第18話 オーディション
翌日レオが目を覚ますと、日が既に昇っていた。頭が痛いし、胃がもたれている。昨日はあまりにも内容が濃すぎる1日だった——マットファクトリーでフィリップとのミーティングから始まり、ヒナの家でギフト交換。ヴィルマリーストリートでランチをし、屋根裏で「アキロスの願い」について議論。ガレシアセントラルでドリンクを飲んだ後はローザンパークでディナー。エドウィンと遭遇し、アントライベントの開催を計画。
一方レオのTODOは、シルク・ドゥ・パレットのオーディション、ラグランジェで髪を切る、ヴィルマリーストリートで靴を買う、ビングへ連絡を取る。レオの頭は今にもパンクしそうだった。
1階に降りて時計を見ると、針は既に8時を回っていた。
「ヤバい!」
レオは急いでリアルトを出て、ガレシアクロニクルをサブスクライバーの元へ届けた。
その後アントラ付近に行くと、焼き芋ジャグラーは営業していた。
「最近よく会うね」レオがフィリップに声をかけた。
「そうだね」フィリップが笑顔で答えた。「例のアクロバットだけど、明日の午前見せてくれる? 10時とか」
「いいよ。ちょうど気になってたところ」
レオはその後昼まで仕事をし、昼食を済ませた後にラグランジェへ顔を出した。店内にいるのはマリネッテだけだった。
「こんにちは。ジェニーいる?」レオが仕事中のマリネッテに尋ねた。
「今休憩中よ」マリネッテが無表情で答えた。
「ジェニーで予約したいんだけど?」レオが気まずそうに聞いた。
「ちょっと待ってなさい」
マリネッテはレオにそう言い担当中の客を一旦離れ、レジに行って書類を確認した。
「最短で明日の14時が空いてるけど」マリネッテが書類を見たまま言った。
「それでお願い」
「分かったわ。レオ君ね」
「昨日のサタナリアはどうだった?」
レオは予約内容を記載しているマリネッテに聞いた。
「無駄な世間話は結構よ。それじゃ」マリネッテはそう言い放ち、仕事に戻った。
レオは背筋が凍る思いをしながら店を出た。他にもっとフレンドリーなヘアサロンがあるならそっちに行きたかったが、キンセニエラが1週間に迫ったレオには、新たにヘアサロンを探す余裕は無かった。
レオはラグランジェに寄った足でヴィルマリーストリート内の靴屋へ向かった。以前ルネヴェイラを探す為にHAMLで通りを歩いていた時に、レオは靴屋を見かけた。その時の記憶を頼りに歩く。
レオは無事辿り着くと、店の前で立ちすくんだ——店の名前はウィキンズ。ダークグリーンの外壁はローブ&ホープと同じように高級感がある。レオはまだヴィルマリーストリートの店に1人で入ったことが無い。
——マリネッテのような店員が出てきたらどうしよう。
脚が金縛りにあったかのように動かない。レオは明日ラグランジェで、ジェニーに買い物に付き合ってくれるか頼むことにした。
翌日レオは、普段乗っているレギュラーモデルではなくレオモデルに乗って家を出た。アクロバットをするなら、よりコントロールの効くウルトラフィットの方が適しているからだ。レオはサブスクライバーに新聞を届けるとローザンパークへ直行し、10時までの約2時間アクロバットを練習することにした。
久しぶりにアクロバットをするので、感覚が少し鈍る。レオは何度か芝の上に転倒しながら練習を続けた。周りでラグの練習をしている子供達がレオを凝視している。中には話しかけてくる子供もいたが、レオは適当にあしらって練習に没頭した。昨日丸一日オフだったレオは、マーセラなどに話しかけられても別に嫌な気分はしなかった。しかし今日からは普段の生活に元通り。やることが山積みのレオには心の余裕が無かった。
「お、やってるね!」
近くで女性の声がした。レオが振り返ると、グーフィースタンスの女の子がレオの方へ飛んで来た。
「ミラ?」レオがラグから降りて女の子に言った。
「そうだよ」ミラもラグから降りた。
