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エベディルク 空飛ぶ絨毯と不老薬の物語  作者: トミフル
第2章 ヒーラー救出編
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第31話 国王とのギャンブル

 翌日レオはロゼーラから手紙を受け取った。「2日の15時に城の門まで来い。国王様と直接交渉してもらう。 スミス」と書かれている。明後日だ。レオはガッツポーズをした。レオは被害者であるシオネとエドウィンを誘うことにした。

 焼き芋ジャグラーに行くとフィリップだけいた。

「シオネはもう帰った?」レオが尋ねた。

「うん。帰ったって言っても家には居たくないから、多分俺ん家か図書館にいるよ」

 フィリップが答えた。

「そうなの? フィリップの家自由に使わせてんの?」

「うん。積極的に家事やるし、俺はめっちゃ助かってるよ」フィリップが笑顔を見せた。

「まぁシオネはマスター召使いだからな——オッケー、サンキュー」

 レオは先にフィリップの家を訪ねたが留守だった。図書館に行くと、シオネが座って本を読んでいた。

「シオネ」レオが声をかけた。

「あ、レオさん。どうも」シオネは少し驚いた表情を見せた。

「何してんの?」

「本読んで勉強してます。私あまり教養無いので」

「親からあまり教育受けなかったの?」

「はい。そろばんは家にあったので算数はかろうじて出来ますけど、あまり文字を読むのが得意じゃないので、こうやって読書してます」

「そっか」レオはシオネの家庭環境を聞いて言葉を失った。この王国でさえまともな教育を受けていない人がいると思うと心が苦しくなった。

「フィリップの家自由に使わせてもらってるらしいじゃん」

 レオがシオネの隣に座って話題を変えた。

「はい。すごく助かってます。今では早朝に家を出てフィリップさんの家に行って、夜遅くまで残ってから家に帰ります」

「何それ、もうほぼ同棲じゃん」

「そうですね。ほぼ毎食一緒に食べてますし」

「マジ? え、付き合ってるの?」

 レオは恋愛の話には普段興味が無いが、シオネとフィリップについては気になった。

「いえ……」シオネが小声で返事した。

「フィリップのこと好きなの?」

「よく分かんないですけど、どうせ私のことは好きじゃないと思います」

「何で?」

「だってミラさんとマディソンさんが近くにいるんですよ? あんな可愛い人が2人もいるのに、私なんか好きになる訳無いじゃないですか」

 シオネが悲しそうな声で言った。

「そんなの本人に聞かなきゃ分かんないだろ。シオネは礼儀正しくて素直なんだからさ、良い所いっぱいあるし」

「だってレオさんだったら私のこと選ばないですよね?」

「俺? 何で俺の話になんの?」レオは不意を突かれた。

「ほら、誤魔化すってことはそうですよ……」シオネが目線をレオから本に移した。

「俺は恋愛興味無いからさ、俺の話なんか当てになんないよ」

「確かにレオさん彼女いないですよね。ヒナさんとアスカさんが近くにいるのに」

「うん」

「ゲイですか?」シオネが真顔で聞いた。

「違う……」レオはガックリ肩を落とした。「いいやこの話は。あのさ、俺ジョマナとタリアを解放出来るかもしんないんだよ」

「本当ですか!?」シオネが大声を出すので、周りの人がシオネの方を向いた。

「——本当ですか?」シオネが小声で聞き直した。

「うん。次のラグスビーマッチで平民チームが勝ったら解放してもらうように頼んだんだ。そしたら国王と直接会って交渉出来ることになったんだよ」

