第二部ワイルドハント03霧の都、サヌレビア 後編 霧都の暁作戦
「みーなさんどうしーてすごいー顔をしーているのですーか?私はダリア・アジョアズレス。あーなた達ダンサンカ ブーケのダリア・アジョアズレス、騎士ーですよ。」
第二部ワイルドハント03霧の都、サヌレビア 後編 霧都の暁作戦
夕日の沈みゆく街、砕かれたルリロー、逃げ惑うひとびと。押し寄せる触腕。呑まれる姿。
「もう、やめて。」
助けを求める腕は、肉の波に埋もれてゆく。
「そんなそんな、まだまだこれからが面白いんですよ。」
いく人かの騎士が、励起したランサーを構えて楔形の陣形を取り、波に呑まれる。
「あなたたちがヒトを食べるのはわかる、わたし達ヒトもあなたたちを食べてるから。」
白く細い指は、しなやかな動きで、固定された頬とあごを撫でる。
「でも、どうしてその記録をわたしに見せるの。」
目の前には、アセデリラ達の目の前で心の臓を貫かれたダクトロが映っていた。
「うふふ、ヒトは誰かに成果を見て欲しくなるものですから。」
「ダリアさん…!」
うつろな、輝きの消えた濁った青い瞳をまっすぐに見れなくて、わたくしはダリアさんを抱きしめます。
「はい、私ーはダリア・アジョアズレス、ラプリマの騎士ーです。」
触腕から救い出した時には、既に手遅れでしたの…?
「リーナくん。」
「はい、間違いなくダリア様ご本人の肉体です。」
「でも、でも先輩は!」
「落ち着いてぺんぺん、心を見失うと目の前の事実しか見えなくなる。」
「そうだよペンタスくん、今の私達は情報を整理する必要がある。」
陽の落ちて、満天の星、邯鄲の柱が瞬き始め、エウトリマの言葉にわたくしは振り向きます。
「あなたエウトリマ!わたくしの!わたくしのダリアさんが!ずっと守るって、ずっと離さないって誓ったのに!わたくしのダリアさん!!!」
「はい、私ーはダリア・アジョアズレス。ラプリマの騎士ーです。」
「あああああああ!!!!!ダリアさん!!!!!」
理性を喪ったかのように泣き叫ぶお嬢様を見てエウトリマ様は
「フェイくん、負担になるだろうがアンカラの強度をあげて欲しい。あの触腕の危険性はその攻撃力だけではない。」
「はい。」
「エウトリマぁ!わたくしの!わたくしのダリアさんが!手遅れだって言うんですの!?」
パチィ!
「リー、ナ?」
エウトリマに叫んだわたくしの頬を張ったのは、リーナでした。
「お嬢様。」
リーナは腰のポーチから、ダリアさんとわたくしが描いた新しいお料理メニューのスケッチを取り出しました。毎晩ふたりで考えておしゃべりしながら描いて、ゴミ箱に丸めて捨てたスケッチを。
「あなたは、「レジーナ」で何を学んでこられたのですか?」
「それは…。」
「思いがけない出来事に、ただ泣いて騒げば解決すると言うことですか?」
「いえ…。」
「そうです。それが許されるのは小さな子どもまでです。」
「はい。」
「ではお店で、運んでいたお料理が、酔っ払いの振り回した腕がぶつかって床に落ちたらどうするのですか?」
「まず酔っ払いの方がお怪我を召されていないか確認させていただいて、お料理をお待ちのお客様にお詫びをして、許可をいただいてからキッチンに代わりのオーダーを通して、お片付けをします。」
わたくしが、冷静に落ち着いて、身体に染み込んだ手順を言葉にすると、リーナは優しく頷いてお料理のスケッチをダリアさんに見せました。
「騎士ダリア・アジョアズレス。あなたはこれが何に見えますか?」
「はい騎士ダリア・アジョアズレスは質問に答えます。今目の前に掲げられたものは、太陽系第三惑星人の言うところによるパルプ、植物の皮繊維などを漉き、干して固めたもの、そこに油分や塩分などが付着したものに炭化した穀類が付着しています。」
「では騎士ダリア・アジョアズレスに次の質問です。湖上都市サヌレビアのあるルルメンタ ブリンダに、太陽系第三惑星人の定義する龍は棲息していますか?」
「はい、騎士ダリア・アジョアズレスは質問に答えます。湖上都市サヌレビアのあるルルメンタ ブリンダに、太陽系第三惑星人の定義する龍は棲息しています。」
リーナはエウトリマやフェイさん、ペンタスさんの顔を見渡して、最後にわたくしの方を見ました。恐らく、決定的な質問をするのでしょう。わたくしも頷きます。
「では騎士ダリア・アジョアズレスに最後の質問です。騎士ダリア・アジョアズレスの身体の中にいる、今私の質問に答えているあなたは誰ですか?」
「はい、騎士ダリア・アジョアズレスは最後の質問に答えます。騎士ダリア・アジョアズレスの身体の中にいる、今あなたの質問に答えている私は──。」
ダリアさんは後ろに飛び跳ねて、湖水の方陣を中空に描き、そのまま庁舎の屋上から落ちました。
「今の、は。」
エウトリマがわたくしの隣に立ちました。わたくしは彼女の両手を握りました。
「恐らく、質問に答えた場合に「中にいる何者か」は「ダリア・アジョアズレス」様ご本人と違う答えになるでしょうから、「ダリア・アジョアズレス」として行動するように指示されている内容と矛盾が発生してしまいます。それで逃げ出したのでしょう。」
「つまり、身体はダリアくんのものだけど、心が抜き取られてしまった、今ダリアくんの身体を動かしているのは、恐らくは龍だと考えればいいんだね?」
エウトリマは、リーナの方ではなく、わたくしに優しく説明するように話してくださいました。
「酷いことを言ってしまってごめんなさい。」
「いや、私も君の心を考えずに行動してしまった。」
軽く口付けを交わして、リーナに振り向きます。
「わたくしの間違いを正していただいて、ありがとうございますわ。」
「はい、それも従者の務めですから。」
「よし、ダンサンカ ブーケエウトリマ班、春の五月三日、暮れ六つ刻、現時刻より騎士ダリア・アジョアズレスの心と身体を奪還する、「霧都の暁作戦」を開始する!」
「あの中の個体は、せめてワサビ女だけでも殺せば面白かったでしょうね。」
ずちゅ、ねちゃ。
蠢く海綿状の肉の中、むせかえるような腐肉の臭いが充満している。
「エウトリマだけでなく、あの中の誰か1人にでも手を出してみろ、お前達を全員殺してやる。」
「あら怖い。かりそめの腐った身体とぜネロジオだけの姿になっても。とっても勇ましいですね。」
白くしなやかな手は、誰かの腐肉で構成されたダリアの頬を撫でる。
「触るな、エプリシア。」
普段ならベッドに潜って、おでこを2人で手を繋いで寝ている時間。
