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第六部 第九次元人のあなたに①

これまでの「ダリア」おさらい


さまざまな主役が活躍していた「ダリア」の世界はある時突然、第十三次元人によって「赤いインクに漬けられた」

二次元世界の「ダリア」を読んでいた読者の「あなた」(四次元人)は作者おおとろべふこ(四次元人)に認識され、第十三次元人に対抗するための第九次元人として、作中世界へ送られる。


これからの文中にはA、Bという選択肢があり、「あなた」はどちらを選んでも同じ物語の中を進めます。この選択肢では作中登場人物の反応が変化します。


それでは、良い旅を。

主人公ナイン

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

ヒロインガルデニア

挿絵(By みてみん)




「あなた」ことナイン・エルナは腕に抱き抱えた少女と共に扉の先、文章だけでしか知り得なかった「ラプリマ」へと足を踏み入れた。

晴れた空には薄くルリローのヴェールがかかっているのが判別できた。

視線を下ろすと4階から5階建ての淡い黄色光の当たり具合では黄緑、赤にも見える建物が十字路に沿って並んでいる。足元の石が敷き詰められた道と同じ色に見える、おそらくはレンガなのだろう。


「ほらほらそこのヒトどいてどいて。」


後ろから声をかけられて道を譲る。


「ほおっ、ほっ。」


たっす、どす。

力強く、重量を感じさせながらも足取りは軽く。

きゅらきゅら、キャリリ。

胴体に巻き付けられた紐に曳かれ、荷車は木製の車輪を軋ませて進む。

薄茶色の体表をした、ヒトほどの大きさの獣脚類が、掛け声と共に荷車を引いてゆく。


A、B

「恐竜がヒトの言葉を喋った…。」

選択終了


声を上げて驚くあなたに、先の荷車に続いて別の獣脚類が声をかける。


「あんた学園で何も学んでなかったのか?俺たちは望んでこの姿になった。肉も生で食えるからな。」


彼は「さあ仕事の続きだ。」と声を上げ荷車を引いてゆく。

「あなた」は何か聞いておけばよかった、と思いつつも仕事中の彼の邪魔はせずにただ見送った。


「むにゅ、ん。」


もぞもぞと腕の中の少女が首を動かして目を開く。

「あなた」が読者という四次元の立場から、二次元の「ダリア」の世界へ来た理由。


「ふあ、んむむ。」


瞳を閉じたり開いたり、強く瞼を閉じて胸の前で両手を握り肩をすくめて伸びをしたり。

「あなた」の脳裏には、第十三次元人、カヌメナーアにより赤いインクへ漬けられた、焼かれたラプリマやひとびとの姿がフラッシュバックする。「この子を預けるから、アイツをやっつけて。」そう言ってこの世界へ「あなた」を送り込んだ作者「おおとろべふこ」。

腕の中の少女ガルデニアへ、何と説明すれば良いのだろう。あなたの姉たちはみんな焼き殺されてしまいました、なんて言えるわけがない。

目を閉じて被りをふる「あなた」。

そこへ


「おはよ、ナイン。お腹痛いのー?」


ナイン。

第四次元人の「あなた」に同じ第四次元人の作者、それとオマケで一を足して第九次元人となった「あなた」に作者の付けた、この世界での仮の名前、それを呼ばれた。


「そうそう、これー。べふこから預かったのー。」


首元の飾りマフラーに挟んであった紙を「あなた」に渡す。


A彼女の頭を撫でる

B加えて「ありがとう。」と感謝の気持ちを伝える。


A「えへへ、くすぐったいよーナインー。」ふにゃふにゃとした笑顔は、絵本の中の太陽のようだった。

B「わたしえらいでしょー。」ガルデニアは得意そうに鼻を鳴らす。


「それで〜、なんて書いてありますかー?」


「あなた」の腕からガルデニアは離れ、手紙を覗き込む。

「あなた」も同じように紙を見る。そこには日本語の走り書きがあった。

声を出して元気よくガルデニアが読み始める。


「第九次元人の「あなた」へ。この世界に入り込んだ「あなた」は戦い方以前に、この世界での生き方、歩き方も学ぶ必要があるよ。この世界の公用語は日本語だから安心して。あと、不要な混乱を避けるために、未来とカヌメナーアに関係することは口に出せないようにロックしたから。住む所や当面の生活費と学費は、この手紙を学園長、つまり女神ロータスに見せれば大丈夫。蓮坂舞さんへ、この人地球人だよ。戦う理由があって命球へ来たの。よろしくね。」