「ステージで観た時と全然見た目違うから一瞬誰かと思った。でもグーフィースタンスの女の子って言ったらミラしか知らないから」
「そうだろうね」ミラがレオの目をしっかりと見て言った。
ミラはショーで着ていたタイトな衣装ではなく、普通のローブ姿だった。メイクも薄く、髪はショーの時よりラフに後ろで結んでいる。しかし眼力の強さは顕然で、近距離だとそれが尚よく分かる。
「もしかしてオーディション見に来たの?」
「そうだよ。レオがアクロバットするって聞いたから、そりゃ見に行かなきゃと思って」
「マジか、緊張するな——え、皆来るの?」
「ううん。私とフィリップだけ」
「そうか」レオはホッと息をついた。「皆に見られたら超緊張するでしょ——この前のショー観たよ。マジで衝撃受けた! ミラのあの大量のフラフープ捌き!」
「ありがとう」ミラは軽く笑顔を作り、レオをじっと見て言った。
レオはアイコンタクトを取るのが苦手ではないのだが、ミラと話しているとどうしても先に目線を逸らしてしまう。
「あ、そうだ。ミラってヴァイオレットカートの人? 車輪回してるからそうなのかなって」
「そうだよ。ちょっと宣伝も兼ねて」
「やっぱり。カート作ってるの?」
「ううん。親とか兄が作ってて、私は接客してる」
「そうなんだ。俺リアルトに住んでるから近いけど、1回も行ったこと無いや」
「用無い人は来ないだろうね。私もリアルト行かないもん」
「飛べる人はギルドに用無いしね——色々聞きたいことあるけど、もうちょっと練習しなきゃ」
「うん。見てる」
レオはミラに地上から見られながら練習を続けた。
10分後くらいにフィリップが空から軽やかに着地した。
「お疲れ! 2人共いるね」
「お疲れ」レオがラグから降りて挨拶した。
「じゃあ早速始めようか。出来るやつ1つずつやってみて」
「オッケー」レオはラグに飛び乗り、緊張を何とか抑えた後、スピードを出してぐるりと1回転しながら前進した。
「トルネードだよね? あの決勝点の興奮が蘇るな〜! 間近で見ると迫力あるね!」
フィリップが歓声を上げた。
「MCサントスが『トルネード』って呼んだからガレシアではそうなってるけど、セリエンテでは『スクリュー』って呼んでた。ねじ回すように回るから」
レオがラグの高度を下げて言った。
「スクリューか。それも良い名前だな。どうやってんの?」
「前進した状態で高度を上げながら両足のかかとかつま先に思い切り力入れる。俺はグーフィースタンスだから、かかとに力入れると右回転。つま先に力入れると左回転になる。ライトスクリュー、レフトスクリューって呼んでる」
「へ〜。俺もやってみたいけど、怪我しそう」
「私ちょっとやってみてもいい?」ミラが言った。
「言うね」フィリップがミラを煽てた。
「どっちが簡単?」ミラがラグに乗ってレオに聞いた。
「レフト。つま先に力入れる方が簡単。同じグーフィーだと説明しやすくていいな」レオがミラの前にラグを移動させて言った。「スピードは最大まで上げた方がやりやすいよ。スピード無いと逆さになった時に落ちちゃう」
「オッケー」ミラが深呼吸をした。
レオはミラから離れて見守る。
ミラはスピードを思い切り上げて、両足のつま先に力を入れた。しかしラグがそのまま左に傾き、ミラはうつ伏せの状態で転倒し、勢いでゴロゴロと転がった。レオとフィリップはミラの元へ飛ぶ。
「いったぁ……難しいねこれ」ミラが起き上がって呻いた。
「大丈夫? つま先に力入れる時に、ただ押すんじゃなくて引っ張るようにしないと、今みたいに単純に横になっちゃうんだよね」レオが言った。
「そういうことね……いやこれは流石に怖いよ」
「ミラまだやんの?」フィリップが聞いた。
「いや、もういい」ミラが首を振った。
「じゃあ次! レオ、次は何?」
「回転が3種類あるんだよね、3Dだから。X軸が前後、Y軸が左右、Z軸が上下だとすると、X軸を起点に回転するのがスクリュー。Y軸を起点に回転するのがフリップ。Z軸はスピン。フリップやるよ」
