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第14話 打ち上げ

 大歓声に包まれる会場。

 国王は憤慨した様子で護衛に八つ当たりしながらVIP席を去った。レオはフィールドを1周し、観客にフリスビーを突き上げ声援に応えた。ミミベーカリーのミミやヘアサロン・ラグランジェの2人、そしてギルドのドンテの姿も見える。

「レオ、おめぇやるじゃねえか!」

 ドンテがレオに向かって叫んだ。

 雲が晴れ、まるでレオを祝福するかのように光が差し込んできた。チームメンバーは各々《おのおの》観客の声援に応じた後、ベンチへ舞い降りた。

「レオ、やったよ!」

 アスカがレオを思い切り抱きしめた。HAML(ハムル)の4人はそれぞれと熱いハグをした。

 一通りHAMLのハグが終わった後に、ルイスがレオに抱きついた。ルイスは泣いている。

「俺ずっとこの日夢見てやってきたんだよ!——13歳からずっとプレイしてきたけど、上手い奴はどんどんペルフガになってさぁ!——一緒に頑張ってきたと思ったら次のマッチで敵になっててさぁ!——今日も半分ペルフガだったしよぉ!——それで誰も信じれなくなって人と距離取るようになっちまって——でもお前を信じて良かったよ! やっと一軍に勝てた!」

 ルイスは泣きながら声を絞り出した。レオはこんな感情的なルイスを初めて見て、心が突き動かされた。

「アスカ、最初信じてあげられなくてごめんな! お前は最高のウィングだよ!」

 ルイスが今度はアスカを抱きしめた。

「ちょっと止めてよ……いつものクールなルイスはどこ行ったの……」

 アスカはもらい泣きしている。

「キャプテンがいなかったら勝ってねーよ」レオがルイスに笑顔で言った。

「うん!」アスカが元気良く頷いた。

「後半の作戦が見事に的中したもんな! しびれたよ!」

 マットが興奮気味にルイスを称賛した。

 チームメンバーも皆ルイスを讃え、気付いたらルイスを皆が輪で囲み、ルイスコールをしていた。

「ルイス! ルイス! ルイス! ルイス!」

「よし、リアルト行くぞ! いつもは打ち上げ&反省会だけど、今日はただの打ち上げだ!」

 ルイスが妙に元気な声を響かせると、皆笑った。

「あ、待って。レオ君とアスカちゃんは休ませてあげて。私の家でもっとしっかり看護したいから」

 ヒナが浮かれるルイスに水を差した。

「あ、そうだよな。ごめん。今日の本当のMVPはヒナだな!」

 ルイスはヒナを讃え拍手をし、皆も続いた。

「ヒナっちのおかげだよ!」アスカが改めてヒナとハグをした。

「ヒナ本当にありがとな!」

 レオはまだヒナにちゃんと礼を言っていないのを思い出し、感謝を伝えた。

 こうして試合は平民チームの歴史的な勝利で幕を閉じた。

 試合後レオとアスカはヒナの家に行き、2階でヒナの看護を受けた。

 5時間後レオは目を覚ました。下でアスカとヒナがおしゃべりをしている声が聞こえる。

 1階へ降りるとヒナが真っ先に気付いた。

「あ、レオ君起きた?」

「今何時?」

「21時半」

「もうそんな時間? まだ打ち上げやってんのかな」

「やってんじゃない?」アスカが答えた。

 レオは打ち上げに行きたい気持ちでいっぱいだったが、強烈な空腹感に襲われた。

「昼から何も食ってないから腹減ったな……」

「スープあるけど、飲む?」

 ヒナが大きなテーブルにある鍋を指差した。前来た時はここで薬を作っていたが、キッチン兼用らしい。

「マジ? 良い匂いするな。じゃ、もらう!」

 ヒナはスープを深皿によそい、スライスしたパン・ド・カンパーニュを隣の皿に置いた。

「いただきます!」

 レオは空腹の胃を刺激し過ぎないように、スープをゆっくり飲んだ。トマトベースのスープには、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、セロリ、ひよこ豆が入っている。ローズマリーを筆頭に数多くのハーブが心地良い香りを演出している。