早い話、この手紙を女神に渡せば保護を受けられるらしい。

他にも書いてあったが、内容はガルデニアについてだった。


「この子は焼かれた世界のガルデニアだから、この世界のルニアのことは心配しないで、あとこの子の戦闘能力には制限をかけてあって、「あなた」の成長に合わせてこの子も強くなるよ。それと─。」


顔を上げて、ガルデニアを見る。紙面の文字を読んでいたものの、険しい顔つきだ。


「うーん、文字は読めるけど意味がわかりませーんー。」


Aガルデニアと呼んで頭を撫でる。

Bルニアと呼んで頭を撫でる。


A、「あなた」に撫でられたガルデニアは嬉しそうに目を細める。

 「お姉ちゃんたちからあなたにあずけられたけど、あなたの手も気持ちいーねー。」


B、ガルデニアは頭を撫でる「あなた」の手に指先で触れる。

 「えへへー、わたしのー、ニックネームー。」


頭を撫でられたガルデニアは、残りの一文を読み上げる。


「今から十を数える間にガルデニアを連れてまっすぐ走って。」


「あなた」はガルデニアが読み終わる前に


A、ガルデニアの手を引いて走り出す。

B、ガルデニアを抱き上げて走り出す。


A、「わっわっ!ナインどーしたのー。」

  華奢なその手を強く握る。離さないように。


B、「ひゃっ、ナインー!?」

  この子は守り切る。全てを懸けて。


「はっ、はっ!」

「あなた」ナイン・エルナの基礎的な身体能力を作者は知らない。健康的な15の年齢と見て、みっつは年下の少女の手を引いて、あるいは抱えて急に全速力で走り出せば、当然息も上がる。太腿の筋肉も攣る。

肺と足が悲鳴を上げ始めた時、「あなた」とガルデニアの立っていた場所に爆発が起きて、その爆風に「あなた」とガルデニアの身体は巻き込まれ─。


「きやあああ、ナインー!」


ガルデニアを強く抱きしめる。

ふわ、と身体が浮いたような感覚。こんな簡単に終わってしまうなんて、これではカヌメナーアと戦うなんて。


「よよっと。」


必死に目を閉じてガルデニアを抱く「あなた」の身体から浮遊感が消え、石作りの道の上を両脚が踏み締める。


「あなたたち、もうだいじょうぶだよー。」


気の抜けたような少女のような声と、とんとん、と肩を叩かれる感触。


A、更に目を閉じてガルデニアを抱きしめる。

B、ゆっくりと目を開く。


A、「あなた」はその声が、今際の際に見る幻覚の一つだと感じた。

 「ごめんガルデニア!きみを、みんなを守れなかった!」

 「いたいよおナインー。」

 ぱしぱしと叩かれて、目を開く。


B、その声に促されて、「あなた」は目を開ける。

  ルリローを突き破り入り込んだシルエットが、うっすらと見える。


視界の大半を占めるシルエットは、その蠢く鎧脚の細部が模倣太陽の光を受け、きらきらと光る。今、「あなた」たちの目の前にはセンテルデの脚部があった。


「ここから動いちゃだめだよ。」


「あなた」たちを助けた少女は、肩まで伸びた紅い髪を掻き上げて、跳ねる。

それを見て「あなた」は呟く。


「紅い、髪─。」


紅い髪の登場人物で、物語冒頭にラプリマに所属するのは一人だけ。

「あなた」はその名前を知っているかも知れないし、知らないかも知れない。


A、「ダリア・アジョアズレス─。」

B、「あれが騎士なのか─。」


A、「あなた」の知るダリアはこのあと、アセデリラと共にセンテルデと戦闘を行う。「あなた」は避難できる場所が無いか辺りを見回す。

B、彼女に助けられなければ、「あなた」とガルデニアは確実に死んでいた。ゆうに3メートルはある無数の鎧脚と体節を持つセンテルデに、単身立ち向かう騎士を、あなたは目で追う。


