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エベディルク 空飛ぶ絨毯と不老薬の物語  作者: トミフル
第2章 ヒーラー救出編
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第23話 二軍戦

 レオとマットはラグスビーフィールドのケバブ・サントスへ一番乗りで到着した。レオはお腹が減っていたので先にケバブを食べることにした。

「お、レオじゃん!」MCサントスが言った。「ガレクロ読んだよ。今日出ないんでしょ?」

「うん。普通に観戦しに来たよ」

「そうか。いや〜実況のやり甲斐が無くなるな〜」

「ごめん」レオは取り敢えず謝った。「チキンケバブちょうだい」

 レオはケバブを購入し、その場で食べ始めた。マットもケバブを食べる。

 次に到着したのはルイスとジェイソンだ。

「もう食ってんのかお前ら!」ジェイソンがレオとマットに噛みついた。「ケバブはマッチ観ながら食うからいいんじゃねーかよ!」

「だって14時まで待てね〜よ」レオがケバブを口にしたまま言った。

「分かってね〜な。朝飯を遅く食うんだよ」

 ルイスとジェイソンがケバブを買わずに待っていると、次にジェニーとジャスミンが現れた。

「ジェニー、やっほー」レオが挨拶した。

「お待たせー」ジェニーが男4人に軽快に挨拶した。

「ジャスミンは今日踊るの?」マットがジャスミンに聞いた。

「うん。今からメンバーと合流する。じゃあね」

 ジャスミンはそう言ってすぐにその場を去った。

「あの子遊女の可愛い子じゃねーかよ」ジェイソンがジャスミンの後ろ姿を目で追った。

「アスカの姉ちゃんだよ」レオが教えた。

「マジで!? 流石姉妹だな……」

「ルイス元気?」ジェニーがルイスに声をかけた。

「おう。あ、こいつジェイソンな」ルイスがジェイソンを紹介した。

「知ってる。7番のポッパーでしょ」ジェニーはジェイソンを見た。

「スゲ〜」ジェイソンが感心した。

 13時40分を過ぎた頃、4人の女性が空から現れた——アスカ、ヒナ、ミラ、マディソンだ。

「何だこの光景は!」ジェイソンが空を見上げて叫んだ。

「女子が4人で空飛んでるとインパクトあるな……」マットが呟いた。

「しかもただの女子じゃねえ、美女4人組じゃねーかよ!」

 4人が一斉に空から降り立った。

「ごめ〜ん、待った?」アスカはあまり罪悪感の無いトーンで謝った。

「アスカ遅いよ。てかこの集団は何?」ジェニーの声だ。

「皆でガールズトークしてたら時間過ぎちゃった」

「じゃ私達はフィリップ達と合流するから、またね」

 ミラはアスカとヒナにそう言い、マディソンと空を飛び立った。ミラは別れ際にレオとマットに軽く手を振る。マディソンはレオと目を合わせたが、それ以外は何も無かった。

「シルク・ドゥ・パレットのメンバーだよ。ジェニー観たこと無い?」アスカが尋ねた。

「待って、あたし観たことある! えっと……誰だっけ?」ジェニーはハッとした。

「ミラとマディソン」

「あ〜、名前は全然覚えてないな。ステージだと髪バッチリまとめてるしメイク濃いから、誰か分かんなかった」

「おい誰か『シルクなんちゃらかんちゃら』が何なのか説明してくれ!」

 ジェイソンが痺れを切らして言った。

「俺も分かんない」とルイス。

「サーカスグループだよ」アスカが説明した。「レオが加入することになったの」