お父さんにお母さん、お兄ちゃんお姉ちゃんにおじいちゃんおばあちゃん、おとうとにいもうと、おじさんおばさん、お友達みんな、みんな食べられて、生き残った私が預けられたあの日。
「──ぁ、あ。」
泣き叫んで声も出せなくなった私に。
「もうなかないで、わたしがいますよ。」
両手をぎゅって握ってくれた。
「なかないで、わたしがいっしょだから。」
みんなが食べられた夢を見た時は、ずっと抱きしめてくれた。
怖い寂しい、1人だけの夜から守ってくれた。
私の大切な、ペンステモン。
「フェイはルリローを唄うのがとってもじょうずです!私が騎士になれたら、その…。」
いつも元気で瞳もキラキラしてるのに、エンゲージの事だけは顔を赤くして恥ずかしがって。
「ほらフェイ、このサンドイッチ私が作りました。」
お料理も勢いだけで作るから、カラシもいっぱい入れちゃって。
「そうです。あなたはダクトロになる資格と、義務があります。そしてこれは、そうです。あの紫の髪の騎士候補生があなたのために心と命を差し出して作ったランサーの片翼です。」
花びらの牢獄の中で、ひとりぼっちになった私を、ずっと支えてくれた。
私の大好きな、私だけのペンタス。
「がうううう!がうっ!」
サヌレビアの区画管理庁舎。その屋上で、ペンタスは龍が侵入したと断定されたサヌレビア騎士達と戦っている。
─数刻前、エウトリマ班長から。
「恐らくこの都市サヌレビアを開いた「アズマ」とその隊長ニシキオリは、この都市が何らかの形で攻められ、厳しい防衛戦になる事を予見していた。」
「それは…?」。」
「サヌレビアを一枚の平たい石パンだと思ってほしい、そのパンを9人で仲良く分けてみよう、ナイフや包丁でタテとヨコにそれぞれ2回、なるべくきれいに分けられるようにまっすぐ切ってみれば…とにかく、きれいに分けられるはずだ。この区画管理庁舎は、他の庁舎と同じくその4本の線が交わった所に立っている。あれ…?交わっていない所も含めてほしい。つまり、ここのつのうち、やっつが落とされてもひとつ守り切れば攻めやすくなるんだ。」
「周りが全部敵なら攻めやすいんですか?」
「ああ、さっきアセデリラくんが張り倒したような、「寄生体」はある程度の衝撃を与えれば、入り込んだ龍が身体を食い破って逃げ出す。橋の上でダクトロの心臓を食べていたあれだね。そこを仕留めればいい。そして、抜け出した身体の方は、リーナくんが蹴り飛ばした、実際には蹴り飛ばせなかったように、血液は抜かれているが、身体自体は生命活動を続けている。これは女神が邯鄲を行うために太陽系第三惑星人に仕組んだ「お菓子の箱」のひとつだそうだ。教えてくれたリーナくんの見立てでは、ルルメンタ ブリンダの奥底にいる龍本体が、ヒトの魂を集めているようだ。目的は不明だけど、とにかく。」
「その龍を駆除すれば、ダリア先輩にダクトロや他の人たちも。」
「ああ、還って来る。」
「それで、ここを守ればいいんですの?わたくし一人ででも…。」
「「カドカド。」」
「「イジイジ。」」
メガネ先輩と班長のやり取りのあと、班長は直接紙にペンでタテ線とヨコ線を引いて、ひとつの角に丸をつけました。さらにその対角線にあたる角へバツ印を。
「今リーナくんがここを占拠したと通信が入った。相手はウサギも出してきたらしい。」
「多くは聞きませんけど、リーナならやりそうですわね。」
「ああ、うずうずしてポデアを展開するのはまだ早いよ我が君。リーナくんがこの角を、フェイくんとペンタスくんがここを守ったとしよう、君はどうするのが正解かな?我らがクルルガンナの駆騎士。」
「守るのは性ではりませんわ。それにダリアさんの身体も捕まえないといけませんし。」
「そうだね。サヌレビアは人口およそ8万、その全てが寄生体の場合は、君は守るよりも攻める方いいだろう。そしてフェイくんにペンタスくん。」
「はい。」
エウトリマ班長は腕を上げ区画管理庁舎の屋上から橋を指差して。
「アルマくんとカトラスくんには、私達のウサギで魔導列車を作りラプリマのブーケへ増援を要請してもらっている。到着する彼ら彼女らにはアンカラもいるが、寄生されていた可能性が高い、つまり演技だったとはいえ、ダクトロのルリローさえも貫いたあの龍の攻撃を受けるには力が足りない可能性がある。ここを維持して、彼らを助けてあげて欲しい。」
エウトリマ班長は一呼吸置いて。
「以上が、現段階での霧都暁作戦の内容だ。私は戦えないのでアセデリラくんの背中にくっつく。リーナくんが囮であり、近辺の寄生体を戦闘不能にする。アセデリラくんがダリアくんの身体を奪い返せば、ブーケ本隊の到着後、ルルメンタ ブリンダの龍を撃滅する。アセデリラくんとリーナくんが敵の注意を引き付ける形になるので、この庁舎を攻める寄生体の数は限られるはずだ。君達の健闘を祈るよ。」
軍令を返す私達の目の前で、アセデリラ先輩が緑雷のポデアでエウトリマ班長を背負って、背中にくくり付けます。
「我が君、これは…、その。」
「今度は飛び降りさせませんわよ。あとフェイさん、わたくし達にアンカラは不要ですわ。」
「ええっ!?」
「わかりました。」
「私達は、強い愛で結ばれているからね。」
「…これが終わったら覚悟してくださいまし。」
四肢に刺した緑雷のポデアを励起させたアセデリラ先輩は、背中のエウトリマ班長ごと庁舎から飛び降りました。そして。
「30体ほど来るよぺんぺん。先輩達がいなくなるのを待ってたみたい。私達になら勝てるって思ってる。ムカつくから秒でやっつけて。」
「フェイって、時々すっごい怖い事言いますよね。」
「来た。早く、私のぺんぺん。」
「わうっ!」
首を振り、ぽん、ぽん、と犬の耳が立って、かわいいお尻からふさふさの尻尾が揺れて。
「ハッハッハッ。」
つま先から膝を屋上の床面につけた状態で、膝を開き両腕を付いた姿勢で座り、その手の先には寄生体の龍、尻尾をぶんぶんと振ってお口を開けて息をしている、大好きな私のぺんぺん。
「よし。」
「わう!」
ぐしゃあ。
喜びながら数十体の龍を手で押し潰す。
可愛い可愛い私のペンステモン、ペンタス、ぺんぺん。
頭を抱きしめて撫でる。私の可愛いお人形。
通りを駆ける。
「感有り。四千と百数十はいる。」
母親が赤子を背負うようにおんぶして、緑雷のポデアでくくり付けたエウトリマが言う。速度を落とさずに、なおかつ寄生体の宿主に回復が可能な範囲で衝撃を与え、さらに飛び出た龍を排除する。統制は取れているものの、その寄生先の肉体は騎士であり、ただの日々を送るヒトであり、傷病者もいれば、小さな子どももいる。
