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エベディルク 空飛ぶ絨毯と不老薬の物語  作者: トミフル
第2章 ヒーラー救出編
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第3話 ルネヴェイラ

「おい、マジかよ!」マットがベンチから立ち上がって頭を抱えた。

「うそ!」アスカも衝撃を隠せない様子だ。

「わざわざ自滅してくれるとはな。目障りな野郎が1人減ったぜ」

 グレゴーは満足気に言った。

 レオは返す言葉が無く、ベンチに行きウィングの選手に交代を告げた後、控室へと向かった。レオは控室で独り嫌悪感に溺れた。アスカをバンした政府、全然プレイが噛み合わないマルシオ、退場になってしまった自分。

 ——こんなにつまらないラグスビーマッチは初めてだ。

 数分もしない内にメンバーが控室に戻って来た。前半が終わったようだ。

「レオ、何で退場になったか分かるか?」ルイスがレオに尋ねた。

「何でって、ファール2回したからでしょ」レオがボソッと答えた。

「だから何でファールしたんだって」

 レオにはルイスの問いの意味が分からなかった。レオが答えないのを見てルイスは言葉を続けた。

「今日のお前のプレイは独りよがりなんだよ。チームの勝利よりも自分が目立つことばっか考えてただろ」

「——だっていきなりアスカ出れないなんて酷いだろ! 練習ではずっとアスカと合わせてきたのに」

「その言い分は分かるけど、仮にアスカが出れたとしても、ずっと出る保証はどこにも無いだろう。マルシオとも合わせれなきゃライトウィング務まらねえよ——いいか、アスカのバンはもう決まったことなんだ。どんだけ苛立とうが変わることは無い。だったら今置かれた状況でどうベストを尽くすか考えるべきだろ」

 レオは何も言い返せず歯を食いしばった。

「あんなプレーじゃチームの戦意が落ちるだけだ。退場にならなくてもそのうち交代してたぞ。ここで頭冷やしてろ」

 ルイスはそう言い放ち、全体のミーティングを始めた。アスカとマットはミーティングの内容を聞いた。ヒナは何をすればいいか分からないのか、レオの隣に座った。

「前半何対何だった?」レオがヒナに聞いた。

「3対6。あの後すぐに1点入れられた」

「まぁそうだろうな」

 ハーフタイムが終わり、皆が控室を出ていった。マットだけレオと控室に残った。

「やらかしたね、レオ」マットがそう言って苦笑した。

「うん」レオは鼻で笑った。茶化してくれるのはむしろ有り難かった。

「今日で4回目だよね、試合出るの」

「そうだな」

「最初の試合覚えてる?」

「そりゃ覚えてるよ。後半ギリギリで出て、1ゴール決めて」

「うん。あれは鳥肌立ったよ。周りのお客さんも『誰だあいつ?』って必死に目で追いかけてたし。1人だけ危険な匂いがするって感じだったね」

「俺も自分で鳥肌立ったもん。今まで生きてきた15年で味わった刺激全部合わせても足りないんじゃないかっていうくらいアドレナリン出て、めちゃくちゃハイになってた」

「そこから2回目3回目の試合は、もう既に貫禄が出てたよ。アスカと無双してね」

「2回目はフルで出れたのが嬉しかったし、とにかくアスカとプレイするのが楽しかったな。前回はもっと重いもの背負ってたよ。ヒナの為にも絶対に負けるわけにはいかなかった。勿論マットの金も懸かってたし」

