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エベディルク 空飛ぶ絨毯と不老薬の物語  作者: トミフル
第2章 ヒーラー救出編
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第21話 ラグダンス

「他の料理出てるみたいだし、取りに行こうぜ」

 ルイスがそう言うと、皆席を立ってブッフェコーナーへ向かった。他のテーブルのゲストがレオをジロジロと見ているが、レオは無視した。

 ブッフェコーナーにはパスタとピザが出ていた。

「うわ〜どっちも食いて〜」レオが普段のキャラに戻った。

「どっちも全員分あるから、今は1つだけ取った方がいいよ。じゃないと冷めちゃう」

 ジェニーがアドバイスをした。

「そういうことね。じゃあまずピザにしよ」レオはピザを取った。

「ルイス、あっちのハイテーブルで一緒にピザ食べない?」ジェニーがルイスを誘った。

「ん? まぁいいよ」ルイスが誘いに応じた。

「あたしドリンクも代えてきていい?」

「オッケー。俺も代わるわ」

 2人はピザの皿を持ってバーの方へ歩いて行った。

 レオはジェニーのスムーズさに感心しながら自分のテーブルへと戻った。ヒナが席を詰め、ヒナ、マット、レオ、空席3席という配置になった。

「一気に減ったね」ヒナがぽつりと言った。

「そうだね」とマット。

 3人がしばらく食事に集中していると、ジャスミンがパスタの皿を持ってテーブルへやって来た。

「今度は私がこっちに来ようかな。いい?」

「勿論」マットが同意し、レオとヒナが頷いた。

「今グラス持って来るから」

 ジャスミンは一旦テーブルを離れ、グラスを持って戻って来た。ヒナの隣へ座る。

「アスカとジャスミンが面白いように同じ空間にいないんだけど」レオが苦笑した。

「あ〜、アスカは私のこと嫌ってるからね」ジャスミンが軽い調子で言った。

「でもジャスミンさんすごく人当たりが良いから、アッちゃんがあそこまで嫌う理由が分かんないです」ヒナが言った。

「私達3姉妹は、父の希望をずっと背負わされて生きてきたの。マチルダは役人と結婚、私は遊女っていう父にとって模範解答の生き方を選んだわけ。だから父は私達2人には優しいんだけど、全然父の思い通りに生きないアスカにはずっと厳しく接してきたの。アスカは自分だけ父の愛情を受けられてないから、私のこと恨んでるの」

「アッちゃんはマチルダさんのことも嫌いなんですか?」

「そこまででは無いかな。アスカは父に全然良い印象持ってないから、それがそのまま政府の印象へと反映されちゃってるんだよね。だからその政府でガッツリ働いちゃってる私のことは特に憎いんだと思う」

「でもジャスミンはアスカのことそこまで嫌いじゃなさそうだよね」レオが言った。

「嫌う理由が無いもん。むしろ自分の意志を貫いてて尊敬すらするよ」

 ジャスミンが笑顔で言った。

「ジャスミンは何か遊女以外にやりたいことあったの?」

「そう言われると無いんだけどね。子供の頃からあまり自分で考えること無く、ただ親の言うこと聞いて生きてきたから。ダンスは好きだからそれが続けられるのは嬉しいけど。まぁ自我が無いのは遊女に向いてる証拠なんだ。とにかく相手の喜ぶことを徹底的にしてあげるのが遊女の仕事だから」

「ふ〜ん。国王の夫人ってさ、遊女の中から選ばれるの?」

「そうだよ」

「ジャスミンはなりたい?」

「国王の夫人まで行くとプレッシャーが強すぎるかな。ダンスも続けられなくなるし」

「そうか」

「遊女って城で生活してるんだよね。自由に外出出来るの?」マットが聞いた。

「週1の休みの日だけ外出出来るよ」

「知らなかった……てっきり軟禁されてるのかと思った」

「外出しないと美容のメンテナンスが出来ないでしょ。だから週1の休みでヘアサロン行ったりネイルサロン行ったりして美しさを保つの。でもそれ以外はそうね、軟禁と言えば軟禁かも」

「嫌になったら辞められるの?」

「王族か役人と結婚すれば辞められるよ。あとは歳取ったり美しくなくなればクビになるけど、自分から辞めることは出来ないね」

「そうなんだ……」マットが小声で言った。「僕だったら息苦しくなって逃げ出しちゃうかもな」

「逃げ出したら家族殺されちゃうからね」ジャスミンがサラッと言った。

「えっ!?」レオとマットとヒナが皆目を見開いた。

「あ、今のは話さない方が良かったかな。ダメだね、お酒が入ると」ジャスミンがお茶目に笑った。「普段人の話ばかりうんうんって聞いてるから、自分のこと聞かれてつい話し過ぎちゃった。別の話しよっ」