「レオさんすごいですね……国王と会うなんて普通出来ないですよ」

「シオネも会いたい? 一緒に行こうよ」

「え!? そんな無理ですよ」シオネが顔をしかめた。

「何で? 行きたくないの?」

「私はいいです。別に私がいる必要無いじゃないですか」

「あそう。気が変わったら来てよ。明後日の15時に城の門前。じゃ俺エドウィン誘ってくるわ」レオはそう言って席を立ち、図書館を出た。

 図書館を出た時点で17時近くだったので、レオは病院ではなくエドウィンの家を先に訪れた。

「レオさん、こんばんは」

 エドウィンが扉を開けた。会うのはデモ以来だが、更に顔色が悪くなっている。

「ちょっと話があるんだけど、いい?」レオが聞いた。

「はい、どうぞ」

 レオは中に入り、テーブルに座った。

「ハーブティー飲みますか?」エドウィンが聞いた。

「いや要らない。すぐ終わるから」

「分かりました」エドウィンが向かい側に座る。

「俺政府にギャンブルを提案したんだよ。次のラグスビーマッチで平民チームが勝ったら、タリアとジョマナ解放してくれって」

 レオが話を始めた。

「何と!」エドウィンが目を丸くした。

「そしたら、国王と直接交渉してくれって言われた。明後日会えることになったんだけど、エドウィンも来ない?」

「行きます! でも私が行ってもいいのですか?」

「分からんけど、別にいいんじゃね? 取り敢えず来なよ」

「はい! レオさんやはり只者ではないですね!」

 エドウィンがレオの両手を握った。

「まだ決まったわけじゃないから喜ぶのは早いよ」レオがエドウィンを落ち着かせた。

「でも希望があるのと無いのでは雲泥の差です! デモ以降私はゾンビのように毎日を過ごしていました。このままタリアと会えないならいっそのこと死んだ方がマシだと毎日考えていました……」

「おい頼むから自殺しないでくれよ? そんなことしてもタリアの為になんないからな?」

「分かっていますが、私は医者ですから安楽死する方法を知っているんです……たまに薬をボーっと眺めるんですよ——これです」

 エドウィンは棚から液体が入った瓶を取り出した。

「これをクイッと飲むと、死ぬことが出来ます。そうすればどれだけ楽になれることやら……」エドウィンはそう言って瓶を見つめた。

「やめろやめろ」レオが瓶をエドウィンの手から奪った。「こんなもん家に置くなよ。酔っ払って間違って飲んだらどうすんだよ?」

「私はワインなんて飲みませんよ。そんなものに金を使う余裕はそもそもありませんし、体に良くないですから」

「エドウィンそうやって理路整然と話すけどさ、何かおっかないんだよな」

 レオはエドウィンを心配した。

「心配なさらず——ちなみに試合に負けた場合はどうなるんですか?」

「金払うって言った。金額は特に提示しなかったから、その交渉になるんじゃないか?」

「そういうことですね。いくらになるか分かりませんが、勝てばいいわけですよね! 前も1回勝ちましたし、アスカさんが復活したから勝てますよね?」

「おう。アスカがいれば負けねーよ」レオは自信たっぷりに言った。

「もうこれはパーティーですよ! レオさんパーティーしましょう!」

 エドウィンが立ち上がった。

「いや、パーティーはいいよ……じゃ明後日15時な」レオはエドウィンの家を出た。


 翌週月曜日。国王との交渉の日が訪れた。レオが早めに城の門に行くと、エドウィンが既に待っていた。髪をびっちり決め、フォーマルなチュニックの上にローブを羽織っている。