飛び跳ね、全身に赤い炎の輪を纏い、センテルデの注意を引く紅い髪の少女を見守っていると。


「何やってるのナイン、早く逃げよーよ!」


ガルデニアが「あなた」の両手を握って必死に叫ぶ。

そう、「あなた」はこの世界のヒトでは無いから危機感を持てないが、ガルデニアは目の前の巨龍の危険性をよく知っている。まずは彼女の安全を確実しなければ。

ケシャケシャ、キシャラ。

相当な重量を無数の鎧脚の爪で分散させて保持し、、金属光沢にしか見えない体表のセンテルデは十字路を横切り、その体節ごとに生えた鎧脚は忙しなく動き、身体の果てが知れない。


A、とにかくセンテルデの進行方向の逆へガルデニアを連れて走る。

B、センテルデの進行方向に対して垂直へガルデニアを連れて走る。


A、「あなた」はセンテルデの向く方向とは逆、つまり尻尾の方へガルデニアを連れて走る。対象がどれほど巨体であろうと、必ず抜けられるはずだ。

B、「あなた」はセンテルデから右を向いた方向へ、ガルデニアを連れて走り出す。センテルデの尻尾に対して逆走するよりも、その鎧脚を見なくて良い分冷静な対応ができる。


「「ラプリマのコル、コルソ並びにルリロー、シルヴィトーのみなさま─。」」


女性のアナウンスが至る所から聞こえる。しかし聞いている余裕は無い。


「ナインっ!」


脚のもつれたガルデニアがバランスを崩す。

振り向いてガルデニアの腰に腕を回し、膝裏から抱き抱える。


A「絶対守る!」

B「離さない!」


AB、「うん、うん!ナイン!ナイン!」抱き抱えられたガルデニアは「あなた」の首に腕を回してほっぺたを擦り付ける。そして背後から

ガコォ!

まるで、野菜を包丁で切るような音が、それがはるかに大きい音量で聞こえた。

それに合わせ、センテルデの巨体がのたうち、鎧脚が「あなた」たちの眼前に迫る。


「らー♪」


薄紅色の花びらが咲き乱れ、「あなた」とガルデニアを包む。

鋼鉄の塊、黒く塗られた車のようにも見えるセンテルデの鎧脚は、「あなた」たちに激突するまでに、間に咲いた無数の花びらによって防がれる。


「ふむふむ、あなた達は女神に会う必要があるのですね。」


その藍色に近い髪色の女性は、ガルデニアの飾りマフラーからはみ出した紙を確認する。

柔らかな表情の彼女は、軽く膝を曲げてお辞儀をした。


「申し遅れました。私はラプリマの─。」


「あなた」はこの女性を見た事があるかも知れないし、知らないかも知れない。


A、「アウタナ・セリフラウ─。」

B、ただ彼女の言葉を聞く。


A、「あら、ご存知でしたか。」彼女は微笑んだ。儚げな笑みを。

B、「この私、アウタナ・セリフラウが春都市ラプリマのダクトロをしております。」恐怖で顔の引き攣っていたガルデニアに優しく微笑む。


「追いつけて良かったです。現在ラプリマにはルリローが展開していますので、もう走り回られる必要はありませんよ。」


春の柔らかな日光のような声に心が落ち着いて、少しずつ辺りの状況が見えてきた。「らんらんら♪」、と小さな子どもの歌声、「踏み砕け♪」と勇ましい男性の歌唱。「アタシゃ洗い物してんだい♪」おおらかな女性の声。さまざまなヒトが、思い思いに歌っている。その歌はそれぞれが黄色、橙色、緑などを淡くした色で、波打ち際の泡のように、折り重なるようにしてセンテルデの質量がもたらすはずの破壊を防いでいる。


A、「これがルリロー。」

B、「これは一体。」


A、「あなた」の言葉に対してアウタナは微笑んで頷き、彼女もまた歌い始める。

B、「はい、女神がひとびとに与えた力を、それぞれが歌うことで使用し、ダクトロであるこの私、アウタナ・セリフラウがまとめることで、揺籠のルリローとします。」


ぱん、あるいはズギュゥゥン!

