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破られた黙示録

ジュンはヨウイチが残した統制機構の機密資料と

特に火星補完計画に関しての情報をリョータとカノンに共有する。


「なんかとんでもねぇ計画だな・・・

頭が痛くなる。あの記者会見はそうゆうことか」


「ああ、アカリはこの計画の重要なコマとして巻き込まれたんだ」


「あの日、私がテーマパークの調査を上司に頼まれてアカリに代わってもらったのも・・・」


「それもすべて統制機構がテーマパークの爆破に乗じてアカリを軟禁し、

この計画のために意思のある軍事用ロボット、MkJ01を開発させることだったんだ。

公式に死んでいる扱いにすることで違法な研究をさせるために」


「しかしこれ、宝の山じゃないか。

わかっちゃいたが、統制機構も裏で色々やべぇことやってるな、

いっそマスコミに公表するか?」


「そもそも俺たちは指名手配されている真っ最中だ。

俺たちがいうことをまともに受け取ってもらえると思うか?

それにこれらの文章も公表した所で

統制機構に証拠をもみ消されるのが関の山だろう」


「そりゃ確かに・・・」


ジュンを救出する際に

リュータやカノンも統制機構に指名手配されている。


「で、どうするの?」


「どうもハネダエリアの宇宙船爆破テロまでは

この文書の筋書き通りのようだ。

となると統制機構の次の動向は・・・」


「反火星主義組織に扮しての行政特区区域の住民の虐殺ということか」


「ああ、俺は統制機構の暴走を止めたい、

だが二人には無理に手伝ってくれとは言わない。

どうするかは自分自身で決めてくれ」


「馬鹿言え、ここまで来たんだ後には引けねぇよ」


「私もよ」


ジュン達は装備を整え、行政特区区域へと向かう。


数時間後、ジュン達は行政特区区域に到着するも

街は荒れ果て人々はジュン達に余所余所しい感じだった。


「なんか私達露骨に警戒されてない?」


「そりゃな・・・」


「行政特区区域と体の良い言葉で飾られているが、

カノンはここがどんな人達が住むか知っているか?」


「ええと、ロボットに仕事を奪われ失職した人々が家を失ってここに来る?」


「ああ、特に誰かが決めたというわけでもなく、

廃墟に自然と互いに助け合うように集まったようにしてできた感じだ。

そしてここはオペレーターの管轄外の地域でもある」


「つまり、俺たちオペレーターが来ること自体普通じゃありえないってわけだ。

おっと、元だった。」


リュータは腰に携帯したトランスリミッターを見ながら言う。


「管轄外の地域なんてあるのね・・・人が住んでいるのに、

確かにここに来たことはないわ」


「統制機構も所詮市民の税金で動いている機関だ。

税すら払えない市民はその対象外というわけだ。

そしてここの人達は時々あぶれた暴走ロボットの犠牲になったりしている」


「なんか、ひどい話ね・・・」



ジュン達が歩いていると突然子供が飛び出してきて、

ジュンに石を投げつける。


「うおっ、あぶな、いきなり何するんだ!」


ジュンの代わりにリュータが怒り、

ジュンは無言だったが額からは血が出ていた。

そこへ慌てて一人の老婆が子供を止めに来る。


「ああ、何てことを・・・ごめんなさいね。

ほら、ショータも謝りなさい!」


「謝るもんか!」


「このガキ!」


「何かあったんですか・・・?」


「丁度ひと月前の事でして、

この子の両親が暴走するロボットたちの犠牲になって・・・」


「ロボットを止めるのがお前達オペレーターの仕事だろ!

なんで助けに来なかったんだよ!