「アスカ無しでこれからどうするんだろうね。別にアスカってちょっと前までは平民チームにいなかったわけだけど、今じゃもうアスカ無しの平民チームって考えられないよね」

「そうなんだよ。急にラグスビーが味気なく感じたもん、今日」

 レオとマットはその後も話し続け、気付いたらメンバーが控室に戻ってきた。

「どうだった?」マットがアスカに尋ねた。

「5対11」アスカが真顔で答えた。

「俺今日打ち上げ行く気にならないからさ、皆でどっか行かない?」

 レオがHAMLメンバーに提案した。

「アスカも行ったって気まずいだけだし、いいよ」アスカが賛成した。

「それじゃ、カフェはどう?」ヒナが候補を出した。「ヒーラーの人がやってるハーブティー専門店がヴィルマリーストリートにあるんだけど、中々行く機会が無くて」

「そんな店あるんだ!」アスカは驚いた。

「うん。ラグ乗れるようになったの最近だし、ずっとエベディルク作りでバタバタしてたから、ヴィルマリーストリート自体行ったことほとんど無いんだ」

「そっか、そうだよね。行こうよ!」

「ヒナがどこか誘うって珍しいよね。行こう行こう」マットも乗り気だ。

「まぁ俺お茶とか興味無いけど、皆がそう言うならいいよ」レオが賛成した。

 4人はラグに乗ってヴィルマリーストリートへと向かった。皆がヒナのスピードに合わせる。

「何て店?」アスカがヒナに尋ねた。

「ルネヴェイラ」

「住所分かる?」

「ごめん、覚えてない」

「まぁ降りて歩けば見つかるよね」

 4人はヴィルマリーストリートの入口に降り立って、通りを歩いた。

「僕もヴィルマリーストリートとは無縁だよ」マットが言った。

「お、じゃあ俺がアスカに次いでヴィルマリーストリートに詳しいんじゃね?」

 レオが嬉しそうに言った。

「店2つ入ったくらいで何調子乗ってんの」アスカが笑った。

「やっぱりオシャレだねここ。いいなぁ」ヒナがキョロキョロしながら言った。

「ヒナっち全然溶け込めてるよ。一番浮いてるのはレオだよね」

「このローブ着ててもダメ?」

 レオは、着ているオーダーメイドのローブを指して言った。

「何だろうね——歩き方?」アスカがレオを凝視した後に答えた。

「それ分かるかも!」ヒナは爆笑した。

「確かに。何かおかしいよね」マットもケラケラと笑った。「レオは飛んでる姿がカッコ良すぎるから、歩いてるの違和感あるんだよ」

「そうそう、そういうこと!」アスカは納得した。

「褒められてるんだかディスられてるんだか分かんねーな」

 レオは難しい顔をしながら歩き続けた。

「あった! ここだ」

 ヒナが店を指差した。「ハーブティーカフェ・ルネヴェイラ」と書かれている。ヒナがそーっと扉を開ける。

「いらっしゃいませ」30代くらいの女性が声をかけた。

「4名です」ヒナが人数を伝えた。

「はい。こちらへどうぞ」店員はHAMLを4名席へ案内した。

 店内には造花が沢山装飾されており、室内のガーデンにでも来たかのようだ。ハーブの上品な香りが店内を包みこんでいる。

 ヒナとアスカが隣同士に座り、向かい側にレオとマットが座った。

「オシャレー」アスカが店内を見て嬉しそうに手を叩いた。

「ね。うわー、いっぱい種類ある」ヒナがメニューを見て目を輝かせた。そこには10種類以上のハーブティーの名が書かれている。

「600リタ! ひゃ〜」レオは値段を見て驚いた。

「う〜ん、どれにしようかな」ヒナは悩んだ。

「どれにするも何も、俺は何が何だかさっぱり分かんないよ」

「レオ君ハーブティー飲んだことないの?」

「無いよ。基本水しか飲まないもん。ヒナ2つ選んでいいよ。好きなだけ飲んだ後に俺が残り飲むから」

「え、いいの? やったー、2つ選べる」

「アスカはローズヒップにしようかな」アスカが言った。

「僕はレモンバームで」とマット。

「よし、私も決めた」ヒナは覚悟を決めたようにそう言うと、店員を呼んだ。

「すみません——エキナセアと、ルイボス下さい」

「はい。どなたがどちら?」店員が尋ねた。

「あ、えっと——じゃあ彼がルイボスで」ヒナがあたふたと答えた。

 アスカとマットもそれぞれ注文した。

「はい。少々お待ち下さいね」店員はカウンターへ戻った。

 レオは改めて店内を見渡した。10代〜50代くらいまで、幅広い層の女性が談笑している。男性客は1人もいない。店員は1人だけだ。

「ラグスビーマッチ帰りの客がいたらどうしようと思ったけど、その心配は無さそうだな」レオが胸を撫で下ろした。

「そうだね。ラグスビーに熱狂する人がここに来る姿が想像出来ないよ」

 マットが同感した。

「アスカ、ラグスビー出れなくてこれからどうすんの?」レオが尋ねた。