破裂音が響く、「あなた」の世界の簡単な言い回しならピストルの発砲音、しかしその衝撃は遥か先から突風のように渦を巻いてセンテルデの鎧脚を圧壊させる。「あなた」たちの周りにはルリローの花びらが咲き、そよ風に吹かれたほどの風圧しか感じない。

「あなた」はその現象に心当たりがあるかも知れないし、知らないかも知れない。


A、「ディスティノ─。」

B、「これは。」


A、「はい、あのダリア・アジョアズレスのものでず。」アウタナが答え、そして散発的にディスティノの銃声が繰り返し響く。

B、「騎士とウサギが行う、殺傷のための技術、ディスティノです。」アウタナの答える最中にも、銃声と衝撃波が起きる。


そして


「ナイン、あっち!」


ガルデニアがセンテルデの後方を指差す。


シィィィィィィィィ!

緑の雷を纏ったシルエットが、センテルデの後方からその巨体を縫い止めるように駆けてゆく。

バチィィィ!

実際に緑の雷はセンテルデの鎧脚を拘束し、身動きを取れなくしていた。

「あなた」はその緑の雷が起きた理由を知っているかも知れないし、知らないいかも知れない。


A、「緑雷のポデア、アセデリラ・アルマコリエンデ─。」この時点ではただの騎士候補生として、センテルデと相対していた彼女の名前を呼んだ。アウタナが不思議そうに「あなた」を見つめる。

B、「今のは、ヒト、なのか─?」緑色の雷をヒトの姿と感じた「あなた」は思わず口を開く。「そうです。体内のぜネロジオと本人の経験、身体技術をポデアとして実際に発現させる、それが騎士です。彼女はまだ候補生ですが。」アウタナが「あなた」の言葉に答えてかんたんな説明をした。


「お姉さん、ナイン、わたしたちも何かできないの!?」


ガルデニアが居ても立っても居られないという風に尋ねる。「あなた」もアウタナに視線で問いかけるとアウタナは微笑んで口を開く。


「それでは、あの騎士たちのため、ラプリマに暮らすひとびとのため、そしてあなたの大切なヒトのため。」


アウタナは一度目を閉じて、開く。


「歌いましょう。あなただけのルリローを。」


ガガガガガガン!きゅうーん!

そのアウタナの言葉に合わせるように、ディスティノの銃声が続け様に6回起きる。


「歌う…アネモネお姉ちゃんみたいに、るー、らー♪」


ガルデニアが口を開き、歌い始めると、その歌声は淡い青緑の花びらとなり、さまざまな他の花びらと共に「あなた」たちを包む。


A、「あなた」もガルデニアのように優しく歌う。

B、「あなた」は遠くから響く凱歌のように、勇ましく歌う。


A、「るー、るるらー♪」ガルデニアの歌声に寄り添うように、「あなた」は声を重ねて2人の声は調和したハーモニーを奏でる。歌声は他のものとも調和するように奏で合う。

B、「ららら、らっららー、らー!」優しいガルデニアの歌声を多い隠し、守るように力強く歌う。それでいてガルデニアと「あなた」の歌声はお互いを包むように響き合う。


「あなた」たちは、いつしか自然と手のひらを重ね、握り合う。お互いを守り合い、離さないように。


そして、日中のはずの空から、ラプリマの街並みからも光が奪われ、青紫の瞬きがセンテルデの身体を光へと変えてゆく。赤熱し小さな粒のように散らばり、それすらも次第に消えてゆく。センテルデの、生命が終わる。あの巨大で危険過ぎた鎧脚も、それが生える体節も、全てが震え、痙攣し、そして光へと還されてゆく。「あなた」の目の前で今、ある生き物が殺された。直接手を下したのは大きな白銀の、二脚の兵器に乗る2人の騎士。けれど彼女らの支援というかたちで、殺す手伝いをしたのは─。


「あかるく、なった。」


ガルデニアの声に意識が引き戻される。


A、「ガルデニア、ガルデニア!」彼女が無事だった喜びで強く抱きしめる。

B、「君は、見なくて、見なくていいんだ。」彼女の頭を抱えるように抱いて、背中を撫でる。


A、なんとか、ガルデニアを守りきれた。そう思った「あなた」は彼女の生を確かめるように強く抱きしめて何度も名前を呼ぶ。そう、「あなた」とガルデニアは今回は運良く生き残れた。焼かれてしまったガルデニアの姉たち、あの世界のヒト達を想い抱きしめる。


B、「いいんだ、ガルデニア。」いくら「あなた」たちが生きるためだったとは言え、ついさっきまで生きていたセンテルデはその体細胞の、魂の一片すら光に変えられてしまった。名も無き樹皮の街で苛烈な半生を送ってきたガルデニアに、これ以上生命が喪われる所を見てほしくない。


