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エベディルク 空飛ぶ絨毯と不老薬の物語  作者: トミフル
第2章 ヒーラー救出編
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第24話 レオ・シルバー

 12月30日火曜日、レオはミラのサポートの練習をする為にヴァイオレットカートを訪れた。

「いらっしゃ——あ、レオ!」ミラがレオに気付いて挨拶した。ミラはショーの時と同じように髪をしっかりとまとめていた。

「ミラおはよう——広っ! 何ここ!」

 レオが店内に入って驚いた。色んな種類のカートが展示されている。

「私は倉庫で練習してるから、そっち行こう」

 ミラがレオを倉庫へ案内した。

「倉庫広っ! カート屋ってスゲ〜な。家の近くにこんな広い店があるとは」

 レオはヴァイオレットカートの広さに感激した。

「カートってラグと同じくらい重要な産業でしょ? それにラグ屋はお客さんが飛べるから郊外に店舗置いても成り立つけど、カート屋はそういう訳にいかないから市街地に店舗を構えないといけないの」

 ミラが説明した。

「そういうことか」

「じゃ、練習しよっか」

 ミラはローブを脱いでタイトな衣装姿になり、靴を履き替えると、倉庫の壁に立てかけてあるフラフープ4つと車輪1つを取り出した。

「私がアクトで使うのがこれらね。私はフラフープを1つだけ持って登場するから、レオは残りを私に渡すの。どのタイミングで渡すか教えるから、見てて」

 ミラはメトロノームをスタートさせダンスを始めた。適宜止まり、レオにサポートを指示する。無音でのパフォーマンスは味気が無いかと思いきや、緊張感をもたらし充分見応えがあった。