「アーメフォーニの起こす波に比べれば、些細なものですわね。」
「揺れるかい?」
「ええ、少し。」
背負ったエウトリマがわたくしの身体にしがみつく。
「グラシラピア。」
氷壊のポデアを通りの地面、通りの両隣にある建築物の壁面全てに展開。
「来たよ!」
声に応えるように、建物の屋上、窓、井戸の中、そして前方から寄生体の波が現れる。
「セラ。」
展開した氷壊のポデアを励起させて、寄生体全ての股関節を凍結。
「ギ エスタ 。」
凍結した路面を滑走しながら、左脚のつま先立ちで左回りに回転。
「イィル リアテンタ 。」
展開していた氷壊のポデアを回転に巻き込み、収縮。
凍結した寄生体が、回転の渦に巻き込まれ何層にも重なり、広域を探知するエウトリマの視界でそれは、氷の花を描いた。
「フラウ。」
いっせいに宿主から飛び出した龍を、凍結に利用した氷壊が貫く。
「美しいね。」
「ふふ、お褒めの言葉はアルマにお伝えになってくださいまし。」
「わうわう!」
次の寄生体の群れへぺんぺんは吠えたて、蹴散らして行く。
「「ねえあなた、エルベラノの、大切な家族の仇を討ちたいんでしょう?」」
「エプリシア?」
「「見せてあげる。」」
根を伸ばす。微生物を捕まえる。接触部位から吸う。肉と、血と、骨。臓器と、脳。
繰り返すうち、微生物の思考というものがわかるようになる。この感覚は、おいしい。
助けて、痛い、おとうさん。おかあさん。あなた。おまえ。最初は空気の振動と感じていたそれは、このおいしい食べ物が発する鳴き声だと理解できるようになった。
2人で並んでいる片方を食べれば、もう片方は騒いで、泣いて、怒って。それはとてもおいしい、すてきな味付け。
「きさま。」
「そんなに怒らないで?だってこれは、あなたの。」
根がよく伸びて、幹が太くなり、枝も新しく生える。
たくさんの重たい、飛び跳ねて、駆け回るものが私の身体のいたる所にぶつかって、時々光の線で熱くしてくる。ちくちくするし、熱い。根を地中から伸ばすのはおっくだから。どうしようかな?この微生物がする事は、当然私にもできる。たくさん食べたから、使い方もわかる。
この微生物は、こう、やって。動かなくなった微生物を、吸い上げる。うん、これもおいしい。枝に葉が生えて、もっと栄養が欲しくなる。次の群れが向かってくる。まとめて吸い上げる。怒り、悲しみ、痛み、苦しみ、覚悟、憎悪、絶望。どれもおいしい。
ただ、小さすぎて食べた気がしない。
繰り返すうち、私も子どもが欲しくなった。せっかくだから、記録してあるこの微生物の持っていたものを詰め込もう。いい子に育ってくれそう。いくつ作ろうかな。
エルベラノのとある研究室で行われている、自己学習進化型の調整がなされた太陽系第三惑星由来植物、その起動式。非公式にクルルガンナの星人を殲滅しているマイちゃんやゲンザンさんの代わりに、わたしが立ち会いに選ばれた。
「あなたダリア!やっとエルヴィエルナで騎士くずれの掃討が終わったって聞いたから、あなたの大好きなにんじんのソテー作って待ってたのに!先にラプリマのあばすれの所に帰るなんて!」
「ごめんねハイェルルラ。けどレジーナはわたしひとすじだから、あばずれじゃないよ。」
「私のダリアをたぶらかす女はみんなあばずれよ!」
抱きしめて、おでこにキス。
「ダクトロおめでとう。手術、痛くなかった?」
「ふん!あなたのキスより痛くなかったわよ。」
「ふふ、わたしの時は、あなたの指くらい痛かったよ。」
「ばか。」
ついばむようなに口付けを交わす。
アイビーの持つ花言葉、不滅。
勇者ゲンザンと結ばれたアルマコリエンデからもたらされた、クルルガンナ星人の持つぜネロジオとポデアの技術。接触するだけで意識、知識、知覚、経験、技術を共有するその技術。女神ロータス=魔王ペンディエンテ、太陽系第三惑星地球において、1990年代日本の、高度経済長期と土地バブルが崩壊し、その残滓が残る、とある都市の片田舎、当時どこにでもあった金属加工を行う町工場の一人娘として産まれた、ただの高校生蓮坂舞が、天の川銀河その中心に位置する天体へ持ち込んだ数少ない知識と技術その延長では、到底再現しきれるものではなかった。かたや発生した惑星の持つエネルギーを活かしきれない文明と、生命体の精神構造を数値化し、操作できるクルルガンナの差は、荒れ狂う大河と、それに田畑が飲み込まれるのを見つめることしかできない、耕作従事者ほどの差よりも、さらに大きなものがあったのである。
だが、人類の叡智と、屁理屈だけで命球の女神となった蓮坂舞は、記録にある太陽系第三惑星の植物の要素を遺伝子に乗せ、その記録を再生、保管、委譲する事を可能にした。
その被験者1号がダリア・アジョアズレス。2号がハイェルルラ・エル・ベラーナである。
以降、全ての太陽系第三惑星人にこの適応が女神の邯鄲により行われ、人類はクルルガンナ星人からの一方的な殺戮により減少した個体数を回復する。
ハイェルルラに埋め込まれたぜネロジオは、不滅。
「それで、エルベラノに戻ってきた理由ってなんなの?」
「うーん、内緒、トモちゃんに聞いてみたら?」
「どうして他の女の名前出すのよ。それにあの勇者はハイレンダバスタの殲滅を騎士連合と行なってるんでしょ。ダクトロのスケラで教えてもらえないのに、どうして準勇者のあなたが知ってるのよ。」
「ふふー、わたしが勇者にいちばん近い存在だからかな〜。」
「あきれた。ほんとに勇者に近いなら、あんなに高い声出しませんよーだ。」
「うん、トモちゃんだいたい、マイちゃんにすっごい低い声で怒ってるもんね。」
「あなたねー、聞かれたら怒られるわよ。」
軽い口付け。
「行ってくるね。」
「どうせ研究室でしょ。もう新しい女拾って来ないでよ。」
見送ったハイェルルラは、紅い髪がベッドに残した手紙を見つける。
「まさか、別れ話じゃないでしょうね?」
─わたしのたいせつなあなたへ
きっとこの手紙を読んでるころ、新しい実験体の起動式がはじまるよ。あなたやわたしみたいに、ヒトじゃなくて、植物で行うの。痛がるヒトはいないから安心して。この実験体は、あなたやわたしみたいに、抽出したぜネロジオを組み込むんじゃなくて、この子が持ってるぜネロジオをそのまま再現するんだって。
これから言うことは誰にもひみつだよ?