「ふんふん、なるほどのー。お主、相当な地獄を見て来たようじゃの。」


妙に芝居がかったようでいて、無数の生と死を見つめ続けてきた風格のある声がする。

「あなた」は顔を上げる。


A、「女神ロータス。」

B、「あなた」の知り合いにはこのような人物はいませんでした。


A、「ふうむ。」女神はあごをあげて首を反らし、「あなた」たちを見下ろすように、興味深げに見つめる。

B、「そう怯えずとも良いわ。太陽系第三惑星人の女神、ロータスじゃ。」その少女は、両手を腰に付けて微笑む。


「あなた」はガルデニアの首元、飾りマフラーに指を添えて紙を引き抜く。手渡された手紙を受け取った女神は眉を顰めて誌面を見つめ、口を開く。


「なるほどの、この第九次元人、第十三次元人カヌメナーアと言う文字列を解読しようとしても、頭にモヤのようなものがかかる。手紙の主、ワガハイの事を知った上でお主を命球に送ってきたと言う事は。」


女神は指先に火を生み、手紙を焼く。

ぶわっと一瞬で燃え尽きたそれは、手のひらほどの大きさの包みとなる。


「んむ、お主らの身元引き受けなどの面倒、それと当面の生活費と学費はワガハイが負担しようぞ。」


女神は先ほどまでの不適な笑みではなく、心からの笑顔でそう言う。


A、「そんな、大金になるのでは!?」

B、「包みが怪しい。」


A、「そう心配せずともよいのじゃ。」

B、「ええい、なんじゃその疑わしい顔は!」


女神は続けてその包みを「あなた」たちの目の前に掲げる。


「聞いて驚くでないぞ!これは地球でしか食せぬ、かゆずやのみたらし団子と抹茶バッグじゃ!」


A、B「なんだ団子かー。」」


拍子抜けした「あなた」を笑い飛ばし女神は続ける。


「はん、どーせ「いつでも食べられる」と思っておるのじゃろ。確かに命球に於いても「似た」食べ物は確かにある。しかし「オリジナル」というプレミア感は何物にも代え難いのじゃ。」


女神は「あなた」とガルデニアの胸に手のひらを重ね。


「コネージョ、ソルタンド。」


きゅわ、わと軽く「あなた」たちの胸に空気の渦が起こり、そしておさまる。


「迎えの者を寄越す。それまでそこらの露店で好きな物を買って待つか良い。」


女神は軽い足取りで歩き始める。


A、「お金なんて持ってない。」

B、「ありがとう。」


A、B女神はその言葉に振り向いて「そうそう、さっきの戦いでのお主らのルリローもmpに変換されておる。詳しくは学園で学ぶと良いが、かんたんに言うならほれ、普段使っておったお財布を思い浮かべよ。そして詠え、バンヴォル、レスパン ミア ヴォガン パルチェとの。」


女神はそれだけ告げて、小走りで歩き去る。

「あなた」たちは再び取り残された。


「さっきのエンゲージ良かったねー。」

「わしも若い頃は─。」


わいわい、がやがや。

十字路には再びヒトや獣脚類、その他の生き物が戻り、それぞれの生活に戻る。

辺りを見回す「あなた」の手を握り、ガルデニアが口を開く。


「ねーナインー、女神も言ってたしなにか食べよーよー。」


そう上目遣いでおねだりされて、「あなた」はお財布の中身を確認しようとする。


A、「バンヴォル、レスパン ミア ヴォガン パルチェ。」

B、「パンやまもり、レーズンパン、クロワッサン、ソーセージパン。」


A、正しくうたえた「あなた」の手元には地球で普段使っていたお財布が現れ、中を開くと見たことのない紙幣が数枚と、女神の顔が彫られた硬貨がいくらか出てきた。

B、正しくめなかった「あなた」の手元には何も現れず、逆に空腹が「あなた」を襲い始めた。健康な15の肉体は先ほどの全力疾走と歌唱により消費したカロリーを求めて唸りを上げる。