「今の流れで別の話しよって言われても……」マットが言葉に詰まった。

「じゃあマットの今日のエスコートについて!」レオが思い付きで話題を挙げた。

「ああ、あれは面白かったね」ジャスミンがクスクス笑った。

「何でその話題持ち出すの!」マットが頬を染めた。

 4人はブッフェコーナーに向かい、パスタやピザの皿を取ってテーブルへ戻った。しばらく食事をしていると、ミュージシャンが続々と会場へ現れた。

「あれ、ザ・ティビアスじゃん!」レオが声を上げた。

 ザ・ティビアスのメンバーはジャスミンを見ると軽く手を振ったり会釈をした。会場の奥でスタンバイし、ゲストの視線がある程度バンドに集まったのを確認すると、音楽を奏で始めた。

 するとアスカがフェニックス柄のラグに乗って空から後ろ向きで舞い降りて来た。会場がざわめく。

「え? 何でラグ乗ってんだ?」レオがアスカを興味津々と目で追った。

 アスカは地上50センチほどまで降りると、ターンしてゲストの方を向き、そのままラグの上でダンスを始めた。ラグで軽快に動きながら、同時にラグの上でステップを踏む。

 アスカはしばらくバンドの前でダンスをすると、今度は入口へ向かってラグをゆっくり動かし始める。まずは右側のゲストの方を向いて踊り、入口付近でターンした後は、バンドの方へ戻りながら左側のゲストの方を向いて踊る。レオは目の前を通るアスカの動きを一時も逃すまいと必死に見つめた。

 今度は高度を変化させながらダイナミックに会場内をヒラヒラと飛び、両手を大きく動かすダンスを魅せる。テーブルの頭上を飛ぶ度にゲストから歓声が上がる。

「ラグスビー見てるみたいだな!」レオがアスカを見上げながらマットに言った。

 アスカは入口付近に降り立つと、体を大きく逸らした状態で奥まで進んだ。

「これもラグスビーでやってたよ! 敵の下をかいくぐる時に使うよね」

 マットが興奮気味に言った。

 アスカはバンドの前に戻ると、ゆっくりと小さく円を描きながら踊る。円はどんどん小さくなり、やがてスピンになる。スピンのスピードを上げると共に音楽が盛り上がりを見せる。最後はスピードを下げていき、ゲストの方を向いた状態で静止してポーズを決めた。ゲストはアスカにスタンディングオベーションを送る。リチャードも誇らしげな表情を見せている。

 アスカはラグに乗ったまま入口まで飛んでいき、ゲストに手を振りながら会場を去った。ザ・ティビアスもゲストにお辞儀をしながらアスカの後を追う。

 会場はしばらくダンスの感想を話す声でざわついた。数分後にアスカが歩いて会場へ戻り、レオ達のテーブルに来た。するとジャスミンが席を立つ。

「じゃ私はこれで」ジャスミンは軽くレオ達に手を振り、グラスと皿を持った。

「え、残ったらいいじゃん」レオがジャスミンを引き留めた。

「いいのいいの——アスカ、ダンスカッコ良かったよ」

 ジャスミンはアスカにそう告げ、テーブルを去った。アスカはレオの隣に座り、テーブルはヒナ、マット、レオ、アスカ、空席2席という配置になった。

 レオはジャスミンとアスカが同じ空間にいれないのをもどかしく思いつつも、アスカに焦点を戻した。

「アスカ、ヤバかったな! いつの間に練習してたんだよ!」

「まぁここ1ヶ月くらい? でもラグ乗りながら踊るのは子供の頃からやってたかな」

 アスカが得意気に答えた。

「アッちゃんすごかった! こんなすごい人とこれから一緒に住むと思うと……もうすごかった!」ヒナが取り乱すように言った。

「何言ってんのヒナっち! ヒナっちなんて最強ヒーラーなんだから、アスカの方が引け目感じるくらいだよ——ねぇ料理取りに行かない?」

「俺がアスカの分も取って来るよ」レオが席を立ちブッフェコーナーへ向かった。

 今度は子羊のローストが出ていた。2皿取って席に戻る。

「サンキュー」アスカが皿を受け取って食べ始めた。

「アスカさ、アントラのイベント出れるよ!」マットが言った。

「マジ? アスカもそれ考えてたけど、どれくらい客受けするか分かんなかったから、今までダンスのことは黙ってたんだ」

「どっち道マットファクトリー主催なんだから、誰の許可も要らないんだし出ようよ」

「え、エドウィンのイベント、結局マットファクトリーが主催することにしたの?」

 レオが聞いた。

「うん。まだレオとヒナには話してなかったね。1月18日の日曜日が空いてるから、その日にしようと思ってる。明日にでもフィリップにシルク・ドゥ・パレットの予定聞いてみるよ」とマット。

