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Aビル地下二階ー2

 やってきたエレベーターはごく普通のエレベーターであり、地下二階から五階まで、そして屋上のボタンがついていた。


「つかないな」


 圭が地下二階のボタンを押しながら、不満そうに言う。そして、地下一階のボタンを押す。

 ここまでは恐らく、タケさんも同じ行動を取っているのだろう。

 無事に地下一階のボタンは点灯し、エレベーターは地階に向かって動き出した。

 なんとなく、ノコノコさんとレインさんの身が固くなる。大丈夫と笑いつつも、少し怖いのかもしれない。


 地下一階には、すぐに着いた。扉が開くと同時に圭は開ボタンを押しつつ、体だけ降りて辺りを見渡した。

 これも、事前に聞いていた当時のタケさんの行動だ。


 エレベーターの扉から見えるのは、なんてことない地下駐車場だ。一階入り口の緩やかな坂を下りてきて、車を並べて停めるだけの場所。

 なるほど、確かに意外と車が停まっている。


「地下二階のランプはつかない。だから、これで一階に戻るだけなんだけど」


 圭はそう言い、ふむ、と一つ頷いた。「ちょっとこのあたりを見て回りたい。おっさんたちはどうする?」


 ノコノコさんとレインさんは顔を見合わせたのち「一緒に行きます」と答えた。となると、私も一人で戻るのは嫌だ。


 かくして、全員がエレベーターから降りた。誰も乗っていないエレベーターは、他階から呼ばれることが無かったようで、そのまま地下一階にとどまっている。


「なんてことない、普通の駐車場に見えるけれど」

「奇遇だな、俺にもそう見える」


 私の言葉に、圭が答える。その会話に安心したように、ノコノコさんとレインさんが「そうですか」と答えた。

 なんとなく、残念そうな様にも見えるけれど。


 圭が歩きだし、それに私達もついていく。

 本当に、なんてことない駐車場なのだ。地下特有のちょっと薄暗い感じはあるものの、電灯がついているから真っ暗という訳でもない。車が結構停まっているから、もの悲しい感じもない。

 本当に、よくある駐車場だ。

 事前にここが都市伝説スポットだと聞いていなければ、特に何も気にしない。


 駐車場自体もそんなに広いわけではなく、あっという間にぐるりと一周できた。車の出入り口も近くにあるので、外と遮断されている感じもない。


「あれ、非常階段じゃないですか?」


 ノコノコさんがそう言い、壁を指さす。確かに「階段入口」という案内板がついている。

 圭はまっすぐそこに向かい、躊躇なく扉を開く。私も続いて覗き込む。


 なんてことない、階段だ。

 ただし、下に降りられるようになっている。地下二階に行ける階段のようだ。

 エレベーターボタンに存在しているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。


「下りてみるか」


 圭の言葉に、三人同時に「え」と返した。

 なんという躊躇のない言葉なんだろう。これが不思議体験の数をこなしてきた者の力なんだろうか。


「レインさん、どうします?」


 ノコノコさんが、レインさんに尋ねる。

 そうだよな、ちょっと怖いよな。噂の地下二階へ続く階段なんて。


「怖いけれど……チャンスじゃないですか? だって、都市伝説の地下二階にいけるんですよ?」


 ちょっと興奮したようにレインさんが言う。


「そうですよね。チャンスですよね」


 ノコノコさんも興奮しているように同意している。


 そうだった。この二人、もともと都市伝説の検証がしたい人たちだったんだ。

 私なら、絶対に行かないけれど。というか、圭君がいなければ、絶対に行かない。むしろ、まずこのビルに来ない。


「圭君、大丈夫なのか?」


 一応聞いてみると、圭は「それがさ」と口を開く。


「全然、何も感じないんだよ。これっぽっちも。だから、逆に意味が分からない。何で、このビルがその都市伝説に選ばれているかが」


 肩をすくめながら、圭が言う。

 確かに、このビルが選ばれている理由がさっぱり分からない。確かにリサイクルショップはあったし、地下二階の押せないエレベーターボタンはあるけれど、そういう場所は別にここじゃなくてもあるような気がする。


「いずれにしても、行ってみたら何かあるかもしれないから、一応確かめてみる」


 圭はそう言うと、階段を下り始める。それに、ちょっとだけ怖そうな、それでいてどこか楽しそうなノコノコさんとレインさんが続く。

 私も、覚悟を決めてそれに続いていくのだった。

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