「レオさん!」エドウィンが空中のレオを見上げて言った。

「やたら気合入ってるな。俺普通の格好で来ちゃったよ」

 レオがラグから降りて言った。

「大事な交渉ですから、身なりは重要です」

「そうだな——んで?」レオは門番の方を向いた。「国王との交渉に来たレオだけど」

「話は聞いている。隣の奴は誰だ」門番がエドウィンを一瞥して言った。

「軟禁されてるタリアのフィアンセのエドウィン。一緒に行ってもいいか?」

「おい、そんな話は聞いていないぞ」門番が眉間に皺を寄せた。

「別にいいじゃねーかよ。被害者なんだから、交渉に立ち会う権利はあるはずだ」

「——ちょっと待ってろ。確認して来る」

 門番はそう言って門を開けて城へ走って行った。

「流石レオさん、堂々とされてますね」エドウィンが尊敬の眼差しでレオを見た。

「頼むだけならタダだろ」レオが門の奥を眺めながら言った。

 10分以上経ち、ようやく門番が戻って来た。

「お前も一緒に来ていい。ただ、城内で逃げ回ってタリアを探すなど妙な真似をしたら許さんぞ」門番がエドウィンを睨んだ。

「はい、ご心配無く」エドウィンが唾を飲んだ。

「荷物を預かる」門番が2人から荷物を取り上げた。

「付いて来い」門番は首で合図した。

 門番の他に兵士2人に付かれながら、レオとエドウィンは城へ入った。城へ入ると更に2人の兵士に付かれる。

 しばらく歩くと、広いホールへ到着した。奥の大きな椅子に国王が座っている。その横にはスミスが少し離れて立っている。

「国王様、例の者達を連れて参りました」門番がホールに響き渡るような声で言った。

 国王は近くに来るよう指で合図をする。門番はレオとエドウィンを連れて国王の近くまで歩き、脇に逸れた。レオとエドウィンは国王の椅子から3メートル離れて横並びに立った。国王の椅子は1メートル以上の段差の上に置かれており、国王は座った状態でもレオ達より高い目線にいる。

「エドウィンが立ち会うことを了承してくれてありがとう」

 レオは真顔で言葉を発した。エドウィンは会釈をする。

「ギャンブルの内容はスミスから聞いた」国王が低い声を出した。「今月のラグスビーマッチで平民共が勝ったらヒーラー2人を解放する。負けたら平民共が金を払う。ワシがそんな条件を飲むとでも思ったか?」

「金額が決まってねぇじゃねーかよ。いくらならいいんだ?」レオが言った。

「お前はワシが国王であるということを忘れたのか? 金なんて取ろうと思えば取れる。そんなものじゃ面白みが無い」

「じゃあ何だったらいいんだよ?」

「お前の首だ」国王は顎でレオを指した。

「は?」レオは素っ頓狂な声を出した。

「お前の首を差し出せと言ってるんだ。平民共が負けたら、お前を処刑する」

 国王が少し笑みを浮かべて言った。

「おいおい、何でそうなるんだよ……」レオが小声を出した。

「ヒーラー2人解放する為にお前の首1つ賭けれないと言うのか?」

 国王は笑みを浮かべた。

「そもそも俺を殺したきゃ今ここで殺せばいいじゃねぇか」

「ワシはそんな卑怯な人間ではない。交渉に来た者を殺すようなことをしたら、誰もワシとまともに話をしなくなるだろう」

 国王はもっともらしいことを言ったが、レオはナターシャの言葉を思い出した。国王は有名人であるレオを殺すことが出来ない。では何故レオの首を賭けるのだろうか。

「だったら俺が普通に生活してる時に殺せばいいじゃねぇか」

 レオは国王の意図を探った。

「お前は普段ギャンブルをしないだろう」国王が馬鹿にするように言った。

「しない」

「だろうな。お前はギャンブラーの心を全く分かっておらん——何故人は賭けるのか? それは金の為ではない。賭けに勝った時の快感の為、そして勝ちを期待する高揚感の為だ。金や物は勝ち取ることで価値を感じる。タダで手に入ったら何も面白くない。ワシはお前を殺そうと思えば兵士を数人お前の家に送っていつでも殺せる。でもそれでは勝ち取ったことにならないだろう。言っていることが分かるか?」

「——何となく分かったよ」レオは少し間を置いて答えた。「でも他に何か無いのか?」

「ふん、お前は威勢が良いだけで大した度胸が無いようだな」

 国王がレオを嘲笑った。

「出来ないならこの話は終わりだ。とっとと帰れ」

「ちょっと待って下さい!」エドウィンが初めて言葉を発した。「国王様、私の首を賭けます! レオさんの代わりに私の首を賭けさせて下さい!」

「お前何言ってんだよ!」レオがエドウィンの肩を軽く叩いた。

「お前の首になんぞ興味は無い」国王はエドウィンを見下して鼻で笑った。

 エドウィンは勢い良く土下座をした。

「お願いします! タリアと一生会えないなら死んだも同然です!」

「やかましい!——おい、こいつを黙らせろ!」国王は兵士に命令をした。

 兵士が2人エドウィンの腕を掴み、エドウィンを立たせた。

「お願いします!——お願いします!」エドウィンは泣きじゃくった。

「黙れ!」

 兵士がエドウィンの腹を膝蹴りした。エドウィンはうめき声を上げてうずくまる。エドウィンはまた土下座と同じような体勢になり、声を上げて泣いた。

「ちょっと一旦持ち帰って検討させてくれないか?」レオが国王に言った。

「そんなことを頼める立場か? 今決めろ」国王がレオを睨んだ。

 レオはその場に立ち竦んだ。エドウィンはみっともなく泣き崩れている。彼はこのチャンスを逃したらタリアと一生会えないと思っているに違いない。レオも同じ考えだった。このまま手ぶらで帰ったらエドウィンは本当に薬を飲んで自殺するかもしれない。そしたらレオは自分を許せなくなる。