返せよ!僕のパパとママを返せよ!」


「およし、この人達のせいじゃないだろう。

子供の言うことです。どうか見逃してくれませんか」


老婆が子供をたしなめ、再度嘆願すると

ジュン達はいたたまれない気持ちになる。


「わたしゃ、このスラムで長いこと暮らしているけど、

昔はこんなんじゃなかったんだ・・・

マキノセユウゴっていうオペレーターがね、

行政特区区域関わらず、救助に来てくれていたんだ。

私がその話をこの子に聞かせてしまったのが悪かったんだ。」


「マキノセユウゴは・・・俺の親父です。」


ジュンがそう告げると老婆が大きく目を見開く。


「そうかい・・・その目の輝きはそっくりだよ。

強い覚悟と信念を持った目だ。

お前さん達は何か用があってわざわざここに来たんだろう?」


「はい、この地域に反火星主義組織のテロリスト達が潜伏しているという

情報を掴みましてそいつらを捕まえに来ました。」


「ふむ、関係あるかわからないけど、丁度数日前にこの先にある廃工場に

数名不審な集団が入っていくのをみたよ。」


「調べてみる価値はありそうだな。」


「情報ありがとうございます、どこかに隠れていてください」


ジュン達は廃工場へと向かう。



程なくして、ジュン達は行政特区区域の奥にある廃工場にたどり着く。

長い年月を掛けて入口付近の施設の屋根や壁のほとんどは崩れ落ちていたが、

奥の施設は形を保っていた。


「あの婆さんがいうように、誰か出入りしている形跡があるな」


リュータは入り口の砂の上に複数人の真新しい足跡を見つける。

ジュン達は周囲を警戒しながら奥の倉庫に進む。

丁度屋根の一部が欠けている箇所を見つけ、

パワードスーツで跳躍しワイヤーで屋根に飛び乗ると

そこから内部の様子を伺う。


そこには武装した数名が何やら話していた。


「作戦は今夜決行する。」


「思ったより早かったですね。」


「そうか?いつまで待たせるんだ。

たくさん人が殺せるってなると俺は今から楽しみで楽しみで仕方ねぇ」


「ジャッカル3、俺たちの任務に私見はいらない。」


「トオルちゃんよぉ、カマトトぶってんじゃねぇよ。

てめぇも同じだろぉ、人を殺したくて殺したくてしょうがないんだろぅ?」


「作戦中はコードネームで呼べと言っただろう、ジャッカル5。

俺はお前らと違って電子ドラッグジャンキーじゃないからな」


「隊長は相変わらずお硬いのねぇ、

私は早く脳みそ解体して腸を引きずり出したいわぁ」


「相変わらず、ジャッカル4は薄気味悪いな、美人なのに」


「あら、貴方にだけは言われたくないわジャッカル2、

あなた見た目餓鬼のくせして、この前は何人死姦したのよ」


「あ”?喧嘩売ってるのか?今ここで殺って犯すぞ?」


「あら、私も丁度あなたの脳漿ぶち撒けたい気分だわ」


ジャッカル2とジャッカル4は互いに銃を突きつける。


「お前ら、そこまでにしろ。作戦が終わったら好きにしてもいいが・・・」


ジャッカル1は一瞬の間にジャッカル2、ジャッカル4の銃を取り上げていた。


「作戦中は俺が許さない」


早い!その様子を屋根からこっそり見ていたジュンは悟る。

強化されているパワードスーツなのだろうか?