「サーカス!? レオお前一体何始めてんだよ!」ジェイソンが口を大きく開けた。

「まぁ後で話すよ。取り敢えずゲーム始まっちゃうから行こうよ」

 レオが面倒くさそうに言った。

 ルイスとジェイソンがケバブを買った後、6人は観客席へ歩いて行った。

 ジェイソンがレオの隣に来て囁いた。

「レオ、お前何であんな美女達と知り合いなんだよ。お前の交友関係どうなってんだ?」

「知らね〜よ。たまたまだろ」レオは適当にあしらった。

 6人は階段を上って観客席に出た。

「おい、ガラガラじゃね〜かよ……道理でケバブ屋も空いてた訳だ」

 ジェイソンが観客席を見渡して呟いた。

「いつもの半分ちょいしかいないんじゃないか?」とルイス。「平民チームのベンチが見える席にしようぜ」

 6人は平民チームのベンチと反対側の席に座った。アスカ、ジェニー、ルイス、ジェイソンの順で座り、アスカとジェニーの前列にマットとレオが座った。

「我ながらレオのカット上手く出来たね」ジェニーがレオの後頭部を眺めて呟いた。

「レオの後頭部ってこんなんだったっけ?」アスカが言った。

「後ろで何言ってんだよ?」レオが振り向いた。

 周りの観客は、平民チームのいつものスタメン選手が4人も観客席にいるのを見て驚いている様子だ。沢山の人がレオ達に声をかけてきた。

 6人が試合の開始を待っていると、国王と夫人が護衛を引き連れてVIP席へやって来た。エミリオの姿もある。

「国王来た! 今日も一軍か」マットが真っ先に国王に気付いた。

「ボコボコにされるだろうな。いいざまだよ」ジェイソンが鼻で笑った。

『皆様お待たせしました! 今年最後のラグスビーマッチが遂にやってまいりました! ゲームの実況を務めますのはわたくしMCサントス!』

 MCサントスが張り切って声を出した。

『まずは平民チームの登場だ!』

 キャプテンのゴメスを先頭に、5人の選手がフィールドへ舞い上がった。観客の声援はとぼしい。ルイスの代わりで入ったハンドラーのネクタリオスはフィールドを1周し観客に手を振る。しかし彼に声援をかける者はほとんどいない。

「ネクタリオスめっちゃ滑ってるやん! あいつ、スタメンだったら自動的に声援もらえるとでも思ってんのか?」ジェイソンがネクタリオスを嘲笑った。

「あれは痛いね」ジェニーが失笑した。

 補欠選手とヒナが平民チームのベンチに歩いて行く様子が分かる。ヒナは気まずそうにベンチの隅に座り、キョロキョロ周りを見回している。

「ヒナの場違い感ヤベェ!」レオがヒナを見てゲラゲラ笑った。

「ヒナっちあそこにいるのウケるんだけど」アスカも笑った。

「真面目だよな〜」マットがヒナを面白そうに眺めた。

『続いては政府チームの登場!』

 黒のチュニックを来た5人の選手がフィールドへ飛んだ。しかしいつもの5人とは全く違う。

「え? 二軍じゃん!」ジェニーが驚いた。「二軍の時国王いないのは有名だよね?」

「国王は負ける試合を観るのが嫌なだけだと思う。今日は二軍でも勝てると思ったから来たんじゃない?」ルイスが隣で言った。

「そういうこと?」

「それだけ平民チームが舐められてるってことだよ」

『政府チームのスローイングでゲームスタート!——11番ネクタリオス・ディマーノがキャッチ! 今回ルイス・ベッカーに代わってハンドラーを務めるようです。どんなゲームメイクをするのか注目だ!』

