C駅前噴水ー2
少し疲れた様子のレインさんと、少し残念そうなノコノコさんの所に、圭と一緒に近づく。
「何もなかったですねぇ」
私たちに気づき、はは、とレインさんが苦笑交じりに言う。残念そうではあるけれど、どこか「そんなもんか」という気持ちが入り混じっているような気がする。
それはそうだ。何しろ、前回も何もなかったし、今回に至っては本職である圭から「何もない」と断言されていたのだから。
「回っている間は、どうでしたか?」
私が尋ねると、レインさんは「何もないですねぇ」と首を振る。
「途中で、何周したか一瞬分からなくなるくらいでしたね。まあ、回るたびにノコノコさんが教えてくれたので、大丈夫ですけど」
「7周目くらいのとき、教えたら『え』って聞き返してましたもんね。迷っちゃいました?」
「願望もあったかもしれません。ちょっと疲れたから、終わらないかなって」
レインさんとノコノコさんが、笑いあう。
「離れて見ていても、特に何もなかった。力の流れもないし、不自然な雰囲気も感じられない。本当に、ただ回っていただけだったな」
圭がそう言うと、二人は揃って「そうですか」と肩を落とした。
圭の言葉は、二人にとっての答え合わせみたいなものなのかもしれない。
「一応なんですけど、もしも都市伝説みたいなことが起こるなら、何か分かるものなんですか?」
ノコノコさんが尋ねると、圭は「そうだな」と言って腕を組む。
「別世界、という話だったっけ。そうなると、この世界と違う世界が繋がるっていう事だ。繋がるためには、何かしらの流れができるはずだ」
圭はそう言ったのち、例えば、と続ける。
「風呂に入る時、扉を開けると湯気がむわ、となるだろ? それは温度が違う空間に繋がるからだ。同じ部屋の移動なら何も違和感は感じないが、温度や湿度が違うだけで、違和感が生じる」
「ああ、真夏の外からクーラーガンガンのお店に入るとか」
レインさんがそう言うと、圭は「そんな感じ」と言って頷いた。
そういえば、と思い出す。
圭に連れられて違う場所に行ったことが、不思議な体験をした最初の出来事だった。ついこの間のような気がするけれども、妙に懐かしく感じてしまう。
あの時は、どうだっただろう。
さっき圭が言ったような違和感があっただろうか。
よく思い出せないのは、違和感よりも他の出来事が印象深かったからかもしれない。
「ともかく、ここでは何も起こらない。次にさっさと行って、さっさと終わらせたい」
最後の方に本音みたいなものが出しつつ、圭が言いきる。
レインさんとノコノコさんは、圭に対して「またまた」と言いながら笑っているけれども。
お二人とも、彼は多分、本気ですよ?
「本当に、何も起こらないもんですねぇ」
ノコノコさんが言うと、レインさんも「本当ですねぇ」と同意する。
「前回も何も起こらなかったのに、なんでタケさんは変になっちゃったんですかね? タケさんだけ、何か特別なことでもしましたっけ?」
レインさんの疑問に、ノコノコさんが「どうなんですかね」と答える。
「この検証オフ会以外のところで何かしていたらわからないですけど……少なくとも前回、タケさんだけ違うことをしていたっていう覚えがないんですよね」
「タケさんに聞けたら、一番早いんですけどね」
レインさんが苦笑交じりに言った。
そう、それができれば、一番早い。
だけど、それができないからこそ、こうして検証オフ会をもう一度行っている。となると、何も起こらないからこそ、何かしらの発見ができるのではないだろうか。
「圭君、もしかして」
私が思いついたことを言おうとすると、圭は「さあな」とだけ答え、すたすたと歩き始めてしまった。
もしかしたら圭の中では、何かしらの答えが導かれているのかもしれない。
私はそう考えつつ、圭たちの後を追いかけるのだった。




