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いつか描いた夢とあの日の約束

ジュン達はアカリの体をイケブクロエリアの闇医者の元に運び込む。

アカリがジュンやユメノ博士に長い間行方を知らせなかったのも合点がいった、

これでは生きていても死んでいるようなものだ。


「何でこんなことに・・・」


ユメノ博士はうなだれる。


「お父さん、ごめんね・・・」


ブバルディアの中のアカリは博士に謝る。

人格を投影されたロボットは彼女であって彼女でない。

博士は複雑な表情を見せる。


「頼む・・・少し一人にさせてくれないか?」


ジュン達はアカリの体がある病室を後にする。


「もう一つやることがあるわ」


ジュン達はミナガワリンの病室を訪れる。

リンはコールドスリープより目覚め、

ヨウイチが作った治療薬を投与されていた。


「先程聞きそびれていたな、

ミナガワヨウイチとはどうゆう関係なんだ?」


「リンは私の友達でね。兄のヨウイチは私の研究のパトロン、

ほとんどの研究費用と物資の援助は彼が行ってくれていたの」


「それは意思のあるロボットの開発のだよな?」


「そうね、彼は私が作る意思のあるロボットを産業用に利用することを期待してたわ、

私もそのロボット達が人の助けになれば良いと思って作っていたわ。

始めは・・・ね」


「始めは?」


「ええ、リンが奇病にかかり、コールドスリープしてから全てが狂ってしまった。

ヨウイチはありとあらゆる手段を使ってリンを治す研究をしていたわ、

それこそ違法な手段も用いて」


「違法な手段というのはあの研究所のことか」


「ええ、ヨウイチが統制機関に入り幹部まで上り詰めたのも、

統制機関が保有する最新の医療技術と医療施設を利用するためよ。」


「ジュンはあの日私とした約束を覚えている?」


「ああ・・・そんな日が来ることがなければと願ったものだが」




ジュンと出会う前のある日、アカリはロボットの研究施設を離れ、

感情の分析データ収集のため、ロッポンギエリアにいた。


「データ収集のため、こんなところに来ないと行けないのは嫌ね。」


そこかしこで電子ドラッグにより発狂している人々が闊歩していた。

アカリは車を発進させようとするも、

突如ゴロツキ共が車を取り囲むように立ちふさがり、

自動運転モードの車は障害物検知し停止する。

男たちの表情は明らかに常軌を逸していた。


「何よ、あなた達」


「へへ、嬢ちゃん綺麗じゃねぇかよ、

ちっと俺たちと付き合ってくれないかなぁ」


「ちょっと、どいてよ。」


「おお、怖い怖い、でも怒った顔も可愛いなぁ」


「やっちまうか?」


「この駐車場は無人だしな」


男の一人が周囲が無人なのを確認した後、

車の窓ガラスを拳で貫き、

内部のロックをこじ開け車の扉を開ける。


「きゃああああああ」


「はい、ごたいめ〜ん〜」


「うひょー、俺好みだぜ」


「ちょっと、放してよ!」


男たちは車からアカリを引きずり出し連れ去ろうとする


「おい、何をしている!」


駐車場の影の車からジュンが現れる。

その手にはトランスリミッターが握られていた。


「ああん、なんだ?あの車、人乗ってたのか?」


「てめぇその銃は、オペレーターだな」


「オペレーターは機械共の相手してればいいだろ、

それとも何か俺達みたいな市民に手あげても良いってか?」


「お前らみたいな屑共から市民を守るのも仕事のうちだ」


「野郎!」


「イキってんじゃねぇぞ、オラァ!」


ゴロツキ共は次々とジュンに殴りかかってくる。

ジュンはゴロツキ共のパンチを次々と躱し、

カウンターを決めていく。

ゴロツキの一人が右腕のストレートパンチをかますと

ジュンは右腕を掴み、その勢いで背負い投げする。

その様子を見て他のゴロツキ共は躊躇する。


「あがっ」


「ぐっ、痛ぇ」


「こ、コイツ強えぇぞ」


「どうした?かかって来いよ」


ゴロツキの一人がアカリの首にナイフを突きつける


「動くな!この女がどうなってもいいのか?」


「ちっ、屑は思考回路まで救いようがねぇな」


ジュンはトランスリミッターのロックを解除すると

パラライズブレッドでアカリを捕まえているゴロツキを撃つ。

直後パラライズブレッドから電流が流れ、ゴロツキは崩れ落ちる。


「あががががが、しびれ・・・」


「ひぇ・・・」


その様子をみた他のゴロツキ共は逃げようとする。

ジュンはゴロツキ共に次々とパラライズブレッドを命中させ、

行動不能にさせる。

そして怯えているアカリに手を差し伸べる。


「逃げるぞ」


アカリはジュンの手を握り、二人はジュンの車で逃走する。


「あの・・・危ない所を助けてくれてありがとうございます。

もし、よろしかったらお名前を・・・」


「ジュンだ、オペレーターをやっている。

仕事はロボットのメンテナンスと暴走ロボットの強制停止だ」


「私はアカリ、あなたと同じ統制機構で研究員をしているわ。」


「そうか」


同じ統制機構に所属していることがわかってもジュンはただそう呟いた。


「でも、いいの?