レオはそう説明して、スピードを上げた後に宙返りをした。
「うわ〜!」フィリップが歓声を上げながらレオの元へ飛んで行った。ミラも続く。
「これ初めて見たよ!」フィリップはレオに追いついて声をかけた。
「ラグスビーで使えないからね」
「確かにそうか。俺の名前に似てるから試してみたいけど、頭から落ちそうだな〜」
「名前似てるとか、どういう理由なの?」ミラが笑った。「レオ、これはどうやるの?」
「ラグの角度の上げ方は分かる?」レオが聞いた。
「角度? どういうこと?」
「ラグの先端を上に向けながら上昇すんの。見てて」
レオはラグを傾けて高度を上げ、2メートルほど上昇したところで角度を戻した。
「え、待って何それ? 知らない!」ミラが地上から見上げて息を呑んだ。
「普通ラグの角度って変える必要無いから知らない人多いけど、実は傾けられるんだよ。上昇と下降の動作を、利き足だけでやるの。角度上げたかったら利き足全体で息を吸うような感覚。下げたかったら逆に息を吐く感覚」
「そう言えば子供の頃上下動の練習した時に、傾いて転んでた。確かに利き足が力むと傾くよね。頑張って直して水平に上下動出来るようになったけど、傾けながら上下動出来るなんて考えたこと無かった……」
「道理でレオだけラグスビーでおかしな動きしてる訳だ!」フィリップが言った。「高度変える時にちょっと傾いてるもんね!」
「うん。高度変えながら前進する時は、ラグ傾けてあげた方が空気抵抗が少ないからスピード出るんだよ」
「これヤバ過ぎる。レオのラグスビーのプレイ観るのが更に面白くなりそう!」
ミラは興奮した。
「はは……」レオは褒められて照れた。
「でも傾けるだけなら私でも出来そう。角度上げるのと下げるのどっちが簡単?」
「うん、出来ると思うよ。難易度はそんなに変わんないけど、下げるのを先に覚えなきゃダメ。じゃないと角度上げた時に戻せなくなって天まで昇っちゃうからね」
「確かに!」ミラが爆笑した。「じゃあ地上2メートルくらいから角度下げる練習をすればいいのか」
「そういうこと!」
「じゃあフリップは、角度を上げ続けるってこと?」フィリップが聞いた。
「そう!」レオは2人の理解の早さに感激した。「上下動だと角度はせいぜい30度が限界だと思うけど、それをどんどん上げ続けるとフリップ出来る。スクリューと同じで、スピード上げてラグにしっかり足乗せないと落ちちゃう」
「いや〜目から鱗だよ。ラグにそんな隠し技があったとは」フィリップが感心した。
「オリバー、マディソン、ミラは普通のバック宙出来るけど、こっちの方が難しそう」
「うん、そうだと思うよ」ミラが共感した。
「逆に俺はバック宙なんて出来ないぞ」レオが笑った。
「練習すれば出来ると思うけどね——もう1つの回転が、スピンだっけ?」
ミラが聞いた。
「うん。これは逆さになる訳じゃないから3つの中では一番安全」
レオが5歳の男の子に見せた時と同じようにその場で回転した。
「これはさっきの2つ程の派手さは無いけど、やっぱ見たこと無いな」
フィリップが言った。
「回ることは出来ても、絶対に輪を描くよね。レオの場合は軸が動いてない」
ミラがスピンするレオをじっと観察してコメントした。
「そう。これはターンの動きを応用してるだけ。前足と後ろ足で逆重心に力入れればターン出来るでしょ? それをずっと続けんの」
レオが説明した。
「いや、ターンってそもそも軸動かない?」ミラが疑問を投げかけた。
「あ〜、実生活では軸動かさずにターンする必要性なんて無いから皆もっと緩くやってるか。取り敢えず逆向きになればターンって皆呼んでるかもしんない。でも後ろ足にもしっかり重心乗せると、軸動かさずにターン出来るよ」
「そうなの? やってみよ」ミラがラグに乗った。「楽なのはレフトターンだからそっちでやってみる」
