく分からない現象が起こったりしたことは?」


 圭が尋ねると、店長は「ないですねぇ」と言って笑う。


「そんなことがあったら、曰く付き商品です! とかなんとかポップを付けてみたいですけれど」


 なかなか商魂たくましい。

 思わず、小さく笑ってしまった。


「そんなわけですので、余りお力になれず、すいません。いっそ、何かあったらよかったかもしれないんですけれど」

「いえ、貴重なお時間をありがとうございました」


 圭はそう言い、頭を下げた。

 相変わらず、普段の喋りとはかけ離れた丁寧な口調だ。なんとなく、不思議な感じがするけれど。


 店長に礼を言い、スタッフルームを出る。リサイクルショップをぐるりと一周したものの、そのまま店から出てエレベータで一階に戻ってしまった。


「何もない」


 一階に降り立ち、一番に圭が言った。


「ここには、何もない。特にない、とかそういう曖昧なやつじゃない。何もない」


 あまりにもきっぱりとした言い方なので、思わず私は「そっか」と頷いてしまった。

 見れば、ノコノコさんとレインさんも、こっくりと頷いている。


――ここには、何もない!


「仕方ねぇ、次に行くか」


 圭はため息をつきつつ、メモ用紙を確認した。

 次に行く、B神社について書かれている、メモ用紙を。

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