「分かった」

 レオはエドウィンを見ながらそう言った後、ゆっくりと国王の方へ顔を向けた。エドウィンは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げてレオを見る。

「やるよ、その条件で。俺の首を賭ける」レオは国王をしっかり見て言った。

「それでいい」国王は満足気に言った。

「負けたら処刑はいつ行われるんだ?」

「負けた直後にフィールドの中央でやればいいだろう」

「それは早過ぎだろ……友達に別れを言う時間を1日くらいくれよ」

「1日お前が逃げないように兵士に監視させろと言うのか? 税金の無駄遣いだ。国民に申し訳無いと思わないのか?」

 よく国王の口から税金の無駄遣いなどという言葉が出るものだとレオは思った。しかし正論である。

「——分かったよ。じゃあ1時間くれ。フィールドの控室で友達と別れを言うから」

「ふん、まぁ観客も1時間くらいは待つだろう」

「おいスミス、これメモってくれ。後で持ち帰る。条件が破られたらこの話は無しにするぞ」レオが国王の脇に立っているスミスに言った。

「お前に指図されなくても分かっている!」

 スミスはそう吐き捨て、ホールの脇にあるテーブルに座り、紙に書き始めた。

「処刑の方法は何だ? 安楽死させてくれるのか?」レオが国王に聞いた。

「死んだことが観客に分からねば意味が無い。血を流す必要がある。弓矢で心臓を撃ち抜けば一瞬にして死ぬ」

 レオは最近弓矢を太ももに打たれたことがあるので、あまり良い気分がしなかった。

「……分かった。わざと急所外すなよ。もがき苦しんで死ぬのはごめんだ——それじゃ次はタリアとジョマナの話だ。観客席の見えやすい席に2人を置いてくれ。平民チームが勝利した瞬間速やかに解放すること」