今マイちゃんとゲンザンさんは、クルルガンナっていう星の人を殺してる。この人達が、本当のクルルガンナ解放戦の、敵。
それで、この人達がいっぱい、いっぱい太陽系第三惑星人を殺したから、女神と勇者はカンカンなの。
邯鄲はもう知ってるよね?マイちゃんのひみつ。
ほとんどのヒトは、この邯鄲でクルルガンナの星の人のしたことと、その存在を記憶から消されたの。
でも、エルベラノのひとつの研究室が、邯鄲から記憶を守る方法を探してて、見つけちゃったの。
それで、クルルガンナの星の人がしたことも記録しててね。
それで、べつの研究室の人達は
2度と、他の星の生き物に太陽系第三惑星人が殺されないように。
マイちゃんには「ただのお花を植えます。」って言って、ハンコおしてもらって。
ほんとうは、他の星の知てき生命体を見つけて殺すって機能を付けたの。
わたしが調べたのは、ここまで。
その起動式がきょう。
でも
わたしはそんな生き物、認めない。
クルルガンナの人達と殺し合うことになったのは、もう止められないけど。
次にどこかの誰かと会うことがあったら、今度は友だちになれるかもしれないから。
だって
ハイェルルラとわたしは出会って、おしゃべりして、いっしょにご飯を食べて、キスもして。
好きどうしになれたんだもん。
あなたはわたしのこいびとで
わたしはあなたのこいびとで
はじめては知らない人どうし
きっと、新しいであいも、いいことあるとおもうよ。
研究室のヒト達は、マイちゃんとゲンザンさん、トモちゃんのぜったいいないこの日をねらって、実験をするの。
あの生き物を、殺す。
邪魔をされるなら、その人達も殺す。
邯鄲の柱になっても構わない。
わたしは、新しい未来のために、この命を燃やし尽くすよ。
ここまで読んでくれた?ありがとう。
ちょっとこのおまじない言ってみて?
イラウ ィン 、ヴァンボル プロタ ミン 、ヌートゥラ ィン
あいしてる。わたしのハイェルルラ。
─ダリア・アジョアズレス
「─イラウ ィン 、ヴァンボル プロタ ミン 、ヌートゥラ ィン。」
途端、ハイェルルラの周りをいく層ものルリローが覆う。
「ちょっと!何これ!割れない!?この手紙の文字自体にダリアのルリローがかかってたの!?ダリア!ダリアー!」
ぱちり、とある日に2人でデートした時に買った花が、誕生日のプレゼントにフェイからもらった花瓶に挿してあった花が、不可視のノイズによって内側へ爆ぜた。
「ーっ!?」
何かが、起きている。
ハイェルルラは、割れないルリローに何重もの「吸い尽くす意思を持ったポデア」が炸裂しているのを感じた。
「凍りつく夜明けにも♪」
ダリアのルリローに波長を合わせ、アパートの周囲、町、エルベラノ全域へルリローを展開する。
ルリローは、展開するたびに吸い尽くされる。
研究室のある棟、その周囲は既に地獄と化していた。
かつて、実地演習で犠牲者達が展開したルリローは、準勇者の閃光を以ってしても破壊出来なかった。ハイェルルラとわたしの分しか張れなかったけど。やはりこのルリローは、あの生物でも割れないみたい。
「シクローナ。」
「「コネージョ、ソルタンド。」」
ウサギのシリンに立つ。
「ラアァス シア イクステーラ。」
「「なんやガキ、ドンパチけ?」」
「死ぬ気はないんだけど、たぶんわたしはここで死ぬ。」
「「そんでワテを出したんか。」」
ぐしゃり。
眼前に、捻り潰されたウサギが転がる。騎乗していたはずの騎士は、その部隊章だけがヒラヒラと舞っている。
「「よぉわかったわ、相手はなんや?」」
「天下無敵のぜネロジオを持ってる。」
「「それはええねん、ワテを出すほどやからそら強いやろ。どこにおんねん。ユベライサの破壊女帝、このワテがどんなもん出てきてもシバいたる。」」
「目の前。」
「「お母ちゃん用事思い出したわ。帰ってええけ?」」
「跳ねろ、シクローナ。」
「「アンタそんな人使い荒かったらお嫁の貰い手あらへんでー!」」
ポデアが防がれ続けているのを認識した実験体は、物理的に枝を稼動させてダリアとシクローナを狙った。その緩やかな動きは、ムチ状に変化した枝をつたい、音速を超える。
「うん、どれだけ速くてもシクローナの今いる点を狙うから、避けるのはかんたんだね。」
「「そないゆーんやったらアンタがワテ運びぃや!ほら、なんかあんやろ、奥の手!」」
「わたしとずっと一緒だから知ってるでしょ?ラ マスタロ…。」
「「ほなええわ!ワテが…ちょっと、ちょっと待ち!」」
「何?今忙しいんだけど。」
「「あれ、なんや?」」
したる枝のムチを躱し続けていたダリアとそのウサギ、シクローナは。
「たぶん、実。」
「「知っとるわ!…ワテのカメラやと、あん中にヒトおるで。」」
「産むつもりかな。」
「「そらええもんよおさん食っとったら、元気のええお子さん産まれるわ。」」
「あれから、殺す。」
「「そうやな。アレが産まれるとこ見たないわ。」」
「コントロール預けるよ。」
「「よっしゃ、ワテに任しとき!」」
商業と研究の都市エルベラノ、その建築群と住民の生命を喰らい続ける大木の、枝のムチを、避けて、跳ねて。シクローナは次第に果実のある高さまで登り詰めてゆく。
「「いつまで経っても枝をヒュンヒュンやっとるだけかー!」」
「イエヲン…うるさい。祝詞の邪魔。」
かつて、太陽系第三惑星で使用されていたピストル、ハンドガン、リボルバー。人間が片手または両手で銃把を握り、撃鉄を起こし、引き金を引く兵器。さまざまな戦いの中次第に洗練されてゆくが、ここ命球ではウサギ(その跳躍型)と呼称される平均重量56.4t相当の搭乗式の、殺人者の魂を光崩壊させて鍛造した鉄の塊を弾頭とする簡素な、そして単純であるが故に最も信頼性が高い兵器。このウサギを騎士はピストルとして、撃つ。
「テナス サンダリガン パフィルテニラ。 」
「「ええで。やるんやな。
─────我は、白檀の銃把を握り。」」
騎士の祝詞に合わせ、ウサギの、殺人者である騎士もまた、合わせる。
「レヴ ラ マルテロン ミ エスタ ラ… 。」
「「初めて会うた時はえらいおてんばやなって思たけど。
─────撃鉄を起こせ、我は 。」」
それまで喰らって来たどの微生物のものとも比べられない、破滅的な熱と質量が来る。それも、我が子を狙って。実験体は全ての枝と、己が命を以って我が子、果実を守ろうとする。
クオォォォ。
それはまるで、先ほどまで喰らって来た微生物の、ヒトの、親が子を、恋人同士がお互いを、友人同士の、師が弟子を、その姿と同じであった。ヒトを喰らい続けてその形質を、精神を取り入れた生き物は、同時にこの、守ろうとする行為が無駄になる事を理解していた。
それでもなお、守りたかった。どうか、この子だけは。
「ラ マスタロ デ ミア ディスティノ!」
「「お別れやな、ダリア。
─────我は運命の主人!」」
