Aビル地下二階ー3
階段を下りる音だけが響く。
エレベーターがあるのだから、この階段を使う人は少ないだろう。駐車場に車を置いた人や、二階に入っているリサイクルショップに来る人が使うくらいはあるだろうが、用事のない地下二階に行くことはないだろう。
「結構、響きますね」
恐る恐るというように、ノコノコさんが言う。レインさんも「本当に」と言って頷く。
「タケさん、そう言えば階段の話はしませんでしたね」
レインさんの言葉に、ノコノコさんが「本当ですね」と、今度は彼女が頷く。
「見回した時、階段の存在に気付いても良さそうなのに」
「見えなかったんじゃないですか?」
私が言うと、ノコノコさんとレインさんが「そうかもしれないですけど」と言葉を濁す。
何かしらの裏があって欲しいような言い方だ。
「じゃあ、あくまでも都市伝説はエレベータあっての事なので、階段で行っては意味がないと思ったとか」
ふと思いついたことを言ってみると、ノコノコさんとレインさんが「そうかも!」「きっとそうですよ!」と口々に同意してきた。
どことなく嬉しそうなので、タケさんは二人から見て「そういう事を考えそうな人」なのだろう。
「ついた」
先頭の圭はそう言うと、躊躇なくガチャガチャとドアノブを動かす。が、どうやら開かないようだ。
「完全に閉鎖しているみたいだ」
地下二階を見れそうにない現状に、ほう、と思わず息が漏れた。ノコノコさんとレインさんも似たような息を漏らしているが、彼らは安堵と残念さが半々になっているような気がする。
「圭君、何か感じるかい?」
「いいや、何も。相変わらず、何にも感じない。このドアが何かを完全に遮断しているのなら別だけど、それでも物理的にしか閉じてないように思える」
圭は「うーん」と小さく唸り、続かない階段を振り返る。
私達も圭の近くまで降り、階段裏を一緒に見てみる。
階段自体は地下二階で終わっており、階段裏のデッドスペースには埃が積もっているだけだ。
「よし、戻る」
圭がきっぱりと宣言するため、その場を後にすることにした。
レインさんとノコノコさんが口々に「ドキドキしましたね」「もしかしてと思って」と明るく話しているのを聞くと、改めて彼らが都市伝説を確認するのが好きなのだと思わせられる。
「なんだか、拍子抜けだね」
私が圭に言うと、圭は「だよな」と言って頷く。
「ここで何かあった方が、話が簡単で済むのにな」
終わらせようとしている……?
いや、原因がすぐわかるのならば、それに越したことはないのだけれど、圭はここに仕事で来たのであって……。
いいのだけれど。なんとなく釈然としないのはなぜだろう。
「怨念が渦巻く、ねえ」
圭がぽつりと呟いた。
少しだけ、小ばかにしたような言い方だった。