ミラは右足のつま先と左足のかかとに力を入れてみるが、バランスを崩してラグから降りてしまった。
「あ、これはムズいね。普通に立ってられない」
「面白いな〜。これは知らなかった」とフィリップ。
「スピンの応用としては、上下動を混ぜる」
レオがヘリコプターの様に、スピンしながら勢い良く高度を上げた。
「うわ! これは迫力ある!」フィリップがレオを見上げて叫んだ。
「私ターンだけでも出来なかったのに、その上の上をいったよ……」ミラが呟いた。
レオは今度は高度7メートル以上からスピンしながら勢い良く高度を下げた。
「いやもう採用でいいでしょ! シルク・ドゥ・パレット入ろう!」
フィリップが拍手をした。
「マジで!? やったー!」レオがラグを降りて両拳を突き上げた。
「文句無いよ!」ミラも拍手で迎えた。
「まだ技あるけど?」レオが2人に言った。
「見せて見せて! あと何個あんの?」フィリップが言った。
「う〜ん、4つくらい?」
「オッケー。次は何?」
「次はスパイラルって言って、スピンと似てるかな。軸がずれる普通の回転をしながら上下動するんだけど、その時にラグの角度を変える」
レオは螺旋階段を上がるように回転しながら勢い良く高度を上げた。
「これもダイナミックでいいね!」
「これ角度変えないで上昇するのはダメなの?」ミラが聞いた。
「それだとここまでスピード出せないんだよ。出すと勢いで放り投げられちゃう」
レオがラグの高度を下げて説明した。
「そういうことか〜。これは下がることも出来るの?」
「勿論! スパイラルダウンね」
レオは再度スパイラルで上昇し、回転を止めずに下降した。
「何かフラフープの動きみたい」ミラがコメントした。
「確かに! ミラ、スパイラルしながらフラフープしたらいいんじゃね?」
フィリップがアイディアを出した。
「無理でしょ〜」ミラが苦笑した。
「オッケー、あと3つ!」フィリップが急かすように言った。
「今までの4つが普通の回転系だね。ここからはちょっと違う。スクリューとフリップを混ぜることが出来るんだよ。スクリュー・フリップは、スクリューで上下逆さになった状態でフリップする」
レオがそう言ってデモンストレーションをした。
「おー! 戻って来た!」フィリップが声を上げた。
「え、何で!?」ミラが困惑した表情を見せた。
「スクリューもフリップも技を終えると、同じ方向に向いてるでしょ? でもスクリューはX軸で回転してるだけだから進む向きはずっと同じなんだよ。一方でフリップは向きが360度変わってフィニッシュするでしょ? だからフリップを半分だけやると180度だけ向きが変わるから、戻って来る」
レオが説明した。
「そういうことね!」ミラは納得した。
「じゃあこの逆の順番も出来るってこと?」フィリップが聞いた。
「そう。それがフリップ・スクリュー」レオがそう言って実演した。
「いや〜2つ混ぜると派手さが増すな〜! それに戻って来る方がアントラでやるのに向いてるよ。仮に観客席の頭上でやるとしても、こっちの方がスペース取らなくて済む」
フィリップが急にディレクターらしき発言をした。
「そっか!」レオは感心した。
「で、最後の1つは?」
「ライトニング」
「出たー! レオの十八番だね。これは試合でしょっちゅうやってるし」
「うん。敵をかわすのに便利だから、一番ラグスビーでの実用性が高い。これもセリエンテでは別の名前で、『キッカー』って呼んでた。原理はターンと一緒で、前足と後ろ足に逆重心を置くことで素早く方向を切り替える」
レオはそう説明した後、キッカーを披露した。ギザギザを鋭く方向を変えながら進んでいく」
「これは確かに敵に止められなさそう……」
ミラがレオを目で追いながら呟いた。
「観客席で観るよりかなり速く見えるよね」フィリップが言った。
「勿論上下動も混ぜれるよ」レオがキッカーをしながら上昇していった。
「うわ〜、もうバリエーションが豊富だな」