その動きはジュンやリュータの全力よりも早かった。


「やつらでどうやら間違いなさそうだな、合図したら攻撃するぞ」


リュータはパラメトリックスピーカーで隣の施設から

狙撃ライフルを構えているカノンに知らせる。

パラメトリックスピーカーは超音波による

指向性を持たせた音声を伝えることができる。

迂闊にスキャナーによる通信を使うと探知される恐れがあるからだ。


「少なくとも5人か、奇襲で減らすとして

あの隊長だけはおそらく別格だろう。

隊長は俺が対応しよう、他任せていいか?」


「おう」


ジュンはカノンに手を振り合図をすると

催涙弾とスタングレネードを屋根から放り込む。


「うお、何だ!?」


「ゲホッゲホッ!光と煙で目が染みて何も見えねぇ」


「敵襲か」


直後、ジャッカル5にカノンの狙撃が当たり電流が流れる。

だが、奇襲で行動不能にできたのは一人だけだった。

他のメンバーはスカーフで顔を覆い、

目はゴーグルで保護していた。


ジュン達は屋根の上からパラライズブレッドを撃つも

難なく躱されてしまう。


「あそこだ!」


「狙撃手がいるな、ジャッカル4頼めるか?」


「ウフフ、八つ裂きにしてあげるわ」


ジャッカル4は倉庫から飛び出し、カノンが居る方へと向かう。


「とりあえず、お前ら降りてこいやー、殺りあおうぜ!」


「ちっ」


ジャッカル3がサブマシンガンを連射し、

トタン製の屋根が蜂の巣になる。

だが、そこにジュン達の姿はすでになかった。


「どこ行った?」


「おそらく倉庫正面から来るだろう、お前ら気を抜くなよ

俺は屋根の方から追う」


ジャッカル1はそういうとワイヤーすら使わない超跳躍で屋根の上に着地する。

そこにはジュンが待ち構えており、

付かず離れずの距離を保ちながら銃撃の応酬となる。


一方、倉庫の出入り口で鉢合わせになったリュータとジャッカル3は

銃を構えたまま、にらみ合いとなる。


「お前らなにもんだ?」


「お前らみたいな悪党に名乗る名は持ち合わせていないね」


「いや、その銃トランスリミッターだな、

差し詰め、指名手配中のオペレーターか」


「だったとしたら?」


リュータは密かに超小型のADSを作動し、ジャッカル3に照射していた。


「うお、あっちぃ」


ジャッカル3は思わず足をあげる。

ADSアクティブ・ディナイアル・システム非致死性兵器(ノンリーサルウェポン)の一種だ。

周波数95GHz帯のミリ波の電磁波を人間に向けて照射すると、

電子レンジの原理同様に誘電加熱により、皮膚の表面温度を上昇させることが可能で、

この照射を受けた者は火傷を負った様な錯覚に陥らせる。


その一瞬の怯んだ隙を逃さず、リュータはパラライズブレッドを

ジャッカル3に命中させる。


「ぐあっ!しまった」


ジャッカル3は電撃により痺れ行動不能となるが、

リュータは背後からの気配に気づき身を躱すと

ジャッカル2のウォータージェットが地面を切り裂いていた。

ウォータージェットは、300MPaほどに加圧された水を

0.1mm-1mmほどの小さい穴などを通して得られる細い水流で

金属等を軽々切断することができる。


「お兄さん、強いね」


「俺はてめぇみたいなクソガキの相手をするのが嫌いなんだよ!」


「ひどいなぁ、これでも成人済みだよ」


リュータは距離を取り、銃撃しながら逃げる。

近接戦闘だと分が悪すぎる。


「あ、待ってよ、切り刻んであげるよ」


「そいつはごめんだね」


リュータは廃工場の入り口まで逃げる。

だが、入り口で思いとどまり、そこで待ち受ける。


「あれぇ、鬼ごっこは終わり?」


「お前みたいな殺人鬼を外に出すわけには行かないからな」


「ふーん、じゃあ、大人しく死んでね」


リュータは砂を蹴りあげ、目くらましした隙にパラライズブレッドを撃つも

それを読んでいたジャッカル2は横っ飛びで躱し、

リュータに突撃していく、しかしそれこそがリュータの思うツボだった。

リュータは予め仕掛けておいたパラライズトラップを作動させ、

足を踏み入れたジャッカル2は感電する。


「がっ、な・・・に!?」


「てめぇみたいなクソガキにはお仕置きが必要だな」


カノンはジャッカル5を仕留めた後、

ジャッカル4がこちらに向かってきているのを確認する。

狙撃銃で数発狙い撃つものの、建物の影や障害物を利用して躱される。


「駄目ね」


カノンは狙撃銃を置き、トランスリミッターを構えてドアの右横に潜む。

数十秒後、何者かがドアをわざとらしくノックする。

あの女だろう。

この扉はスライド式で電気が通っていないため手で開ける必要がある。


(開けた瞬間を狙うわ。)


次の瞬間、カノンが潜んでいるドアの左横の壁がウォータージェットで貫通する。


(ドアを叩いたのは、私がドアの横に潜むのを予想してのこと!?