「マジか! アスカ出るよね?」

「うん。ザ・ティビアスはシルク・ドゥ・パレットのバンドでもあるから、兼任出来て丁度いいしね」アスカが答えた。

「そっかそっか。てか今日わざわざザ・ティビアス雇ったってことだよね?」とレオ。

「そうだよー。リハーサルもしたからその分の時間もチャージされるし」

「スゲーな〜。今日来て良かった——そう言えば俺も報告あるんだよ。シルク・ドゥ・パレットに加入することになった」

「マジ!? ヤバっ!」アスカが大声を出した。

「面白いことになってきたね! 僕らのイベントでレオとアスカが出るなんて!」

 マットが嬉しそうに言った。

「俺の場合はまだ未完成なんだ。今週末のオープンステージに出て、それをフィリップに見てもらう。その後どんな音楽にするか決めるんだってさ。18日までに間に合えばいいけど」

 レオが冷静に言った。

「観に行くよそれ!」マットが言った。

「アスカも行く!」アスカが賛同した。「何時?」

「10時スタート。早めに出て、終わったらラグスビーマッチも観に行こうかと思ってる」レオが答えた。

「そっか同じ日か」

「レオは観に行かないと思ってたよ」マットが言った。

「う〜ん、色々考えたんだけど、観客がどういう反応するか確認する為にも観に行った方がいいと思った」

「確かにそうだね。僕も行くよ」

「一緒に観ようよ。ヒナっちも行こう」アスカが言った。

「私は……救護係なんだ……」ヒナが気まずそうに言った。

「え? やるの?」

「うん。ゴメス君にお願いされて。レオ君達が欠場するのは私全然賛成なんだけど、私が救護係しないと他にやる人がいないから——ごめんね」

「ううん。ヒナっちは優しいもんね」

「うん、俺は全然気にしないよ」レオがヒナに笑顔を見せた。

「レオ君のは私も観に行くよ」ヒナが言った。

「皆来んのか〜。嬉しい反面複雑な気持ちだな。ちゃんと音楽付きの完成したのを見せたいよ。アスカの今日のダンス観た後だから余計緊張する」

「逆に音楽無しからどうやって形になっていくのか過程を見るのも楽しそうだけどね!」

 アスカが言った。

 ここでマットとヒナも子羊のローストを取りに行き、レオとアスカはバーでドリンクを受け取った。

「そう言えばアスカもスピン出来るんだな」

 4人がテーブルに戻ったところでレオがアスカに言った。

「あ〜、ラグで回転するやつ? うん」

「あれ出来る人多分ほとんどいないよ。俺シルク・ドゥ・パレットのオーディションをフィリップとミラの前でやったんだけど、スピンやって見せたら2人共驚いてたし」

「そうなんだ。スピンって普段ラグ乗る上で必要無いもんね。でもダンスだとスピンって重要な動きだから、ラグで再現しようと思って練習したんだ。そしたら何とか出来るようになった」

「なるほどね〜。やっぱダンス出来てラグ乗れるって相当ユニークな才能だろうな」

「僕今日アスカのダンス見てて思ったんだけど」マットが話に入った「ラグ改造したらもっとダンスの幅が広がると思う」

「え、どういうこと?」アスカが身を乗り出した。

「アスカ、普通に前進してる時は足のポジション外して踊れるけど、カーブしたりスピンしてる時は足動かせないでしょ?」

「うん、動かしたら止まっちゃうもん」

「そう。通常のラグだと、足のポジション外れても惰性でしばらく進むよね。だからその間にアスカは足も使ってダンスが出来る。で、失速する前にまたポジション戻して進めばいい。でも惰性で動くのは前進とバックだけで、カーブの動きに惰性は存在しない。でも改造すれば、1度カーブの動きをしたら止めない限りずっと続くように出来る。そうするとスピンしながら足を自由に動かせるようになるよ」