「どうするも何も無いじゃん」アスカがふてくされた。

「俺アスカいないとラグスビーつまんないよ」

「今日ボロボロだったもんね。アスカがいないとレオはダメか」

 アスカがにかっと笑った。

「アスカのバンは愚策だと思う」マットが言った。「今日の観客の反応見たでしょ。次の試合はぐっと来場者減るだろうな」

「減ったって勝てればそれでいいんでしょ政府は」

「そうだけど、平民を怒らせて良いことないじゃん」

「そうだ!」レオが閃いたように言った。「観客来なければ、アスカのバン止めざるを得ないよな?」

「どういうこと?」アスカが聞いた。

「試合棄権するんだよ! 平民チームが出なきゃ、試合は無くなるだろ?」

「何それ。レオのアイディアってぶっ飛んでるよね」アスカが笑った。

「いや一理あるよそれ」マットがレオのアイディアに乗った。「ラグスビーマッチは政府の力の誇示の為にやってるんだ。それが無くなったら政府は馬鹿みたいじゃん」

「だろ? ほら」レオがアスカに言った。

「いいの? レオは試合出れなくて」アスカが聞いた。

「うん。そりゃラグスビー始めた頃は出たくて仕方なかったけど、政府チームに1度勝てたし——俺も欲深くなったってことかな」

「でもレオが出ないだけじゃダメでしょ。皆説得しないといけないんだよ?」

「うん。まぁでもアスカ取り戻す為なら皆納得してくれるさ。来週の練習の時に話してみるよ」

「アスカはこのアイディアどう思う?」マットが聞いた。

「これで本当にアスカが試合に出れるようになるなら良いけど、皆に試合棄権してってお願いすることは出来ないよ」

「アスカがお願いする必要は無いよ。僕とレオで説得するから」

「よし、決まり! やっぱマットは話が分かるな!」レオはマットの肩を掴んだ。

 店員がお茶を持ってきた。

「お待たせしました」

 4人それぞれの前にカップを置くと、ハーブティーの香りが一気に広がった。

「ありがとうございます」ヒナが早速エキナセアティーを飲んだ。「うわ〜美味しい」

「これも飲んでいいよ」レオが目の前に置かれたルイボスティーのカップを、向かい側のヒナに渡した。

「うん」ヒナはルイボスティーを飲んだ。「本当深みのある味。ルイボスティーは不老長寿のお茶って言われてるんだ」

「不老長寿って聞くとエベディルク思い出すな」レオが笑った。

「確かに! エベディルクもハーブティーっていう体だし」アスカが言った。「ここのメニューにエベディルクがあったらウケるよね」

「ヒナ、この店に売ってみたらいいんじゃない? 『1万リタです。クソまずいです』って言って」レオがそう言うと皆爆笑した。

「他は600リタなのに、1つだけ1万リタだったら確かにめっちゃ面白いね」

 マットの声だ。

「ふふふ。しかも飲んだら舌が紫になるしね。老化止められなかったらただの罰ゲームだよ」ヒナが笑った。「レオ君、ルイボスティー残り飲んでいいよ」

「オッケー」レオはヒナが口を付けた場所を避けて飲んだ。「うん、暖まるね」

「あの……」店員がHAMLのテーブルにやってきた。「さっきエベディルクの話を小耳に挟んだんだけど、老化止められるって本当なの?」

 HAMLは皆驚いてティーカップを置いた。

「あ、そうです」ヒナが答えた。「国王はあれを飲むことによって不死身でいられるんです」

「そんな……」店員は口を開けて棒立ちした。「夫が役人だからエベディルクの存在は知っていたけど、超高級ハーブティーだと思ってたのよ。城で専任のヒーラーまで雇って」

「今ではヒナが作ってるんだよ」レオがヒナを指差した。

「え、どういうこと?」

「あ、私もヒーラーなんです。ヒナって言います」ヒナがペコリとお辞儀した。

「ちょっと、ちょっと待って」店員は動揺し始めた。店の外に1度出てすぐ店内に入ると、他の客の対応や作業を少しした後HAMLのテーブルに戻った。

「今店閉めたわ。今日のお代はタダでいいから、詳しく聞かせてくれないかしら?」

「え、いいんですか!?」ヒナは驚いた。

「ありがとう! えっと名前は……」レオが言った。

「シャーロットよ」店員は答えた。

「シャーロット姉さん、ありがとう」

「2人は大丈夫?」ヒナがアスカとマットに承認を仰いだ。マットは頷いた。

「勿論。でもヒナっちこそ平気なの?」アスカが不安そうに聞いた。

「うん、平気」ヒナはそう言ってシャーロットにエベディルクのことを説明し始めた。

——エベディルクの正体、母が殺されたこと、母からの手紙を読んでエベディルクを作ったこと、薬草を買い占めたこと、政府にエベディルクを売ろうとしたら捕まったこと、レオが城に侵入して国王と直談判したこと、そして1週間前に民営化を達成したこと。レオが随時補足をした。