ぱん、あるいはズギュウウン。
ヒトがヒトを守るために行うルリローがあれば、そう聞こえたかも知れない。
しかしその炸裂で発生した衝撃と轟音は、既にヒト種の認識できる音の範囲を超えていた。
火薬のポデアが炸裂する事で発生した熱量や、加圧された空気が弾頭に与えた運動エネルギーは、植物の枝を砕く。果実を撃ち抜く。
「「まだ終わっとらんで。」」
ファルタポテンカで脚部と再結合した弾頭の上の準勇者は、左腕を掲げる。
「わたしの、とっておき。」
霧散したように見えた銃撃の熱と質量、さらに音、空気の振動をも収束させてゆく。
「「暗く冷たい光の海に。」」
「我ぞ花よと舞い踊る。」
「「あらゆる命を集めて放つ。」」
「黒い渦の、光のつるぎ。」
この瞬間、エルベラノのあらゆる熱と光、時間ですら飲み込まれ、ダリア・アジョアズレスの腕に集まった。
「ヤリラ ルーマ!」
閃光。
ずちゅ、ぐちゃ。腐乱したヒトの肉、臓物、血液が蠢く。
「これがなに?わたしの左腕に眠っている「ダリア」の記憶でしょ?今見せる必要ある?」
「あら、本当にまだ自分が、ただ死んじゃった普通のヒトだと思っているんですか?」
私がフェイと出会ってしばらく経って、少し大きくなってコルソに上がってからは、フェイは夜に泣き叫んで起きちゃうって事は減るようになりました。
「ねえぺんぺん、あなたが騎士になったら、エンゲージしようね。」
「わっ、その、ええと、…はい。」
ほっぺたが熱くなって、くすぐったくなります。
「ぺんぺんかわいい、私のぺんぺん。」
「ほらぺんぺん、今日も唄お。」
「はい、今夜も星がきれいですね。」
「うん、あの黒い空の♪」
「はい、あの晴れた空の♪」
私達だけの歌は、別々の歌詞を。
「瞬く星のように♪」
「私を焦がした花のように♪」
けど、少しずつ気付いていました。
「ねえぺんぺん、──。」
「ほら、ぺんぺん、──。」
フェイが、私を見てるんじゃなくて、私を通してフェイの家族を見ていることに。
「ぺんぺん!次が来るよ!やっつけて!」
だってぺんぺんは、フェイが持っていた、首の取れたお人形の名前だったから。
「ほら見てください。この、焼け落ちた実から引きずり出した、産まれる前に死んだあなたを抱いて、残った腕だけで這いずっているのが、本物のダリア・アジョアズレスです。」
目を閉じようとするわたしを、エプリシアの細くて白い指がまぶたを広げて見せ付ける。
「あなたのぜネロジオには、あなたのお母さんに飲み込まれた、エルベラノに住んでいた、一千三百九十一万と、千九百人の肉体の記録が。」
「せいやああ!」
視界に捉えた時点で展開していた氷壊のポデアで脚を止め、平手で頬をはたく。
ギュプイィィ!
喉を食い破って飛び出した龍を、平手の返す手刀で両断する。
「「エウトリマだ、今ダリアくんの身体を確保した。じきにブーケ本隊も到着する。私達は橋へ向かう。」」
「おかしいな。」
「どうされましたの?」
「フェイくんだけ、返事がない。ペンタスくんが一緒だから問題無いとは思うが。」
両腕に抱いたダリアさんの身体に治療のポデアをかけ、らたくし達は橋へ向かいます。
「マズっちゃったなー…。」
「へ?」
腕の中のダリアさんが、目を開いていました。言葉も流暢に話しています。
「まだ龍が入っていますの!?」
ぱちんぱちん、往復でビンタすると
「待っておデコちゃん!わさびちゃんも止めて!ほっぺがちぎれちゃう!」
「君は…?」
「ワイルドハントの騎士、ダリア・アジョアズレスですわね?」
「わたしの、なかに…。」
「はい、あなたの中に。」
エプリシアの白く細い指が、しなやかな手つきでわたしのほっぺ、首、胸、おなかをなぞる。
「見た事を覚えているでしょう?たくさんのヒトの、脅えた目を。」
「わたしは、おぼえている。」
「食べた事があるでしょう?たくさんのヒトの、血と肉と。」
「わたしは、食べたことがある。」
「今、あの龍の腹の中には、わたしが一度殺して蘇生した、ほんものの「エルベラノの災厄」が入ってる!」
「それが、わたくしのダリアさんですのね!?」
「そう!13年か、わたしはあの子をヒトとして、娘として育てて来た!ヒトと共に歩いて行けるように!恐らくあの龍は、その人間性を剥がして、天下無敵のぜネロジオを暴走させようとしてる!」
「さらによろしくない状況だ。フェイくんとだけ、通信が繋がらない。」
「下ろしておデコちゃん、わたしが行く!」
「わたくしのダリアさんはどうしますの!?」
「そっちはあなたがなんとかして!あの子はお嫁さんでしょ!」
駆けるわたくしの腕から跳ね飛んだダリアさんは
「その子はハイェルルラの妹だよね。ある意味一番危ないよ!」
そう叫んで、跳ね飛んで行きました。
「その龍だが。」
「ええ、もう少し頭をお下げになって、全力で駆けますから首が折れますわよ。」
「ああ、橋まで上がって来ている。恐らくはフェイくんも食べるつもりだろう。」
「ダリアさんのぜネロジオを感じましたわ。エウトリマ、あなたのぜネロジオ、入りますわよ。」
「君は、何を?」
「スプレナ。」
「…ううっ!」
初めてダリアさんと出会ったあの日、騎士ダリア・アジョアズレスにぜネロジオへ侵入され、緑雷のポデアの応用を見せられたあの日。
わたくしのぜネロジオに眠っていたアルマコリエンデが、ダリアさんとペンタスさんの殺意に反応して目覚めたあの日。
わたくしにオリジナルのクルルガンナ星姫、アルマコリエンデのぜネロジオが受け継がれていると認識したあの日から、わたくしは。
「「わたくしの声が──
「わたしが、たべたの。」
「はい、あなたが食べました。」
腐乱した、腐り切った死体を目の前に出す。
「どうですか?」
「おい、しそう。」
あの憎たらしいワサビ女の姿を映した腐った臓物を見せる。
「どうですか?」
「わさびの味がしそう。」
これは失敗でしたね。次に金髪ドリル女のものを見せる。
「どうですか?」
「たべたい。たべたい。たべていたい。」
ヒトを食べることに抵抗が無くなってきました、そろそろ。
「では、このドリルを食べていいですよ。」
「わぁい。」
「「わたくしの声が──
「そうです。この生き物が、あなたのお父さんと。」
「お母さん、お兄ちゃん、おとうと、いもうと、おじさんおばさん、おじいちゃんおばあちゃん、友達に。」
「「わたくしの声が──。」」
「聞こえない、ノイズなんて聞こえない。この女、この女が私のお父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃんおじさんおばさん弟妹お友達街の、エルベラノのヒト達を全員!」
「はい、殺して食べました。」
後は、この女のぜネロジオを引き上げて、あの女に食べさせるだけ。
「「わたくしの声が、聞こえますわね?」」
「あ、あ、うん。」
「「お迎えに来ましたわ。」」
「うん!」
