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4.宅配スキル、異世界始動!

 宵智はまず、人が賑わう広場を目指した。言語理解スキルのおかげで、飛び交う会話が不思議と頭に入ってくる。どうやらここは、プリングという名の小さな町で、特に大きな交易路もない、ごく普通の場所らしい。人々は質素だが、どこか満ち足りた表情をしていた。

 

「……まずは、情報収集、だよな」

 

 彼は手始めに、町の地図でも手に入れようと、キョロキョロと周りを見回した。すると、目に入ったのは、広場の片隅で小さな屋台を広げている老人だった。木製の台の上には、手書きの地図らしきものが何枚か並べられている。

宵智は意を決して老人に近づいた。

 

「すみません、この町の地図はありますか?」

 

 老人は白髭を揺らし、ニコニコと宵智を見上げた。

 

「おや、旅のお方かね?珍しい紫の髪だ。地図ならあるぞい」

 

 老人は地図を指さし、その値段を告げた。しかし、宵智は自分の持ち物が変わってしまっていることに気づいた。財布の中には、見慣れない小銭がいくつか。

 

「あの、これ、お金ですか?」

 

老人は目を細めて笑った。

 

「そうじゃよ。この国の通貨は『リール』と申す。お主が持っておるのは、銅貨じゃな」

 

 宵智はため息をついた。お金の単位も、物の価値も全く分からない。

 

「ええと……この地図、いくらですか?」

 

老人は指を二本立てた。

 

「銅貨二枚じゃ」

 

 宵智は自分の財布から、恐る恐る銅貨を二枚取り出し、老人に差し出した。老人は快く受け取ると、地図を一枚手渡してくれた。


 地図を手に入れた宵智は、町の外れにある人通りの少ない場所へと移動した。そこで彼は、新しく授けられたスキルを試してみることにした。

 

「まずは、『隠蔽』だな」

 

 心の中でスキルを発動させると、自分の存在がフワリと軽くなるような感覚に襲われた。周囲の景色は変わらないのに、なぜか自分が透明になったような、不思議な感覚。試しに、近くを通りかかった通行人の横をすり抜けてみたが、彼らは宵智の存在に全く気づかない様子で通り過ぎていく。

 

「おぉ……これは、なかなか便利じゃないか?」

 

 続いて、『無限収納』を試す。彼は革製のバッグから、持っていた地図を取り出し、心の中で「収納」と念じた。すると、地図はふっと消え、バッグの中は何もない状態になった。再び「取り出し」と念じると、地図がスッと手の中に現れる。

 

「すげぇ!これなら、ピザの配達バッグみたいに、いちいち荷物を持つ必要がないじゃん!」

 

 思わぬ利便性に、宵智は少しだけ気分が高揚した。これで移動が格段に楽になるだろう。それに、宅配スキルと組み合わせれば、重い荷物も無限収納に入れて、移動先で取り出すこともできるはずだ。これは、使える。


 宵智はプリングの町の地図を広げ、じっくりと眺めた。この町で、自分にできること。それはやはり、『超次元速達宅配ディメンジョン・デリバリー』しかないだろう。しかし、一体何を、どこへ、どうやって届けたらいいのか。

 

「まずは、この町で、何か荷物の配達を頼める場所を探すのが先決か……」

 

 町の中心部にあるであろう掲示板や、荷物を扱う商店などを探してみることにした。もしかしたら、そこで最初の依頼が見つかるかもしれない。

紫色の髪を揺らし、新たな一歩を踏み出すと宵智の顔はワクワクの表情に満ち溢れていた。

 

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