オペレーターは規則で一般市民に危害を加えちゃいけないんじゃなかった?」


「俺は正しいことをしただけだ。

君みたいな一般市民を暴漢から守るのも仕事のうちだと俺は思っている。

それで罰せられるのであれば統制機構の方が間違っているんだろう」


「くすっ、変な人」


ジュンとアカリが付き合い始めたのはそれからだった。

そんなある日、アカリはジュンにいう。


「ねぇ、ジュンにお願いがあるの」


「なんだ?」


「私が作ったロボットが人にとって幸せにならないと

判断したときは貴方の手で壊してほしいの」


「それは俺がオペレーターだからか?」


「ううん、貴方だから言っているのよ。

どうせ壊されるなら他の誰の手でもなく、

貴方の手で壊してほしいの」


「覚えておこう」


「じゃあ、約束ね?小指だして」


アカリは小指を差し出す。


「何だそれは?」


「指切りっていってね、地球の私達の都市を元にした国、

日本に古くから伝わるおまじないよ、

嘘ついたら針千本飲まされちゃうんだから」


「約束はできないが、覚えておこう」


「もう」


ジュンはアカリに小指を出し、二人は指切りをする。



ミナガワリンの治療が終わり、病室から闇医者が出てくる。


「容態はどうですか?」


「驚いたな、完治している。

この治療薬を作ったミナガワヨウイチは天才じゃ。

薬学医学界的にも惜しい人を亡くしたものだ・・・

これならば数日と待たずとも退院できるだろう」


「良かった、リンに面会してもいいかしら」


「病み上がりじゃからの、あまり負担をかけんようにな」


ジュン達は病室に入るとリンはコールドスリープのカプセルではなく、

普通の病人用ベットに寝ていた。


「リン!」


「えーと、どなたですか?」


「あ、ごめんね。

アカリよ、ロボットを介して話しているから姿形は違うけど」


「そちらの方は?」


「私の彼氏のジュンよ」


「え、なにそれずるい。私が寝ている間に彼氏作ってたの?」


言葉と裏腹にリンはどこか人形のように感情を喪失しているように見えた。

リンの奇病が感情を喪失する部位の脳疾患だったから無理もない。


「ねぇ、お兄ちゃんは?」


リンのその一言にアカリは伝えるべきか逡巡しているようだった。


「落ち着いて聞いて、ヨウイチは・・・」


そのとき病室のモニターに緊急のニュース速報として

ハネダエリアで宇宙船の大規模な爆破テロが起きる様子が映し出される。

主犯は反火星主義の組織とのことだった。

テロリスト達は統制機構のオペレーター達によって鎮圧されていた。

緊急中継として統制機構トップのトドロキセイジが記者会見をしていた。


「メトロポリスにお住まいの皆様。

はじめまして、統制機構トップのトドロキと申します。

今回の宇宙航空機爆破事件の主犯は反火星主義組織と見られています。

だけど、ご安心を私達統制機構が今回のテロの犯人たちを逮捕しました」


「反火星主義の組織の狙いはわかっているのでしょうか?」


「彼らは火星に住む人々を憎んでいます。

火星に住む我々を同じ人類として認めていないようなのです。

数年前のシナガワ区のテーマパークの爆破事件を覚えているでしょうか?」


「あれは痛ましい事件でした、結局犯人は捕まっていないのですよね?」


「我々が独自の調査を続けたところ、

それらの犯行も反火星主義組織のものだと判明しました。」


トドロキの発言に記者たちがざわめく。


「統制機構は本件を見逃す気はさらさらありません。

オペレーターを総動員して反火星主義組織の壊滅に全力をあげるつもりです。

市民の皆様にも本件の協力を要請、お願いをいたします。」


中継はそこで途切れる。

一番動揺していたのはアカリだった。


「嘘よ、あのテーマパークの爆破事件は統制機構が起こしたものよ!

そうでなければ、私はこんな体になることはなかったのに」


「本当にアカリなのね」


「ご、ごめんね、取り乱しちゃって・・・

で、ヨウイチのことなんだけど」


「ううん・・・その先は聞かなくてもなんとなくわかる。

お兄ちゃんが快復した私を真っ先に迎えに来ないなんてことないもの」


リンは表情を崩さないまま、涙が目から流れる。


「ごめん・・・ごめんね、ヨウイチはもう・・・」


アカリはリンの手を握り、頭を下げる。


「なんでアカリが謝るわけ、アカリは何も悪いことしてないんでしょ?」


「そうだけど・・・」


「ヨウイチは君の治療薬を完成させたものの何者かに殺された、

犯人は俺たちが必ず捕まえる。」


「兄から預かっているものがあるんです。

もし、自分が何らかで亡くなった場合にその全てをお前に託すって

私は怖かったから最初断ったんですけど、どうしてもって渡されて」


リンは暗号解読デバイスを渡す。

そこにはあるサイトのURLが記されていた。


ジュンはスマートプロジェクションブレスレットを起動させ、

そのサイトにアクセスする。

そこにはミナガワヨウイチの経歴とプロフィールのみが記されていた。


「特に何も不審な点はないな・・・」


ジュンが暗号解読デバイスを

スマートプロジェクションブレスレットに接続すると

瞬く間にサイトの表示が切り替わり、

膨大なファイルの一覧が表示される。

ジュンは統制機構関連のファイルを検索する。

さらにその中の重要機密項目で目についたファイルがあった。


「火星補完計画・・・?」


ファイルを開くと、その公文書は

統制機構が意思のあるロボットを使って

火星と地球の全面戦争を目論んでいる内容だった。


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