 レオは何度もタイミングを確かめ、1時間程でサポートの動きを覚えた。

「よし、いい感じだね!」ミラが合格を出した。

「ありがとう……何度も見たから大分覚えてきたよ。夢に出てきそう」

「じゃあ夢の中でもサポートしてね」ミラがウィンクした。

「はは……」レオは取り敢えず笑うしか無かった。

「じゃあ名字決めに図書館行く?」ミラが真顔に戻って聞いた。

「行こう行こう!」

 2人はラグで図書館へ向かった。

「グーフィースタンスの人と飛ぶの新鮮だな〜」レオが空中で言った。

「そうだね。目を見て話せないから不便」ミラがレオの背後から言った。

「ミラって何でそんなに目見るの? いいと思うけど」

「子供の頃からお母さんに『ちゃんと人の目を見て話しなさい』って教わってたから、その通りに生きただけ」

「それであの眼力が生まれるのか……」

「それにね、目をじっと見ると大抵その人が何考えてるか分かるんだ。便利だよ」

 レオは自分の心の内がミラに見透かされていると思うと恥ずかしくなった。

 2人はすぐに図書館に辿り着いた。

「初めて入るよ。俺には無縁の場所だな」レオが建物を見て言った。

「そうなの? 色々発見があるかもよ」ミラがそう言って扉を開いた。

 ミラは中に入ると迷うこと無く歩き、1冊の本を手に取った。

「これね、色彩図鑑」

 ミラはテーブルに座り図鑑を広げた。レオは隣に座る。

「スゲ〜、カラーだ!」レオは図鑑に載ってる様々な色を見て感動した。

「色彩図鑑だからカラーでしょ」ミラが苦笑した。「でも数少ないカラー本の1つだよね。量産出来ないから」

 ミラは図鑑をレオに渡した。

「どれか気に入ったのある?」

「う〜ん……」レオは1つ1つの色を自分の名前に当てはめてみた。

「レオ・ホワイト、レオ・グリーン、レオ・オレンジ、レオ・ベージュ、レオ・ピンク、レオ・ブルー、レオ・オリーブ、レオ・ティール、レオ・ライム、レオ・ゴールド——」

 中々しっくり来るものが無い。

「レオ・ブラウンって良くない? フィリップに取られたな〜」レオが嘆いた。

「でもちょっとオッサン臭いじゃん」ミラが真顔で言った。

「それフィリップに言ったことある?」

「内緒」ミラがウィンクした。

「ふ〜ん。じゃあ今度フィリップに直接確認しようかな」

「それズルいよ」

「ズルくないでしょ」レオが笑った。

 ミラは無言で図鑑をレオから奪い、ページをめくった。

「やっぱり男らしい名字の方がいいよね。ホワイト、ピンク、スカーレット、サファイアとか女性らしいし——シルバー。レオ・シルバー! どう?」

 ミラが目を大きく開けてレオを見た。

「レオ・シルバー!——いいけど、グレイと色似てない?」

「別に色で何かするわけじゃないし。フィッシャーとも響きが似てるから自然だよね」

「そうか——そうだな! ミラが選んだって言ったらマディソンにも文句言われなさそうだし」レオはシルバーに満足した。

「マディソンもきっと気に入ってくれるよ! 明日カウントダウンだしさ、レオの歓迎会しようよ」ミラが提案した。

「マジ!? そっかカウントダウンか。パブが年明けまで営業するみたいだけど、パブで祝わない?」

「リアルト? まぁレオの家だし、いいんじゃない? メンバーに伝えておくね」

「いや、せっかくだから俺から誘うよ。オリバーはどこいるか分かんないから、レッズに行けばいいかな?」

「オッケー。うん、それでいいと思う」

「よし! 早速行く!」

 レオは図鑑を持って勢い良く立ち上がった。しかし図鑑がどこに置いてあったか覚えていない為、周囲をキョロキョロ見回してその場に立ち止まってしまう。

「私が返すから」ミラが笑いながら図鑑を取り、本棚へ戻した。

「——サンキュー」レオは照れながらミラに礼を言い、一緒に図書館を出た。

 レオはまずシルク・ドゥ・パレットのリーダーの承認を得た方がいいだろうと思い、焼き芋ジャグラーに行った。フィリップとシオネが仕事をしていた。

「フィリップ! ミラと名字決めたよ!」レオが嬉しそうに報告した。

「マジ! 早速だね。何?」フィリップが屋台から身を乗り出した。

「レオ・シルバー!」

「おお! いいんじゃない?」

「だろ! でさ、俺の歓迎会をやろうってミラが言ってくれたんだけど、明日カウントダウンだし、リアルトのパブで祝わない?」

「リアルトか。滅多に行かないけど、レオの歓迎会だし、いいよ!」

「よっしゃー! シオネも来る?」レオが隣のシオネに聞いた。

「私は……遠いですしまだ14歳なので……」シオネが肩を竦めた。

「年越しくらいいいっしょ。夜中帰ればいいんだしさ。俺から親に頼んでみようか?」

 フィリップが言った。

「——そうですね……じゃあお願いしてもいいですか?」

「勿論」フィリップが笑顔で答えた。

「シオネも来るならいいな!」レオがガッツポーズを見せた。

 レオは次にレッズに初めて訪れた。レッズはアントラからさほど遠くない場所にある一戸建てだった。一階が広い作業スペースになっていて、大きな扉は開放されている。エプロンをしたサイモンが、赤く光った鉄をトンカチ叩いている。

 レオは仕事の邪魔をしていいのか分からず、その場でサイモンの仕事の様子を眺めた。

「お、レオか! ちょっと待ってな」

 サイモンはレオに気付くと、そのまま作業を続けた。作業は数分後に止まった。

「悪い悪い。どうした?」

「ここがサイモンの家か。スゲ〜な」

「そうか」サイモンがニカッと笑った。

 レオはステージネームを報告して明日のカウントダウンの話をし、サイモンの承諾を得た。オリバーにも伝えておくと言われた。

「ここでは何作るの?」レオが作業場を見渡して言った。

「鉄を使うもの全般さ——刃物、工具、農具」

「もう何でもじゃん」

 レオは作業場のツアーを受けてから帰った。

 最後はマディソンだ。他の皆を誘えばマディソンも誘いに乗るだろうと思い、レオはマディソンを最後に取っておいた。記憶を頼りにミントファニチャーへと向かった。

 店内に入ると、テーブルや椅子が沢山展示されていた。

「レオじゃん」マディソンがレオに気付いて声をかけた。

「お、マディソン。ここがマディソンの職場か〜」レオが興味津々と店内を眺めた。

「何しに来たの?」

「俺、名字決めたんだよ。レオ・シルバー!」レオが嬉しそうに報告した。

「ふ〜ん。まぁ悪くないんじゃない」

「だろ? いや〜マディソンが気に入らなかったらどうしようかと思ったよ」

 レオが胸を撫で下ろした。

「そんなに気にしてたの?」

「気にするだろ。嫌われたくないじゃん」

「——別に嫌ってないからね」マディソンがぶっきらぼうに言った。

「ならいいんだけど——そんでさ、シルク・ドゥ・パレットの皆が俺の歓迎会してくれるんだって! 明日のカウントダウンにリアルトのパブで。マディソンも来るよね?」

「何、もうあたし以外は行くって言ってるの?」

「そうだよ」

「そう——なら行くけど。別にあんたの歓迎会なんてどうでもいいけどね」

「来てくれりゃそれでいいんだよ! じゃ!」

 レオは夜まで意気揚々と仕事をし、夜はヒナの家でHAMLにカウントダウンの話をした。明日はレオの仲間がリアルトに大集結しそうだ。

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