「ワシが約束を破るとでも思っているのか? それは当然だろう」

「親族は2人の近くで観戦して、解放がすぐ行われるようにしてくれ」

「それは出来ん。親族はフィールドの反対側に座ってもらう。解放されるまで話すことは許されない」

「マジかよ……」レオはエドウィンを見下ろして呟いた。エドウィンはまだ床に座り込んでいる。

「レオさん私はそれで大丈夫です。反対側でもタリアは見えますよね? 私ラグスビーフィールドに久しく行っておらず記憶が曖昧で」

「うん、見えるよ」

「であれば大丈夫です」エドウィンはそう言ってようやく立ち上がった。

「あとルール変更はもう無しな」レオが国王を向いて言った。「審判も公平にジャッジしてもらう」

「いいだろう」国王が真顔で答えた。

「そしてこれらの条件がちゃんと国民にも伝わるようにする為、ガレクロに載せてくれ」

 レオがそう言うと、エドウィンがレオに驚きの表情を見せた。

「ふん、随分と用意周到だな——まぁ面白い題材だ。飛ぶように売れるだろう。ビングに記事を書かせる」

「オッケー——スミス、書いたか? 見せてくれ」レオがスミスの方を向いた。

「——お前に指図される筋合いは無いのだよ!」

 スミスが高速で鉛筆を動かし、紙に記入を続ける。終わるとレオの方にズタズタと歩き、紙を渡した。レオは内容を確認する。

「間違い無い。国王さんにも見せて確認を取ってくれ」レオがスミスに指示した。

「だから言われなくても分かっている!」

 スミスがそう吐き捨て、国王に紙を見せた。国王は紙を手に取り読むと小さく頷いた。

「これをコピーして小僧に持ち帰らせろ」国王がスミスに命じた。

「かしこまりました」

 スミスは国王に礼をし、テーブルに戻って再度高速で鉛筆を動かした。書き終えると、また荒い足音を立ててレオの方に向かい、紙を渡した。

「ありがとう。それじゃ、あと何も無ければ帰るよ」

 レオが国王にそう言うと。国王は手でレオをあしらった。レオとエドウィンは振り向いてホールを後にする。

 門を出たところでレオ達は門番から荷物を受け取った。レオは急に疲労を感じた。飛ぶ気力など残っていない。

「取り敢えず歩く?」レオは城から一刻も早く離れたかった。

「はい」エドウィンが弱々しく答えた。

「エドウィンの家行くか」

「はい」エドウィンが同じトーンで答えた。

 2人はしばらく無言で歩いた。このギャンブルの話は数日後にはガレシアクロニクルによって国民に明らかになる。しかしレオは何故か、この話を今誰かに盗み聞きされたくなかった。エドウィンも同じ考えなのか、全く言葉を発しなかった。

「腹痛くないか?」レオが猫背で歩くエドウィンに聞いた。

「大丈夫です」エドウィンが前を向いたまま答えた。

 2人はエドウィンのアパートにようやく辿り着いた。

「ハーブティー飲みますか?」エドウィンはいつものように聞いた。

「うん、ありがとう」レオは今回は頂くことにした。

 レオは待っている間、スミスからもらった紙を読み直した。エドウィンがお茶を淹れ終わってテーブルに座ると、レオはエドウィンに紙を渡した。エドウィンはお茶を飲みながら紙をじっくりと読む。数分後にやっとエドウィンは顔を上げた。

「レオさん、城ではみっともない姿を見せてしまいすみませんでした……そして、ありがとうございました……私は何の役にも立っておりません……」

「1つお願いしていいか? 自殺する薬を捨ててくれ。そうすれば俺の気が少し楽になる」レオが言った。

「はい——あ、あれは適量であれば医療現場で使えますので、病院の方に移しておきます」エドウィンが理路整然と言った。

「じゃあそれでもいいけど」レオが苦笑した。

 外が暗くなり、エドウィンは部屋のキャンドルとランプを灯した。

「あの、試合で勝つ為に私が出来ることはありますか?」

 エドウィンが椅子に戻って言った。

「いや特に無いよ——あ、救護係として来てくれてもいいけど、親族は観客席で見るって条件決めちゃったしな——厳密にはエドウィン親族じゃないけど」レオが言った。「救護係はヒナがいるし大丈夫だ。エドウィンはまず体調回復させてくれ」

「分かりました……」エドウィンが弱々しく言った。「今日はパーティーというわけに行きませんね……」

「そうだな」レオが呟いた。

 レオはゆっくりとハーブティーを飲み、エドウィンの家を後にした。足の力があまり入らないので歩いて帰った。今夜はHAMLに会う気にもならず、レオは適当に夕食を済ませて屋根裏に籠もった。

 レオは自分が今月末死ぬかもしれないという事実を受け入れるのに苦労した。何故こうなってしまったのか——今日城に入る前は期待を膨らませていたのに、気付いたらレオはどん底に突き落とされていた。

 レオがベッドの中で悶々としていると、ヒナが階段を上がってきた。

「レオ君、大丈夫?」ヒナがベッドで横になるレオを見て言った。

「あ、うん」レオはヒナを見ると起き上がった。

「具合悪いの?」

「いや、別に」レオが目線を逸らして答えた。

「今日ご飯食べに来なかったからどうしたのかと思って」

 レオはどう答えていいか分からず黙りこくった。

「何かあったの?」ヒナが答えを求めた。

 レオはヒナの顔をようやくまともに見た——気付いたら涙を流していた。

 ヒナはレオの横に座り、レオの肩にそっと手を触れる。レオは下を向いたまましばらく泣き続けた。ガレシアで人の前で泣いたのは初めてだ。泣くこと自体も2回目で、1回目はヒナが逮捕された後森の中で泣いた。

 レオは泣き止むと、ゆっくりと今日あった出来事を話した。スミスの紙も見せた。

「レオ君それって……」ヒナが顔を曇らせた。

「馬鹿じゃん……レオ君のばかぁ……」ヒナは泣きながらレオの体を両手で揺らす。

 レオはヒナを抱き寄せ、2人はしばらく抱き合いながら泣いた。ヒナはその夜レオのベッドで一緒に寝た。

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