真の勇者
バリウス達がこの場所に来た事で、一触即発状態となってしまった。風の音も強くなり、草木も揺れ始める。
バリウス達はズタボロの状態となっていて、特に彼は全身包帯まみれ。
ファンク達は無傷だが、バリウス達を見て警戒している。するとアミがプルプルと震えだした。
「アミ?」
シェリアが心配そうにアミの様子を見ると、彼女はブフォッと吹き出してしまった。
「アハハハハ!これが勇者!?全身包帯まみれでバカじゃないの!?ハハハハハ!」
アミは我慢できず大笑いしてしまい、地面に拳を当てながら笑い転げてしまった。
そりゃ勇者のあの様な無様な姿を見てみたら、笑ってしまうのも無理ないからだ。
その様子にフローラ達も感染ってしまい、次々と吹き出して笑ってしまう。
「ヒャハハハ!く、苦しい!」
「もう我慢できません!ハハハハハ!」
「これが勇者!?本当の馬鹿にしか見えないわ!ヒヒヒヒヒ!」
「天才のバカとしか言えませんよ!ハハハハハ!」
アミ達は目に涙を浮かべながら笑ってしまい、それにバリウスの怒りがエスカレートするのも無理なかった。
「笑うな!好きでこんな格好になった理由じゃないんだぞ!」
「その割には不幸に遭っているじゃない。アンタにはお似合いよ!」
「巫山戯るな!こんな姿になるまでどんなに苦労した事が分かるのか?」
「分からないわよ」
バリウスの叫びにシェリアは寝転んで鼻をほじりまくる。この舐めた態度に彼の怒りは有頂天に達し、包帯を引き千切ってしまった。
「うおっ!怒りでまさかの復活とは!」
「これは予想外だな!」
この光景にボルスとオットーが驚く中、包帯を全て引き千切ったバリウスはズンズンとシェリアに接近しようとする。
おまけに傷もすっかりなくなり体力も回復していたのだ。
「あっ、笑い過ぎたかも……」
「私も止まった」
「遅すぎるだろ!というより、初対面の人を笑う事は失礼だぞ!」
アミ達はすっかり笑いが止まっていて、バリウスは彼女達に対してツッコミを入れる。
そんな中、バリウスはシェリアの目の前に立ち、彼女はすぐに起き上がって前を向く。
「シェリア。お前、パーティーを抜けてから随分舐めた口を聞けるようになったな。俺が勇者だという事を分かっているのか?」
「アンタは勇者なんかじゃないからね。じゃあ、ファンクの勇気の盾を装着してみたら?」
「それは因みに僕達のだけどね。まあ、装着してみるとするか」
シェリアの提案にバリウスは怒りを収めてその提案を承諾。同時にファンクから勇気の盾を受け取った。
「まあ、装着するのは当たり前……」
バリウスが勇気の盾を装着したその時、盾から突然電流が流れてしまい、彼の身体に流れ込んだ。
「アバババババ!」
バリウスが悲鳴を上げながら痺れまくり、そのまま倒れてしまう。すると盾が自動的に外れてしまい、ファンクがそれを拾う。
「ど、どういう事だ……勇者である僕がここまで痺れてしまうなんて……」
バリウスは電流から解放されたが、痺れがまだ残っていて立つ事に苦労している。
それよりも勇気の盾を装着するとまさかの電流が流れた事に衝撃を隠せなかった。
本来、勇気の盾は勇者かそれ以上の者でないと装着できず、それ以外の者が装着すると電流が流れるだけでなく、本来の強さを発揮できない欠陥品になってしまう恐ろしい盾と言われている。
しかし、バリウスは勇者なのに痺れてしまい、ファンクは無事に装着できている。これはどう考えてもおかしいとしか思えないのも無理はない。
「この盾は勇者かそれ以上の者ではないと装着できないのは分かっているけど、あなたが痺れたのは原因がある。それは……あなたが真の勇者ではないという事なのよ!」
「何だと!?」
シェリアはバリウスを指さしながら宣言し、彼等は驚きを隠せずにいた。
