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Dバス停ー1

 C駅から10分ほど歩くと、Dバス停に辿り着いた。そこまでの行程では、途中で圭がどこかに電話をかけていた以外で特筆すべきことはなく、ただただ世間話をしながら歩いていた。


「どっち側のバス停だ?」


 圭が尋ねると、ノコノコさんが「どっちでしょうねぇ」と、手を頬に充てながら答えた。


「この間のオフ会では、二手に分かれて確認したんですよ」

「もちろん、何もなかったんですけどね」


 笑いながら、レインさんが言葉を続けた。

 今は四人しかいないので、二手に分かれるならば二人ずつという事になるけれども。


「じゃあ、分かれるか。おっさん、じゃんけーん、ほい!」


 圭に言われて、私は慌ててグーを出す。圭が出したのはパーだから、私の負けだ。


「そっちはそっちで、じゃんけんして」


 圭が促すと、レインさんが勝ってノコノコさんが負けた。

 それを見て、圭はレインさんに「じゃあ、俺らこっちで」と言いながらバス停近くに立った。


 ああ、なるほど。

 じゃんけん負け組は、向こう側に行けってことだな。なるほどね?


「行きましょうか」


 苦笑交じりにノコノコさんに促すと、彼女も苦笑交じりに「はい」と返してきた。

 グループ分けに時間がかからなくてよかったし、負けても大した手間ではないので不満があるというわけではないけれど、先に一言あったらもっとよかったのに、と思ってしまう。おそらく、ノコノコさんもそうなのではないだろうか。


 私はそう考えつつ、近い所にあった横断歩道を使い、向こう側に渡ってバス停を目指す。


「あっさりと分かれられましたね」


 横断歩道を渡り切ったあたりで、ノコノコさんに話しかけられ、思わず「え?」と返す。

 私の疑問に気づき、ノコノコさんが「変な意味じゃないんですけど」と付け加えてから、言葉を続ける。


「私達が巡っていた時は、誰がどっち側に行くかで、軽く時間をとったんですよ。オープンチャットで話しているとはいえ、ほぼ初対面ですから。まとめ役であるタケさんがいなかったら、もっとグダグダしていたと思います」

「ああ、なるほど」


 いきなりのじゃんけんを率先して行う圭は、割合珍しい方なのかもしれない。

 そして、あの強引な感じも悪くないのかもしれない。

 となると、グループ決めの際のノコノコさんの苦笑は、前回と比べて出たものだろう。前回は時間がかかったのに、今回はずいぶんあっさりと決まってしまった、という。


「桂木さんって、不思議な人ですね」


 ノコノコさんの言葉に、私は思わず「そうですねぇ」と言って頷いてしまった。

 不思議な人、と表現されていたけれど、その裏には「変わっている人」が隠れている気がする。

 もちろん、変わっている人に違いはない。


「あった、逆側のバス停。……ノコノコさんは、前回もこちら側に?」

「いえ、あっち側です。そういえば、レインさんと逆になっちゃったかも」


 ちらりと向こう側を見ると、レインさんと圭がそれなりに世間話をしているように見えた。距離があるので、何を話しているかは分からないけれど。


 バス停に辿り着き、一番に時刻表を見る。腕時計と見比べると、今の時間帯はバスが来ないようだった。

 次のバスは、40分後だ。


「さすがに、40分は待ちたくないですねぇ」

「ですね。あ、でも、都市伝説のバスなんだから、時刻表に書いていない時間に来るはずですよね」

「ああ、確かに」


 私はこくこくと頷く。

 もしバスが来るとすれば、それは都市伝説のバスに他ならない。


「とりあえず、座って待っていても良さそうですね」


 ノコノコさんは嬉しそうにそう言い、バスを待つためのベンチに腰掛けた。私も「そうですね」と言いながら、隣に腰掛ける。もちろん、パーソナルスペースには気を付ける。

 朝から歩き回っているので、こうした休憩時間はありがたい。思わず大きく息を吐きだしてしまった。


 残る都市伝説は、ここを含めてあと二つだ。

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