トミフルのツリーハウス(制作秘話)
トミフルのツリーハウスへようこそ。いきなり家の中にテレポートされたのでびっくりしたでしょう。この家はガレシア王国のどこかに存在します。どこかって? そりゃ教えられませんよ。僕はいつもここで執筆活動をしてます。ガレシア王国は架空の世界なのに、何故作者がガレシア王国にいるかって? そりゃ僕はこの世界の創造主だからですよ。神が自分の作った世界にいたって何も不思議ではないでしょう。
取り敢えずハーブティーを淹れたので、そこのソファーに座って下さい——違う違う、そっちの緑色のは僕のソファーね。うん、そっちのベージュのソファーがあなた用です。ゲストなんだから好きなソファーに座らせろって? 仕方無いですね。じゃあ緑色のソファーをお譲りしますよ。
それじゃ今日はエベディルクの第一章の制作秘話をお話します。この家に招待されたということは、一章を読破されたということですよね。本当に感謝でいっぱいです。まだ読み終わってないのにここに来てしまったのでは大変ですよ。ネタバレの嵐ですから。
これ言うと舐められそうで怖いんですけど、エベディルクは僕が書いた初めての小説なんです。公開した小説じゃないですよ、初めて書いた小説です。ちょっとした物語すら書いたことありません。じゃあ何で大人になっていきなり小説を書いたかと言うと、きっかけはハリー・ポッターなんです。はい、小説の金字塔です。昔読んでめちゃくちゃハマったんですよね。2週間ぶっ通しで全巻読破した記憶があります。
それから普通に人生歩んでたわけですが、最近10年振りくらいに読み直したんですよ。そしたらまぁ面白い! あまりに感激したんで、自分もこんな小説を書いてみたいって思ったんです。小説の書き方なんて知らなかったですけど、取り敢えずどんなストーリーが良いかブレインストーミングしました。
■何故絨毯?
当然ハリー・ポッターに相当影響を受けてるので、スタート地点はそこです。ハリー・ポッターは好きな要素が沢山ありますが、特にクィディッチは天才的な発明だなと思います。スポーツを作っちゃうんですよ? あれはズルい。僕はスポーツ大好きなので、自分のスポーツを作ろうと思い立ちました。
でも箒に乗っちゃったら完全にパクリじゃないですか? じゃあ何にしようと考えて絨毯にしたわけです。魔法界のもう一つの乗り物ですね。でも絨毯ってめちゃくちゃマイナーで、アラジン以外で使われてるのを知らなかったです。映画をリサーチしましたが、何も出てきませんでした。
アラジンでは絨毯自身に意志があって、勝手に運んでくれますよね。それではダメなので、自分で操る道具にしなければいけません。じゃあ絨毯ってどうやって操作するの?っていう疑問が当然湧きました。そこのメカニズムはちゃんと作りたかったんですよ。
絨毯に乗ってスポーツをするわけですから、座るのはナンセンス。立ち乗りの一択ですが、問題はどう立つかですよね。考えてみたら絨毯は平たいので、サーフボードやスケートボードのような物だと気付いたんです。じゃあ立ち方はそれで良いとして、どうやって操縦するんだという話ですよね。慣性の法則で滑るスケートボードと違って、空飛ぶ絨毯は縦横無尽に動けないといけないわけです。なので絨毯——つまりラグの操作方法を考えました。結局全ては一章で説明出来てません。量が膨大なので、全部説明しても仕方無いと思ったからです。二章以降で少しずつラグのメカニズムを解説していきます。
■ラグスビーの由来
ラグの乗り方が決まったところで、次はどういうスポーツにするかです。これは割とすんなりと、フリスビーを使うことに決めました。僕はアルティメットフリスビーを少しやっていたので、フリスビーが大好きなんです。ラグスビーはアルティメットフリスビーのルールを元に作られています。マイナースポーツなので知らない人も多いですよね。というよりフリスビーを使ったプロスポーツって無いですよね。ディスクゴルフはゴルフと比べて超マイナーですし、アルティメットもアメフトやラグビーの影に隠れてます。
でもフリスビーって本当に楽しいんですよ! 色んな投げ方があってエキサイティングだし、キャッチするのは投げるのと同じくらい楽しい。それに、フリスビーさえあれば他に道具は要りません。これも決め手です。ガレシア王国は現代みたいに超豊かではないので、簡素なスポーツでなければなりません。ラグスビーはポールこそ立てないといけませんが、それだけです。選手が用意するはラグとフリスビーだけ。簡素ですね。