「「さあ、どちらにいらっしゃるの?手を上げてくださいまし。」」
「えへへ、お母さん来てくれた!」
「しまった!」
エプリシアは、天下無敵のぜネロジオを持つ「エルベラノの災厄、アセデリラのダリア」にイフェイアーナ・エル・ベラーナを食べさせた上で、混ざり合ったぜネロジオを取り込む計画であった。そのため、ダリアの身体から抜き取ったぜネロジオを、腐乱死体を介して自身のぜネロジオと接続していた。
つまり、ダリアが手を挙げると
ばちゃぁ、ぐぉぉぶぅぅぅ。
湖面を引き裂くように、エプリシア本体の腕が上がる。
「「そちらにいらしたんですのね、さあ、もっとよく見えるように、おでこをぐーっと前に出してくださいまし。」」
「はーい!」
ずおおお。ひだのような感覚器が背中から頭部へ続き、それが独立したかのような触角2対。その根本には2対の眼球。
「「よく見えましたわ。さあ、一緒にお歌を歌いましょう。ミィサ ディ ラ シアム セィニジアンタ ルア 、 ミ ヴィア ヌァ ヴィン♪」」
「はーい!みぃさ、でぃ、ら、しあ──。」
「やめてえええええ!!!」
太陽系第三惑星人の騎士が使用するランサーの祝詞は、いくつか種類があるが、そのいずれもが、対象を光化させるものである。
口内、それも舌の根本から、光が発生する。数万度の光球。
顔面、ヒトの身体で言うところの鼻の頭から、同じ光を押し当てられる。
「「さあ、行きますわよ。」」
「ルーマ!」
ふたつの光の球は繋がり、槍となる。
「さあ、ダリアさん!」
「おかあさーん!」
沈む龍には、構う意味はありません。ツギハギの腐乱したダリアさんを抱きしめる。どのような姿であっても、ダリアさんはダリアさんですわ。頬を擦り付ける。取り戻しましたわ。
「アパティアク サナン。」
ダリアさんとわたくしの身体が、引き剥がされて、不可視の力に縛られ。
「ふぇぐ、あっ!」
ペンタスさんが転がってくる。
「触ってはいけませんよ、駆騎士。」
知っている人物の声のはずが、纏う雰囲気が違う。
振り向くと、そこには。
「それはエルベラノの災厄なのですから、処理致しませんと。」
「イフェイ…アーナッ!」
ペンタスさんが絞り出すように名前を呼ぶそのフェイさんは、つい先日、橋の上で殺されたように見えた、ダクトロエプリシアのものと同じ服を纏っていました。
「セラウ ウール 。」
フェイさんの周囲に、彼女の声の振動が圧縮されるのを感じました。
「ミ ア 。」
そのいくつもの凝固した振動は、激しい光と熱を放ち始めました。まるで。ランサーの。
「ディ ナーツァ。」
ふたりの騎士が、お互いの命をかけて、守りあって発動するはずのランサーが。
ダリアさんの身体を、光に変えました。
「イフェイアーナあああ!!!」
「飼い犬に手を噛まれるって、くだらない。」
ペンタスさんの爪が、ルリローを編み込んだグローブ越しに光を放ちます。
「しつけてあげないと。」
フェイさんは舞うように身を翻し、中空にランサーを展開。
ペンタスさんの、溶けて光になったグローブの下から現れたランサーで、フェイさんのランサーを迎撃して、激しい攻防を続ける2人は、すぐに視界から去ってしまいました。
「ダリアさん!」
我に返って残ったダリアさんの頭を抱えると、肩に手を置かれました。
「ごめん、ヒメコちゃんがトラウマでげーげーしててピンチだったから背中さすって助けてたらあの2人に離されちゃった。」
「あなた、ダリアさん…。」
「いい?今わたしもすっごい焦ってるけどこの子を助けてあの2人も止めないとだから今余裕あるフリしてるけどぜっんぜん余裕ないのレジーナにもハイェルルラにもキスしたいしワスレナにもシクローナにもマイちゃんトモちゃんにも会ってお話したいしドンガスはまあいいかなアウタナさんには毎年命日にお花ありがとうってお礼も言いたいしどうしようどうしようどうしようこういうのレジーナのほうが得意なんだけど。」
「お前はいつまで経っても変わんねえな…。行って来い。」
「ありがとレジーナ!あとでいっぱいちゅーしよーね!」
焦っていたわたくしを落ち着かせようとしていたダリアさんは、内心わたくし以上に焦っていて、そのダリアさんを落ち着かせたのは、レジーナお母様てした。
「よし落ち着いたな。まずエウトリマを降ろせ、今ブーケ本体をアルマ達とゲンザンさんに護衛してもらって、ルルメンタ ブリンダの全周を封鎖している。エウトリマはアタシが背負うから、お前は今からコイツに集中しろ。」
どさっ。レジーナお母様が下ろしたのは重量のある麻袋でした。
「これ、は…。」
「ヒトを殺しゃ邯鄲でお星様になる。なら殺された者の家族はどうなる?泣き寝入りか?いくら女神が敵討ちしてくれるたぁいえ、喪った命が帰らないのはあまりに無情だ。そもそも女神は、それをなんとかしたくて命球に太陽系第三惑星人の生きる場所を見出したんだ。よし涙も乾いたな。よく聞けよ、こいつは女神が用意した「とっておき」だ。ぜネロジオさえ生きてりゃあどうとでもなる。エルベラノ陥落の後、エルヴィエルナで女神の全面協力で作られたイ食対応と同様の技術だ。開けてみろ。」
ダリアさんの頭部を、ハンカチの上に置いて麻袋を開きます。
「一級、素材…。」
「そうだ、ぜネロジオを保管して、人体と同じだけの量を確保できた者だけが行える。本当にもう一度会いたいヒトがいるなら、生涯をかけて用意できるはずだ、そうだろう?およそこの量の額は、ヒト1人が生まれてから死ぬまでに手に入れる女神のポイントと同じ。つまり会いたいなら命を懸けろって女神からのありがたいお言葉だ。」
「ですが、これは。」
「そう、アタシんだ、けどな、あいつはもう、あそこにいるだろ?」
「いえ、ダリアさんの身体を作った後打ち上げをするには、少々足りなくありません?」
ぱしっ
頭をはたかれる。
「お前よ、なんかダリアに似て来てるな。よし、始めろ。要領は食化体の修復作業と同じだ。骨を組んで…所でだ。このダリアのぜネロジオにやべーのが入ってるのはアタシにもわかった。どうする?消すか?」
「いえ。」
「そうだな、いくらエルベラノを滅ぼした原因と言っても…。」
「いえ、天下無敵のぜネロジオ!カッコいいですわ!!!!!!!!!」
「今本隊とのやり取りで忙しかったから聞いていただけだけど言わせてほしい。さすが我が君…美しいよ!」
「やっぱりお前はゲンザンさんの娘だよ…。ああ、せっかくだしよ…。」
「がううううっ!」
「しつこ、い!」
飛び回りながらランサーを展開し、叩きつける。躱し、爪に弾かれ、牙に折られる。泡のポデアを何層にも敷いて盾にしても、覆って締め付けても、何度弾き飛ばしても、その血を流しても、肉を裂いて、骨が砕けても諦めない、アルマコリエンデじゃないけど、これが犬…!
「ねえ、ぺんぺんおねがい。もうやめて?」
「私は、スタークラスターだっ!」
バキィン!