「え、何それ! 何で最初からそうなってないの?」

「普段使いでは危険だからだよ。ラグはリリースっていうのを調整出来るのね。リリースがゼロだと、動きを止めた瞬間に惰性も無くピタッと止まる。リリースが最大だと、1度動きを入れたら、永遠に続く。通常のラグは前後進のリリースが半分くらい、つまり徐々にスピードが落ちる。前後進のリリースが仮にゼロだと、ちょっと足ズレただけでいきなり止まることになる。そしたら放り投げられちゃうでしょ? 逆にリリースを最大にしちゃうと、ブレーキポジション取らない限り永遠に飛び続けるから、仮に怪我なんかしてラグの上に取り敢えずしがみついた場合に、止まらずにずーっと行っちゃう」

「そういうこと? じゃカーブは?」

「カーブのリリースはゼロ。カーブってそもそもが一時的な動きでしょ? リリースあったら不便だよ。それにさっきと同じ理由で、仮に飛べなくなってしゃがみ込んだりした時にラグが傾き続けてたら危ないじゃん」

「そんな仕組みだったなんて知らなかった。じゃあ前後進のリリースを最大にすれば、スピード落とさずにずっと踊り続けられるってこと?」

「そう」

「で、カーブのリリースを最大にすると——1度スピンを始めたら、何もしなくても回り続ける!」

「そういうこと」マットが満足気に言った。

「それすごい! 作ってよ!」

「いいよ」

「やったー! これでラグダンスの可能性がめっちゃ広がりそう!」

「いや〜俺もマジでこんなこと知らなかったよ……」レオがマットの知識に感心した。

「ラグ職人以外は普通知らないよ。リリースいじりたい人なんていないし。ラグに乗ってダンスするっていうアスカのユースケースがあまりにも特殊だから話に上がったけど」

「俺もアクロバットに役に立つかと思って今考えてみたけど、足の繊細なコントロールが必要になるから、特に関係無さそうだな」

 4人がその後もしばらく話していると、アスカの母親らしき人がテーブルに来た。

「アスカ、靴交換するわよ」

「うん、分かった」アスカは返事をし、席を立った。

 会場の奥に椅子が1つ置かれており、アスカがそこへ座る。

「それでは皆様、これからアスカの靴を交換致します」

 ヒールを持ったリチャードが声を発した。ゲストの注目が集まったのを確認し、アスカの元へしゃがみ込み、彼女の履いているブーツを脱がしてヒールを履かせた。ゲストが皆拍手を送る。

「これ何なの?」レオが取り敢えず拍手をしながらマットとヒナに聞いた。

「ヒールに履き替えることで大人になったことを表す儀式のようなものだよ」

 ヒナが説明した。

「ふ〜ん」

 靴交換が終わると、ケーキタワーがスタッフによって会場に運ばれて来た。

「続きまして、ケーキカットを行います」リチャードがアナウンスした。

 アスカがケーキタワーの天辺にナイフで切込みをいれると、会場から拍手が起きる。その後ケーキはアスカの母親によってカットされ、ゲストに配られた。アスカはレオ達のテーブルに戻り、一緒にケーキを食べた。