フィリップが感心するようにレオを見上げた。
「これで5分のアクト作れる? 長い分には構わないけど、最低5分は欲しい」
フィリップが地上に降り立ったレオに注文した。
「5分か。皆それくらいの長さ?」レオが聞いた。
「俺以外は皆それくらいだね。俺は10分以上やってる」
「そうだよね。フィリップだけめっちゃ長かったもん。半分はずっとリンゴ食ってたけど」レオがそう言って笑った。
「リンゴジャグリングはあれだけで5分持つからコスパが良いんだよ」
フィリップが自虐的に言った。
「私があれだけ色んな動きやって5分なのに、フィリップのリンゴと同じ長さしか無いって思うと虚しくなるからね」ミラが苦笑した。
「レオの技は全部10秒くらいで終わっちゃうだろ? サクサク進めていったら30個技やらないと5分埋まんないんだよ。30個も無いよね?」
「まぁ今日7個見せたけど、それこそ上下動混ぜたりとか、逆回転もやれば20個近くにはなると思う。スクリュー、スパイラル、スピンは逆回転あるから2倍の数になるでしょ。でも30個は流石に無いな……」
「そうかそうか。でも多分30個も要らないんだよ。1つの技が終わる度に観客から歓声が上がるはずなんだ。そしたら、せっかくラグに乗ってるんだから観客席を1周して観客を煽るといいよ。それこそラグスビーでゴール決めた時みたいに。流石に毎回やるとウザいから、大技を2,3回に1回入れて、そのタイミングで観客の声援に応える」
「ふむふむ」レオがフィリップのアドバイスを真剣に聞いた。
「あとは技をやる前の間も大事ね。真剣な顔で溜めを作ると、すごく高度なことをやろうとして集中してるんだって観客は思うんだ。だから技が決まった時に緊張感がリリースされて観客は興奮する。逆にどれだけ難しい技でもサラッとやってしまうと、観客はそんなに難しくないのかなって感じちゃう。これはもの凄く損なことだよ。技の難易度なんて素人には分からないんだから、こっちが印象を操作してあげる必要があるんだよ」
「なるほどな〜。フィリップがわざと辛そうにリンゴ食べてたのってそういうこと?」
「まぁあれはウケ狙い」フィリップが笑った。
「溜めの作り方はオリバーとマディソンのアクトを参考にするといいよ。特にマディソンはゆっくりと大技を決めるタイプのアクトだから」
「分かった。いや〜考えることが多くて大変だな……」
「最初から皆みたいな完成度目指さなくても大丈夫だよ」ミラが安心させた。「皆何度もステージに出て微修正を重ねていった結果今があるから。とにかくオープンステージで経験を積むことだね! レオのアクトは元々派手さがあるから、荒削りでも結構盛り上がると思うな」
「俺もそう思う!」フィリップが同感した。
「了解。オープンステージでどうやって出るの?」レオが聞いた。
「当日バックステージに行くだけだよ。後は適当にアクト同士で順番決めてどんどん出るだけ」
「それだけ? 出る人多過ぎて時間切れとかなんないの?」
「1日中ダラダラやるから、ならないね。むしろ出る人いなくなったら1時間空ければ何度でも出れるよ。1日中やってるって言っても皆せいぜい2時間くらいしか滞在しないから、より多くの人に見てもらうには複数回出た方がいい」
「オッケー」レオはオープンステージの敷居が思ったより低くて安心した。
「オープンステージ出てある程度構成が固まったら、ザ・ティビアスと話してどんな音楽がいいか決めよう」
「そっか音楽忘れてた! オープンステージでは音楽無いのか」
「自分で雇えば別だけど、流石にオープンステージでザ・ティビアスみたいなガチなバンド雇う人はいないね。でもパーカッション叩いてくれる人が1人でもいると大分盛り上がるのは確かだな」
「ふ〜ん」
「まず音楽は一旦忘れていいよ。よく分かんない音鳴らされても気が散るだけだから」
「分かった」
「オープンステージ出る時は教えて。観に行くから」フィリップが言った。