「これはビッグニュースだわ。ビッグニュースよ……」シャーロットは首を横に振って呟いた。「これ他に誰が知ってるの?」

「一部の平民と役人のスミスには話したかな」レオが答えた。

「そうなのね——値段は1万リタって言った?」

「1日分1万5千リタ」

「そんなに!? 超高級なのは間違い無いわね……量はどれくらいなの?」

「500ミリリットルです」ヒナが答えた。

「一口味見してみたいんだけど、千リタ分くらいだけ売ってくれることは出来ないかしら?」

「う〜ん……ちょっと多めに作れば大丈夫だと思います。でも不味いですよ?」

「でも気になるじゃない」

「分かりました。今度持ってきます」

「ありがとう——でもちょっと安心したわ。私に作れない絶品のハーブティーがこの世にあるっていうのが悔しかったのよ。ただの不味い薬って分かったから、これで胸を張って仕事出来るわ」

「はい。シャーロットさんのハーブティー本当に美味しいです。私も趣味でハーブティー作るんですけど、こんな美味しく出来ないです」ヒナが太鼓判を押した。

「嬉しいわ。ヒーラーは結構自分で作る人多いわよね。私も趣味でやる内に、薬作るよりこっちの方が楽しくなっちゃってね」

「そうなんですね。素敵だなぁ」

「ヒーラーって色んなキャリアパスがあって面白いね」アスカが言った。

「そうよ。皆最初は一般的な薬の作り方を勉強するんだけど、そこから専門化していくの」シャーロットが説明した。「より難しい薬を作る人もいれば、美容などに特化する人もいる。薬以外に派生する人だと、洗剤などのクリーニングプロダクトを専門にする人もいれば、香水やアロマキャンドルを作る人もいるわね。香水とアロマキャンドルの専門店はこの通りにあるわよ」

「あ、アスカ行ったことある! あれもヒーラーが作るんだ!」

「ヒナちゃんは今後どうしたいとかあるの?」シャーロットがヒナに話を振った。

「今はエベディルクを作るので精一杯なんですけど、美容薬にも興味があって勉強中なんです」

「そう。それも頷けるわ、お肌綺麗だもの」

「いえ、まだ若いだけです……」

「いくつなの?」

「15歳です」

「そうなの!? すごいわね……」

「おう! ヒナはすごいんだぞ」レオが自慢した。

 そこでシャーロットが他の客に呼ばれた。

「やばっ、仕事に戻らなきゃ。ごめんなさいね時間取っちゃって。ゆっくりしていって」

 シャーロットはそそくさと席を離れた。

「シャーロットさんカッコいいな〜。今日来て良かった。ありがとう皆」

 ヒナがお礼を言った。

「アスカも来て良かった! てか思ったんだけど、HAMLでこうやって店に入ったこと今まで無くない?」アスカが言った。

「リアルトの打ち上げがあるじゃん」とマット。

「あれはそうだけど、それ以外無いじゃん。屋根裏とかヒナっちの家でしか集まったこと無いよね?」

「確かに。HAMLの活動かラグスビーマッチでしか4人は集まらないね」

「でももうラグスビーマッチは出ないしさ、エベディルクのゴタゴタは終わったじゃん。もう4人で集まること無いんじゃない?」

「ちょっと寂しいね」ヒナがポツリと言った。

「12月はサタナリアがあるから、集まろうよ」マットが提案した。

「そうだね、そうしよ!」アスカは賛成した。

「サタナリアってガレシアも17日?」レオが聞いた。

「そうだよ」マットが答えた。「セリエンテってサタナリア何するの? 収穫祭だから農村にとっては重要なイベントなんじゃない?」

「そうだな。皆でご飯作って食べるよ。サタナリアくらいでしか肉食べなかったな」

「だからレオってあんなに肉美味しそうに食べるんだ」マットが納得した。

「こっちは?」

「こっちでは街中でテーブルとイスが設置されて、無料で飲み食い出来るよ」

「え、誰が食事用意するの?」

「普段飲食店やってる人。政府からお金もらうんだよ」

「じゃあマットとか飲食店以外の人は、何もせずにタダ食い出来るってこと?」

「そうだよ」

「マジで!?」

「セリエンテは違うの?」

「違うよ。皆食材持ち寄って料理するんだよ。あと家で作って持っていったり。要はただのポットラック。無料っちゃ無料かもしんないけど、農家以外の人も何かしらの形で貢献するからな」