謝るふりをして背後から仕掛けたランサーも、その輝きの前に弾き返される。ぺんぺんのぜネロジオって…なんだっけ。
「あっ。」
しまった。変なことを考えて、思考が崩れた。
慌てて展開したランサーの壁を切り裂いて、その星の輝きは。
「ストップ。」
私とぺんぺんのおでこに向けてその紅い髪は。
「ていっ。」
デコピンをした。
「騎士ーさま。騎士さーま。助ーけてください。」
「手が刺ーさって、抜けなくなったーんです。」
「うえぇ、ぇっ!」
一度はダリアちゃんに助けてもらったのに、この龍たちは学習してる!
「おーかあさん、おかあーさん、お姉ちーゃんつらそう。」
「まあたいーへん、私ーの腕食べる?」
「へぱ、はーっ、はーっ、うぷっ!」
リーナ、ウーンラァン、太陽系第三惑星では宮門居姫子と呼ばれていたその少女は、同じクラスの男子がカエルを爆竹で爆破したり、小学校行事の校舎内キャンプその夜間肝試しで教師陣が張り切って人体模型コスプレで追いかけ回したり、文化祭で上映された映画が宇宙船の中で怪物に追いかけられる内容であったり中学校の行事の青少年ナチュラルハウスでのキャンプで夜間キャンプファイアーの時に友達が目玉の取れたゾンビのコスプレをして肩を叩いて来たり友達2人と見に行った映画では井戸から出て来た女に睨まれたり社会人になってからも目の前で飛び込みを見た事も、他にも他にも本当に色々あって、過度なグロテスク表現を見ると嘔吐するようになっていた。ちなみに文章なら余裕。
「おげ、ええっ。」
涙が溢れる、鼻頭に熱い汁が詰まる、喉と口内が胃酸で焼ける。
寄生体が腕を千切って振り回す。
「うぇお、っぷ!」
光の柱が、降り注ぐ。
スタ、カカカカカカ!
無数の寄生体の中の龍だけを、的確に射抜く。
最低でも65トネラーダはあるはずの砲撃型ウサギが、ふわ、と軽く降り立つ。深い青、群青に所々金のラインが入ったウサギ。
「あらあら〜、大丈夫ですか〜?」
「あな、ひゃはっ。」
リーナは嘔吐した胃酸の影響で、うまく話せない。その騎士、ウサギと同じカラーリングの制服を来た女性はとん、と軽い音を立ててリーナの目の前に降り立った。ネクタイを外し、制服ジャケットの胸元を開くと、ばっふん、と予熱したオーブンを開いたような熱風が吹いて、リーナのメガネを曇らせた。
「あわ、あわ!金髪ゆるふわ上級生のっ!胸元がっ!」
「あらあら、大丈夫そうですねぇ〜、こんにちはぁ、新ワイルドハント、ガブリエルハウンドの副隊長、ヒペリカムです〜。」
アセデリラは、妻の身体を再構築している、もう少し時間がかかるな。
「なあ、てめーら。こっちは十何年かぶりの復帰戦なんだ、ちったあ手加減しやがれ。」
「そうだ!私なんて戦えないからおぶってもらってるんだ!」
当然、寄生体にはそんな泣き言は通じない。
「よっぽどアイツの中のぜネロジオが欲しいらしいな。」
「天下無敵か。でも準勇者のダリアくんに負けたんだろう?」
「ダリアはな、お前が思っている以上に悪知恵が働くんだ。相手がどんなやつでも、崩しに行く。お前もボヤボヤしてると唇を奪われちまうぞ。」
「おふたりとも、余裕がありそうですわね…。」
前後左右、さらに頭上からもひきりなしに湧いてくる寄生体を素手でいなしながら、世間話でもするかのように戦うレジーナと背中のエウトリマを見て、アセデリラはそう呟いた。
身体とお顔も出来ましたし、髪型はどういたしましょう。
「感有り、ウサギだ!」
「リハビリの運動はもーちょっと優しいのが、っと。」
右脚で跳ね、壁を蹴り付け更に上へ。
ガズン!
降り立った漆黒のウサギが、前面中央の紅いカメラを回転させる。
「プリターカ クリータ。」
炎熱のポデアが、飛び上がったレジーナの振り下ろす右脚と共に炸裂する。
「素晴らしい。今わざわざ飛び上がったのは、」
「ああ、アセデリラが腕で切り裂いたなら、アタシもやってみたくなってな。」
ガズン!
次のウサギが降りてくる。
「いくら来ようたってこのレジーナ様の前にゃ
ダスン、ごとぅ、ギャイン、ぜリョン、ベスィン。
「よしエウトリマ、逃げ道を探せ。」
数え切れないほどのウサギのカメラが、2人にピントを合わせる。
これは避けられそうにない、ダリアへの遺言を考えたレジーナは、ある声を聞いた。
「そこの、ちょっと腰を落とせ。」
キィ、ン
光が螺旋を描き、その全てのウサギは、螺旋に沿って崩れ落ちた。
「よしお前たち怪我は無いな、これで終わりか。」
「君、は…。」
声を出したエウトリマに、その少し小さな青い騎士は答えた。
「私か?私は新ワイルドハント、ガブリエルハウンド隊長のパンパスグラスだ。」
2人を転がして、とりあえず鎖のポデアで縛る。
「ほら2人ともいつまで気絶してるのー?戦場だったら5回は死んでるよー?」
アウタナの弟子の方のほっぺをむにむにする。星の子の方は気付いたみたい。
「フェイに触らないでください!」
「んーんーかわいいねー、そのエラヴァは誰に習ったのー?」
「へ、どうして触ったらランサー消えるんですか?」
「どーも天然だね。起きた?君のイェキも天然かな?アウタナはランサー使えないしー。」
「どうして、喋らせてくれるんですか。あなたを殺せるんですよ?」
「いいよ、っと。これくらい離れたら星の子には当たんないでしょ。お好きなだけどーぞ。」
「この私を舐めるのはっ!」
フェイの泡のポデアが多数折り重なり、ダリアの周囲を包み
「昏き瞳よ♪」
「フェイっ!?」
満天の空の、瞬く星の光すら吸い尽くす無数のランサーが泡の内側に発生し、ダリアに向かって放たれる。いく筋もの、ランサーが対象を光化させる閃光が、泡から漏れ出す。
「はぁ、はぁっ。これで、死んだでしょ。」
しかし、鎖のポデアは解けない。
泡の中の光が落ち着く。
「──、─────?」
泡の中、何事もなかったように両手を口の端に当てて、ダリアは声を出した。
泡に阻まれて聞こえないが、何を言っているのかはスタークラスターにも理解できた。
「ねー、もー終わり?」と。
「ばかに、して!」
フェイは更に大量のランサーを展開し
「一度効かなかった技をもっかい使うってのが♪未熟な感じですーっごくかわいーねー♪」
背後からの唄うような言葉に、ポデアが含まれている。そうフェイが理解した時、ランサーは全てルリローに包まれていた。ダクトロ、いやアンカラですらない、ただの騎士になす術もなく、フェイは全身の力が抜けてしまった。
「あ、あなたはダリアさんじゃないんですか!?こんなルリローまで!それにさっきフェイに殺されたはずじゃ!」
「んー???あー、そっか。あの子の身体だしわかんないよね。はじめまして、元ワイルドハント隊長で、準勇者のダリア・アジョアズレスです!よろしくね!そこで暴れてる龍のおかげで!若返ってふっかつできましたーぱちぱちー!」