「この後はどうなるの?」レオがアスカに尋ねた。

「これで終わり。会場は後1時間くらい空いてるから、残りたい人は残ればいいし」

 アスカが答えた。

「いや〜、ガレシアのキンセニエラは違うな〜。満足満足」

「レオ、これが普通じゃないからね。アスカのキンセニエラがすごいだけで。最初にこれ経験しちゃうのはある意味可哀想だよ。ここからはもう下がるのみだから」

 マットが言った。

「てかフュージョン・ヴィルマリーのキンセニエラがすごい。役人の娘にとって一番人気の会場だから」アスカが言った。

「私キンセニエラ初めて来たけど、本当に楽しかった」ヒナが笑顔で言った。

「ヒナ、初めて来たのに何でこんなにキンセニエラについて詳しいの?」レオが尋ねた。

「そりゃ女の子だから色々調べるし」

「ヒナっちもキンセニエラやろうよ! 1年遅れでもいいじゃん!」

 アスカが隣のヒナの手を掴んだ。

「ヒナって誕生日いつ?」マットが尋ねた。

「3月19日」ヒナが答えた。「今なら招待したい人もいるし、お金にも時間にも余裕があるからやろうかな」

「やったー! 今からめっちゃ楽しみ!」アスカがフォークを掲げて喜んだ。「ヒナっち今年キンセニエラやってなくて良かった。アスカまだ知り合ってなかったし」

「おいアスカ、それは失礼だろ〜」マットが説教した。

「あ、ヒナっちごめん」

「ふふふ、大丈夫だよ。私も今年無理矢理やらなくて良かったと思う」

 ヒナが笑顔で言った。

「俺の革靴の出番が増えて良かった! これ高かったんだよ」レオが足を踏み鳴らした。

「そういう問題? てかレオこれから沢山キンセニエラ招待されると思うよ」

 アスカが言った。

「何で? ヒナ終わったらもう誰もいないじゃん」レオがきょとんとした。

「シオネは? あの子14歳でしょ?」

「シオネちゃんならレオ君を誘うと思う」ヒナも同意した。

「あ、シオネのこと忘れてた」レオがハッとした。

「ガレシア来て半年で3人もキンセニエラ招待してくれる女友達出来たんだから、これからどんどん増えてもおかしくないでしょ」

 アスカが淡々と言った。

「そういうもんかな〜。アスカとヒナとばっか一緒にいるし、歳取っていくからそんなに増えないような気がするんだけどな」

 そこでルイスがHAMLのテーブルにやって来た。

「アスカ、俺は御暇おいとまするよ。楽しかったし、ダンス最高だった!」

「ルイスもう行くの?」アスカが振り返った。

「うん。年寄りがあんまダラダラしててもみっともないだろ」

「年寄りって……」アスカが苦笑した。

「じゃあな」ルイスが4人に手を振って会場を去った。

「やっぱルイスは立ち振舞がスマートだね。キンセニエラ沢山行ってるだけあるよ」

 マットは感心した。

 そこでバーからドリンクを持ったジェニーがアスカの隣に座った。

「ジェニー久しぶり」レオが言った。

「おひさ〜」ジェニーが上機嫌に言った。「ルイスのアドレスゲットしちゃった」

「すげ〜なジェニー……」レオは呆気にとられた。

「流石ジェニーだね」アスカがニヤけ顔で言った。「狙った男は逃さない」

「アスカ、よくルイスを招待してくれた! いい子いい子!」

 ジェニーがアスカの頭を雑に撫でた。

「ちょっと、ティアラ落ちちゃうじゃん!」アスカがジェニーの手を振り払った。「酔ってるでしょ? ノンアルにしたんじゃないの?」

「したんだけど、飲んだ方が上手くいくと思って途中から作戦変更したの」

「はぁ、この女は……」アスカが溜め息をついた。

「ジェニーさん面白いね」ヒナがにっこりとジェニーを見た。

「ヒナも恋愛相談したくなったらうちの店来てね! あたしは美容師兼恋愛カウンセラーだから」ジェニーがグッドサインを見せた。

「もう意味分かんないから、他のダマのテーブル行って」

 アスカがジェニーをあしらった。

「うっす!」

 ジェニーは立ち上がり、HAMLにグラスを掲げて挨拶をしてテーブルを去った。

「ジェニー最高だわ」レオがゲラゲラ笑った。「でもジェニーってマジで美容師兼カウンセラーだと思う。この前髪切ってもらった時、色んなこと学んだもん」

「そうなんだ。私も今度行ってみようかな」とヒナ。

「皆ジェニーマジックにかかってるね……」アスカが呆れた。

 時間が経つに連れて、ゲストが続々とアスカに別れを告げて会場を後にした。

「アッちゃん、私歩きだからそろそろ帰るね」ヒナが申し訳無さそうに言った。

「そっか! 遠くからありがとね!」

「じゃ俺も歩いて帰るよ」レオが言った。

「え、いいの?」とヒナ。

「サタナリアの時もそうだったし、いつもじゃん」

「ありがとう」

「マットはどうする?」レオがマットに聞いた。

「僕は最後まで残るよ。エスコートだし」マットが答えた。

「エスコートってそうなの?」

「別に決まってるわけじゃないけど、早く帰る理由も無いし」

「オッケー。じゃアスカまた!——てかいつヒナの家に引っ越すの?」

「引越し屋を明日予約したから、明日引っ越すよ」アスカが答えた。

「早っ! てか俺も誕生日に家飛び出して来たから、同じようなもんか」

「そうだね」アスカが笑った。

「じゃあ明日ヒナんに夕飯食いに行くから、その時!」

 レオはアスカに別れを告げ、ヒナと会場を去った。


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