 ネクタリオスがポッパー2人と連携してフリスビーを運んで行く。

「あいつパスは上手いんだけどさ、焦り過ぎなんだよ。プレスかけられただけですぐパス出すじゃん」ルイスがネクタリオスのプレーを見て言った。

「確かに忙しなく見えるね」ジェニーが同調した。

『ゴメスがパスを出す!——マルシオがキャッチ! ゴーーーーーール! 平民チームが先制点を上げました!』

「まぁいいんじゃねーか」ルイスが落ち着いた様子で言った。

 次は平民チームのディフェンスとなり、ネクタリオスが相手ハンドラーをマークする。しかし簡単にパスを繋がれて突破される。

「あいつのディフェンス、ザルだな〜」ジェイソンが言った。「ラグの入れ方が悪いから簡単に逆突かれるよな」

 政府チームが1点を返し、同点となる。

 続いて平民チームがオフェンスをするが、ネクタリオスのパスがスティールされ、カウンターで1点失う。

「おーい! そこでパスミスすんのかい!」レオがツッコんだ。「一番やっちゃいけないやつじゃん」

 再度平民チームのオフェンスになるが、もたついて中々進まない。

「ネクタリオス視野が狭いよね。ウィングに直にパスすることほとんど無くない?」

 アスカが言った。

「確かに! ルイスみたいにロングパスしないよね」とジェニー。

「技術的には出来るはずなんだけどね、どうしても安全なパスを選んじゃうんだよあいつは」ルイスが言った。

『マルシオがパスをキャッチ出来ず!——政府チームのポゼッションとなります!』

 その後政府チームに点を入れられ、1対3となる。

「そろそろ1点入れないとマズイんじゃないか〜」ルイスが呟いた。

 その後平民チームは何とか点を重ねるが、3対6とダブルスコアで前半を折り返す。

「ちょっと二軍相手にこれは無いんじゃないか……」ルイスが溜め息をついた。

「ルイスの偉大さが如実に表れたよね」アスカが言った。

「ルイスだったら後半どうする?」レオが振り向いて尋ねた。

「どうするもこうするも、使える駒が皆ここで観戦してんじゃん」

 ルイスが呆れるように言った。

「ハーフタイムで実力の差が更に出そうだよね」マットが振り向いて言った。「ルイスの真の力はハーフタイムでの修正力だと思うよ」

「そうなの? 何するのハーフタイムで?」ジェニーがルイスに聞いた。

「まぁミーティング」ルイスがボソッと言った。

「ハーフタイムのルイス、マジですごいから。いつの間に考えてたのっていうくらいスラスラと戦術話し始めるからね」レオがルイスを持ち上げた。

「そうなんだ! すごい!」ジェニーが自然にルイスの二の腕を触った。

「おい、そんなに俺をヨイショしても何も出てこねーぞ」

 ルイスが恥ずかしそうにレオとマットに言った。アスカはニヤニヤしながらルイスを見ている。

 後半は政府チームのメンバー交代があったが、平民チームのメンバーはそのままで開始した。平民チームは前半以上に苦戦を強いられ、4対8と点差を広げられる。平民チームがミスする度に会場からブーイングも聞こえてくる。

「もうね、ネクタリオスの弱点皆突いてるんだよ。ハーフタイムで情報共有あったんだろうな」ルイスが溜め息をついた。

「あいつ精神力弱いな〜。ブーイングされてめっちゃイライラしてんじゃん」

 ジェイソンが言った。

 キャプテンのゴメスはネクタリオスを下げ、補欠のポッパーを投入すると、自分はハンドラーのポジションに就いた。

「あ〜あ、あいつルイスがいないのに下げられたんじゃ、もう言い訳出来ねーな」

 ジェイソンがネクタリオスを嘲笑った。

「ゴメスがハンドラーやんの? 補欠いないの?」レオが困惑した。

「いるかもしんないけど、自分がやった方がいいって判断したんだろ」ルイスが言った。

 ゴメスはロングパスを次々とウィングに送り、ゴールチャンスを作る。両チーム2点ずつ取り、スコアは6対10となる。

「ゴメスの方がネクタリオスよりハンドラー上手いだろ」ジェイソンが言った。

「思い切りがあるからね。それにポッパーが補欠だから、あんま頼らずにスピーディーに攻撃仕掛けたいんだろ」とルイス。

 その後政府チームにゴールを決められ、6対11で平民チームが敗北した。観客からは罵倒が飛び交った。

「二軍に負けてどうすんだよ!」

「いっそのこと棄権しちまえ!」

「お前らのプレーなんて面白くねーんだよ!」

 平民チームは逃げるように控室へと引っ込んでいった。

「さ、これで奴らも棄権したくなるだろ」ジェイソンが満足気に言った。

「久々に観客席から試合観たけど、面白い経験だっだな」ルイスが言った。

「あたし今日ルイスの隣で観戦してめっちゃ勉強になったよ! いつも素人と一緒に観てるからね」ジェニーがルイスの二の腕を触って言った。

「おー、サンキュー。また観ようって言いたいところだけど、もう充分かな。次は出たい」ルイスが苦笑した。

「そうだよね!」

「控室行ってメンバーに声かけて来るよ。ここでお別れでいい?」

「うん。ありがとう!」

「アスカも行く。ヒナっちと会わなきゃ」アスカがリュックを開けた。

「そうだ! 僕も行くよ」マットが急いでリュックからラグを取り出した。

 レオとジェイソンも賛成し、5人は観客席でジェニーと別れ、ラグに乗って控室へ直行した。

 5人が控室へ到着すると、ルイスがメンバーへ声をかけた。

「お疲れ。俺達のスタンスは依然変わらない。次の試合も棄権したいと思ってる。俺達4人は9時から練習してるから、もし賛同してくれる人がいたら今後こっちの練習に参加してくれ」

 ルイスはそれだけ告げて控室を後にした。HAMLの3人はヒナと一緒に控室を出た。

「今日の救護係はしんどかったなぁ」ヒナは控室を出たところで3人に打ち明けた。「ハーフタイム中はネクタリオス君が皆とすごい口論してて、険悪なムードだった」

「ヒナっちお疲れ」アスカがヒナの肩を抱いた。


 翌日のガレシアクロニクルのヘッドラインは「平民チーム、二軍相手に完敗」だった。ビングは記事の中で平民チームを完全にこき下ろし、「過去10年で最弱のチーム」とまで称した。レオは複雑な気分でガレシアクロニクルを売った。


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