「ナーイーンー!おなか減ったー!」


ガルデニアに手を掴まれて引っ張られる。そこへ


「なるほどー、よくわかりましたー!あなた達ですねー!」


とてとてとて、とガルデニアほどの年齢に見える少女が駆けて来る。

先ほどまでセンテルデと戦った騎士のような制服に、彩度の高い赤のケープのようなものを纏っている。


「申し遅れました!私、レタ ラ リベ勤務のカランコエです!」


彼女は肩からかけた紺色、群青にも見える大きなカバンを掛け直し、帽子を被り直して微笑んだ。


A、「こんにちは、ナインだよ。」「ガルデニアだよー。」

B、「パン…パン…。」「パン…。」


A、「あなた」は初対面のカランコエに微笑みかけてガルデニアもそれに倣う。

B、「あなた」とガルデニアは、カランコエのふわふわのくるくるした巻き髪がクロワッサンに見えて、最高に疲れていたのも相まって、ついかぶりついてしまった。「ちょ、ちょっと待ってください!私の髪はパンじゃありませんー!」じたばたとするカランコエの手が当たり、「あなた」とガルデニアは正気を取り戻す。


「はい、あなたたちの今のお食事に使えるmp、女神ポイントはこのくらいですね。」

カランコエに案内され、露店に並んでいたお砂糖まぶしパンに齧り付き、「あなた」とガルデニアは幸せを噛み締める。噛むたびにじょりじょり、ざくざくと歯や歯茎、舌に固められた甘いお砂糖が当たり、さらに噛めばふっくらとしたパンの生地が甘みを口の中に伝える。


「ナインー。」


ガルデニアは、迷子の子どものように「あなた」の胸に飛び込む。


「モネお姉ちゃんも、ララお姉ちゃんも、アメリアお姉ちゃんも、わたしも、こんなパン、こんなにおいしいパン食べたこと無かったよー。」


「あなた」が知っているか知らないかは別として、ガルデニアは名も無き樹皮の街で親の無い子として生まれ、同じく孤児の三人の姉に育てられた。アネモネとアルストロメリアが一晩中「騎士くずれの相手」をして手に入れられるのは片手におさまるほどの石パンとコップ一杯の水だけ。そうしてブラックバッカラと共に育てられた。ガルデニアの知るパンとは、違うものだった。


A、そっと抱きしめて頭を撫でる。「みんなにお礼、しなくちゃね。」

B、三人の分も強く抱きしめて歌う。「高く飛べ、白き花、ガルデニアー♪」


A、「うん、うん。みんなにいっぱい、いっぱいおいしいパン、食べて、もらう。」ガルデニアは「あなた」の腕の中で震える。そして「あなた」も震える。この世界のガルデニアには、まだ姉達が生きている。しかしこのガルデニアの姉達は、おそらく全員が、カヌメナーアによって赤に塗りつぶされている。「あなた」の瞳は空を睨め上げ、第十三次元人と対決する意思を高める。


B、「あなた」の知識には、このような歌は無かったでしょう。しかし「あなた」の口は自然と開き、三人の姉達がそれぞれしていたようにガルデニアを優しく、慈しむように、力強く抱きしめて、アネモネ、アルストロメリア、ブラックバッカラ、それぞれが口ずさんでいたように、ガルデニアのための歌を歌います。彼女だけでも、守り切る。カヌメナーアの行為から。空を睨め上げる「あなた」の目には焼かれるラプリマとひとびとの姿が映っていました。


笑いながら歩くひとたち、大きな荷物を抱えるひと、大きな声でおとうさんを呼ぶ子ども、ベンチに腰かけて空を見上げるおとしより。ラプリマだけではなくて、他の街でも。「あなた」の知らないひとばかりのこの世界で、それでも「あなた」には、今目の前にある光景が、腕の中で泣く女の子が、第十三次元人カヌメナーアからひとびとを守る理由に、なる。


「おうさーん。」「おーい誰かこの子のお父さん知りませんかー?」「おやおや迷子かい。」「よしお嬢ちゃん、このキャンディ上げるから舐めときな。」「おじさんがお父さん見つけてやるからな。」「ふみこー!」娘を探す父親と、その娘を守るひとびと、そして「おとーさーん!」父親を信じて待っていた子ども。


彼ら、彼女らの、そしてガルデニアの家族を奪ったカヌメナーアに対抗出来る可能性を持つのは、第九次元人である「あなた」だけ。


第六部 第九次元人の「あなた」へ。①抗う理由  了

・・

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