Dバス停ー2
ノコノコさんと他愛のない話をしながら、ちらりと時計を見る。
バス停に来てから、10分くらい経っている。
「これって、どれくらい待てばいいんですかね?」
「前の時は、どちらかのバスが来た時でしたね。本来バスに乗りたい人の邪魔になってはいけないし、もしかしたら噂のバスかもしれませんし」
「となると、こちらのバスだとあと30分後ですけど」
「向こうだと、何分なんですかね? 前の時は、今私たちがいる方に、バスが来ましたけど」
「それは、噂の?」
「まさか。定刻通り、本来停まるべきバスがやってきただけです」
それはそうだろう、と二人で笑いあう。
そうしていると、逆方向にバスが現れた。今回は、向こう側のバスの方が先だったらしい。
「じゃあ、いいきっかけですし行きましょうか」
私がベンチから立ち上がりながら言うと、ノコノコさんも「そうですね」と言って立ち上がる。
たかだか15分の検証ではあったけれど、前回と同じきっかけで終了すればいいだろう。
少し離れた横断歩道を渡っていると、バスがバス停に停まるのが見えた。もちろん、圭とレインさんはバスには乗ろうとしていない。そうして、私たちが横断歩道を渡りきるころには、バスは発車してしまっていた。
「バスが来たから、もういいかなと思ったんだけど」
圭たちに近づきながらそう言うと、圭が「別にいいよ」と言って頷く。
「前も似たようなタイミングで検証を終えたって聞いたし」
レインさんも、同じ話を圭にしていたらしい。
「残念でしたね」
そう言って私がレインさんに言うと、レインさんは「いえいえ」と言って手を振る。
「最初、あのバスが来たときはちょっと興奮したんですよ」
「興奮?」
「だって、行き先が書いてないバスだったので」
「え、本当ですか?」
ノコノコさんが、軽く興奮しながら聞き返す。
行き先が書いてないなんて、都市伝説のバスっぽい!
私がどきどきしていると、圭が鼻で笑う。
「なんてことはない、回送バスだ。運転手がもうすぐ本来のバスが来るから待っていてほしいと、わざわざ教えてくれたんだ」
「いやあ、それでも行き先が書いてないバスがバス停に停まる、という事実に、ちょっとドキドキしちゃって」
レインさんが、余韻を味わうように言った。
確かに都市伝説が好きなら、本当に起こったのかもしれないという状況は感動するかもしれない。
「前回は本来停まる時間のバスが来たって聞いたから、そのバスかと思ったんだけど」
「今回の方が、時間が早かったからな。本来のバスは、あと10分くらいで来る」
グループ分けで時間がかかった、とノコノコさんが言っていたっけ。
前回より早くグループ分けが終わったために、時間のずれができたんだろう。
「ともかく、これで一応、この場所では終わりだ。つまり、次が最後」
圭はそう言って、はあ、と息を吐きだす。「E地点にある記念碑で、ゴールだ」
「そっか、あと一つか」
私は呟き、謎の達成感を得た。いや、まだゴールはしてないんだけれども、感慨深いというか、なんというか。
「まさか二回も都市伝説巡りをすると思いませんでした」
ノコノコさんが言うと、レインさんも「僕もです」と言って笑う。
「しかも、今回はちょっとドキドキする体験までできましたから」
「本来の都市伝説じゃないですけどね」
「いいんですよ、それもある意味、醍醐味ですから」
レインさんとノコノコさんが笑いあっている。
私も、こういう機会でもないと歩き回らない土地だったので、ちょっと面白かったかもしれない。
「ちなみに、もう何かしら予測はついているのかい?」
なんとなく、噴水から移動するあたりで抱いていた疑問を、こそ、と私は圭に尋ねる。圭は「うーん」と唸り、それから眉間にしわを寄せつつ「多分?」と付け加えた。
「確証じゃないけど。でも、一応、予想外のことが起きても困るから」
まだ言わない、と。
まあ、いいさ。お楽しみは後に取っておくものだし。