「本来勇者は弱きを助け強きを挫く姿勢を保たなければならない。しかし、あなたは仲間を存分雑に扱い、調子に乗っている。そして、他人への配慮もない!この盾はその様な事まで見通せる以上、あなたには勇者の資格なんてないんだから!」
「シェリア……!」
シェリアからの指摘にバリウスは怒りで彼女を睨みつける。
するとシェリアはファンクの隣に移動する。
「それに比べてファンクは弱き人々を助け、優しい心を持っている。仲間思いで私達を大切にしてくれている。勇気の盾が勇者でない彼を選んだのは偶然なんかじゃない。ファンクこそ……真の勇者なのよ!」
「俺が……勇者……」
シェリアの宣言にファンクは驚きを隠せず、アミ達も同様の表情をしていた。
勇気の盾によって真の勇者である事を証明された事は驚きの展開になるのも無理なかった。
「ファンクが……真の勇者……」
「私達、彼についてきて正解だったのかも……」
「私も……そう思う……」
「私もです……」
「私も……」
アミ達が勇者であるファンクの姿を尊敬し、腰を振りながらソワソワしてしまう。しかもその表情は顔を赤くして照れ臭くなっているのだ。
「何を想像しているんだ?」
ファンクがアミ達に質問するが、彼女達は一斉に首を横に向く。
「おい!どういう意味だ!」
ファンクがアミ達の行動に叫ぶ中、バリウスは信じられない表情でプルプル身体を震わせていた。
自身が勇者であるにも関わらず、勇気の盾に拒まれただけでなく、ファンクが自分を差し置いて真の勇者である事実に悔しさと怒りが沸き上がっているのだ。
「なんだよそれ……じゃあ、僕は……勇者じゃないと……いう事なのか……」
「そう言う事よ。どうしても認められないのなら……勝負してみる?」
シェリアがバリウスに対して挑発をした途端、彼はすぐに彼女に視線を移す。
「良いだろう。丁度アンタとは決着を着けたかった。やるからには……容赦なく殺す!」
バリウスの宣言と同時に、ボルス、オットーも戦闘態勢に入る。
バリウスはロングソードと盾、ボルスは格闘の構え、オットーは斧と盾を構えているのだ。
「そっちが三人なら……こっちは私、ファンク、フローラで行かせて貰うわ。フローラ、いきなりだけど大丈夫?」
「ええ。準備はできているわ!」
フローラは大剣と大きい盾を構え、シェリアは格闘術の態勢に入る。そしてファンクは剣と勇気の盾を構えてバリウス達を睨みつける。
「バリウス……勇気の盾はアンタを認められなかった以上、罪の自覚をしておいた方が良い。今まで俺にしでかした罪をその場で償ってもらうからな」
「小賢しい!お前なんかに真の勇者を渡してたまるか!勇者はこの僕で十分だ!」
「そうか……とことん救えないのなら……二度と動けなくするのみだ!」
ファンクが叫んだと同時に戦いが始まりを告げられる。
ファンクはバリウス、シェリアはボルス、フローラはオットーという組み合わせとなるそれぞれの一騎打ちとなったのだ。
「私達はどうするの?」
「もしかすると不正を行う可能性があり得ます。見つけ次第始末しましょう!」
「分かったわ!私達も準備するわよ!」
アミの合図で彼女達は其々の場所に移動し、不正が行われているか確認し始める。
バリウスの事だから卑怯な事をするのも無理はない。だからこそその不正を取り締まる為、アミ達は監視しているのだ。
(なるほど……アミ達は不正が行われないか監視する立場を選んだのか。いい作戦だぜ!)
ファンクはアミ達の行動に心から感心し、すぐにバリウスと間合いを取り始める。
お互い警戒態勢を放っていて、盾を前方に構えているのだ。
(ファンクの奴……ここまで剣術の心得を学んでいたのか?だが、僕は挫けないぞ!真の勇者は僕一人で十分だ!)
バリウスは心からそう思いながらファンクに突っ込み、お互い剣をぶつけ合いながら激しい戦いへと身を投じたのだった。
真の勇者は誰なのか?それは……戦ってみないと分からない!