ガレシアの世界は時計こそありますがタイマーなんて物はありません。なのでラグスビーは時間の計測が必要の無いスポーツです。何時間かかろうが11点先取です。結果的にこれがドラマチックなストーリーを作る上で役立ちました。現代のフィールドスポーツはほとんど時間制ですよね。サッカーもバスケットボールも。終わる時間が見えてる方がビジネス上都合が良いんでしょうが、どうしても最後時間潰しが生まれる可能性があります。どれだけ点差が開いてても最後まで結果が分からない方がエキサイティングじゃないですか。野球やネットスポーツはそうですよね。
■魔法は2つだけ
スポーツが出来たのは良いですが、スポーツだけを書くつもりはありませんでした。それだけで楽しい物語にする自信が無かったですし、ハリー・ポッターみたいに色んなことをしたかったからです。となるとラグ以外の魔法を考えなくてはなりません。これは苦戦しました。杖を振ってスペルを繰り出すのは流石にパクリなので使えません。それ以外にも魔法の使い方は色々あるでしょうが、そもそも論として魔法でアクションをしたいのかという疑問が湧きました。というよりアクション自体を書ける気がしなかったんです。
普通に考えて小説はアクションを書くには不適切な媒体です。百聞は一見にしかずで、映像だったら一発で分かることが文章だと全然分かりません。剣をどういう風に振ったかなんて言われてもピンと来ないです。ハリー・ポッターはアクションがふんだんに盛り込まれていますが、魅力はむしろミステリーの部分だと思っています。
そんなことを悶々と考えながら色んな題材を研究していたのですが、その中で僕を答えに導いてくれた作品があります。それが「魔女の宅急便」です。あれを読んだら、一気に小説を書くハードルが下がりました。「あ、これだけでいいの?」って思ったんです。使える魔法が、箒に乗ることとくしゃみ止めの薬を作ることだけなんですよ? しかも主人公のキキは薬すら作れないという。何と単純な魔法システムなんだと衝撃を受けました。
じゃあ魔法は薬だけにしたらどうかと思ったんです。小説のアイディアを元々色々出していて、その中に「不老不死になる薬が発明される」というのがあったんです。これをSFの物語じゃなく、ファンタジーの世界での魔法薬という扱いにしようと決めました。
というわけでエベディルクの世界は、ラグと魔法薬っていう2つの魔法によって形成されることになりました。それ以外にも何か足そうか考えてみたんですけど、入る場所がありませんでした。つまりこの2つで充分だったんです。
■人は空を飛びたい
空を飛ぶってやっぱり強力な題材じゃないですか。ジブリ映画なんてほとんど空飛んでますし、ハリー・ポッターやバック・トゥ・ザ・フューチャーでは空飛ぶ車が出て来ます。何でか考えてみたんですけど、単純に今でも個人が気軽に空を飛ぶことは出来ないからだと思います。これだけ技術が進歩して、情報の伝達は100年前では考えられない域まで来てますよね。地球の裏側にいる人に動画を一瞬で送れちゃうんですよ? そんな時代なのにまだ空を飛べない!
だから、ラグだけで独自の世界観を作ることが出来たし、書くことが山程あるんですよ。移動手段って文明の中心じゃないですか。馬と車の世界では何もかもが違いますよね。
ラグを一体どういう乗り物にしようか考えた時に、重視したのは「便利さ」じゃないんですよ。「クールさ」です。スノーボードもサーフィンもスケートボードもイケてる若者の遊びですよね。ラグも同じようにクールな乗り物にしたかった。だから、ごく一部の人間しか乗れないんですよ。しかも危ないんです。箒のように両手で掴まってるわけじゃありませんから、ふらっとバランス崩したら落下します。
人も基本1人しか乗れません。ラグがタクシーのように使われる世界にはしたくなかったんです。それじゃクールじゃない。他の人を乗せるには、抱き合わないといけない。バイクや自転車の2人乗りと同じノリですね。正面向いて抱き合うので、ラグの2人乗りの方がより密接です。
ラグが世の中に存在したらすごくワクワクするだろうなと思ってます。僕にとってラグは憧れの乗り物ですね。
■冒険しない理由
世界観が出来たところで、実際どういうストーリーにするかですよね。序盤は魔女の宅急便をパクらせてもらいました。成人になった主人公が親元を離れて町(王国)に引っ越し、パン屋 (リアルト)に居候し、宅急便の仕事をする。あ、パクリだと気付いてたって? 参ったな〜。じゃあご褒美あげますよ。ちょっと待ってて下さい——はい、ミミベーカリーのバゲットとロゼーラのフムスです。そうです、洞窟でレオとヒナが食べたディナーと同じメニューですよ。
序盤は魔女の宅急便で良かったんですけど、全体的にはもっと壮大な物語にしたかったんです。僕が好きな物語を洗い出してみたら、やっぱり悪者をやっつける話が好きだと気付きました。選択肢は2つあります。1人の敵を倒すか、色んな敵を倒すか。前者はハリー・ポッター、梨泰院クラス、チャングムの誓い、ハンガー・ゲームなどですね。後者はワンピース、指輪物語など冒険系全般です。カテゴライズ難しいですけどね。ハンガー・ゲームや指輪物語はどっちとも言える気がします。