ダリア1人が拍手をして、スタークラスターとフェイの2人は呆然としている。
「なんか反応薄いねきみたち?おうおう、知らずとはいえ先輩にケンカ売って負けたのに、拍手のひとつもないんかーい。」
2人は、一瞬で目の前の女が「レジーナ」でクダを巻いている時の女神やレジーナと同類だと理解した。
「わー、準勇者だなんてカッコいいなー、憧れちゃいますー。」
「うん、こんなに若いのに元ワイルドハントの隊長なんてー。」
ぱちぱちぱち。
「えへへへへ!カッコいいでしょー!」
両手をぶんぶんと振って、次々とカッコいいポーズを取っているダリアへ、2人は愛想笑いをしながらひそひそと話す。
「ねえ、反則じゃない?普通後輩に道を譲るでしょ。」
「私もランサーを消されたの悔しいです。」
「みなさーん、大変です〜。」
青いウサギに、青い騎士と乗って来たリーナが騒いでいる。
「ダーリアー、カタキ取ってくれー。」
「これが世代差…。」
「わ、何!?レジーナさん!?」
「エウトリマ班長もついでにポロボロです!?」
「わー、レジーナカッコいい顔がボコボコでかわいいねー。」
適当に置かれた2人とは別に、紅い髪の女の子と、彼女に櫛を通しているアセデリラは丁寧に置かれた。
「ほら、とっても可愛くなりましたわ。」
「えへへ。くるくるしていい?」
「ええ。見せてくださいまし。」
赤いサイドテールをはためかせ、その少女は両手を広げて片足でくるくる回る。
周囲の目線にやっと気付いたアセデリラは、少女と同じようにくるくる回って、抱きしめた。
「ご紹介しますわ!絶対無敵クルルガンナのぜネロジオ!わたくしの大切な!」
「モモ・クルルテラです。えへへ。」
ダリアや青い騎士も含めて全員が静まり返る。
「かわいいことはわかるけど…。」
「無理やりふたつの星の名前くっつけてる…。」
「あ、解決したんですね。私帰りたいので書類にハンコください。」
「今どき絶対無敵って言うのは…。」
「ふふ、美しいね。」
「あなたたち!聞こえてますわよ!いいですわ!そこの準勇者ダリアさん!他にわたくし達と戦えそうな…そちらの青い方!わたくし達と勝負なさいません?」
「へー、新しいわたしと勝負出来るんだ?この青いのはレジーナをボコしたからお礼したいけど、後回しにしてあげる。」
「いや、私は仕事で来てますのでそういうのはちょっと。」
「じゃあなんでアタシを蹴飛ばしたんだよー!」
「どうして私は名前を挙げてくれないんですかー!」
「ぺんぺんが出るなら私も唄う。」
皆様めいめいが言いたいことを言い出して、場がまとまらなくなって来ました。
ここは私が。
「はいはいみなさま〜、今あそこで暴れている龍を駆除したヒトが一番と言うことでどうでしょう〜。」
全員の視線が、ルルメンタ ブリンダの龍へ向かう。
既にサヌレビア全域の寄生体は排除され、ブーケが肉体の治療に当たっています。
「モモさん、しっかり捕まってくださいまし。」
「うん、リラちゃんの背中好き〜。」
「駆騎士〜、ゲンザンさんの子どもだからって遠慮しないからねー。」
「あの、仕事終わってたみたいなので帰りたいんですけど。」
「のワリにイキイキしやがって!見とけよ!」
「大丈夫、私は勝てる。私は勝てる。」
「やっぱり私は、キラキラしてるぺんぺんが好き。」
「みなさん準備できたみたいですね〜。それじゃーよーい、どんっ!」
駆けて、跳ねて、それぞれの方法で龍へ向かうみなさん。
「「ああ、エウトリマだ。たった今ルルメンタ ブリンダの龍は駆除された。アセデリラくん達やワイルドハントの会話を聞いていたブーケやワスレナ教官が奮起して、私の指示通りに戦ってくれたからね。だからクルルガンナで1番強いのはブーケになるよ。あうっ。」」
誰かの投げた空き缶がエウトリマの頭に当たった。
「「ここまで心に火を付けたのに水を差しやがって!ブーケ全員でかかって来やがれ!アタシが最強だって証明してやる!」」
誰かがレジーナを殴った。闇雲に繰り出したアセデリラの平手が当たったフェイがランサーを多重に展開し、モモがその軌跡を逸らす。
「へー、今度は本気ってわけー。」
「はい、この力にも慣れて来ました。」
「いいよー、わたしにひと太刀入れられたら、準、準勇者って認めてあげる。」
「あなたがそうなるんですね?」
「言ったなー!わたしが勝ったらモフモフさせてもらうから!」
「「よしみんな、私達個々の能力は彼女らの指先にも及ばない。しかしそこが、私達の強みでもある。コルソとアンカラ、ルリロー展開はじめ、砲撃隊照準よーい!前衛隊ポデア励起!教官、ソノリロは砲撃3回目にお願いします。さあ、派手に行こう!」」
ぴんぽーん。
「押し売り契約中古買い取りけっこうですのじゃ!」
「あのー、サヌレビアの代表兼ダクトロのケーナです愛しい女神。この度はありがとうございました。」
女神ロータスの借りているアパート、その2階。
「サヌレビア騎士隊のヨカワです。それでブーケやワイルドハントの方々が暴れて、都市景観に壊滅的な打撃を受けてしまいまして。」
頭を抱える。これが学生が旅行先でやらかす事例。しかも監督の教師も暴れた記録が。
「それで、おいくらなのじゃ…。ブーケ本隊とワイルドハントを送ったのはワガハイじゃから、じゃから…。」
がま口のお財布を開き、こつこつ貯めたmpの総量を計算する。責任は、取らなければならない。こう言う場合は、歴史ある島を更地にしてしまったとはいえ、お金が解決してくれる。
「サヌレビア商工会代表ハタカイです。実は霧都暁作戦の一部始終を配信、録画されていた方がいらしてですね。」
「はい、それにまた、いつエプリシアの様な龍または深刻な存在が現れるかわかりませんので。」
「愛しい女神、私達は湖畔に都市を構築し、島には簡易に再現したサヌレビアで。」
「騎士隊による団体戦及び、各隊長スケラによる大将戦を観光の目玉にしたく。」
「その許可をいただきに上がったのです。」
頭を抱える。
「のう、ワガハイはサヌレビアの静かな雰囲気好きじゃったのじゃ。」
晴れやかな空を仰ぐ。
「静かな湖畔に、ニシキオリやアズマのみなが築いた、荘厳な…。」
「お金。」
「うっ。」
「いいですか愛しい女神。サヌレビアの維持はは慈善事業では無いのです。お金です。マニー。プリーズモアマニー!」
「うう、ぜったいこやつら寄生体なのじゃあああ。」
第二部ワイルドハント03霧の都、サヌレビア 後編 霧都の暁作戦─了
はい!
ここまで読んでいただいてありがとうございますー!
おおとろべふこでーす!
第二部をゴールデンウィーク前に書き始めて、やっとサヌレビアで半分くらい?です。
それではまた、次回おあしましょー!