「それはそれで素敵だね」ヒナだ。

「素敵って言っても、ほぼ仕事だからな。手伝わなきゃ食わせてもらえないし」

「でもガレシアの場合は政府が税金使って飲食代負担するわけだから、実質同じことだよね」マットが言った。

「そういうことか——てかさ、俺税金なんて払ったことないよ」レオが首を傾げた。

「税金は土地税だから、直接払うのは土地のオーナーだけだね。その分が家賃に上乗せされてるから、賃貸の人は間接的に払ってるよ」

「道理で家賃が高いわけだ」

「うん。地主って金持ちになりやすいから、そうならないようにコントロールしてるんだと思う。実際ガレシアで土地持っても大して儲からないから、マイホーム以外を持ってる人はほとんどいないんじゃないかな」

「ふーん。まぁ俺は家賃ゼロだから、ガレシアのサタナリアでは本当の意味でタダ食い出来るってことだな!」レオが笑った。

「レオ、家賃少しは負担してあげた方がいいんじゃない?」アスカが眉をひそめた。

「言ったよ、ロゼーラおばちゃんに。でも要らないって言われた」

「ロゼーラさん優しいからね。そう言うのも分かるな」とヒナ。

「あとギフト交換もしようよ」マットが話をサタナリアに戻した。

「うん、しよしよ! この4人で」アスカが賛同した。

「何の話?」レオはきょとんとした。

「サタナリアのギフトだよ。仲の良い人にプレゼントするんだ。セリエンテでは無いの?」マットが言った。

「無いよ。ギフトなんて何あげんの?『トマトありがとう。代わりに人参あげます』なんてやったって、そんなの普段からしてることだし」レオが肩をすくめた。

「そうか」マットが苦笑した。

「別に高価なものじゃなくていいよ」アスカが貧乏性のレオを安心させようとした。「500リタくらいのものでいいよね?」ヒナとマットに確認した。

「うん、それくらいでいいと思う」ヒナが頷いた。

「じゃあ皆何欲しいの?」レオが3人に尋ねた。

「それ言っちゃったらギフト交換の意味ないでしょ。皆自分のお金で好きなもの買えばお終いなんだから。サプライズさせることに意味があるんだよ」

 アスカが根気強くレオに教えてあげた。

「マジか、こういうの苦手なんだよな……」レオはどんよりとした。

「まぁあまり重く考えなくていいよ」マットがレオの肩を叩き、その後皆に聞いた。

「そろそろ行く?」

「うん」ヒナが答え、皆席を立った。

「シャーロットさん、茶葉売ってるんですか?」

 ヒナはカウンターで作業をしてるシャーロットに尋ねた。

「売ってるわよ。容器持ってきてくれたら量り売りするわ」シャーロットは答えた。

「そっかぁ」ヒナは自分のリュックを触った。「瓶は持ってるんですけど濡れてるので、今度空瓶持って来ます」

「ええ。待ってるわ」シャーロットが笑顔で言った。

「ヒナ、何で瓶持ってんの?」レオが尋ねた。

「今日救護係だから、水入れる瓶持って来たんだ。タオル濡らしたり色々と使うから」

 ヒナが答えた。

「そういうことか」

「レオ、この前の試合ほとんどグッタリしてて見てなかったと思うけど、ヒナすごかったよ。薬色々使い分けてさ、手が高速で動いてた」

 マットがヒナの活躍ぶりを褒めた。

「そうだったんだ——じゃあやっぱ『すごい=速い』じゃん」レオが満足気に言った。

「何でそうなるの〜」ヒナが呆れて笑った。

「何の話?」アスカが尋ねた。

「レオ君ね、すごいヒーラーの定義が『鍋を高速でかき混ぜられる人』だと思ったの」

 ヒナが以前の会話を思い出した。

「おかしくないですか、シャーロットさん?」

「その発想は面白いわね」シャーロットは笑った。「でも一理あるわよ。作業のスピードは大事じゃない。手速く作業すればその分多くの薬を作れるわけだから」

「うう……」ヒナは先輩ヒーラーに何も言えず、少し悔しがった。

 HAMLはシャーロットに挨拶をし店を出た。家が同じ方角のレオ、ヒナ、マットは、アスカとその場で別れ、一緒に帰った。

 レオは屋根裏に着いて今日の出来事を振り返った。途中まではアスカのバンのことで頭がいっぱいだったが、それに加えてサタナリアのギフトを考えなければならない。2つの悩みが同じくらいレオの脳内を支配した。

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