冒険系は永遠と話を作れるので長編に向いてますが、問題がありました。マットとヒナは冒険出来ないんですよ。2人共ラグに乗れるので冒険出来ますけど、ラグ職人とヒーラーは冒険に向いてる職業ではないので。それに、僕は冒険しないっていうのは強みだと思うんですよ。一つの場所をどんどん詳細に作り込むことが出来るじゃないですか。ハリー・ポッターのホグワーツやホグスミード村が正にそうですよね。何度も何度出て来て、そこで色んなドラマが生まれる。
一方ワンピースはどんどん島を転々とするので、せっかく作った世界とおさらばしないといけない。僕にはとってもじゃないけど出来る気がしなかったんです。せっかくミミベーカリーを作ったのに、冒険したらまたパン屋作るの?って思って萎えました。
というわけで、冒険しないで1人の敵を倒すという方針に決まったわけです。これはこれでネタ切れの心配がありますが、十章くらいのアイディアはありますのでご心配無く。それにガレシア王国を全く出ないわけじゃないですよ。ハリー・ポッターがホグワーツを起点にしつつ色んな所にミニ冒険するのと同じように、レオもガレシア王国を起点として色んな所に行く予定です。
■男女2、2のグループ
エベディルクではレオを主人公とし、マット、ヒナ、アスカが準主役です。僕の感覚でしかないんですけど、男2人女1人のパターンが多い気がするんですよ。ハリー・ポッター、ハンガー・ゲーム、ザ・ギバー、約束のネバーランドなど。逆は思いつかないです。でもやっぱり女の子は2人いた方がバランスが良いですよね。ハリー・ポッターは一時期男女3、3になるんですけど、あれがもの凄く好きなんです。かと言って6人にしてしまうと、ずっとそれぞれ役目を作らないといけなくてしんどいなと思い、4人にしました。
レオの次に決まったキャラはマットとヒナです。ラグと魔法薬という、この世界の2つの魔法を操る人間なので、当然ながら重要人物です。もう一人の女の子をどうしようかと悩んだんですが、アスカにもラグスビーをさせることにしました。普通の世界では女子が男子にスポーツで敵うというのは非常に稀です。でもハリー・ポッターではバリバリ女子選手がクィディッチで活躍してるので、まぁいいだろうということで採用しました。
アスカに仕事を何させようかも最初は不透明でしたが、結局皆の手伝いをすることにしました。という風にアスカは穴埋め的に生まれたキャラなんですが、いざ登場させてみたらまぁキャラが濃い。4人の中で一番最後に登場するにも関わらず、一気に全面に出て来ます。ちょっとあまりにも最強キャラにしてしまったので、自分を「アスカ」と呼ばせることで幼稚さを出してます。
■歴史の伝え方
エベディルクは長い歴史のある壮大な物語にしたかったんです。ということはその歴史を何らかの方法でレオが知らなければならない。そこで僕はナターシャというキャラを思い付きました。長寿あるいは不死身のキャラというのは歴史を語ることが出来る便利ツールですよね——指輪物語のエルフ、ハリー・ポッターの幽霊、スター・ウォーズのヨーダなど。でも皆おっさんじゃないですか。それじゃ色気が無いし、エベディルクを飲んでるおっさんは既に国王がいるわけです。だから対照的なキャラとしてナターシャを作りました。歴史を語る996歳の女の子。唯一無二の存在ですね。僕のお気に入りキャラの1人です。
長寿キャラがいるのは歴史を語るだけが理由ではないでしょう。不老不死っていうのは人間の強い願望としてあります。今世界中でアンチエイジングの研究が行われているので、僕が生きてるうちに不老不死の薬が出来るかもしれないって思ってるんですよ。そうなったら世の中はどうなってしまうんだろう。それが本作のテーマの一つです。
■二章
それじゃ二章の話をします。何と全40話です。文字数で言うと一章の倍以上あります。ここから更に世界が広がりますので、是非読んでみて下さい。読み終わったらまたツリーハウスに招待します。質問があったらどんどん聞いて下さいね。
それではさようなら——この家からどうやって出るかって? はしごも何も無いので、ラグに乗れないと降りれないですよ。ジャンプしてみます? 嫌ですよね。2人乗りしてくれって? そもそもね、あなたにガレシア王国をウロウロされちゃ困るんですよ。せっかく書いたストーリーが崩壊してしまうじゃないですか。ヒナの家に押しかけるとか止めて下さいよ本当に。僕がテレポートで元の世界に送ってあげますので。それじゃまた次回!




