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ルルシャンの家と、黒い屋根の小屋が見える丘。


 新たに作られた石碑の前で、包帯塗れのルルシャンは祈りを捧げていた。


「よし、と」


 ルルシャンは立ち上がり、俺様に向かい立つ。

 その目は大きく泣き腫らしていた。


 そして、彼女は視線を俺様の腕と足に落とす。


 皮膚と鋼がパッチワークのように紡ぎ合っている歪な体。


 これが、今の俺様の姿だった。


「私より軽傷そうで良かったわね」


「ハァ? テメェの百倍重症だっつうの。致命傷で生きているのは俺様だからなんだよ」


 全身全霊の一撃を放ち、体が崩壊した俺様は、皮膚や骨の大部分を鋼鉄に変えて生き延びていた。


 異能【鋼鉄再構成】。大猪に宿っていたソレが俺様の命を救った。


 恐らくだが、俺様の異能は有効期限切れで、全世界に散らばったが、その人物の死に関連した場合、その異能が俺様に帰ってくるということなのだろう。


 まだ実例が二つなので確かでは無いが。


 悪態に悪態で返した俺様は、ルルシャンと並び、墓から背を向け歩き出す。


「良かったの? 守護神に戻らなくて」


 尋ねられたのは、大猪を倒した報酬について。

 元守護神といえど、応募基準はしっかりと満たしており、大猪も倒したことから、司会の男や王から守護神に戻ってくれと懇願されたが、断った。


 その理由は。


「俺様は、誰かさんの召使だからな。その誰かさんを守ってたら、国なんて守ってる暇なんざねぇんだよ」


「あはは。なにそれ」


 ルルシャンはお腹を抱えて笑う。


「なら、手始めにドラゴンでも狩りに行くわよ」


「……どうしてそうなんだよ」


「なんでってそりゃ、せっかく守ってもらえるんだったら、強いモンスターと戦わないと勿体なでしょ。ちゃん私を守ってね、オジサン。いえリャクシェロン様とお呼びしたらいいのかしら?」


「その名前は今の俺様には似合わねぇ。いっちょ、カッコいい名前でも付けてくれや」


「えっ、私が考えるの? んじゃ——」


 守護神を捨てた俺様は新たな名前を携え、銀髪の少女と旅をする。


 その道行きにどんな困難が待ち受けていようとも、彼女を守り切る。


 きっと、この志は異能を失っても揺らぐことは無い。




『|異能《勇敢(サーロス・ハート)を獲得しました』


『有効期限は1000年です』


ご覧いただきましてありがとうございます。

短編の気分で書いてたんですけど、長くなったので分割しました。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


至らぬ部分もあるとは思いますが、評価や感想を頂けましたら、嬉しいです。

他にも作品をアップしてますので、よろしければぜひ。

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