プロローグ
昭和8年長野県の松本。
「ねえ、どこまで行くの?」
馬車は山奥へと入っていく。千鶴子は馬車の向かいの席に座っている華に尋ねる。女学校の帰りだからセーラー服を着ているが巻いた長い黒髪、赤い椿の髪飾りは彼女の名前の通り華やかだ。
「とても素敵なところがあるのですよ。千鶴子さんは松本は初めてでしょ?」
千鶴子は秘書の仕事でここ松本を訪れた。
「ねえ、芳子様とはどういったご関係ですの?」
再び華が尋ねてくる。芳子とは千鶴子の雇用主だ。しかしただの
「何って秘書をしているのです。」
千鶴子は顔を真っ赤にして答える。
「それだけですの?」
「ええ、それだけですわ。」
「良かった。」
華が小声で呟く。
「あの、何か?」
「いえ、こちらの事ですわ。」
ほどなくして馬車は停泊する。
「お嬢様方、どうぞ。」
御者が扉を開ける。外は山の中だ。
「千鶴子さん、ここからは歩きましょう。」
千鶴子は馬車を降りると舗装されてない道をチャイナドレスの丈を上げながら華について歩いていく。
「華さん、どこまで行くの?」
華に尋ねるが答えは帰ってこない。千鶴子は仕方なく着いていく。どれくらい歩いただろうか?
「着いたわよ。」
湖畔に白百合が咲いてる湖が見えてきた。
華はこの湖が見せたくて自分をここに連れてきたのだろうか?
「千鶴子さん、もっと近くに行ってみません?」
千鶴子は言われるがまま湖に近づいて行く。
「きゃっ!!」
次の瞬間千鶴子は湖へと突き落とされる。
「何するの?」
水面からかろうじて顔を出せる千鶴子は華を見上げる。
「何ってご自分の胸に手を当てて考えてみてはいかが?」
華はほくそ笑んで去っていく。
タイトルは薔薇戦争もあるから百合戦争もあってもいいよねって気持ちでつけました。