反対側に潜んでいたら串刺しだった。)


カノンはぞっとする感覚を覚え、壁から離れる。

そのままウォータージェットで壁に穴が空くと

何かが飛び出してくる。

それを間髪入れずカノンは撃つも

それは廃棄された人型ロボットアシムだった。


「ざんねーん」


その人形の裏に潜んだ美麗なる襲撃者が姿を現す。


「あら、あなたも女なのね。」


「・・・」


カノンはトランスリミッターにパラライズブレッドを再装填しようとするも

ジャッカル4が突進してくる。


「させないわ!」


その様子を見てカノンはトランスリミッターを手放し、

逆にジャッカル4の懐に潜り込む、


「え、嘘」


予想だにしなかった行動に逆に無防備になったジャッカル4の顎を

カノンのアッパーが打ち抜く。


「狙撃手は近接格闘戦が苦手だと思ったのがあなたの敗因よ」


ジャッカル4は完全にノックアウトされていた。



ジュンはジャッカル1に尋ねる。


「なあ、あんた、なんで行政特区の人達を殺そうとしているんだ」


「ああいうゴミ共はこのメトロポリスに相応しくない、

だから排除する。それだけだ」


「な!?でも、行政特区の人達も元はメトロポリスの人だろ!?」


「それは奴らに能力がなかっただけさ、

弱肉強食、それが自然の摂理だ。

したがって、奴らがのうのうと生きているのが

街の景観と品位を落としている」


「お前、本気で言っているのか?

自分が同じ立場になったとしたら・・・」


「俺は強い、よしんば同じ境遇になったとしたら

俺は死を選ぶだろう。惨めに這いつくばってまで生きたくはない。

それに奴らが死のうが誰も困らない、

むしろお荷物が消えて喜ぶヤツのほうが多いと思うぞ」


駄目だ、コイツは根本的に思想が違う、

選民思想、ファシズムというやつだ。

理解し会えないタイプだ。


「お前とはわかり会えないようだな」


「結構!俺の高等なる思想を理解しようなど100年早い」


ジャッカル1は圧倒的な速度で

ジュンとの距離を詰めると腹部へストレートを決める


「がはっ!」


ジュンはそのままふっ飛ばされ、隣の施設の壁にまで激突する。


(なんて力と速度だ、

とっさにトランスリミッターで腹部をガードしていなかったら危なかった。)


だが、やつのあんな人間離れした力はどこから来ているのだろうか?

ジュンは近づいてくるジャッカル1に対しスキャナーで解析をすると

頭以外の殆どが機械であることが判明する。


「おまえ、まさかサイボーグなのか!?」


「ほう、よく見抜いたな、だが、それがわかったとして形勢はかわるまい!」


「いや、機械相手であるのならば、いくらでも手はあるさ」


ジュンはスタングレネードのようなものを放り投げる。


「それは俺には効かないと学習しなかったのか!?」


ジャッカル1は構わず突進してくる。

しかし、それはスタングレネードではなかった。

爆発したそれによりジャッカル1は

突如全身の制御ができなくなり、転倒する。

EMP爆弾、周囲に強力なガンマ線を放射する兵器で、

半導体や電子回路に損傷を与えたり、一時的な誤動作を発生させる。


「お前らに指示を出した、上官の名前を教えてもらおうか?」


動けなくなったジャッカル1にジュンはトランスリミッターを向ける。


「答えてやる義理はない・・・

と言いたいところが、俺に勝ったお前には

特別に教えてやろう、トドロキセイジだ」


「やはりそうか」


スラム街の方の各所で大きな爆発が起きる。

そして街中で銃声や人々の悲鳴が聞こえる。

廃工場の周辺にも軍用ロボットジェノーがうろついており、

近づくものを射殺していた。


「所詮俺たちも捨て駒だったか・・・

あの狸め、別の部隊を呼んでいたか」


「何?!」


「お前も道連れだ!

呪うがいい、統制機構に歯向かったことを、

火星補完計画を邪魔しようとしたことを!」


「まさか!?」


ジュンに嫌な予感が走り、その場を離脱する。

次の瞬間ジャッカル1はプラスチック爆弾により自爆する、

周囲に血糊と人工臓物をぶち撒けながら。

そのあまりのおぞましさにジュンは吐き気を抑えられなかった。

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