「旨い! マジで旨い!」

「美味しいよね! アスカもさっき飲んだ」

「何か力がみなぎるなー。ヒナ、これ店に出せるよ!」

「ふふふ、ありがとう。スープは薬作るのと感覚似てるから、よく作るんだ」

「そうかー。ハーブも沢山入ってるしな。何か俺の普段の食生活がいかに乏しいか実感したよ。昼はケバブ食ったし、今日1日やたら豪華だな」

 レオはスープとパン・ド・カンパーニュをペロリと平らげた。

「よし、腹ごしらえは済んだし、打ち上げ行こうぜ」

 3人はリアルトに歩いて向かった。短い距離ではあったが、道行く沢山の人から祝福の言葉を受けた。どうやら街中がお祭りムードのようだ。

 リアルトへ入ると中は人でいっぱいだった。皆レオとアスカを見るや否や歓声を上げた。

「やっと来たな本日の主役!」

 瞬く間にレオとアスカの周りには人だかりが出来た。

 レオの周りには、いつも打ち上げに来るコアな男性サポーターが集まった。見たことがない若い女性にも沢山声をかけられる。

 一方アスカは、興奮した様子の男性陣に囲まれた。

 チームメンバーは流石に疲れたのか一部のみ残っている。と思いきや、一旦家で休憩して再度参戦する者もいるようだ。

 ロゼーラ1人では客を捌き切れず、ドンテと常連客が手伝いをしていた。

 レオとアスカは約2時間どんちゃん騒ぎにまみれた。その後レオは何とかHAMLメンバーを屋根裏に召集した。

「いや〜やっと抜け出せた」レオは酒を飲んでいないのに顔が真っ赤だ。

「もう近づくことすら出来なかったから遠目に見てたよ」マットが呆れる様に笑った。

「ごめんヒナっち、置いてきぼりにしちゃった」

「ううん大丈夫。私も色んな人に声かけられてね、もう1つ薬屋へ薬卸せることになったの」

 ヒナが嬉しそうにアスカに報告した。

「マジ、やば!」

「そりゃそうだよ。あんな大勢の前でMCサントスに褒められたんだから」

 マットは驚いていないようだ。

「マットはいつからいたの?」レオが尋ねた。

「最初からずっといたよ。レオ達が来た頃には落ち着いてたけど、最初は僕もすごくて。お客さんがチームメンバーにレオとアスカのラグのこと聞いててさ。それで『この人が全部作ったんだ』って僕の方指すから、皆どんどん僕に声かけて来て」

「スゲー!」

「『同じもの作ってくれ』って言われたんだけど、あれは乗る人の体重に合わせて作ってるって言ったら、『体重教えるから作ってくれ』って」

「人の体重聞く天才じゃん、マット」アスカが笑った。「いいじゃん、作ろうよ。受注生産なんだからちゃんと頭金半額頂かなきゃダメだよ?」

「ん? あ、そっか」

「まさかもう作るって言ってないよね?」

「言っちゃったよ……」

「何してんの!? 完成してからやっぱ要りませんでしたって言われたらどうすんのよ?」

「確かに……」

「しかも今日話したのは酔っ払いでしょ? 試合観たばっかで興奮してるからテキトーに言ってるだけかもしんないし。てか何リタで作るって言ったの?」

「7万リタ」

「は? 安すぎでしょ!」

「だって大きさ変えるだけだから、レギュラーモデルに1万リタ上乗せすればいいかなって……」

「違う、そこじゃないのお客さんが求めてるのは! 今日歴史的な勝利を飾った平民チームの選手が使ってるオシャレなラグに乗りたいの! 10万リタくらいしなきゃダメだよ」

「え? 高過ぎるよ!」

「こーゆーのはレアだから価値があるんだよ。皆ダサい普通のラグ使ってる中、自分だけオシャレなラグ乗るから気分がいいんじゃん。皆フェニックス柄のラグ乗ってたら何も特別感無いでしょ」

「そういうもんかぁ」マットはポカンと言った。

「お前ら面白いなー。言い合ってるのに、聞いてて寧ろ心地良い」

 レオが愉快そうに笑った。ヒナもクスクスと笑っている。

「ああ、そうそう。まだスポーツベッティングについて話してなかったね」

 マットが咳払いをして話を切り出した。

「そうだ! 勝ったの嬉し過ぎてすっかり忘れてた!」レオがハッとした。

「今日僕は15万賭けたんだけど——うん、勝った額が約60万リタ」

 マットが冷静に報告すると、皆目を丸くした。

「60万って俺半年働かないと手に入んないぞ!」

「普段はオッズ20倍くらいなんだけど、今回はたったの4倍だった。前回がかなり僅差だったから、いつも政府側に賭けてる役人がビビったんだと思う。あと単純に僕が大金を賭けたからオッズが薄まったっていうのもあるんだけど」

「いや~4倍でもスゲーよ! あとはエベディルクの完成を待つだけだな!」

 この時既に日が変わっていたが、その後も4人はしばらく語り合った。

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